2013年10月30日

安定ヨウ素剤の内服注意点(内服マニュアル紹介)

 4号機の燃料プールからの燃料取り出しに関係しているのでしょうか。安定ヨウ素剤の内服についての質問がいくつか寄せられました。もし、燃料が破損して放射能が周囲にまき散らされたとしても、安定ヨウ素剤の内服は、まあほとんど意味がないと言っていいでしょう。なぜなら、核分裂反応が終了して、ある程度の期間(2年程度)経過しており、ヨウ素の放出はほとんどないと考えられるからです。心配のなのはセシウム、ストロンチウム、クリプトンといったある程度長周期の半減期を持つ核種による被曝です。ヨウ素剤を内服して、放射能プルームが俟っている中で逃げ出すほど愚かなことはないと私自身は思います。(内部被曝するだけです)−しかも、みんなが知るような状況になれば、大渋滞に巻き込まれるのは火を見るよりも明らかです−
 それよりも、目張りをして籠城する方が生き延びる確率は高くなるでしょう。飲料水をきちんと確保し、食糧をある程度(2週間?)保有して、いざというときに外に出なくともすむようにしておくことの方がもっと大事です。

 もっとも、万が一再稼働をした原発が事故を起こした場合には、ヨウ素剤を直ちに飲む必要があるでしょう。(基本的にヨウ素剤の副作用はほとんどなく、甲状腺機能亢進症の妊婦には通常の治療として用いられています。専門医の先生によれば、長年投与しているがヨウ素剤の副作用を経験したことはない。とのこと)

大飯再稼働とヨウ素剤内服非公式マニュアル(自己責任で)より(私の作成した全くもって私的なマニュアルです。参考程度にとどめてください)
1.予防的内服のタイミング
 重大な放射線汚染が予測される状況で内服を行う。通常は、行政機関がそのタイミングを発表するべきであるが、現体制でははなはだ疑問である。
・原発周りの震度6強の地震
・高さ5メートルを超える津波の発生
の報道を目にした場合は、内服開始することが望ましいと考える(自己責任)
ヨウ素剤を内服することにより甲状腺癌の発癌を予防することができるが、それ以外の被曝を防ぐ効果はない。内服後は、できるだけ被曝を避けられるよう、当該地区から避難する必要がある。(ヨウ素剤の内服はあくまでも一時的な予防に過ぎない)
(参考)
被曝が一瞬に生じると仮定して、100mgのヨウ化カリウム剤「ヨウ化カリウム丸」を飲むことによって被曝を阻止できる率は、 下記の通り。
 服用が12時間前=90%
 服用が 直前  =97%
 服用が1時間後=85%
 服用が3時間後=50%

2.服用対象者
 成人、乳幼児、全て(特に年齢制限は設けない)
ただし、以下の者は除外する
•ヨウ素過敏症の既往歴のある者
•造影剤過敏症の既往歴のある者
•低補体性血管炎の既往歴のある者または治療中の者
•ジューリング疱疹状皮膚炎の既往歴のある者または治療中の者

3.服用回数
 安定ヨウ素剤の効果は1日継続すると認められていることから、1日1回の服用で十分である。しかし、内服開始のタイミングは難しいため、2回に分けて内服してもなんら問題無いと考える。

4.服用量
・生後1カ月以上3歳未満  ヨウ素量25mg(ヨウ化カリウム量32.5mg)
・3歳以上13歳未満の者  ヨウ素量38mg(ヨウ化カリウム量50mg)
・13歳以上の者    ヨウ素量76mg(ヨウ化カリウム量100mg)

 おわかりでしょうか。直前に飲むのがもっとも効果的であり、それを逃すと効果が激減します。予防投与が非常に重要だと私は考えます。

イソジンガーグル(下記)でやむなく代用しようとしますと(あくまでも緊急避難的な措置)、
2013103001.jpg
3歳未満・・・3cc
3-13歳・・・ 5cc
13歳以上・・10cc

となるでしょうか。繰り返しになりますが、あくまでも自己責任でご利用ください。外用薬を皮膚に塗ることによっても吸収され、ある程度の効果は認められます。

このブログの右側に検索欄がありますので、調べたいキーワードを入れるとたいていのことは出てきます。ご活用ください。

 放射能と戦って勝つことはできません。逃げるか、被曝しないように防備することしかないのです。

第二次世界大戦時代の「なんだ空襲」

 米国の爆撃機から落とされる焼夷弾にバケツリレーで対抗することはできないのは明らかですが、このようなプロパガンダ映画を平気で作るのが日本政府、そして信用するのが日本人です。
 「なんだ放射能」「なんだ被曝」の風潮に引っ張られませんように。

◆関連ブログ
大飯再稼働とヨウ素剤内服非公式マニュアル(自己責任で)2012年07月02日
ヨウ素剤は、全国民必携2011年07月19日

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タグ:ヨウ素
posted by いんちょう at 23:59| Comment(5) | 原子力

2013年10月29日

野村大成阪大名誉教授の警告−福島はチェルノブイリのミニコピーではない。おなじ被害が起きる

 どこの大学教授も内部被曝を軽視し、あるいは被曝に携わる医師までも「被曝による遺伝的影響はない」と主張する始末です。その中で、野村大成阪大名誉教授が、0808報道ステーション「被爆の遺伝的影響」の中で
・オスのマウスに放射線を当てる。しばらくしてから正常のメスと交配する。生まれた子どもを見てみると、線量に比例して子どものがんが増える
・さらにメスの場合、放射線をあて、正常のオスと交配すると、その方が(子どものがんの)頻度はさらに高い
・その子ども同士を交配すると、孫にも(がんが)増えた
・(遺伝的影響で)間違いないと
・調べた限り、すべての生物に遺伝的影響が起こっている。その時、必ずつけられるのが、except human = 人を除くすべての生物
・人間だけが放射線に被ばくして、子どもに遺伝的影響が出ないなどあり得ない

と答えていたことが目を引きました。最近、良くチェックしているThe Voice of Russiaから


P25 野村大成・大阪大学名誉教授(放射線基礎医学の世界的権威)をお迎えして 28.10.2013, 12:00をご紹介いたします。内容は動画を見ていただくとして、いくつか抜き出します。
2013102901.jpg
・放射線基礎医学はビキニ事件が起きて、大きな大学に新しく医学部に作った講座
・30年以上前にマウスで化学物質、放射性物質で世代を超えて影響が出てくる研究で実証的データを集めた大阪レポートで有名になった。
・今回で5回目の訪ソ(ロシア)
・マウスの影響が人でどうかというのが一番の問題で、チェルノブイリで再検討される必要が出てきた。
・セラフィールドの裁判でマウスで起きたことが人でも起きそうだと証言にたった。
・男性の子供に白血病が増えて、問題になった。(普通は体内被曝、母親であった)−世代を超える−ことを科学的に発表した。
・チェルノブイリでユネスコで10年たって再検討した。土地の放射能レベルが落ちた。その後の生態系への影響を調べることになった。
・広島、長崎では白血病は出たが、甲状腺癌はそれほど増えなかった。と言われていた。だから、チェルノブイリで調べた。これが、内部被曝の怖さ
・ヨウ素で被爆が起きることは予想はついていたが、国際的にはなかなか認められなかった。
・IAEAの何の影響もないと言う楽観論だったが、放射線の専門家から見たら、起こるべきことが起こっていた。
・(ウクライナ、ベラルーシ)現地のお医者さんたちが本当に真剣に住民たちのことを考えていた。
・広島、長崎も開業医の先生がおかしいと気がついて、日本語で発表して一気に火がついた。
・同じようなことがベラルーシでも起きた。保健所からも報告が来ていた
・我々は協力したに過ぎない。
・1990年の頃は日本の頃は模範的な国だった。放射線の安全を守ろうとしてきた。
・15年ほど前から行政が変わった。原子力は安全だ。という神話ができた。研究は要らない。という話になっている。潰しちゃった。
・放射線基礎医学講座もだんだんと離れていった。最後は私の講座だけが残った。そういう中で事故が起きた。
・冷却装置も19世紀の蒸気エンジンとおなじ方法でやっている。破断しないはずがない。
・放射線障害も10年以来なくなって、フクシマの事故が起きた。そういう意味では非常に不幸
・事故のその日の晩にはメルトダウンしていると言うことは海外の友人(メルティングリーク)に伝えた。
・冷却装置が止まってしまって、再起動するモーターも何もなかったから、先は決まっている。問題は大きくなった。その時にどういうことが起きるかは過去の例がいっぱいある。何が起きるかはわかっていた。(これは非凡な着想で、なかなかここをきちっと言っている人はいませんね。専門家でも)
・チェルノブイリは100万Kw、福島は200万Kwある。出た量は少ないと言われている。
・セシウムは1/6、ヨウ素は1/10。良く誤解されるのは、1/10なら、被害も1/10と思われるがそうじゃない。
・放射能はホットスポットができる。直接被曝1/10になるが、住民はホットスポットで被曝するので、1/10にならない。
・面積的にはチェルノブイリよりも少ない。しかし、ホットスポットの汚染状態、線量はほとんどおなじ。濃度は変わらない。だから問題
・人口密度がチェルノブイリは低い。福島は比較にならないほど多い。面積は少ないが、住民の内部被曝の影響としてはおなじになる。
・チェルノブイリで起きたことは、福島の近くで起きる可能性が高い。
・当初の3週間の被曝量が不明なので、評価ができない。(測定がうまくいっていない)
・SPEEDIが隠されていた。
・ロシアは軍隊50万人〜60万人で厳重な設備をつけて除染をした。一人の被曝を減らした。日本でやっているのは50人くらいで人が増えてきたが、格好は紙マスクで着替えたくらで、二次被爆の影響が多いのではないかと心配している。
・どの程度のまで下げてはじめて除染というか。1mSvにするのは非常に難しい。その費用を考えれば、新しい町を作った方がいい。
・福島の地方は千年前のコピーに過ぎない。当時の為政者は住まないようにしていた。忘れてしまって、同じような事故が起きた。
・1000年前の地層研究者がおなじ場所まで津波が来たことがわかって、論文を出したのに知られていなかった。予想できたことであった。
・「安全の哲学」為政者の都合、経済の都合ではなく、守るべきは人命。それが、政治の哲学、安全の哲学じゃないか。一番大事な哲学。その上に社会がある
・除染は完全にはできない。また津波、事故が起きる可能性がある。その時に壊れるのなら、そこに作ってはならない。次の子孫について考えるべきだ。
・次の世代を考えるのは放射線だけではない、市民社会でもそう。

おもしろいです。是非ご試聴ください。ロシアだから、ここまで流せたのでしょうね。この放送でも野村先生は言いたいことをかなり抑えている印象は受けます。

◆関連ブログ
長崎の黒い雨とABCC、保険医協会2012年12月09日
じわりと増え始めた奇形児(鎖肛、口蓋裂、多指・・)2013年08月08日

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posted by いんちょう at 21:35| Comment(13) | 原子力

2013年10月28日

onodekitaのブログ紹介(1)2011年3月+書評の紹介

 原子力関係のブログを2011年3月より書き始めて、エントリーが1000近くになりました。先月より1ヶ月のブログをまとめて紹介する形で講演を行いましたところ好評でしたので、311直後からのブログを解説してみようと思います。人を集めて講演をするのはちょっと大変ですので、Ustream中継のみとさせていただきます(自宅をスタジオに)。1時間で20の記事を紹介するとしますと、50回程度の分量となります。とりあえず始めてみますので、感想などお聞かせいただけますと幸いです。
 なお、Ustream上で質問も受け付けますので、随時ご質問ください(すべて答えられるとは限りませんが)無事終了しました。下記は、Youtube版です(Ustreamと同一です)


ブログの目次 
#1-#28(2013.3.13-3.31)の解説です。 また、「フクシマの真実と内部被曝」の書評を広島県在住の大木広也氏より送っていただきましたので、ご紹介させていただきます。明らかに褒めすぎですが、着眼点は鋭いです。ありがとうございました。


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posted by いんちょう at 15:08| Comment(1) | 原子力

2013年10月27日

「死の灰と戦う科学者」、米国核汚染、フクシマ本の推薦と紹介

死の灰と闘う科学者 (岩波新書) 三宅 泰雄 (著)

1972年9月20日 第1刷
2011年10月20日 第3刷
 ビキニ環礁で被曝した第五福竜丸の事件を中心に、死の灰とかつての日本の科学者たちがいかに真摯に向き合ってきたかが、描かれている。物語風でありながら、きちんとした学術的な内容も描かれており、放射能に対する知識がある程度ある人(被曝線量、ストロンチウム、セシウム)にとっては、目から鱗の内容がいくつもある。

当ブログの関連記事
群馬CTBT 亜鉛−65検出の意味
東大で分析されていたヒロシマ、ナガサキの死の灰

プルトニウムファイル いま明かされる放射能人体実験の全貌 アイリーン・ウェルサム (著), 渡辺 正 (翻訳)

 原爆製造のマンハッタン計画、そしてそれ以降の狂気じみた米国が行った核被爆実験の一部を暴いた告発本。現在の日本の置かれている状況は、冷戦期の米国民が置かれていた状況と重なる。核を持つと国家権力はここまで国民をないがしろにできるのかと呼んだ人全員が戦慄を覚えるであろう。フクシマだけを見ていても全体像は見えてこない。核大国米国が歴史上何をやってきたかを見れば、黒幕の本当の姿がおぼろげながら見えてくるはず。

−関連記事
アイリーン・ウェルサム(プルトニウムファイル著者)のインタビュー2012年10月29日

広島Today (1983年) [古書] W.バーチェット (著), 成田 良雄 (翻訳), 文 京洙 (翻訳) [絶版]
2013102701.jpg
 広島原爆投下一ヶ月後に自力で現地入りしたオーストラリアジャーナリストの手記。GHQの隠蔽工作により記事の大半は消されてしまったが、当時の状況が手に取るように伝わってくる。終戦直後の日本の状況も興味深く書かれており、GHQの目を盗んで広島に入る下りは手に汗を握る。書かれている内容は、米国が最も隠したかった残留放射能による内部被曝の被害が赤裸々に書かれている。図書館などで探して是非読んで欲しい。
−関連記事
ピカの毒−残留放射能−の真実(投下直後からプレスコードで隠蔽した米国と暴いたオーストラリア人記者)
2013年04月14日
あの大異変の中で負傷しなかった人びとが、原爆病としか表現しえない何ものかのために死んでいく-広島todayから2013年04月15日

蝿の帝国―軍医たちの黙示録 帚木 蓬生 (著)

 戦争の実態がいかなるものか。不衛生な現場、食べるものさえ事欠く軍隊、悲惨な日本軍の様子が軍医の目から赤裸々に描かれている。学校を卒業したばかりでほとんど何もできない医者の卵とも言える軍医が、戦争に否応もなく取り込まれていく様子がオムニバスに書かれている。1945年8月15日の玉音放送で戦争はすぐに終結したとばかり思っていた私にとっては、目から鱗が落ちるような内容であった。本当にきつかったのは終戦がきまってから、帰り着くまでと言っても良いほどだ。そして、日本軍の広大な戦域。中国東北部から、東南アジア、そしてトラック諸島の島々等々、物資の少ない中でよくもまあこのように手広く戦争を仕掛けたものだと呆れてしまう。第一話目は、広島原爆後の内部被曝被害についても良く書き込まれている。余談ではあるが、私の所に通院されている軍隊経験のある方が、「軍隊の経験もないのに、よくもまあこんなに緻密に調べ上げて書いたものだ」と感嘆しておられた。従軍慰安婦のことの出てくる第二部

も併せて読んでいただきたい。国家として戦争を行うことが国民にどういった影響を与えるのかが、良くわかるであろう。第1回日本医療小説大賞 受賞作品

ラゴン・テール――核の安全神話とアメリカの大衆文化 ロバート・A・ジェイコブズ (著), 高橋 博子 (監修), 新田 準 (翻訳)

 核実験がいかに安全なであるかを米国民にすり込んだプロパガンダの集大成。そこに書かれている言葉は、現在フクシマで流布されている言葉と寸分変わらない。50年前水爆戦争に怯えた米国民の姿は、フクシマに被害を受け続けている日本人の姿である。大衆がいかに騙しやすいか、ほぞをかむ思いがする。

死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日 門田 隆将 (著)

 汚染水漏れの不手際で東電は無能だという話ばかり出ているが、この本を読めば未曾有の原子力災害に対して、人間としてはできうる限りの対応を行ったことが伝わってくる。もし、おなじ事故が他電力−関電、中部、四国、九州、北海道などであれば、このような対応をとれなかったことは、直ちにわかる。原発構内でその時に何が起きたのかを知っていただきたいと強く思う。故郷を愛する人たちがいたからこそ、この程度で済んでいるとたちどころに理解できるだろう。
−関連記事
福島原発事故当初のドキュメント−現場運転員の取材から書き起こした本(必読)2012年12月06日

カウントダウン・メルトダウン 上・下 船橋 洋一 (著)

 この本は原発敷地以外で何が起きていたかを把握するのに最も適している。除染の基準を10万CPMとあり得ない高値まで引き上げさせた本当の犯人は誰か、誰の指示で避難基準が1ミリではなく20ミリとなったのか等々、知らなかった事実が明らかにされていり。下巻は、米国の動きについて緻密に取材。原子力空母が汚染海域から逃げ出した本当の理由、日米の協力体制は如何にして築かれていったか。誰かを悪者にするのではなく、事実がありのままに書かれている。情報が散乱して、訳がわからなくなってしまったときに全体のストーリーを組み立てる(おそらく、疑問だった細部がつながってくるはず)のに適している。ある程度の知識があって読めば、この本に書かれている内容に「そうだったのか!」と膝を打つ場面に何度も出くわすことだろう。

福島と原発―誘致から大震災への50年 [単行本]福島民報社編集局 (著)

この本は推薦いたしません。中は、福島県がどのようにして東電から、合法的にカネを引き出していったかの自慢話ばかり。そして、県庁役人の活躍?が自画自賛で書かれているだけ。3月12日午前7時30分には富岡町から逃げ出す車で大渋滞が引き起こされていた写真には、度肝を抜かれましたが。

原発ホワイトアウト 若杉 冽 (著)

キャリア官僚による、リアル告発ノベル! 『三本の矢』を超える問題作、現る!!
再稼働が着々と進む原発……しかし日本の原発には、国民が知らされていない致命的な欠陥があった!
この事実を知らせようと動き始めた著者に迫り来る、尾行、嫌がらせ、脅迫……包囲網をかいくぐって国民に原発の危険性を知らせるには、ノンフィクション・ノベルを書くしかなかった!

 などという大げさなコピーがあり、また 執筆者の犯人捜しが始まっているなどという噂まで飛び交っているが、中身は三文小説レベル。しかも、原発の被害を描いている顔をしながら、フクシマの放射能は怖れるレベルではないと言う悪質な文言がそれとなく、あちこちに出没。電力会社が政治家、司法にどれほど深く取り入っているかは、十分知られたことであり、私にとっては驚く内容は皆無。それよりも、原発反対派=反体制派 とも言った書きぶりに正直不快感のみ覚えた。韓国人が鉄塔に細工して、外部電源喪失、ディーゼル不稼働などというあり得ないストーリーでは、全く説得力なし。モーニングの「ふくいち」と同じような読後感であった。

−関連記事
モーニング掲載「いちえふ」−元原発技術者としての目から2013年10月22日

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モーニング掲載「いちえふ」−元原発技術者としての目から2013年10月22日

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posted by いんちょう at 17:50| Comment(2) | 日記

2013年10月26日

都築正男−第五福竜丸被爆者を見た医師の国会答弁

都築正男という戦前、戦後の放射線専門家がいます。
米軍占領下の原爆調査―原爆加害国になった日本 笹本 征男 (著) 新幹社
p.24
「都築正男は東京帝国大学医学部教授であると同時に、海軍軍医中将の肩書きも持っており、戦前、アメリカ留学した際、アメリカレントゲン学会でX線のウサギに対する全身照射実験の結果を発表して、アメリカにおいても注目されていた」

2013102601.jpgこの写真は1946年東京における会議の時のもので、前列左よりDr. Nakahara、Dr. Henshaw、Dr. Sasaki、Dr. Brues、後列左よりDr. Neel、村地博士、都築博士、Dr. HigashiそしてDr. Ulrichである。

ウサギに致死量のX線を浴びさせて、どのような変化が起こるのかを調べた実験です。都築正男、ウサギで検索をかけたところ、第019回国会 厚生委員会 第18号 昭和二十九年三月二十二日(月曜日)の議事録がヒットしました。これは、第五福竜丸のヒバクシャについての国会質問であり、一読しましたところ、今でも当てはまる内容ばかりでしたので、ご紹介することにします。旧単位を新単位に直したり、あるいは注を入れさせてもらっています。フクシマ事故後にこのような真摯な国会質問があったとはとても思えません。戦後66年を経て、国会議員の質の低下と科学者の質の低下は否めないことが良くお分かりでしょう。
○小島委員長 休憩前に引続き会議を再開いたします。
 この際都築博士に一言ごあいさつ申し上げます。博士には御多用中にもか変わらず、当委員会の希望を受入れられ御出席くださいましたことを厚くお礼申し上げます。
 それではこれよりビキニ環礁付近における爆発実験による日本漁船の被害事件についてお話を承りたいと思います。
○都築参考人 それでは御要求によりまして、先般三月一日でありましたか、南方で原子力の実験の結果発生したと思われます灰をこうむりました第五福竜丸の船員の被害状況について一言御説明を申し上げます。
 その状況を漁師の方に伺つたところによりますと、朝早く三時過ぎだそうでありますが、魚をとるべく網を入れておつたところが、はるか遠方に光が見えた。それから数分たちましてから鈍い爆音を聞いたそうでありますが、それから一、二時間たちましてから、ちようどさみだれが降るようにその辺が曇つて参りまして、そうして何か灰のようなものが落つこつて来た、こういう話でございます。その当時まぐろをとつておつたわけでありますが、大部分の人は別に大して気もつかなかつたが、一部の人はひよつとしたら何か原子爆弾に関係があるのではないだろうかということ百であつた。かつ船の油も残り少くなつたという状況で、とつた魚だけを積み込んで母港の焼津港に帰つて来たちようど十四日に帰り着きましたから、その百トンばかりの船に、二十三人の人間が二週間ばかり乗つて来たわけであります。
 それで帰つて参つてからの問題でありますが、その人たちが灰をかぶつて二日、三日たちますと、顔とか手とか、その当時外に出ておつたところが赤くはれまして、ひりひりむずがゆいような感じがして、続いて一部には水ぶくれみたいなものができました。これはたいへんなことだと言いながら、中には船に乗つていた人で気持が悪くなつてものを吐いたという人もあります。帰つて参りますころには、赤いところがやけどというか、海水浴に行つてやけたのの少し程度の強いような程度になつておりました。それで焼津に帰つてそこの共立病院の外科のお医者さんに見てもらつたところが、どうもこれは何か原子爆弾のようなものに関係があるから、東京に行つて都築医院に行つて見てもらつたらよかろう、こういうことを言われまして、そのうち顔と手が一番ひどくやられておる二人の方が東京に出て参りました。そうして私どもの大学にたずねて見えまして、それから事が始まつたことになつております。それが月曜日のことでありましたから十五日の夕方で、今からちようど一週間前であります。私は通知を受けまして翌日の火曜日の十六日にその患者を見ました。どうもこれはやはり放射能による障害でなければならぬ、同時に船の上に降つた灰を集めまして、一グラムばかり紙に包んでその漁師の方が持つておいでになりましたが、それを見ると非常に放射能が強いので、これは原子爆弾のようなものが爆発したときに、すなわち原子核の破壊という現象が起りました際に発生する原子核分裂生成物であるに違いない。それであればこれは容易ならぬことだというわけで調査を始めたわけであります。その調査は大体において二つの部門にわかれます。一つは医学部が主として担当いたしまして、医学的にその放射能を調べる。それから病人の模様をいろいろ調べること、今日まだ継続しておりますが、大体今朝までに大ざつぱながらその見当がついて参りました。第二の方面は理学部、主として化学の木村教授が主任になりまして、その船に落ちました灰を分析して、その中から成分を見つけ出すことであります。両方にわかれたものでありますから灰は〇・五グラムずつくらいになりました。その〇・五グラムずつの灰を分析いたしまして、今朝の十時まで大体その真相をつかむことができました。従つてもうどこからも知らしてもらわなくても、少くとも日本の第五福竜丸の上に落ちて来た灰の成分、並びにそれによつて起る障害の模様の筋道だけはわれわれの手によつて、日本医学の手によつて一週間の間に判明することができたということを、まず最初に申し上げておきたいと思います。
 これまでたびたび私新聞にも発表いたしましたが、これが月の世界からでも降つて来たものであれば、聞いてみる相手もないのでありますが、もし地球上にだれか知つている人があるならば、人道上知らしてもらうと都合がいいということを主張しておりましたが、今日以後はその主張をする必要がもうなくなつたということを、皆様のお耳に入れておきたいと思います。
 順が逆になりますが、まず第一にその灰の成分、これは東大の理学部の木村教授のもとでやられました。御承知のように木村教授はこういう放射性物質の分析化学におきましては世界的の権威であります。かつ、今からもう八年前になりますが、広島、長崎でそういう方面の研究をされました。ところが学会前の非常に忙しいときでありましたので、教室員が日夜奮闘いたしまして、今日までに大体その主成分を見つけ出すことができました。それからまず申し上げておきます。
 第五福竜丸に落ちました灰、これについて誤解が起るといけないと思いますので、一言あらかじめお断り申しておきますが、われわれがこれから申します成分は、第五福竜丸の上に落ちて来た灰に限り申しておるのでありまして、ほかのところに落ちた灰が、どんな成分であるかということはわれわれにはわからない。第五福竜丸に落ちました灰の主成分は、普通の化学の分析では炭酸カルシウムであります。大部分が炭酸カルシウムの化合物であります。これは想像いたしますると実験をした島がもし珊瑚礁であるとすれば、その珊瑚礁のかけらではないか、これは想像であります。この炭酸カルシウムに、さつき申しました原子核の分裂生成物が付着しておるというのであります。今までその付着しております原子核の分烈生成物で確かだとわかりましたもの、これは非常に重大問題でありますので一々申し上げますと、まず第一は放射性のジルコニウムであります。こういう放射性の原子核分烈生成物は、その放射能が時間とともに漸次減つて参ります。それはきまつております。この放射性のジルコニウムが放射能が半分になります、すなわち半減期と申しますが、半減期が六十五日であります。六十五日たちますとその放射能が半分になる、さらに六十五日たてば四分の一になるというようにだんだん減つて参りますが、永久にゼロにはならないのであります。第二には放射性の二オブ、これは半減期が三十五日のものと九十時間のものと二種類発見されております。それから放射性のテルルというものがあります。このテルルの半減期が七十七時間であります。それから放射性の沃素というものがあります。この沃素が二種類ありまして、半減期が二・四時間のものと、八日のものと二種類出ております。これで六つになります。なおそのほかにストロンチウムというものが出ております。ストロンチウムには二種類出ておりまして、これはわれわれの方から言うと非常に重要なもので、ストロンチウムの八十九番というものが一つと、ストロンチウムの九十番というものが一つと二種類出ております。(筆者注−この時代でさえも、ストロンチウムの検出に一週間しかかかっていないことに注意)ストロンチウムの八十九番と申しますのは、半減期が五十三日であります。それからストロンチウムの九十番と申しますのは半減期が二十五年であります。この二十五年にあとから非常に意味が出て参ります。その次にバリウムというのがあります。バリウムの半減期が十二・八日であります。それからもう一つランタンというものがあります。それは半減期が四十時間であります。それだけのものでありますから大体十になりますが、十の放射性物質が灰から見つけ出されておるのであります。それからこういう原子核分裂生成物として、多分そういうものもあるかもしれないという意味で調べてみましたけれども、発見されなかつたものが三つございます。これは亜鉛と銀であります。それは検出されないということになります。それからコバルト、例のコバルト爆弾とか騒いでおります、放射性のコバルトは検出されていないのであります。これはないという話であります。今日まで化学的にわかりましたものはそれであります。従つてこの成績から学問的に判断いたしますと、原子核の分裂が起つたのであろうということは、もう十分に確かに言うことができると思います。それぞれ重要でありますが、このうちで一番医学の立場から人間の被害という立場から申しまして、一番重要な問題はストロンチウムとバリウムであります。ことにストロンチウムの九十番というものは、人体の中へ入りました場合の新陳代謝が、カルシウムとまつたく同様に行われるものでありますので、好んで骨に沈着いたします。それから一旦人体の中に沈着いたしますとなかなか排出されにくいという点が、非常に特異のものであります。そのストロンチウム九十番の放射能の半減期が二十五年であるということが非常に重大な問題になります。たとい微量といえどもこういうものが人体の中に入りまして、骨の中に沈着した場合、その放射能が半分になるのに二十五年かかる。さらに二十五年たつて、五十年でやつと四分の一に減るという点、何とかしてこれを早く無害な状態にして、からだの外に取り出さなければならないというのが、われわれ被害者の治療に当つておる者に課せられた重大な問題だということになるわけであります。
 ところで今申しましたような成分を持つた灰でありますが、その灰をこうむつたら一体どうなるかということであります。これはよう話がわかつておれば、そういうものが降つて来たら急いで逃げるか、あるいは不幸にして逃げるひまがなくて、着物についたり何かしたら、着物を脱ぎ捨てる、すぐ何べんもふろに入つて一生懸命洗えばいい。何様百トンという小さな船にまぐろやさめ、そのほかにたくさんの魚を積んで、ほとんど人間の住むところのないような小さな木造船、それに二十三人という人が乗つて、かつそういうものに対する知識がほとんどない。これは無理もない。それが二週間の間、航海して港に帰つて来たというのでありますから、その間非常な害を受けて帰つて参りました。その船を専門家が調べまして驚いたことは、その船の放射能たるやたいへんなものであります。その調べも大体の材料をここへ持つて参りましたけれども、たとえば甲板の上のボートの置いてあるところなんかは、放射能の単位で申しましてミリレントゲン・パー・アワー、一時間にレントゲンの千分の一、その単位ではかりまして百十(1,100μSv/hr)、それから船員室が八十(800μSv/hr)というのであります。これがどの程度恐しいものであるかと申しますと、今国際間に放射線の学問の方で、放射能の障害というものが非常に問題になつているのでありますが、その障害を受けた際に、このくらいの程度であればよろしいという許容量というものがあります。インターナシヨナル・パーミツシブル・ドウヅというものがありまして、国際的に許される量がある。それは一週間に三百レントゲン(これだと3Sv/wとなりますから、おそらく300ミリレントゲン=3,000μSvの誤り)ということになつております。従つてもしかりにそこに住んでおるとすれば、それを一週間の時間で割ることになりますから、一時間が一・八ミリレントゲン(18μSv/hr)ということになります。そういう程度までは住んでもさしつかえないということになる。ところが今申し上げましたように、船員室にしてすでに八十(800μSv/hr)であります。一・八(18μSv/hr)というのがどうやらよろしいというのに対して八十(800μSv/hr)でありますから、もう非常な強さであります。ところがこれは二週間たつて帰つて来ての話で、この灰を医学部の放射能科で調べましたところが、大体現在一日に一〇%程度減つておる。ですから初めのうちはもつと早く減つたろうから、それを逆にもとして考えましても、もう初めの時期の放射能は相当に強いものであつたろうということが想像できるわけです。これは計算すれば出て来るわけですが、従つてそういう強い放射能のある狭い船の中に二十三人もの多くの船員が住まわれて、別に風呂もあるわけでもなく顔も洗われないという状態でありますから、着物に一ぱいそれが着いておる。それが狭い船員室の中にごちやごちやに住んでおる。とつたまぐろも食べたというのだから、手も汚れますし、灰もごみとして大分吸い込まれて、からだの中に入つているだろうという想像もつくわけです。これはたいへんなことだというので、東大に入院された方をいろいろ調査をいたしました。あまり詳しいことはあとで模様によつたらお話申し上げますが、初め驚いたことは、例のガイガーというごく簡単にはかるものを持つて行きますと、ガアツという音がするくらい鳴るのであります。からだの表面、頭の毛が一番強くて、それから顔、首、わきの下、それから手、陰部、足というふうな、着物を着ているところでは割合に洗いにくいところ、あかのたまりやすいところに一ぱいついておる。それで、中にも入つておるだろうというわけで、もし中に放射能が入りますと、ことに骨に入るということでありますと、骨の中にあります骨髄といいます血液をつくりますところが障害を起しまして、貧血その他が起りますので、いろいろ赤血球と白血球とかを調べてみました。初め参りましたときは、先週の月曜日から火曜日にかけて、そうひどい赤血球の減ということは認められなかつたのでありますが、これはたいへんなことだというのでさつそく治療を開始いたしました。治療方法としては、もう御承知のことと思いますが、こういうふうにできました放射能は、今の学問の治療では、酸をアルカリで中和するように、打消して毒を消すという方法は全然ないのです。ただ機械的にこれを洗い去る、あるいはからだの中に入つたのであれば、小便とか大便とか汗、呼吸の排気、そういうようなもので外へ出すよりほかに方法はない。もう一つは、ただだんだん放射能が自然に減つて行く時間を待つているよりしようがない。ところが先ほど申しましたように、短いのは二・四時間というのがありますが、そいうものであれば一日、二日たてばなくなつたように微量になりますが、六十日とか、七十日、あるいはストロンチウムの九〇のごとき二十五年で半分になるようなものは、大体五十年待つておつて四分の一になるのでありますから、時間を待つて、自然に減つて行くのを待つというようなことは、治療方法としては採用できないことになる。結局洗い去るか押し出すかするより方法はないということになる。それで頭の毛やからだの毛は全部かりとり、そりとり、そして石鹸のようなもので洗いまして、からだの外についているものを極力落すということをまず始めたのであります。たとえば一例を申しますと、一人の人の頭の毛に九・〇ミリレントゲン・パー・アワー(90uSv/hr)という放射能のありましたのを散髪いたしました直後は、二・〇ミリレントゲン・パー・アワー(20uSv/hr)になりました、九が二に減つたわけです。大部分は髪の毛についておるわけで、髪の毛をとりましたら二・〇に単位が下りましたので、その後三、四日一生懸命にいろんなもので洗いました後にはかりますと二・〇、あまり減つてない。つまりもう皮膚の毛穴とか汗の腺とかいうところにしみ込んでいるものは、なかなか取りにくいということがわかりました。けれども総体として、からだの外についております放射能性の物質は、そういうふうに機械的に洗うということになる。また洗うにも石鹸の種類とかいろいろな薬によつて落ち方が違いますので、それを研究いたしまして、いろいろ洗つております。非常に手数がかかるのでありますが、一生懸命にやつております。それによつて大体少いところが四分の一、多いところが十分の一ぐらいに減つております。たくさんあつたところは十分の一ぐらになり、少ししがなかつたごろも四分の一ぐらいに減つております。しかしこれを全部ゼロに取り去るということはむづかしいんじやないか。皮を全部むいてしまえばとにかく、少々のあかすりぐらいでは取れないという状態にこびりついております。今から言えば非常に残念なことでありますが、そのビキニの付近で灰をかぶつた瞬間に、そこに東京大学がありまして、そしてわれわれが一生懸命に洗つていればこんな問題にはならなかつたのでありますが、不幸にして二週間の間東京大学がそれを知らなかつたということは非常に残念なことであります。今後こういうことになつたら、すぐに東京大学へおいでになれば、洗つて差上げるということも言えるのであります。それは一例でありますが、今度はからだの中に入つたものをどうするかという問題でありまして、これは一方において医学部で動物実験を現在行つております。その第五福竜丸へ落ちました灰をねずみに食わして、それから注射してみる。そうするとその放射能性の毒物がねずみのからだのどういうところに分布してどういうぐあいになるのだろうという検査であります。これは治療上非常に必要なことであります。その見当がつきますと、そのデータの上に人間の治療を進める。それを今日までわかつたことを申しますと、ねずみに食べさせますと、食べものの大部分は胃から、腸から便になつて素通りするようであります。それはまず一安心といえますが、その一部分が吸収されます。胃あるいは腸から吸収される。そして肝臓に入る、そして腎臓に行つて一部分は尿に出ます。それから一部分は腸にまた参りまして大腸から便の中に出ます。ところが驚くべきことには、一部分吸収されたうちの大部分が骨の中に入る。骨に入つたものが今後一週間、二週間とどういう状態で骨の中に残つておるかということは、まだ一週間たつたばかりですから、時間が足りなくてまだわれわれには言い得ない。今後ずつとそれを続けて行きたい。そのためには灰が足りない。もう少しその灰がどこかにあつたらくれないかという希望も起る。で、第五福竜丸をごらんになつた方もあるかもしれぬが、もう灰はない。船にしみ込んでいる。船を削つてそれをねずみに食べさせるかということになるのですが、どこかに灰を持つている人がありましたら御提供を願いたい。ところで、注射いたしますと大部分は骨に入つてしまう、それから肝臓腎臓に入る。それから出るのは腸に出て来ます。腸の中に出て来るということは、治療の上において非常に明るい見通しの一つでありまして、腸の中に少量ずつでも出て来れば、それを便としてからだの外へ排出することが可能であるという見通しがついて参りまして、今後極力そういう方面の治療を進めたい。
 一方白血球の問題でありますが、入院された当時は六千あるいは七千くらいで、ほとんど普通の人の数でありましたのが、だんだんに減つて参りまして、きのう、きようあたりは四千台を前後しており、半分くらいに減つております
  〔委員長退席、青柳委員長代理着席〕
焼津の人のうちで一人、きのう二千九百幾らという数字が出たそうでありますが、二千以下になりますと、生命の危険ということを考えなければならないことになります。
 それから骨に入りますから、骨髄を障害するわけであります。人間で骨髄の検査がやられておりますが、それは骨に針をさして、骨髄の一部を吸い出しまして一いろいろな細胞の検査をするのですが、骨髄を正確に検査しましたのが、今日まで六例でありますが、六例とも骨髄の細胞が減つております。骨髄の細胞と申しますのは、一立方ミリメートルの中に骨髄細胞というものは大体二十万程度あるのが普通でありますけれども、その数が約半分に現在減つておる。骨髄細胞が減つておるということは、非常に重大な問題であります。ことに骨髄の中に巨大細胞というものがありまして、それは血小板というのをつくるんです。血液の中の血液の凝固とかいうものをつかさどつている血小板というものをつくるとされております巨大細胞というものが非常に少くなつておる。一方血液の検査で、血小板というものは、普通一立方ミリメートルの中に二十万くらいあるのでありますが、それが十万くらいに減つておる人がある。これが五万くらいにまで減つて来ると、出血症状が起つて来るのですが、まだ出血症状が起るまでに血小板は減る時期が来ていない。今ちようど被害後三週間であります。今後もう一週間後の四週間か五週間くらいのときが、非常に重大な時期じやないかと私は考えております。こういうふうに血液に相当の変化が起つて来ておりますので、この際治療上万全の手を打たなければならぬ、こういうことであります。
 もう一つ誤解を防ぐために申しますが、広島、長崎の場合は、原子爆弾が爆発した瞬間に出ました非常に強い熱と爆風と放射能と、三つの作用によつて数万、数十万という人が障害を受けた。ところがその原子爆弾が爆発してできた粉は、幸いなことには広島、長崎の町には落ちて来なかつた。非常に高いところへ吹き抜けてしまつて、ほんの一部しか落ちてこなかつた。そのために特別な障害を受けたという人はなかつたけれども、今度の場合は非常に遠方でありますから、何が爆発したのだか知りませんが、爆発した瞬間に出た強い熱と爆風というものは、第五福商丸はちつとも影響を受けていないわけです。ただどういうわけでありますか、爆弾のかけらといいますか、灰が落ちて来たということで、こういう状態になつたのであります。従つてわれわれの仲間で相談いたしまして、今度の漁師たちの損害の病名は、決して原子爆弾症と言つてはいけない、急性の放射能症と言うべきであろうというふうに、ひとまず決定いたしました。
 大体のところそういうことでございますが、なおそれにつきまして、ほかにも少しデータを持つておりますので、お尋ねになる点がございましたならば、後ほど御説明を申し上げたいと思います。
○青柳委員長代理 次に委員から都築さんに発言を求められておりますので、これを許します。岡良一君。
○岡委員 先生もお急ぎでありますので、要点だけお尋ねをいたしたいと思います。私どもアメリカの新聞で伝えられるところによりますと、最近アメリカでは、トリチウムとかリチウムが核分裂の実験段階に来ておるということを聞いておりますが、木村教室の御研究の結果としては、トリチウムやリチウムのようなものはなかつたかどうか。
○都築参考人 私、化学の専門家でないのですが、木村教授に伺つたところでは、リチウムはまだ検出されていない、今検索中であるそうであります。それから重水素とか三重水素、そういうものは、うまく爆発してしまうと、そこでなくなつてしまうものですから、福竜丸の上の灰からは検出し得ないのじやないかと思います。
 もう一つは、いずれ水素爆弾にしても、原子爆弾を火つけに使うのでしようから、ウラニウムかプルトニウムかということを検索中であります。まだ確かにプルトニウムをつかまえる点にもウラニウムをつかまえる点にも行つていない。ただ確かになつたことは、コバルトがないということであります。
○岡委員 次に、たしかこれも先生の御著書で私ども学んでいると思いますが、広島や長崎の体験によりますと、あの放射線が人体を照射した場合に、中性子によつて体内の燐あるいはクローム、ナトリウム等がみずから活性を帯びて放射能を出すことになり、これがあるいは呼吸器その他の組織細胞の病弱なるものに対する附帯的な影響を慢性的に起して来る、こういうことが第二次の放射能症として、しかも非常に誘導的な作用をしておるということを聞いておるのでありますが、現在の患者については、そういう点は先生の見られたところではどうでしようか。
○都築参考人 お答えいたしますが、それはいわゆる誘導放射能というやつですね。誘導放射能があるかないかということが非常に問題で、先ほど申しましたように、私たち初め灰の主成分が炭酸カルシウムであるということを聞きましたときに、これはたいへんなことだと実は思つた。というのは、その炭酸カルシウムが、かりにさつき想像論として申し上げましたように、島の爆発のかけらであるものとすれば、今お尋ねにありましたように、爆発のときに中性子はどうせ出ていますから、中性子が島に当つて、島のカルシウムを活性にして、誘導放射能を帯びさせて、それが灰として飛んで来た場合にはたいへんであるなと考えました。中性子は第五福竜丸の上には、そういう活性を帯びる程度には及んでいないと思いますから、それはいいとして、島は爆発点から近くて、百五十フイートでございますから、島へは中性子がうんと当つておると思う。そのカルシウムが飛んで来て、カルシウムが誘導放射能を帯びて活性になりますと、その半減期が百八十日くらい、約半年かかります。さつきのストロンチウムの二十五年に次いで恐ろしいものである。だから灰の炭酸カルシウムは活性を帯びていない。放射能を持つていないのです。それは今回の場合は、いわゆる誘導放射能、中性子による活性化、すなわちでき上つた名前としては誘導放射能による障害というものはまずないもの、大体こういう方針のもとに今やつております。
○岡委員 昨日も静岡大学の鹽川博士の御意見、御研究の結果を聞きますと、福竜丸の甲板上にあるたとえば錨だとか、また錨のための鎖だとか、そういうものをレントゲンではかつてみて、いわばアイソトープ化しておらないというところから見ても、中性子による実害というものは、あの乗組員に関する限りはないのではないかというお話でありましたが、それといたしましても、しかしたとえばビキニの環礁において、現に原子爆発、核分烈の実験が行われるなれば、中性子はやはり海面に何らかの作用を及ぼすものではないかと想像できるわけでありますが、その点についてたとえば海水の中に放射能を帯びた灰なるものが浮遊した場合、これがどういう影響を与えるものでしようか。
○都築参考人 これも専門外のお尋ねで、私も責任を持つては申し上げかねますが、実はこのごろ毎日大学で食堂会――食堂へ各学部の者が集まりまして、私の来るのを待つておりまして、きようも実はそれをやつてここへ参つたのでありますが、いろんな専門家が参りましてそれを聞いてみますと、今の放射性を帯びましたものが、灰かごみか知りませんが、海の中へ落ちる。そうするとたとえば黒潮のようなものでありますと、ある一定の幅と深さをもつてまわつておりますから、黒潮で洗われるところは全部放射性の灰で洗われるという可能性は十分あるだろうと思います。その分量は海のことでありますから非常に微量にはなりましようが、無影響というように断定するわけには行かないのだろうと思います。
 それから私どもも魚が放射能を受けたら一体どうなるかということをまだあまり研究したのがない。少し手遅れでありますが、これから研究しなければならない。ことに日本としては重大問題であります。想像論としてはいろいろあります。たとえば、その想像論の一部を申し上げますと、近くにいる魚は爆発のために死にます。これは広島でも、たとえばあそこの淺野さんの泉亭の魚が白くなつて浮いておつた。それをほかに食うものがないから、しかたがない、食べた。あとになつてやれやれということでみんな心配したという話があります。それは死んだ魚はさしつかえない、日本まで流れ着くことはないだろう。ところでたえずそういうことが行われるということになりますと、われわれの一番心配することは、魚の繁殖力ということに何か影響しやしないかという問題であります。これはするしないかわかりません。学問的にはわからないけれども、かりに影響するとすれば、これは日本民族として非常に重大な問題であつて、日本の民族の主として蛋白源としての食糧は、魚に依存している国でありますから、その魚が減つたということになりますれば、筋を引いて制限される以上に、筋なんか撤廃されても、魚がいなくなつたということになれば、一体日本はどうすべきかということが、水産方面では今後の大問題になるのではないか。これはまつたく想像論であります。できればそういう方面の研究を、今後別途の専門家によつて行わなければならぬものであるというふうに考えております。
○岡委員 私も実はその点で、何と申しましても蛋白といえば魚類に依存しておるわれわれのことですから一そういういわば放射能を強く帯びた灰なるものが、水に溶けないという話でありますから、日本近海に回遊して来る浅海魚がこれをやはり持つて来る。いわば飲んで体内に持つておるというような心配も考えられるし、あるいは中性子によつて活性を帯び、従つて放射能を帯びておる海水の諸種の元素が放射能を帯びているもの、そういうものが日本の近海に流れて来るということも考えられる。こういうことが常識上十分可能なことではないかと思うのであります。その点先生のお考えはどうでしようか。
○都築参考人 それはもう私どもも同様な考えでございます。
○岡委員 先生の取扱つておられる患者についてでございますが、かりに中性子による第二次の誘導性放射線症というような病状は考えられない、杞憂にすぎないといたしましても、先ほどの説明のストロンチウムなどが骨に付着し、沈着いたしまして、そして骨髄細胞組織と破壊する、こういう病状が今出ておるわけであります。これがその被害を防止し得て、そのために今全力を上げておられるようでありますが、広島や長崎などの御経験から見て、一体これならば大丈夫であるという予後の明るい判定をなし得るには、なおどの程度の患者の観察を怠らずやらなければならないのか、その点承りたいと思います。
  〔青柳委員長代理退席、委員長着席〕
○都築参考人 お答えいたします。これは非常にむづかしい問題でございますが、むづかしいといつておつたんでは事が進歩しないのでありますから、現在のわれわれの考えではひとまず大体の見当をつけるのに必要な日数が二箇月、二箇月たつたら大体の見当がつくだろう。それからこれで大丈夫というのは数年を要するだろうと思います。それが五年でありますか、十年でありますか、二十五年であります、私は存じませんが、少くともストロンチウムの半減期の二十五年くらいまでは、観察を必要とするのではないかというふうに考えます。
○岡委員 その場合やはり単なる従来の医学をもつてしては、診断についても治療についても、きわめて困難な状態もありまするし、また同時てその治療を進めて行くためにも、いろいろと検査をしなければならないところの領域が、従来の医学的方法以外に、いろいろとやはり原子物理学方面のエキスパートの諸君の知恵も借り、また直接その研究室にも依存をするというような形で、この予後の判定あるいは診療を進めて行く上においてはそういうことが必要になろうと思いますが、これについては、先生の御意見といたしましては、やはり二十三名の漁夫はどこかでそういう施設を持つて、総合的にその身体の状況の変化に即応し、またそれに先行して手当を行い得る、こういうような取扱いをいたさねばなるまいと考えられますが、その点について先生のお考えはいかがでしようか。
○都築参考人 お答えいたします。今のお考えは非常にごもつともで、私が数日来考えておりましたこととまつたく同様なお考えかと思います。と申しますのは、広島、長崎の場合でも、私がかりに慢性原子爆弾症と名付けたらよかろうということを先般提唱いたしました状態がありまして、それを長く日本医学の手で、医学と申しましても、今おつしやつたように広い意味の医学であります。そういう意味で絶えず看視して必要な保護を与えなければならぬということを考えておるのでありますが、かつて広島及び長崎の事件がありましたときに、文部省の研究機関としてできました被害対策特別委員会というものは、その制度の上から三年で打切ることになりました。その後どうしてもこれは続けなければいけないというわけで、いろいろ奔走いたしましたが、永久的の施設がなかなかつくつてもらえませんので、とりあえず文部省の持つております総合研究費の一部をさいていだだきまして、二十七年度から新しく原子爆弾の後遺症の研究を主にする研究班ができております。一方厚生省所管の予防衛生研究所の中にも、同じような意味の協議会ができまして、私両方とも委員をしております。厚生省の予防衛生研究所の方のは、正確に申しますと、原子爆弾症調査研究協議会というのであります。それは二十八年度には予算を百万円いただいております。百万円で何をするのかといつて私は笑つたのでありますが、とにかく百万円いただきました。二十九年度はそれが幾らになるかは私存じません。一方文部省の総合研究費の中からわけていただきましたわれわれが奔走しておりますものの正確な名前は、原子爆弾災害調査研究班と申しますが、この原子爆弾災害調査研究班は、私の先生の鹽田廣重先生を委員長として、中泉教授と私が女房役になりまして、全国の大学から約三十名ばかりの委員に出ていただいてやつておりますが、それが二十八年度にもらいました金が百四十万、二十九年度にもらいました金が約百八十万くらいでございますが、それで細々やつておつたのであります。かねて私と中泉教授がこの問題を重要視いたしまして――ことに最近各方面で、原子力の平和的応用という問題が非常に論議されております。原子力が平和的に応用されて石炭よりも単価が安くつくから云々、すぐにも飛びつきたいようなことを、皆さん非常におつしやいます。従つてその研究をしろということをおつしやいますが、その声を聞くたびに、私たちははだえに寒けがするような恐ろしさを感じておる。原子力を発生させるためには、どうしても同時に放射能が発生いたします。従つてそれを平和的に応用するためには、安全装置、防禦装置というものを考えなければならぬ。これが非常にむづかしいことであります。たとえば米国におきましてもこの問題は非常に関心を持たれまして、できるだけ安全装置をして放射能の障害を防いで、原子力をできるなら平和的に使おう、こういうわけでありますが、ここに持つて参りました本は、このごろ私いつでもカバンの中に入れて見ておるわけでありますが、アメリカの原子力の研究所のある機関で、日にちは書いてないのですが、かつてあるアクシデントが起つた。そのために十名の人が非常に強い放射能にさらされた。そのアクシデントはどういうことであるかということは書いてございませんが、あとの記事から想像いたしますと、安全装置に手抜かりがあつた。これは人間がつくる安全装置でありますから、どこにどんな手抜かりがあるかもしれないということは考えておかなければならぬ。アメリカの中でも十人の人がやられる。これはもうビキニの漁師の場合と違いまして、二週間もほうつておかないで、その放射能の強さもわかつておりますし、性質もわかつておりますし、安全装置の不完全さもわかつておりますから、障害の程度はちやんとわかる。即刻アメリカの医学の精鋭を尽して治療したにもかかわらず、十人のうち二人の犠牲者を出しております。その写真がいろいろ出ておりますが、やけど――やけどと言つても火でない、放射能のやけどでありますが、この軽いのが今度の漁師に起つております。平和的応用ということを考えた際、そういうことが起りますので、その点だけから考えてみましても、放射能によつて生物がいかに障害を受けるかという研究をする。できれば国家的の、非常に大規模な各方面の学問の総力を集め――学問というよりもいろいろな社会的の関係の方も集まつていただいて、これは非常に熱心に即刻始めなければならぬ非常に重大問題だと思う。最近の福竜丸の事件のようなものが今後引続いて起る、あるいは先ほど御心配なされましたように、海の水がよごされてその水そのものから来る日本の害、それが今度は一旦魚に及んで魚がいろいろ障害を受けるということの害、いろいろのことを考えてみますと、日本としては原子力をつくるということも、いろいろな意味において必要でございましようが、どこでだれがつくるか知りませんから、それから人命を守る、原子力の障害、言いかえれば放射能の障害から人命を守るということが、人類という大きな立場に立つてみて、非常に必要な問題ではないか、私は毎日それをつくづく考えておるのでありまして、今の御質問とまつたく私は同意見でありまして、これはできるならば何らかの方法で、至急に日本国が全力をあげて研究しなければならない問題である。アメリカもやつております。イギリスもやつておる。ソ連もやつておる。やつていないのは日本だけであります。われわれは細々やつてはおりますけれども、そのやつておる程度たるや非常に少いものでありますので、これを非常に強力にしてぜひやられなけばならぬ。地球上で今後そういう原子力の発生というものが、戦力として用いられるのはもちろんのこと、その戦力の準備実験にさえこういう問題が起る。ことにそれが日常平和的に応用されるということになれば、必ずその際に放射能が出るのでありますから、その放射能による障害を、急性障害はもちろんのこと、ことに、慢性障害を調べてそれを予防し、不幸にして起つた場合にはいかにして治療するかということを、本腰になつて研究しなければならぬ必要が、この際われわれの身近にしみじみと迫つておるのではないかということを、日夜非常に考えておりますので、今の御質問には私は双手をあげて賛成するというふうにまで申し上げたいと思います。
○岡委員 そうしますと、現在の福竜丸乗組員の被爆者については、関係学界の代表をもつて構成されたいわば総合的な診療集団のようなものができまして、これがこれらの被爆者がもはや大丈夫であるという見通しのつくまでは、あらゆる努力を傾けてその診療検索に当る、そしてまたこの総合的な診療集団、学界の代表をもつて構成された権威あるこの集団は、自己の診療ないし検索の結果については、やはり常に世界の学界にもこれを報告する。これらの必要のための一つの手段として、現在の被爆者はこれを診療の場所に一括集中させる、これらに伴う財政的な負担等については、この際政府は思い切つて政府の責任においてこれをやる、こういうような構想でこの問題の解決をするということが、当面の一つの大きなポイントではないか、このように思うのでありますが、先生のお気持はやはりそのように理解してよろのゆうございますか。
○都築参考人 もうまつたくその通りであると思いますが、先ほどそのことについてあまり詳しく申し上げませんでしたが、五年、十年という長い間、そういう人を一箇所に集めてとじ込めておくということは、またその人方のいろいろのお気持を考えまして非常に何でありますが、一箇月、二箇月様子を見ました上で、大して心配ないという方は帰つていただいて、よければまたもう一ぺんまぐろ船に乗つてお魚をとりに行かれることも、一向さしつかえないと思います。ときどき絶えず健康診断をしてやる。ところがその健康診断が、私が最近広島でも申しましたのですが、広島の場合の例の先ほど申しました慢性の原子爆弾症というのでも、今の普通のならしの日本の医学の知識では――と申しますよりは、世界の医学のならしの知識であつてはと、私は申したいのですが、不十分なんです。そこでこの方面について、特にこの治療は先ほどお話しましたように、狭い意味の医学だけではどうにもなりませんから、総合的の研究機関を常置さしていただいて、そういう人が一箇月目に漁から帰つて来れば、帰つて来るごとに検査をして、今度は行つてもよろしいとか、今度はやめなさいとかいうふうなことを、始終注意してあげる相談所ができるというような意味で、先ほどおつしやいましたような精神が実現されるということに実際はなるのだろうと思いますが、簡単に言えば今後長い間絶えず観察をする必要があるという根本のお考えに対しては、私もまつたく賛成をいたします。
○岡委員 先生は広島、長崎以来、世界での原子爆弾症の権威と、われわれは尊敬をしておるのでありますが、先生の目から見られて、原子兵器はつくらぬとしても、少くともわが国における原子核分裂に基く身体障害等に関する治療を中心とする科学的な態勢は、世界に十分に誇り得るものである、日本のこの方面における発展は十分に世界のレベルを越えておる。少くともこれに劣るものではない、こうお考えになつておられましようか。
○都築参考人 それはちよつと私の口から申し上げにくいことでありますが、正直なところ私はそう思わない。というのは、正直なところどこの国でもゼロなんです。日本もゼロで、私はアメリカもゼロと言いたい。何だかんだ言いますけれども、結局結論はゼロです。ですから、どこもゼロなんだから、もし日本が〇・〇〇〇一だけでもプラスであれば、世界一になる。実は日本は零が幾つついた一か知りませんが、何がしか持つております。という点では数学的に比較すれば、いくらか多いかもしれませんか、私どもの力が世界一だというようなそんな慢心は決して持つておりません。世界で一番下だと思つて努力しなければならぬと思います。乏しい研究所で、日本ではそういう方面でフル・タイムで働かしている人間は一人もいない。私自身にしても、一開業医でありまして、この一週間来自分の病院はほつたらかしで、副院長にまかせつきりでかけずりまわつている。東大の教授にしても、学生に教えるのが本職であつて、そのかたわら自分の学問的興味でもつてやつている。でありますから、日本にはそうたくさんの人はいりませんけれども、五十人でも百人でも三百人でもいいんですが、できれば安心してその研究に没頭し得るような学者をつくるという制度が必要であつて、そういうものができて何年かたてば、さつきの〇・〇〇〇一が〇・〇一ぐらいになるかもしれぬ、こういうふうにも思つておりますが、現在のところ日本ではこれだけの設備でこれだけやつておりますと言つて、世界に誇り得るものは何ものもないのであります。この間も日米合同のシンポジウムがありましたとき、最後に鹽田先生があいさつされたのを、私は翻訳いたしました。先生はアメリカの広島に来ている者はフルタイムで働いているが、日本は本務のほかにちよいちよいとやる調査の金を見たつて、一人にわけますと、一番多くて十万円ぐらい、少いのは年に四万円ぐらいしかありません。年間百八十万円ですから……。それでたびたび東京に出て来いというけれども、一度出て来たら研究費の半分ぐらいはなくなつてしまう。そういうことでやつているにかかわらず、合同のシンポジウムでとにかく対等にやつたんだから、日本は偉いのじやないかということを言外に含めてあいさつされました。それを私が翻訳させられたときに、日本の人はノンプロだと言つたのです。アメリカはプロフエツシヨナルだ。日本はアマチユアじやないがノンプロである。プロとノンプロが相撲をとつて、どうにかどつこいというところまで行つたことは、日本のひそんだ学力にあるプラスがあるんだろう。ゼロではなく、そこにプラスがあるんだろうということは、ひそかに考えておりますが、これは私の口からあまり大きくは申し上げられません。
○岡委員 アメリカが今度また核分裂の実験をやるという。大体同じ場所でやるのじやないかと思いますが、立入り禁止区域を六倍ほどに広めました。先生は今度福童丸の漁夫については航海日誌、またからだの模様その他のことを、東大としていろいろ御研究になつたわけですが、六倍ぐらいに禁止区域を広めてみて、はたしてそれによつて今後の同様な核分裂に基く犠牲を避け得るものであろうというお見通しですか。今度やつたのは塔の上でやつたそうですが、この次はいよいよ飛行機で運んで上空でやるということをアメリカも言つているようであります。そういうこともあわせて、六倍ぐらいに立入り禁止区域を広めて被爆を防げるかどうか。伺うのが無理であるかもしれませんが、先生のお見通しはどうでしようか。
○都築参考人 お問いになる方から無理な問いてあろうということでありますから、私も非常に気が楽であります。今度アメリカが何か四百五十マイル、地図で見るとウエーキ島にくつついているところまで行つているようでありますから、アメリカへおいでになるときにウエーキ島に近づくときには、ひとつ御用心なさるように。石けんと水くらいは御用意になる方がよいでしよう。もし必要ならば洗う有効な薬が出て参りましたから、差上げてもいい。これはまあじようだんですが、今度飛行機でやるというと、理論的に爆発の及ぶ範囲は計算できましようけれども、自然に風で流れて来る。あの辺は下は東京から西、上は西から東へ向つて風が吹くのが昔からのきまりでありますが、風が吹いて来るというのに対して、風はおれは知らぬぞ、こう言われたら日本ではどうするかという問題であります。それはウエーキ島まで広げようが、小笠原まで広げようが、東京まで広げようが、北海道まで広げようが、風によつてはどこまでも来るんじやないかと私は思います。それは来るかもしれぬと思つて覚悟している方がいいんじやないか。もしアメリカがどうしてもやるとすれば……。私はそう思います。従つて全部灰をかぶるかもしぬ。現に京都大学の放射能はふえます。これは公にしてはいけないことかもしれませんが、アメリカのネバダで原子核の分裂が行われまして、四日後にニユーヨークの自然放射能が四%ふえた。従つてシベリアのある地点で原子核の分裂が起れば、日本の自然放射能が一〇%程度ふえるはずだということで、今調べているある国の人があります。その成績はまだ聞きませんが、かつてジヤワの有名な火山が――名前は忘れましたが、千八百八十何年島が半分飛んでしまつたような爆発をしたとき、火山の灰が地球の成層圏を飛びまわりまして、何日かの間夕焼けが非常にきれいであつたという歴史的な記載があります。従つてこのごろ私どもよく夜になるとながめてみるのですが、あまり天気がよいので夕焼けも見ないですが、模様によつては今後夕焼けによつてしろうと的に判断できるかと思います。従つて学問を離れて私一個人としての感じから言えば、今後そういうものがあれば、アメリカがそれをいくら四百五十マイルにしようが九百マイルにしようが、風の向きによつてはどこへどんなものが飛んで来るかもわからない。従つて物理学者に頼んでおいて、ある程度の放射能が来たということになればどうするかということも、場合によつては医学的に検討してみなければならぬということは、ときどき考えもいたしますが、何さま今は二十三人の人で二十四時間ぶつ通しでかけずりまわつておりますので、将来の灰をかぶることについての方策まで考えるいとまがありません。最近ジユネーヴへ参りますから、ジユネーヴへ行けば新聞記者はあまり来ないと思いますので、ゆつくり灰をかぶることを考えたいとも考えております。これは重大な問題であつて、遠いからよかろう、立入り禁止区域を拡大すればよかろうということは、私も御同様に言えないじやないかと思つております。
○小島委員長 柳田君。
○柳田委員 都築先生にお尋ねしたいのは、放射物質の内容が明かにならなくても、アメリカの方から治療法を十分に心得たお医者さんが来るんだから、それによつて適当な治療ができることになると思う、こういう意見も今一部にあるのですが、先生の新聞発表等を読みましても、最初にはいかなる核分裂をしたか、その正体を知るのが先決問題であると言われている。ただいま承りますと、それは月の世界ではなし、地球の上のどこか知つてる人間から教えていただかなくても十分やれるというお話でありますから、われわれもやや安堵したのでありますが、それはとにかく、最初に私の申しましたようにそれに対して十分に治療ができるであろう、こういう見解に対してはどうお考えでありますか。
○都築参考人 それは新聞にもちよつと出ておつたのでありますが、私をして言わしめたら、地球の上にどこにこの病体を十分に治療し得る熟練な医者がいるか。いるなら来てもらつたら非常にけつこうです。きよう一時四十分という電報をよこしましたけれども、さつき新聞社の話では今晩十時ごろになるそうでありますが、アメリカからミスター・アイゼンバツドという人が来る。これはアメリカの原子力委員会のヘルス・セイフテイ・アンド・デイヴイジヨン――健康管理並びに保護部門といいますか、それが参りまして、その原子力委員会の生物医学部門の長をしておりますバージヤという人が――私は個人的にも知つておりますので、きのう電報をよこしまして、今度は非常にお気の毒であつた、けれどもお前が一生懸命やつてくれておるので、こちらは非常に感謝している。ついては何らかのお役に立つと思つて、今アイセンバツドという人を至急飛行機でやるから、何なりとも用事があるなら言つてくれ、こういう話でありますので、アイゼンバツドはそういう方面の第一人者でありますから、来たら何か名案があるか聞いてみたいと思つております。
 率直に申しまして、世界中にそういう人は一人もいないだろう、われわれもできるならそういう人間の端くれの一人になりたいと思つて、今勉強しておるところであります
○柳田委員 私は実はこの前の厚生委員会において、この問題を質問したのであります。そこで広島、長崎の災禍に次いで三たび、宿命と申しますか、日本人がこういう災禍をこうむつた、従つてこの恐るべき原子力兵器に対するところの災禍の本体、あるいはこれによつて起るところの人体がこうむる被害に対するところの病理、あるいはそれの治療法というようなものは、日本人として、私はむしろ世界中のいかなる国の人々に対しても率直にこちらから公表し、さらにまた世界中のいかなる人々の協力も得、そこには崇高なる人類愛並びに人道上の問題から、政治的な要素などあるべきではない、かように私は考えておるわけでありますが、これに対しまして都築先生はどういうふうにお考えになりますか。
○都築参考人 私もその御意見にはまつたく賛成であります。さつき申しましたのは、つまり灰の成分は知らしてやらなくても、治療に堪能な医者を送つて、十分な治療をしてやればよかろう、言いかえれば受身の立場に立つてみれば、灰の成分は知らしていただけなくても、治療に堪能なお医者さんが来てくださつて十分に治療をしていただけば満足ではないかという考え方に対して、私は反対でもございませんが、異議を申し立てたい、こういうわけであります。
 むろん今も申されましたように、これは世界人類のためだから、世界中の科学者が集まつて協力してやろうということは、それは当然なことで、私どもは非常に賛成であります。でありますからそれ以来――それ以来と申しますのは広島、長崎以来のことでありますが、私は放射能の問題を――実はアメリカととつくんだのは大正十五年なのです。大正十五年にデトロイトのレントゲン学会で、私はうさぎにレントゲン線を三時間続けてかけると、うさぎがこういうふうになつて死ぬぞという実験の結果を持つて行つて報告した。そうするとそのときに、そんなことを実験するのは医者でないと言つて、非常に非難をされた。そんな動物に初めからしまいまでレントゲン線をかけるということは、われわれもふだんやらぬことだから、やらぬことをやつてどうする。第二には死ぬまでレントゲン線をかけるなどということは、そんな無鉄砲なことがあるか。学問的には非常におもしろいけれども、お前の言うことは、実際には適用できないことだという非難があつた。それからアメリカととつくんでおるのです。それで二十年たつて、昭和二十年にアメリカの調査団が来ましたから、私はその研究報告を持つて来て、これが二十年前にやつたわれわれの動物実験であつて、今度お前たちは、広島、長崎でヒユーマン・エキスペリメントをやつたじやないか。そういうことから私は今日までこの問題について、悪い言葉ですが、どろ田に足をふみ込んだようなかつこうになつてしまつて、アメリカから何べんか、しかられたりなんかしましてやつたのですけれども、とにかく人類の将来のために、これは結局私が死ぬまでやらなければいけないじやないかというふうに考えますので、けんかしてしかられながらも私はこの問題をやつていることは、全人類のためであるというのでありますから、この問題はアメリカからでも、イギリスからでも、ロシヤからでも来ていただいて研究していただきたい。けれども日本医学の立場ということから申しますと、古い言葉でありますが、やはりわれわれは祖国というものを、どうしても忘れることができないものでありますから、今度の二十三人の船員たちの治療は、できるならどこまでも日本医学が指導権を持ちたいという希望は十分あります。手伝つてもらうことは非常にけつこうですけれども、全部向うにまかしてしまうということは、日本に医学がなければともかく、相当のプラスがあるとすれば、どうしても日本が主になつてやりたい。そこでこれは大きな問題でありますから、どこからでもお手伝いに来ていただけるならば喜んで手伝つていただいて、全人類のためにりつぱな調査をしとげてもし不幸にして次の事件が起つたような場合には、万全の策を講じたいというのが私の衷心の考えであります。
○柳田委員 ただいままことに御謙遜な御発言がありましたが、その問題についてできるならばという一つの前置詞がありましたけれども、私はできるできぬは問わず、これは筋道としてあくまでも日本医学が主体となつて、しかもそれに対して今先生のお話のように、全世界の、全地球上のどこの学者が来られてもいい、またその結集をどこの国にも公表すべき日本人としての崇高な義務があり、また権利もあるということを、きのう私はここで表明したわけでございます。そこでおそれますのは、今MSAによりますと――先生と政治論をするつもりは絶対ございませんから、そのおつもりで。MSAを受けましてちやちな兵器弾薬等を受けましても、やれ秘密保護法とかなんとかいう法律をつくろうとしておるやさきでありますから、原子爆弾ですか、水素爆弾ですか、何かの爆弾によつて起つたところのかけらであるとか、あるいはそれによつてできたところの原子核分裂の物質の性質であるとか、そういうものまでも秘密保護法によつて、あるいは秘密保護法の条文にはそれも拡大解釈すればひつかかるようになつておりますが、そういうふうな圧迫が今後来ぬとは保証できない。むしろ来るのではなかろうかという危惧を持つておりますので、これは先生から特に私は御答弁を得ようとは思いませんが、ある程度の政治的な圧迫が日本の学者に来るだろうということが予想される。しかしながら、そういう場合に、原子禍にさらされた日本人としての崇高なる立場から、あくまでも学問の自由のために、また人類の幸福のためには、日本の学者としての自覚のもとに毅然たる態度をとおり願いたいと思うのであります。
 今国民として一番関心になつておりますのは、放射能にさらされた人はもとより、さらにこの放射能を持つたところのまぐろなりさめを食べた人が、実は内心戦々きようきようとしておる。ことに新聞の伝えるところによりましても、原子力によるところの症状というものは忘れたころに出て来る、こういう点で非常に戦々きようきようとしておるように思うのであります。ことにまぐろ等は相当広範囲に、二十数県にばらまかれており、大阪においてもガイガー・カウンターにタツチされておる。金沢においてもストロンチウム九〇ですか、すでに証明されておるというようなことでありますので、これも先ほどの先生のお話のように二月ぐらいで大体の見当がつくものであるかどうか、一応お尋ねをしておきます。
 放射能にさらされた人は、皮膚から、あるいは呼吸器あるいは消化器、この三つからその害を受けると思うのですが、その魚を食べた人は、おそらく消化器から入つて来るわけでありますから、そういう点の平易な医学的の解明を、この機会に国会を通じて国民にお知らせ願う意味において、御発表を願いたいと思います。
○都築参考人 その点につきましては、数日来魚河岸の連中から非常に責め立てられておりまして、一昨々日でありましたか、金曜日、東大の医学部の放射線科の主任教授であります中泉教授と私といろいろ相談いたしまして、声明というほどでもありませんが意見を発表いたしました。その結論は、魚を食べたということについては心配がないということであります。と申しますのは、福竜丸に積んで参りましたさめ、ことにさめのひれ――支那料理に使いますあのふかのひれというのは大部分さめだそうでありますが、そのさめのひれは相当なものだつたらしい。あのさめのひれを毎日々々支那料理屋に行つて、たら腹お上りになりましたら、それは例外として、まぐろの刺身のことでありますから、二きれか三きれ、多くても十きれくらいまでのことだろうと思いますので、そんな心配はない。この間新聞記者に、まぐろを一日に一尾ずつ十日間食べたらいらつしやいと言つたんですが、まぐろの刺身をお上りになつたり、おすしの上に載つかつている薄い一きれや二きれをお上りになつても、それはたとい福竜丸に積んで来たまぐろであつても、今日から見ればさしつかえなかつた。ただ厚生省の食品課の方の人が全部廃棄処分にしたから、今もしそれがさしつかえないということになつたら、廃棄処分にしたのは行き過ぎであるということで、体河岸から責められて弁償しなければならぬという問題になるから、そこはあまり言つてくれるなということであります。(笑声)今度私は専門外のことを大分勉強いたしました。実はまぐろとさめの区別などよく知らなかつたのですが少し覚えたのですけれども、そんなことでそこは少しにおわせまして、福竜丸に積んで来た魚のうちのこれはあぶないと思つたものは全部処分した。少しのそう大して悪くないものは二十何軒かに流れたけれども、それも一ぺんや二へん食べてもちつとも心配ない。このあとからは福竜丸は来ないのだ、こう言つたのです。それが終つて新聞記者が帰つたところに、今度は厚生省から電話がかかつて来まして、また築地に入つた。ガイーガーを持つて行つたらブーブー言うというわけで、またたいへんだということで中泉君が行つた。そうしましたら船のデツキと船員の帽子がガーガー言うのであつて、中の魚はうんともすうとも言わない。大丈夫。ところがその船はさつきの問題にも関係しますが、三月の一日にはビキニから二千海里離れていたわけで、帰る途中にビキニから二百マイル離れた地点を三月六日に通つておる。にもかかわらず帰つて来たときに、その帽子が鳴るのですからたいへんなことだということになるんですね。けれどもその分量はミリ・レントゲンで申しますと、間違いがあるかもしれませんが〇・一以下ですから、健康障害には全然ならないで、その連中は帽子をかぶつて何日おつても、別にどうにもならぬはずです。けれどもその帽子は毒があるから捨てたらよかろうということにしたわけですが、そのような意味で魚の問題は心配ない。従つて魚を食べた人の健康については、二月という日数を待つ必要はないのです。今日ただいま、全然心配はいらない、こう私は申してもよい。そこにさつきの魚河岸と厚生省の食品課の将来の弁償問題がちよつとひつかかりますので、初めの強くよごれたものは適当に処分したからという前句をつけていただいて、その他の魚はよいといつて現在判を押しておる状況です。そのときまた新聞記者に言つたのですが、そういつて魚はどんな腐つた魚を食べてもよいのだという印象を受けられたら困る。かつ東京の魚河岸というのは、御関係の方がおありになるかもしれませんが、あれは実に不衛生きわまるところで、これも注意してもらわなければならぬのですけれども、赤痢とかチフスとかいう伝染病は、今日の議論の外にあるんだ。存外世間というのは食べてよいというと、腐つた魚でも、赤痢菌やチフス菌がついておつても、東大の放射線科が証明したからよかろうというので食べられるとまた困りますので、その点注意した方がよいんですが、これはどこかに御発表になるんでしたら、怪しい魚は全分処分したから、ただいま売り出したものはもう心配はない。それはごく神経質な物理学者がはかれば幾らか出るかもしれませんが、このくらいの程度では人間はちつともさしつかえない。それを心配しておつたら、東京の町の中のほこりは吸えないということになります。そんなに人間は弱いものではないのですから心配はないということを、しかるべき機関からはつきり言つていただいて私はさしつかえないと思います。
○柳田委員 それで今度は二十三人の人々になつて行くわけでありますが、今申しましたように、皮膚から、消化器から、さらに呼吸によつて肺臓に入る、この三つの経路の中で、今後予想される原子病に対して、どこが最も警戒を要するとお考えになりますか。またその三つについて、大体皮膚から入つたものはこの程度で大体の予後が判定できる、消化器から入つたものはこれだけの年数で予後が判定できる、呼吸器から入つたものはこれだけの年数で予後が判定ができるという大体の見込みはどうですか。
○都築参考人 現在までのわれわれの医学から判断いたしますと、それは皮膚から入ろうと肺臓から入ろうと胃腸から入ろうと、どこから入りましてもまつたく同様だと思います。それを別にわけて考えるということはできない。従つてその必要がない。入つてしまえば結局血液の中に入りますから同じことであります。ただ入る度合いといいますか、同じ分量を持つて行つた場合に、皮膚にすり込んだ場合と肺臓に吸い込んだ場合と飲ませた場合とは違うかもしれませんが、それはなかなか今の検査ではきめかねるのであります。もう少し灰をたくさんもらつて大仕掛な動物実験をやつてみたらわかりますが、何しろ〇・五グラムしかないのですから、うつかり使つてしまつてなくなつてしまつてはたいへんだというので、厳重に鉛の箱に入れてしまつて、少しずつ主任者が出してやつては研究いたしております。ほんとうのねずみのくそくらいの分量しかないのですから、その一かけらずつやつておるのでわからないが、大仕掛にやつたらわかると思います。現在のところはわからない。のみならずそれがわかつても学問的な興味でありまして、実際に入つてしまつたら、どこから入りましても同じだろうと思います。先ほど申しました二月くらいというのは、広島の経験からいつて、大体二月くらいたちました場合に急性の症状が終つたので、それから二月ということを言い出したのでありますが、これは間違つておりましたら、またそのときになつて訂正いたしますが、大体そういうようなことは、どこから入つて来ても同じと考えてよいのではないか。今のとこらは皮膚にくつついておるのがあるので、それを何とかして早く出すというので、それには汗をかかせのも一つの方法ですけれど、むやみに汗をかかせると新陳代謝が高まるから、腸の中なんかにうろうろしておるもの、あるいは皮膚の深ところにうろうろしておるのが、早く吸収されるというおそれもありますので、これは痛しかゆしですが、皮膚についておるものを何とかして吸収されないようにしたいというような方法も考えております。腸に入りましたものは、大体三週間たつておりますから、普通の人間だつたら大部分便として出てしまつておる。その間に吸収されたものということになると、どこから入りましても、大体同じであると、ひとまず申し上げておきます。
○柳田委員 最近の報道によりますと、白血球が減つて来たり何かして来たと報じておる新聞もありまして、私はその予後についてはかなり危惧の念を持つておるのでありますが、今回の被害は、先生のお見通しでは、当の患者の予後等は重大な問題だと思いますけれども、社会問題としてこれを見たときに、これは一応人によつて違いましようが一おのおの患者を比べて、その後の経過で、大体被害はある人によつては相当重くもなるし、ある人によつては思つたよりも軽い、どういうような結論になりますか。おしなべて一様に思つたよりも軽いというようなことになりますか。おしなべて一様にそう軽く見てはいけないというふうなことになりますか、その点をひとつ……。
○都築参考人 これは医学的な立場からの答弁と、一般論としての答弁とで非常に違つて来るわけであります。まず最初に医学的の答弁、従つてこの内容はすぐつつ抜けに新聞なんかに出ることは私としては困ります。そういう前提のもとにお話させていただきます。
 先般来この生命の問題について、あらゆる方面から聞かれるのです。私の答えはいつでも今日は生きております。明日も多分大丈夫くらいなことは言いますが、その後はわからぬ。何でもそうですが、ことに放射線の感受性というものは、毛髪でございますね、毛につきましては個人差というものが非常に少いのです。年齢差はあります、しらがは抜けにくいもので黒い毛は抜ける。黒いのは若いからだ。しらがはかろうじてくつついているだけであまり働いていない。中は働いているにしても外はあまりしらがは働いていない。従つて広島の場合もごましおは毛が抜けて白い頭になりましたね。あとで直つたらまたごましおになつた。今度はえて来たのは黒だ。でありますから毛の抜けるということは大体において個人差があまりない。大体レントゲンの単位で四百レントゲン(4Sv)というものを受けますと毛が抜けますけれども、内臓の障害は非常に個人差があるのです。その点で今度の二十三人の犠牲者も大体同じような障害を受けただろう。初めは外で灰をかぶつた人はひどかろう、機関室の中で灰をかぶらなかつた人は大したことはないだろうと思つておつたけれども、いろいろ話を聞いてみたり、帰つて来た船を調べてみると、先ほど申しましたような結果であります。みな二週間がちやがちやにやつて来たのでありますから、全部同じ障害を受けておると思わねばなりませんにもかかわらず、こういう場合は障害は非常にまちまちであろうと思います。すなわち生命に関する予後もまちまちであろうと思います。大体医者というものは――この中に臨床のお医者さんもおいでだろうと思いますが、病気になりましたときに何とかりくつをつけていろいろ検査をしてみますが、大体見た瞬間にこれはあぶないぞという気がする病人がよくあります。そういう感じから言いますと、どうも今度の二十三人のうちの約一〇%くらいは、少くとも犠牲者を出すのではないか。いけないのじやないかと思うのが現実の数でいえば二人か三人ということです。従つてそれを一生懸命に治療して、その犠牲者がゼロであつたということで、日本医学が凱歌をあげたい、こういうことで、実はそういう伏線を張つているわけではないのですけれども、どうも今日までの経緯からいつて、約二週間で白血球が三千以下に下つた人がすでに一人出たということは、ここ一、二週間のうちにさらにそれが悪化して、もし歯齦とか腸とかあるいは皮膚あたりに出血症状が起つて来たということになりますと、血小板が五万以下に下つたという証拠でありますので重大問題になります。ある何人かの犠牲者が出るかもしれないということで、一生懸命にならなければいけないものだというふうに実は考えております。けれども一般論としては一たびたび新聞に発表しておりますように、まあ命にはさしつかえなかろう、大部分は回復されるとあろうということを申しておりますが、その点は心の中と口とが少し食い違つておることを御了承願います。
○小島委員長 委員の方及び傍聴の方に申し上げます。ただいまの言葉の中に医者としては外に漏れては困るという言葉もございましたから、先ほどのお話につきましては秘密を保つていただきたいと思います。
○柳田委員 実は私どもは直接当つていないし、第三者として、傍観者としての立場から多少医学に関係した者として、実はかような危惧を私は持つておつたので、その点を先生に込み入つてお尋ねしたのであります。たまたま二十二日の読売新聞を見ますと、INSの発表でビキニの水素爆弾実験を視察した後、東京を訪問してアメリカへ帰つて来たパストールという米上院議員が、「放射能による日本人漁夫の被害は当初報ぜられたよりもはるかに軽いものであると言い、次のような声明書を発表した。日本に滞在中原爆被害調査委員会の活動状況を調査したが、その際アメリカ側官憲から、第五福竜丸乗船の二十三名の日本人漁夫に関する不幸な事件について、あらゆる資料の提供を受けた。その結果残念なことだが、最初の報告は事件を誇張したものである。今度の火傷を実際よりもはるかに重いように伝えたことがわかつた。東京を去る前に両院合同原子力委員会の二人の委員とともに、原爆被害調査委員長のモートン博士と協議を行つた。」こういうように発表しております。これについては、最初に日本に滞在中の広島のABCCがそれの状況を調査したというのですが、これは悲しい事実ですが、われわれ日本人は原子力に関するところの物理的研究においても、医学的研究においても決して世界には劣つていない。むしろ世界のピークにあるのじやないかと思う。日本側の発表を示してやつておるのではありませんからこれは水かけ論になりますが、アメリカはみずから犯した過失をこういうような議員が帰つても、やはり過小評価せんとしておるきらいがこの記事にもありありと現われておるのです。これはおそらくわれわれが想像しておつたよりもはるかに深刻な被害が、時がたつに従つて出て来るのではないかという危惧の念を持つておるわけであります。これに対しては別に先生に御答弁を求めようとは思いません。
 最後に一つお伺いします。これには何か特効薬があるようにいわれてあります。エチレン・ヂアミン・テトラアセチツク・アシツドですか、それからイソロイシン、そういうような薬が特効薬としてどの程度の効力のあるものですか。またそれはわが国においては現在生産されつつありますものですか、今なくても将来は簡単に化学的に合成されるとか何とかして、そういうものができますか。この点をお尋ねいたします。これで私の質問は終ります。
○都築参考人 今の御質問の薬の問題でありますが、EDTAと称します。それは日本でもつくつております。これはずいぶん古くから医学的に使つておるのでありまして、使つておりますところは主として血液の凝固を防ぐ、輸血をいたしまして、特に血液銀行なんかで血液を保存しておきますときに、血液の凝固を防ぐために使つております。その薬の性質としてカルシウム、ストロンチウムとかそのほかの金属で、鉛なんかもそうですが、そういう金属と化合して水に溶けやすい物質ができるということで、それを飲ませたり注射したりしますと、骨についておりますカルシウム世びにストロンチウムなんかを溶けやすい状態にして血液の中に洗い出し、それが小便や便に出て行くということで、毒を洗うということに使えると思います。それは日本にあります。アメリカから持つて来てもらえばどつちがいいか、また比べてみるという研究もできますが、日本でももう製品として出ております。イソロイシンも現在使つております。またビキニの被害者には、さつきのEDTAは、からだの外の放射を洗うのに使つておりまして、からだの中に使うというのは今日午後あたりから使います。それからイソロイシンの方は、白血球をふやす薬でありますので、現在がんの治療に使いますいろいろな薬がありますが、ナイトロミンなどという名前で知られておりますが、こういうものを使つて副作用として白血球が減りましたときに困りますので、白血球をふやそうというときにイソロイシンを使い、それからまた第二段の薬として使えるだろうということで、現在用意して待機しておるわけであります。これは白血球が三千とか二千台になつてから使う方がいいんじやないか、という私個人の考えであります。それは内科の方の血液の専門家の判断にまかしております。問題は、ただそういう白血球をふやすという薬ならばいつでもいいんですが、そう減つていないのに、むやみに白血球をふやすということはどうかと思う。というのは放射線病の際に、私も広島のとき私の報告の結論に書いたのですが、アメリカがやつて参りまして、日本人は不十分な治療をしたからたくさん死んだのだと申します。たとえば原子爆弾症で出血なんかを起したときに、輸血を毎日やつて、ぺニシリンを浴びるほどさしたら、そう死ななかつただろうということを申します。そのときわれわれも輸血の手段も持つておりましたし、ペニシリンも日本製のものを持つておりましたけれども、何さまあの状態で、それを十分に使うわけには行かなかつた。一例だけ長崎で、水がんと申しまして、白血球が減つたために、ほつぺたが腐る病気でありますが、失の子のほつぺたが腐りまして、アメリカの病院船が入つて来てペニシリンをくれて注射したら翌日きれいになつた。それでアメリカはそらなおつたと言つて、病院船がアメリカに帰つて雑誌に、原子爆弾によつてほつぺたの腐る病気はペニシリンでなおるぞという報告をしたが、アメリカに病院船が着く前にその子供は死んでいたんです。ほつぺたはなおつたかもしれないが、病人は死んでいた。そのとき私も非常に議論したのですが、たとえば広島で十万の人がなくなつたとしますと、そのうち七万五千人は八月六日に即死です。あとの一万五千、合せて九万人は二週間で死んでいる。あの混乱状態で医療らしいものを始めたのは三週間日からなんです。従つて三週間目からの障害者を全部助けたとしても、死亡率の改善は一〇%以内にとどまるということを申し上げた。のみならず放射線の障害というものは、肺炎にペニシリンがきくように、びたつときく薬は今のところないのでありますから、結局は自然にからだの力で、一定期間まで持ちこたえて回復するということになりますから、その持つておる生活の力を少しでも障害しないように、できればそれを助長してということでありますから、むやみに減つていない白血球をふやすというふうにするのは、疲れた馬にむち打つような治療で、私としてはしてはならないと思う。動物実験は非常にやりますが、動物実験の成績をうのみにして、この二十三人の治療をするということは、私は非常な間違いを起すもとになると考えておりますので、そういういろいろな方法がありますが、現在東大ではそれを非常に慎重にやつておる。ただ輸血をいたしますとか、ぶどう糖をさしますとかいうことは、きちんとやればほとんど害はないのであります。そういうことは、ずつとやつておりますが、そういう特別の新しい薬は、必ず副作用がある。ことに学問的に想像されることは、今のカルシウムやストロンチウムというのをからだの外に出すとか、EDTAというものがもし有効にきいて、カルシウムやストーンチウムがからだの外へどんどん出てしまうということであれば、その薬は放射能を持つておるカルシウムやストロンチウムを出すほかに、というよりは、それよりもさらに強く作用して、放射能を持つていないカルシウム、すなわち人間の生活にむしろ必要なものも、からだの外に出してしまう。そうすると今度はカルシウム減少症というものになりまして、急性なものになりますと、即座に心臓がとまつて死んでしまう、けいれんを起すというふうな症状が起りますから、たいへんなことで、今日の午後から使いますEDTAも、カルシウムが減つたらどうするかという予防法を一方に講じながら使つておる。一々血液のカルシウムをはかつて、バランスを保ちながらやつて行こうというのでありますから、一人の患者に五人くらいの医者がかかつてやつているんです。とうてい小ささ病院で設備の不完全なところでは、どんな大家が何人お集りになつても、できない相談です。そういうことでこれは非常にむづかしい問題であります。これはアメリカが来てもやはり同じことだろうと私は思います。そういう意味でいろいろ新しい方法が、また新薬と称するものが今東大にはむやみに集まつて来る。さつきもここへ来る前に二つほど、どうだこうだと持つて参りましたが、今衆議院に呼ばれておるから明日だといつて断わつて来ましたが、ありとあらゆるものを持つて来る。私は病院の事務の人に、持つて来られた方にはよくお礼を申して受取つておけと言つておきましたが、しかしこれを使うか使わないかということは、よほど慎重に考えなければならぬ。相手が人間なんですから、船のように焼いて棄ててしまうというわけには行かない。人間は丈夫に直そうというのでありますから、その点がむづかしい。すべて原則的に有力なる治療剤というものは、同時に有力なる害作用があるということを忘れてはならない。正宗の銘刀のごときものであるということを忘れずに、バランスをとりながら治療をするという点に非常な困難があると思うのであります。
○小島委員長 滝井義高君。
○滝井委員 今の都築先生の御説明で非常に裨益されるところが多かつたわけなんですが、現在現地に非常にたくさんの調査団と申しますか、そういうものが行つております。ちよつと新聞で名前を拾つてみましたが、静岡大学、東大、ABCC、国立予研、厚生省、水産大学、阪大、京大、科研、保安庁、外務省、名古屋大学、民間の医者、ラジウム団体、実にたくさんな人が焼津の港に向つて押しかけて、調査研究に当つておるようでありますが、何かこういう各大学の調査された結果について、先生の東大あたりと密接な連絡でもとられておりましようか、それとも現在何もとられていないのでしようか。
○都築参考人 簡単に結論的に申しますと、てんでんばらばらにやつておるわけであります。それで私は第五福竜丸の船そのものの検査は、てんでんばらばらにやつてもいいだろうと思うんです。いざとなれば、船は削つてなくなつてしまつてもさしつかえないのですから。けれども問題は二十三人で、この二十三人をてんでんばらばらにやると、たいへんなことになるので、どこか中心がなければいかぬだろうと思う。私個人の感じから言えば、東大が中心になりたいのです。しかしそれは東大でなくても、京大でもどこでもいいが、どこかおれが引受けるというところが中心になればいい。それで厚生省では、厚生省の予防衛生研究所の中にさつき申しましたこの問題に対する協議会があつて、それにわれわれも委員にされておるわけで、そこでやろうかというのでありますが、その予防衛生研究所は、そういう方面の学者なり、研究施設を何も持つていないと言つていいくらいですから、結局ほかへ頼まなければならない。人に頼んで、ただ世話するだけというのではぐあいが悪いので、一通り設備のあるところへまかせてやる。けれどもこれは先ほど申しましたように人類の大問題でありますから、一緒にやるということは、アメリカであろうと、イギリスであろうと、ソ連であろうと、日本においてはもちろんのこと、どこの大学の方がおいでになりましても、一向さしつかえない。けれどもどこかでまとめてやつて、そうして一緒に研究して、いろいろいい知恵を貸していただくということが必要であります。けれども焼津という場所柄から考えますと、あそこの共立病院長の拓植博士はその点で非常に困つておられる。ああいうととろでありますから、たとえば京都大学とか厚生省から来れば、いやだというわけには行かないのでしようね。東大であれば、いけないと言えばそれだけのことです。何といつても東大はしにせでありますから、まあまあそう言わずにちよつと待つてください、と言つて私たちが玄関へ出て行けば、それを無理に押し通してやろうということはなさらないでしようが、焼津ではむづかしいと思いますので、私の気持としては、できれば東大の方へ集めて、適当な制度をつくつて、どこの方でも、ほんとうに学問的に熱心で、相当の資格があり腕前のある方が、人類愛のために御協力くださるというのであれば喜んで一緒にやつていただくという制度にしなければいかぬのじやないか。こう思うのですが、その点がどうもまだしつくり行つていないので、てんでんばらばらだということは私も非常に遺憾なことだと思う。実は私も、明後日ちよつとひまを見つけまして焼津まで行つて、静岡県知事ともよく御相談して来ようかと思つておるのですが、どこかにまとめてやらないと、同じ血液の検査をするのでも、朝から晩まで入れかわり立ちかわりやつて来て、針をさされたり何かをすれば、時間的というだけでなく、一度針をさせばそれだけ生体に障害を与えるのですから、一度で済むことならば一度で済ましたい。同じことを繰返して二度やるとか、ただ学問上動物を使うような意味で今度の犠牲者を使うということは、私は絶対に反対なんであります。
○滝井委員 われわれも実に同感だと思うのです。やはりこういう問題は国際性を持つておるとともに、将来の日本が第三次世界大戦にでも巻き込まれるということになれば、当然今から対策を立てておかなければならぬ重大問題だと思いますで、急速に総合的な研究をするような機関をつくるか、あるいはどこかに研究の中心を置くということが必要だと思います。なぜそういうことを言うか、もつと具体的なことは、すでに新聞で、現地の患者二十一名は、施設のよい東大へ行けば必ずなおるわけでもあるまい、日本側でもわれわれをモルモツトにする気か、こういう談話さえも出ておる状態なんです。従つてこれはこういう患者さんにとつては、悲痛な叫びですが、こういうことを二十一名の患者さんの納得の上で、現在東大におられる二人の患者さんとともに、やはり総合的に、早くなおるような対策を講じていただくことが、私は患者のためにとつてもいいし、今後の日本の原子医学のためにも非常に大事なことじやないかと思う。
 その次に、今後総合的な調査をやる上においてわれわれが考えなければならないのは、その二十三名の患者さんとともに、これは船だと思います。それから今東大にある一グラムばかりの灰だと思いますが、これらの三つのものが、今後の原子医学の確立にとつては、なくてはならない貴重なものになつて来ると思います。その灰は大体先生のところにありますからいいでしようが、もと具体的に、こういうものを大体どういうぐあいにすべきかという、今後の研究の見通しの上に立たれた先生のお考えを述べていただきたいと思います。
○都築参考人 灰は今大事にしまつてありますが、だんだん研究でなくなると思いますから、少しはとつておきたいと思う。次に船であります。これはこの間の広島のABCCモートンさんが来ましたときに私が言つたのです。船を見に行くのはいいが、持つて行つちやいけない、ちよつと木を削つて行くくらいならあげるが、船をアメリカへ持つて行つてはいかぬ、日本のプロパテイだ、絶対にアメリカにはやらぬのだと言いましたら、そんなことをアメリカは考えないから安心してくれとモートンさんは言う。私はアメリカ人と長年つき合つておりますが、アメリカ人は個人的には非常にいいゼントルマンでありますが、ユナイテツド・ステートになると、どうもときどき非ゼントルマンになるのでありますから、これはひとつ日本政府の手で厳重に保存すべく努力していただきたい。あるいはビキニへ返せとかいう話もありましたが、学問上その船の放射能が今後二十年、三十年の間に、どういうように減つて行くかということを知りたい。あれはあのまま焼津の港に浮かしておきますと、五年たつたら沈みます。浅瀬にのつけて厳重なコンクリートでかこいをして、それを研究所の一部にして、あの放射能というものを今後数十年にわたつて減り方を研究すべきだと思います。世界のメツカにする。それで放射能を研究したい学者は、資格をちやんと調査の上で、日本政府の許可を得て研究させることはよろしい。けれども船を持つて行くということは絶対にいけないと私は思う。
 それから二十三人の方は、先ほどお話に出ましたが、何も一箇所に伝染病のごとく、あるいは刑務所のごとく、隔離して家族に会わせないとか、仕事をさせないとか、そんな残酷なことは絶対にいけないと思います。医学の上で安静の必要がある場合には、安静にしてもらう必要はございましようが、もう現在これで大体よろしい、普通の仕事をしてもよろしいということになれば、すきな職業につかせて、すきなところにおいでになるようにとりはかろうべきでないかと思う。けれども、やはり今後長い間十分に医学的の看視をして、必要な保護を与え、注意を与えるといつたような設備をつくらなければいかぬ、こういうふうに思います。どうも隔離をして、一ところに集めてしまつて、始終つかまえているというふうな考え方は、私はいけないと思う。場合によつては、一人ずつどなたか責任者にお渡ししてずつと長く見ていただいて、それはただ見るというだけでなく、その人の日常の生活についていろいろ相談役になつて保護を与えていただくといつたふうに、長く看視できるような制度をつくつたらいいじやないかということが私の気持なんです。それで私は、初めはそれがごく簡単にできるのだと思つておつたのですが、きのう焼津の共立病院長が東京においでになつて、東大の美甘院長と交渉された話で、私はまた聞きですが、現地では、われわれが簡単に考えているように行かないという話であります。それはいろいろ御事情もおありのことでありましよう。東京へ来れば家族にも会えない。会いに行くにしても、とにかく往復千円近い金がかかる別に悪い罪人でないのを、なぜそんなところに隔離するかというような考えがある。また行けば、どうせ血をとつたり小便をとつたりして、モルモツトがわりにされるだろう。それは治療のために必要なことはやりますが、そんなモルモツトがわりにするということは、一方においてねずみを使つても実験をしているのでありますから、そのかわりを人間にするというつもりはちつともないのでありますが、そういうことが現地の状況では、相当かわるだろうと思います。私は、今申されましたような患者さんを今後どういうふうに取扱つたら、一番その人たちに幸福であり、かつその副産物として日本の医学の研究を促進することができるか、ひいては世界人類のためになるかという方策を立てる資料の一部を得たいというために、明後日現地へ参りたいと思つているところであります。
○滝井委員 患者の問題は、これは現在国家において、船員保険でまかなうというようなことで、はつきりとした国の態度さえもきまつていない状態ですから、おそらくそういう問題が、私は患者の財政上から一つの隘路となつて起つているのじやないかと思います。これは今後なおわれわれは当委員会等で追究して参りたいと思いますが、やはり問題は、灰はありますし、患者は、今後財政上の問題が解決すればある程度行くと思いますから、問題は船だと思います。すでにモートン博士は、船は米極東海軍が横須賀に曳航するというようなことまで言つているようなうわさもあるくらいです。しかも現在この原子力というのは、先ほども柳田委員から触れられたように、超国家秘密であります。日本は現在MSAの協定で、防衛秘密保護法までつくつて、アメリカから借りた兵器も、今後これは防衛の秘密ということで、知らせられないという状態になりつつあるわけです。そうしますと、先生方の御努力で十種ばかりの放射能の物質がわかつて来た、しかもストロンチウムというのは、半減期が二十五年もかかるのだというような、具体的な原子兵器の威力というものがだんだんわかつて来、しかもそれらのものから、最大の原子兵器の秘密が解明されて行くということにもなれば、これはやはりアメリカにとつて、現在超国家的な秘密として保たれている原子兵器にとつては、日本の研究が一つの大きな脅威になることは明らかなんです。そういう点で、学問には国境はないかもしれないけれども、やはり学者には国境があるわけです。われわれは独立国になつたのですから、先生方もこの際特に毅然たる態度で、研究の成果というものは、アメリカの制肘を受けずに、堂々と日本の医学界に発表していただきたいと思います。先日厚生大臣にも、堂堂と発表するようにここで申し上げましたところ、厚生大臣の答弁は、曖昧模糊たる状態でありましたが、最後には、できるだけそういう方向に努力いたしますという言質をとつております。学問には国境はないが、学者には国籍もあるし愛国心もあることなんですから、どうか八千万の日本国民のために、勇気をもつて研究の成果を発表し、船はこうすべきだという先生方の所信を、堂々と述べていただきたい、こう私はお願いいたしたいと思います。
○小島委員長 長谷川保君。
○長谷川(保)委員 非常に御多忙のところを、長時間私どものためにお教えいただき、稗益するところきわめて大きかつたことは感謝にたえないのであります。今までいろいろ伺つておりますが、実は私どももこの事件が始まりますと同時に、当委員会におきましてこの問題を非常に重大視して、今日まであるいは治療の問題、あるいは研究費の出所の問題、あるいは家族の救済の問題、あるいは病者の救済の問題、廃棄物の問題等、あらゆる面からいろいろ討議をいたして参つておるのでございます。今までいろいろお教えいただきましたけれども、なおこの際私どもが何をなすべきか――私ども個人は非常に微力ではございますが、国会は一応国権の最高機関になつておりまして、われわれ二十五人の委員が結束いたしますと、相当なことができると思いますから、先生方の今取組んでおられます御事業をバツク・アツプするというような意味で、今何をなすべきか、あるいはそれ以外のことにおいても、私どもが何をなすべきであるか、こういう点についてお気づきの点を、なお教えいただきたいと思います。たとえば研究費のごときも、先ほど伺いますと、実にさんたんたる少額でございまして、何とも申訳ないことでございます。私どもはこういう点にうかつでおりましたことを、国会議員として大いに責任を感ずる次第でございます。しかし二十九年度の予算等には、たとえば原子炉のための予算三億円というような金が見積られておりますが、今これの使い道がちよつとなくて困つておることも事実あるわけでございます。衆議院に出ました予算と参議院に出ました予算と、内容が違つてしまつておるというばかげたことになつている事情でありますが、この人道的な研究は、日本の将来に平和的な原子炉の利用が行われる前提といたしまして一われわれは先ほどお話のように大きな問題として取上げなければならないのであります。従つてもし先生の方で、これとこれをしてほしい、国会の方でこれをきめてほしいということがあれば、われわれは大いに討議してあとう限りの御協力を申し上げたい、また申し上げなければならないと存ずる次第であります。さしあたつて私どもは何をなすべきかを、お気づきの点をお教えいただきたいのであります。
○都築参考人 何をなすべきかということになるとむずかしいのですが、どうしていただきたいかという希望はたくさんあります。何をなすべきかは、そちらでゆつくり御検討願いたいと思います。
 私たちの希望としては、先ほどから大体いろいろなことを申し存ましたが、今度の事件直接のことで申しますと、何とかして二十三人の方を丈夫にして上げたい、私たちの感じでは、一番重要な問題は、その人々の生活保護の問題だろうと思います。少くとも今後二箇月の間、安心して医者の治療に協力していただく。医者の治療という場合には、医者と病人とその家族の三者が協力しなければできないということは、長谷川先生が何年か前から体験してよく知つておられる。私もしばらく長谷川さんの事業をお手伝いしたことがあります。だから三者が協力できるという点において、医者は一生懸命になり、病人も自分のことだから一生懸命になつておる。問題は家族です。あんなにピンピンしておる者を、何しに東京へ連れて来るのかということがあるので、従つて家族の生活費の問題、それを後顧の憂いのないように、十分に裏づけしていただくことができたらというのが、私たちの今の第一の希望であります。
 第二の希望は医療上の問題は先ほどから何べんも申しましたように、わからない問題でありますから、どうしても研究と同時に治療を進めて行かなければならないので、健康保険のような医療制度で、研究のことは一切やらないで、ただ治療だけしろという制度の治療法では、ほんとうの治療は絶対にだめだということであります。従つて治療費は一でいいから、研究費は十出してくれ、治療費が一億なら研究費は十億……(「保険局長、よく聞いておれよ。」と呼ぶ者あり)実隊そうなんです。実隊この間厚生省に電話をかけて、十億ぐらい金をとりなさいと言つたら、そんな億なんという金はとれませんと言うから、そんな課長とは話はしないといつて、電話を切つてしまつた。翌日出て来いと言うから、厚生大臣の出る会議なら出る、厚生大臣の出ない会議なら出ないと言つたら、厚生大臣もおいでになるからどうぞ御出席くださいということで、私は行つて厚生大臣とお話をした。とにかく今度の場合は、世界初めての病気で、アメリカのどんな偉い人が来てもわからない。従つてわれわれはそれと取組んでおるのでありますから、治療費も十分出していただきたいが、さらにそれに十倍する研究費を出していただきたい。それがわれわれの叫びであります。
 私たちは決してぜいたくをしたいとは思わない。きようも車がないからこの委員会にお願いして、特別に車で迎えに来てもらつた。なければ電車で来なければならないが、それでは一時に間に合わない。とにかくそういうことで、研究に非常に費用がいる。そういうことが県当局にも、あるいは焼津の市の当局にもあるいは御家族なんかにもわからない。もしも実際の治療費が一であつて、研究費が十であるというようなことが公にされますと、われわれはモルモツトがわりになるのだということをすぐ言い出す。それはそういうものでないということを十分にお考えになつて、その点をひとつやつていただきたいというのが、私どもの第二のお願いであります。
 これを並べ立てれば幾らでも、あしたの朝までも続きますが、その二つの点が最も重要な問題であろう、こういうふうに考える次第であります。
○長谷川(保)委員 実はこの点は同僚諸君も非常に心配をいたしまして、先般来厚生省にその点を追究しておるのであります。そうして一応さしあたつて第一の問題は、船員保険を適用する、そうすれば治療費の問題と家族の生活も四箇月は全部生活費が与えられる、なお続いて、少し減りますけれども、当分の間生活に対して相当の保障ができる、こういうような答弁を厚生省当局からいただいております。われわれはそんなことでは足りない、また社会保険の立場から申して研究的なものには使えないのじやないか、であるからすみやかに予備費を出せ、こういうときのための予備費じやないか、予備費をすみやかに出して治療と研究、または家族の保護その他のことに万遺憾なきを期するように、厚生当局に注意を換起いたしておるのであります。一昨日も厚生大臣から、予備費を出しますというような答弁がここであつたにのでございます。これらにつきましては、われわれといたしましてはあとう限りの御協力を申し上げまして、先生方のこの崇高な御事業に協力させていただきたいと思うのでございます。
 なおここで今すぐお伺いすることは無理なことでございますので、たいへん恐縮でありますが、後ほど当委員会にあてて、書類等によりまして、これこれのことをなせということを、御関係者の方で御協議いただきまして、お教えいただきますれば、われわれはそれに対しまして――厚生省は大蔵省に対してどうも弱いものですから、厚生省を大いに激励いたしまして、協力いたしまして、国から金をとるようにいたしたいと存ずるわけであります。さしあたつてどれくらい考えたらよろしいか、先生にお腹づもりでもありますれば、予備費から支出を要求するときの参考に伺いたいのであります。これはただいまでなくても、後ほど書面でけつこうであります。
○小島委員長 それでは、これをもつて都築博士に対する質疑は終了いたしました。
 博士にはお忙しい中をまことにありがとうございました。
    ―――――――――――――
出展

どうでしょうか。都築博士の言葉は、今だに通用するではありませんか。東大の都築教授の弟子が中川恵一。もう、完全にあちらの方へ言ってますね。

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posted by いんちょう at 19:53| Comment(3) | 原子力

2013年10月25日

東大で分析されていたヒロシマ、ナガサキの死の灰

 以前、ヘレン、カルディコット医師の講演会に参加した際に、彼女は

カルディコット「ヒロシマ、ナガサキでは死の灰はほとんど残らなかった。ほとんどすべてが瞬間に発生した放射線によるモノの被害だった」

と説明しました。私はそれに対して

私「入市被爆というものもある。放射線を直接浴びていなくとも、後から後から人が死んでいるのになぜそのようなことを言うのか。見識を疑う」

と質問したところ、

カルディコット「残留放射能はほとんどなかった。それは、ABCCも証明している」

と答えてきたので、呆れたことがあります。

今月号のDAYS JAPANで藤田祐幸氏が書かれている文章にも同じような下りがあります。
2013102502.jpg2013102501.jpg
原発は1年間に原爆の1000発分の放射能原発と原爆は、ウラニウムの原子核が分裂する際に放出される膨大なエネルギーを利用します。分裂したウラン原子のかけらは放射性物質になります。この放射性物質は「死の灰」とも呼ばれます。原爆と原発の違いは、この死の灰の量にあります。広島と長崎に落とされた原子爆弾から発生した死の灰はおよそ1キログラム程度でしたが、原発では、一年間に約1トンもの死の灰が生成されています。原発1基のもっている放射能は、原爆1000発分に相当するのです。原爆と原発の違いには、もう一つの問題があります。原爆が昨裂した瞬間に極めて強い放射線が放出されます。主にガンマ線と中性子線です。この中性子線がある種の金属の原子に当たると、その原子は放射性物質になることがあります。これは放射化生成物と呼ばれています。広島と長崎の原爆で発生した約1キログラムの死の灰は、超高温の火の玉の中で発生したため、その大部分はキノコ雲と一緒に成層圏に入っていきました。そのため、黒い雨が降った地域を除いては、放射性物質(死の灰)による汚染はほとんど問題になりませんでした。人々は、原爆が爆発した瞬間に浴びせられた放射線によって外部被曝をしたのです。ところが、後に爆心地に肉親らを探しに行った人たちも被曝しています。これは、大地や建物の中の一部の金属などが放射化したため、その二次放射繰で被曝をしたことを意味します。しかし、放射化生成物の放射能の寿命は比較的短いため、現在、広島・長崎の大地からはほとんど検出されません。それに対し、原発事故では、原子炉から噴出した死の灰が風に乗ってまき散らされ、大地と水と空気が汚染されます。広島では爆心地から3キロの範囲内に被害が限定されているのに対し、チェルノブイリ原発事故では、600キロ圏内まで放射能が広がっており、特に300キロ圏内は深刻な汚染が今もなお残っています。「核兵器はひとつの都市を滅ぼし、原発はひとつの国を滅ぼす」といえましょう

 この藤田氏もカルディコット全くおなじ意見です。反原発でいろいろと意見をしていることはもちろん知っておりますが、残留放射能のことを無視しているのは、まさしく米国追従です。

あの大異変の中で負傷しなかった人びとが、原爆病としか表現しえない何ものかのために死んでいく-広島todayからには、つぎのように表現されています。
広島レポート
「広島で、初の原爆がその街を破壊し世界に衝撃を与えた三十日後、人びとは次々に奇怪な死に方をして亡くなっていく。あの大異変の中で負傷しなかった人びとが、原爆病としか表現しえない何ものかのために死んでいくのである。
 広島は爆撃を受けた街というより、巨大なスチーム・ローラーがその上をとおり、影も形もなく押しつぶしていったように見える。私はこのような事実を、できるだけ冷静に、世界に対するひとつの警告となることを願って、書こうと思う。
この原爆の最初の実験が行なわれた地で、私は四年に及ぶ戦争の中でも最も恐ろしい、驚くべき荒廃を見た。それに比べたら急襲された大平洋上のひとつの島などエデンの園のように見える。その損傷はカメラが写し出せる限界をはるかに越えてすさまじいものである。
 広島につくと周囲二十〜三十平万マイルを一望でき、建物がほとんど見あたらない、このような人の手による破緩行為を自にすると、胃のあたりに何ともいえない空虚感を覚える。
消え失せた街の中心部にある、臨時の警察本部として使用されていた掘っ立て小屋へ向かった。その建物から南の方を見るとおよそ三マイルに及んで赤味がかった瓦礁が続くのが見わたせる。原爆投下のあとに残ったものといえば、たった数十ブロックの区画内の建物、家屋、工場そして人びとであった。
 約二十本の工場の煙突のほか立っているものは何もない−煙突だけで工場はないが−。内部を破壊された六つのピル群があり、そしてもうあとは何もなかった。
 広島警察の幹部は、私を、広島にたどりついた設初の連合国公認の記者として、歓迎してくれた(原文のまま/)。彼は私を日本の主要通信社である同盟の地元支局長とともに市内を車で通りぬけ、というより街の上を走って、原爆犠牲者たちが治療をうけている病院へと案内してくれた。
 これらの病院で私は、原爆が落ちた時には負傷もなかったのに、今になって、わけのわからない後障害のために死んでゆく人びとを見た。
 これといった理由もなしに健康が衰えはじめ、食欲を失ない、髪の毛は脱け落ち、体に青みをおびた斑点が現われ、耳から、口から、鼻から、出血が始まるという
  医師たちははじめ、単なる衰弱だと思ったそうだ。そしてビタミン注射を打ったところそれはひどい結果に終わった。注射器の針があけた穴からどんどん肉が腐り始めたのである。そしてその注射を受けた犠牲者はすべて死んだと言う。
 これが、人聞が初めて落とした原子爆弾というものの後障害の一例であり、私はもうこれ以上他の例を見たくはない。
 私は、今まで嘆いだことのない何か異様な悪臭を嘆ぎつけた。硫黄に似ていたが、同じではない。まだくすぶっている火のそばや死体が発見され続けている焼跡を通ると、その臭いが鼻をついた。しかし、手をつけられていない場所からも臭っていた。
 その臭いはウラニウム原子の分裂による放射能のしみこんだ土から発生する有毒ガスのせいだと信じられている
 そのために、広島の人びとは口と鼻とにガーゼのマスクをあてて、かつて自慢していた街の荒涼とした廃極を歩くのである。それは決して物理的な助けとはならないであろう。が、精神的助けにはなっているのである。
 この破壊が広島の上にもたらされた瞬間から、生き残った人びとは白人を憎んだ。それは、原爆それ自体を恐れるのとほとんど同様の激しさの憎悪である。
 死者は五万三千人と数えられた。他に三万人は行方不明とされているがこれは確実に死を認味する。爆発で重傷を負った一万三千人のうち百人が私が広島に着いたその日に死んだ。一日に百人の割で、彼らは息をひきとっている。そしておそらく皆、遅かれ早かれ死んでゆくのであろう。軽傷を受けた者は四万人であった。


 このように、放射能の惨禍が書かれていながら、なぜ無視をするのか。しかし、これといった証拠もなく、腹を立てる程度でしたが(何度も言いますが、原爆で本当に怖いのは、残留放射能そして、遺伝の問題です)、先日紹介した「死の灰と戦う科学者」に降下物の分析が描かれていました。


木村、南両教授のこと
 木村教授は若いころ、デンマークのニールス・ポア博士のもとでまなんだ。ポーア博士といえば、当時、世界の物理学界の第一人者であった。コペンハーゲンのボーア博士の研究室には、世界中から、俊秀が雲のごとくあつまり、あたらしい原子構造理論の研究に没頭していた。木村教授は第七二番元素ハフニウムを発見(一九二二年)したへヴェシー博士(ハンガリー出身の化学者、一九四三年度ノーベル化学賞受賞)たちと共同で、ハフニウム、ジルコニウムなどの化学的特性に関する研究に従事した。日本からは物理学者仁科芳雄博士が長いあいだボーア研究室にとどまり、原子物理学のあたらしい発展につくしていた。
 コペンハーゲンから帰国してからの木村博士は、外国留学の前から、柴田雄次教授の指導ではじめられていたウラン、トリウムなどの放射性元素や、希土類元素など、いわゆる希元素をふくむ鉱物の化学的研究をつづけた。この一連の研究には「希元素の地球化学的及び分析化学的研究」として、一九四五年に帝国学士院貨が授与された。
 木村教授の帰国後まもなく、仁科博士も帰国して、理化学研究所に入所した。仁科博士が理化学研究所に研究室をひらいて、サイクロトロンを設置(一九三六年)してからは、木村教授は仁科博士と共同で、原子核反応でできる新しい核種の研究をはじめた。
 広島、長崎に原子爆弾がおとされたときには、木村研究室で、いちはやく、降下物の分析がおこなわれた。協力者は村上悠紀雄、斎藤一夫、山寺秀雄の諸博士であった。その結果は、広島の降下物からストロンチウム八九、バリウム一四〇、ランタン一四〇、ジルコニウム九五、ニオブ九五、イットリウム九一が検出された。また、長崎の降下物には、ストロンチウム八九、バリウム一四0、セリウム一四四、プラセオジム一四四、ジルコニウム九五が検出された。この分析結果から、いわゆる「新型爆弾」が、原子爆弾であることが証明された。
 南英一教授は木村教授とともに、柴田雄次教授の門下生の一人である。南教授はゲッチンゲン大学にまなぴ、ゴールドシュミット教授とともに、堆積岩中の希土類元素の研究をおこなった。これは地球上における希土類元紫の相互の存在比をきめた研究として、世界的に商い評価を得た。近年に至るまで希土類元紫に関するミナミの分析値は重要文献として、多くの著書、論文に引用されている
 。東京大学でのビキニ灰の分析は、三月一八日ごろからはじめられた。分析をはじめて二日後には、はやくも四種の核分裂物質(主として希土類元素)が検出された。一週間のうちには、一五種、三月の末には一七種の放射性核種がみつかった。けっきょく、全体で検出された核種は二七種になった。その大部分は核分裂で生じた核種であった。しかし、そのほかに、イオウ三五、カルシウム四五、ウラン二三七、プルトニウムニ三九がみつかった。これらは、すべて核分裂生成物ではない。なかでも、ウラン二三七やプルトニウム二三九の存在は、プラポl爆弾の秘密をしめすものとして、非常に重要なことだった。だが、分析のはじめの段階では、それがなにを意味しているかは、すぐにはわからなかった。 木村研究室では、まえにものべたように広島、長崎の原子爆弾の降下物を分析したことがあった。その当時はガイガー計数務もなく、放射能をはかるには、ローリッツェン検電器などにたよらざるを得なかった。ガスも十分に出ないときで、七輪で炭火をおこしてビーカーをあたためるような状態であった。
 今回はガイガl計数器がつかえた。そのうえ、イオン交換樹脂による放射性核種の分離技術がすすんでいた。このため、核分裂生成物の測定が迅速にできたのであった。
  都築正男博士は、木村・南研究室の迅速な分析ぶりを賞讃し、「短時間によくこれだけの核種の分析ができたものだ。放射性ストロンチウムなどの存在が明らかになったことは、われわれが治療方針をきめるうえにも非常に重要なことである」とかたった。たしかに、木村・南両研究室のよいチームワークは、日本の分析化学界の潜在的な実力をしめしたものであった。


 原爆投下当時にこのようにストロンチウムの分析までができていたことに私は正直驚きを覚えました。そして、8月10日に日本政府の出した唯一の次の原爆に対する非難声明は、この分析を元にした確信のある声明だってと想像できるでしょう。

本月六日米国航空機は広島市の市街地区に対し新型爆弾を投下し瞬時にして多数の市民を殺傷し同市の大半を潰滅せしめたり広島市は何ら特殊の軍事的防備乃至施設を施し居らざる普通の一地方都市にして同市全体として一つの軍事目標たるの性質を有するものに非らず、

本件爆撃に関する声明において米国大統領「トルーマン」はわれらは船渠工場および交通施設を破壊すべしと言ひをるも、本件爆弾は落下傘を付して投下せられ空中において炸裂し極めて広き範囲に破壊的効力を及ぼすものなるを以つてこれによる攻撃の効果を右の如き特定目標に限定することは技術的に全然不可能なこと明瞭にして右の如き本件爆弾の性能については米国側においてもすでに承知してをるところなり、

また実際の被害状況に徴するも被害地域は広範囲にわたり右地域内にあるものは交戦者、非交戦者の別なく、また男女老幼を問はず、すべて爆風および輻射熱により無差別に殺傷せられその被害範囲の一般的にして、かつ甚大なるのみならず、個々の傷害状況より見るも未だ見ざる惨虐なるものと言ふべきなり、

抑々交戦者は害敵手段の選択につき無制限の権利を有するものに非ざること及び不必要の苦痛を与ふべき兵器、投射物其他の物質を使用すべからざることは戦時国際法の根本原則にして、それぞれ陸戦の法規慣例に関する条約附属書、陸戦の法規慣例に関する規則第二十二条、及び第二十三條(ホ)号に明定せらるるところなり[30]、

米国政府は今次世界の戦乱勃発以来再三にわたり毒ガス乃至その他の非人道的戦争方法の使用は文明社会の与論により不法とせられをれりとし、相手国側において、まづこれを使用せざる限り、これを使用することなかるべき旨声明したるが、米国が今回使用したる本件爆弾は、その性能の無差別かつ惨虐性において従来かかる性能を有するが故に使用を禁止せられをる毒ガスその他の兵器を遙かに凌駕しをれり、

米国は国際法および人道の根本原則を無視して、すでに広範囲にわたり帝国の諸都市に対して無差別爆撃を実施し来り多数の老幼婦女子を殺傷し神社仏閣学校病院一般民家などを倒壊または焼失せしめたり、

而していまや新奇にして、かつ従来のいかなる兵器、投射物にも比し得ざる無差別性惨虐性を有する本件爆弾を使用せるは人類文化に対する新たなる罪悪なり帝国政府はここに自からの名において、かつまた全人類および文明の名において米国政府を糾弾すると共に即時かかる非人道的兵器の使用を放棄すべきことを厳重に要求す

 なぜ、未だに残留放射能の被害はたいしたことがないといいきれる人間がいるのか。本当に残念でなりません。(それにしても、本当のことは後から後から、いろいろな資料が出てくるので、本当におそろしく思います。このように細かいところまで整合性がとれることこそ、真実の証しであろうといつも感じています。)

 藤田祐幸氏には、熊本市で公演をされたときに残留放射能を無視するのはおかしいと直接抗議したのですが、取り合ってもらえませんでした。

◆関連ブログ
あの大異変の中で負傷しなかった人びとが、原爆病としか表現しえない何ものかのために死んでいく-広島todayから2013年04月15日
「海の放射能に立ち向かった日本人〜 ビキニ事件と俊鶻丸」-全部知ってる日本政府2013年10月07日
群馬CTBT 亜鉛−65検出の意味2013年10月21日

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posted by いんちょう at 20:47| Comment(5) | 原子力

2013年10月24日

10月のブログ記事紹介−第9回院内勉強会

 ブログ記事を解説しながら、第8回の院内勉強会を開催させていただきました。雨の降る中、ご出席いただき誠にありがとうございました。(参加者4名)また、今回よりUstream生中継を行い、こちらの方は120名ほどの方にご参加いただきました。併せてお礼申し上げます。


Ustreamも録画しておりますので、前後部分も併せてご覧いただけます(全く同一です。)パソコンの画面と合成する予定でしたが、途中で録画が飛んでしまいましたので、講演のままとしております。

内容は、
・10月の記事紹介
・質疑応答(放射線で即死するのは、どういう状況かをジュウシマツ(世界は恐怖する−死の灰の正体)の動画で紹介しています。世界は恐怖する 死の灰の正体1957年制作

 次回は11月28日(木)(毎月第4週木曜日)の予定です。お申し込み
場所

◆関連ブログ
世界は恐怖する 死の灰の正体1957年制作2012年04月30日
10月24日(木)第9回院内勉強会のおしらせ2013年10月11日

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posted by いんちょう at 23:59| Comment(0) | 日記

2013年10月23日

他社に売電しながら、火力燃料費がかさんで給与を下げ、電気料金を上げる中部電力

 原発が停止して、余裕のある電力会社と余裕のない電力会社が鮮明になってきました。原発に過度に頼っていた電力会社はどこも青息吐息。
2013102301.jpg出展

これを見てお分かりの通り、一番余裕があるのが原発の全くない沖縄、そして、原発保有の少ない中国、中部と続きます。逆に、もっとも厳しいと想像されるのが、関西、北海道、四国、九州のPWR(加圧水型)を保有する電力会社。このいずれもが必死で再稼働申請しているのはご承知の通り(ランニングコストは、東電などの他電力が採用している沸騰水型原発に比べると随分と安いはずです)。ところが、原発比重の少ない中部電力までも、平均給与を下げると経済界に脅しをかけてきました。

中部電力、従業員給与の平均年収をおよそ2割引き下げる案提示
中部電力は、従業員の給与を年収でおよそ2割引き下げる案を労働組合に提示した。
中部電力は22日、2014年4月から基本給とボーナスを減額し、およそ800万円の従業員の平均年収を、およそ2割引き下げる案を労働組合に提示した。
中部電力は、浜岡原発の停止以降、燃料費の増加などで、3期連続の赤字を見込んでいて、2014年4月から、家庭向け電気料金の値上げを国に申請する意向。
給与引き下げは、その前提となる経営効率化の一環だという。
かなりの人数が雇用されている電力会社の平均給与が800万円を超えているとは、随分と余裕のある会社です。少し古い言葉ですが、いわゆる「勝ち組」なんでしょう。(そして、この高い社員の年収は当然必要経費ですから、利益のかさ上げ要因となります。さすが、電力の持つ打ち出の小槌はひと味違います。)

中部電力は、バカげた何の役にも立たないペナペナの防波堤を日本の原子力安全文化の象徴として、1000億円もかけて建設しています。
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誰がどう見ても、この程度の防波堤で本当の津波を防げるとは思えません。

そして、これを1000億円かけて整備しても、影響は軽微と断言していました

中部電:砂丘堤防に18メートルの海側防波壁を建設−工事費1000億円
  7月22日(ブルームバーグ):中部電力は22日、浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の津波対策として、砂丘堤防に高さ18メートルの防波壁を建設すると発表した。工事費は約1000億円で、2012年3月期の業績に与える影響は軽微としている。12年12月の完成を目指す。
(以下略)
更新日時: 2011/07/22 11:22 JST


 さらに、余裕のある中部電力は、電力が足りない九州電力に2011年以降、毎年売電をしています。(おそらく関西電力にも)しかも、少なからぬ量です。
2013102303.jpg
これは、2013年8月3日の実績値(九電ホームページより)
中国電力は、この日に90万キロワットも売電していますし、去年も同じような状況でした。

そして、この売電単価は・・・
九州電力:松浦発電所運転停止 自社発電より安かった…相浦止め市場調達
2013年08月06日
 九州電力は、2日から稼働停止中の石炭火力の松浦発電所1号機(出力70万キロワット、長崎県松浦市)について、少なくとも4本のボイラー管に亀裂があり、蒸気が漏れていたことを5日、明らかにした。【寺田剛】
 管は数千本あり、今後は4本以外の管についても確認作業を進める。復旧見通しは立っていない。
 九電管内の5日の電力需要は、気温が下がったため低調に推移し、最大電力需要は1365万キロワットにとどまった。電力供給に関しては、松浦1号機の停止で逼迫(ひっぱく)が懸念されていたが、他社や市場から電力を調達した方が、自社の石油火力よりも単価が安く済むことが分かったため、稼働中の相浦(あいのうら)発電所2号機(出力50万キロワット、長崎県佐世保市)を4日にあえて停止した。5日の電力供給に占める需要の割合を示す使用率は「安定供給」の85%だった。
九州電力は、自前の発電をやめたらどうでしょうか。大規模火力の燃料費の方が売電よりも高いとしたら、もはやそのような会社に存在価値はありませんから。

 他社に売電してまでしているのに、火力燃料費がかさんで赤字になったという、赤子でもわかるウソをつく中部電力。そして、それを平気で垂れ流すマスコミ。正直呆れます。
 中部電力の赤字は、バカげた原発の安全対策が理由に他なりません。それとも、博愛の精神で赤字を出してまで九州電力に売電したのでしょうか。私にはわかりませんが。

 そもそも浜岡原発は、稼働できない、してはならない原発です。


この動画、一部おかしな所もありますが、10キロ圏内を東海道新幹線が走っているのは事実。JR東海は中部電力と心中する気なんでしょうね。見上げた博愛精神です。

◆関連ブログ
日本原子力安全文化の象徴−浜岡原発の防潮堤2012年12月21日
原発ゼロの小泉純一郎と、再稼働を推進するJR東海2013年10月03日

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タグ:中部電力
posted by いんちょう at 21:21| Comment(12) | 原子力

2013年10月22日

モーニング掲載「いちえふ」−元原発技術者としての目から

 フクシマの地では、いまだに線量のみで被曝を判断しています。原発に放射線防護教育を受けたものにとっては、ものすごくナンセンスな区別です。原発構内では、放射線量の高低ではなく、汚染の有無で管理区分を設けています。仮に100mSv/hrの線量があったとしても、部屋の内部が汚染されていなければB区域(軽汚染)となり、たとえ1mSv/hr 以下の線量であったとしても、部屋の中が汚染されていれば全面マスクとなります。」線量と汚染は全く違う」ことこそが、放射線防護の初歩の初歩であり、かつ口を酸っぱくして教わったことです。

管理区域作業における装備他
汚染の程度による区分 汚染−A区域
(汚染なし)
汚染−B区域
(汚染−B)
汚染−C区域
(汚染-C)
表面の線密度
(ベクレル/cm2)
汚染の恐れなし 4未満 40未満
空気中の放射性物質濃度
(ベクレル/cm3)
汚染の恐れなし 1×10-4未満 1×10-3未満

 これを見てお分かりの通り、どこにも線量の話がありませんね。これが、放射線防護のキモなのです。

2013102214.jpg2013102215.jpg

そしておのおのの防護は、上記の通り。表面汚染が40Bq/cm2を超えると全面マスクなどが必要となるわけ。

 以上の知識を元に、モーニングのいちえふから、抜粋するかたちで、いちえふの異常性を説明します。

モーニング 2013-No.44
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に掲載された「いちえふ」
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 細部に亘って詳細に描き込まれたマンガを見ると、その恐ろしさ、異常さが浮かび上がってきます。そして、作業員(筆者)の楽観主義も

・これは「フクシマの真実」を暴く作品ではない
 このサブタイトルを見たとたん、もしかして私に対する当てつけか?と思ってしまいましたが、まあこの作者が私のブログや書籍・講演会などを見ているはずもありませんね。

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・今日は俺たちの職場、"1F"に皆様をご案内しよう
・1Fは「いちえふ」と読む
・現場の人間 地元住民 皆がそう呼ぶ 1Fをフクイチなんて言う奴はまずまずここにはいない


 まさしくこのとおり。以前「フクイチ最高幹部の独白」と言った書物が出ましたが、現場の人間が自分たちのことを「フクイチ」と言うはずがないのです。一体なぜ、このような題名にしたのか(書かれている内容をよめば、確かに現場取材したことはわかりますが)私には理解できません。「いちえふ」「にえふ」と呼ぶのが、東電・地元の習わしです。この単語を間違って使っている人間は、100%現場の経験がないと断言してよろしい。

2013102204.jpg
現場に線量表示の他にWBGT(湿球黒球温度)まで記載されているのは驚きです。また、手書きであることを見ると、毎日人力でこの数値を書き換える人間がいることもわかります。さすが、東電お得意の人海戦術。

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着替えは、楢葉町にある「Jビレッジ」で行っています。驚くのはこの装備。ここで既にB-C区域相当。ここから、放射線管理区域として扱っているわけ。こんなことは通常あり得ないわけで、事故前のいちえふでさえも、原発内に入らない限りは、普通の服装をして、時にはジョギングなどをしている人までいました。

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重要免震等に入る前には、靴カバーとゴム手を取り外しています。これは、Jビレッジから「いちえふ」までの間に汚染されたであろう靴と手袋を捨てているわけ。これもかなりの驚きです。私にとっては。

そして、筆者の感想
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 1Fから、1963年の核実験全体に相当する死の灰が飛び散ったことも当然知らないわけです。この方たちは。そして、これほどの重装備を毎日しているにもかかわらず、健康に被害が及ぶはずがないと理解していることがこのマンガ全体を通して感じられます(おそらく、このマンガの最も大きな主題は、現地の様子を教えるとともに、この現地でさえも放射能の被害は感じられないとすり込むことにあるのでしょう。だからこそ、モーニング大賞を取ることができ、掲載もされたのだと思われます。筆者にも生活がありますから、それを責めることはできません。

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現場から帰って、全面マスクを取り外せるわけですが、なぜこのような装備をしているのか、何のために、どうならないためにしているのか、全くわかっていないと言わざるを得ません。単にポーズのためとでも理解しているのでしょうか?

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もちろん、このとおりですが、
・年間20ミリシーベルト
・年間線量は4月にリセット
 原発構内では全面マスクやタイベックといった重装備をした上で、年間20ミリと決められているにもかかわらず、フクシマのその他地域ではタイベックも全面マスクもしていないのに、年間20ミリまで許容させられています。つまり、原発構内よりも、一般の敷地の方が放射線に関しては管理が緩くなっていることを意味しています。そして、放射能被曝は消えるはずもないのに4月になるとリセットされる。山下先生は年間100ミリまで何の被害も起きないと豪語していたはずですから、なぜこの厳しすぎる管理に文句をつけないのでしょうか。また、このような厳しい管理は「放射能」にたいする「風評被害」につながるとなぜ福島県庁は文句をつけないのでしょうか。

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目の前で同僚が死んでいるにもかかわらず
「死因は心筋梗塞 もちろん被曝との関連はない
だったら俺たちは皆死んでいる」

楽観主義もここまで行けば大したものです。全員死なない限り、放射能の被害とは認めない。東電、政府が泣いて喜びそうなセリフ。

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のんびりする場所も食事をする場所も必要でしょう。しかし、この格好を見ればわかるようにB区域相当。本来飲食など、もってのほかの場所であっても許可せざるを得ないわけです。私はこの状況を見て寒気がしました。

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奇形は見つける気にならなければ見つかりません。そもそも、奇形を持った牛たちは動き回れるほどの元気があるはずもなし。1000キロ以上離れた熊本でさえも数限りない奇形が見つかるのに、フクシマの地で見たことがないと言えるのはなぜでしょうか。

「現場を非常に細かく描出しており、資料としては一級の価値があるが、筆者の「思い込み」に騙されないように注意しましょう」

と述べておきます。

◆関連ブログ
放射能防護服を着ての実験農作業−大熊町から2012年06月13日
フクシマ20キロ圏内の牛(血液と筋肉のセシウム)被曝調査2011年12月15日
東日本女子駅伝参加者は、全面マスクの着用を!!2011年11月07日
全面マスク、汚染拡大を防ぐ必要のある地域2011年09月28日
フクシマからの放出放射能−核実験最盛期の全放出量さえ上回っていた2013年09月28日

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posted by いんちょう at 20:53| Comment(36) | 原子力

2013年10月21日

群馬CTBT 亜鉛−65検出の意味

 群馬高崎には、核実験監視機関CTBTがあり、一年中大気中の核実験の監視を行っています。今回のフクシマでも(なぜかしら計画停電と重なって、データのない日はありますが)きちんとデータを取っています。核分裂生成物については、あまりよくわかりませんので単にデータの過多だけを見ていました。

群馬CTBT観測結果
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CTBTに関しては、CTBT高崎観測所データがもたらす困惑と疑惑 も参考になります。

ここでトップに出ている「亜鉛−65」これが 3/15 15:55-3/16 15:55 にのみ検出されているのはなぜか。あまり気にとめていませんでしたが、俊鶻丸の責任者のひとりである三宅泰雄氏の「死の灰と戦う科学者」

内に亜鉛−65のことが書かれていました。

p.76
俊鶻丸調査団は解散し、科学者たちは研究室に帰った。しかし、仕事がそれで終わったわけではなかった。俊鶻丸の船上で観測されたデータの整理、持ち帰った海水、生物などのサンプルの分析に、彼らは忙しい夏を送らねばならなかった。その結果、予想しなかったいくつかの新事実が明らかにされた。そのうちの一例を挙げれば、魚の内蔵における放射性亜鉛65の発見がそれである。亜鉛65は核分裂生成物ではない。天然の亜鉛の中に48.9%を占める亜鉛64に中性子があたってできる。爆弾の外皮などに使われた金属中の亜鉛から生じた誘導放射性核種である。その亜鉛65がむしろ核分裂生成物より強いくらいの放射能を持って、魚の体内に濃縮されていたのである。この発見は、のちにのべる日米放射能会議の席上で発表され、海水の汚染問題とともにアメリカの科学者たちを驚かせたものである。


そして、日米科学者会議での発言
p.126 アメリカ科学者の驚き
会議は、すでに多くの研究成果と経験と知識を持つアメリカ側の科学者のレクチュアではじまり、それに対する質疑応答の形で進められた。アメリカの学者たちの報告や、彼らの持参した新鋭の器械から、私たちが大きい刺激を受け、新しい知識を獲得したことは言うまでもなかった。
 しかし、この会議に日本の科学者が積極的な貢献をしなかったわけではない。
 木村教授は久保山氏の遺体の臓器中に含まれていた放射性元素の分析結果を報告した。檜山教授や、長沢博士は魚の汚染の汚染の実態について述べた。
 長沢博士から、魚の体内汚染物質中、最大のものは亜鉛65であると報告されたときには、アメリカの科学者たちの間でざわめきが起こった。アメリカ側の代表の生物学者ピアンソン博士は「亜鉛65?これは核分裂生成物ではない」とつぶやいた。
 原水爆から出る放射性物質の大部分は、核分裂生成物である。しかし、このほかに、核分裂の際に出る中性子で、幾種類かの新しい放射性核種ができる。種々の元素の原子核が中性子を捕獲し、人工放射性元素ができる。その中の一つに亜鉛65がある。それまで、このような放射性核種で、魚が汚染されようとは、夢想だにされていなかった。
 魚の中に亜鉛65を見いだしたのは、農林省東海区水産研究所の天野慶之、戸沢晴巳氏らのグループ、国立予防衛生研究所の川端俊治氏、東京大学農学部の森高次郎教授、佐伯誠道博士(現 放射線医学総合研究所)、および国立衛生試験所の長沢佳熊博士らのグループであった。
 亜鉛65は前にも述べたが、爆弾の金属部の中にある亜鉛64(安定)に、中性子があたってできる放射性核種である。いまだに亜鉛65自体が海水中で検出されたことはない。にもかかわらず魚の中に亜鉛65が含まれていたのは、魚の体内に元素が濃縮されたためである。
 海水中の安定な亜鉛は、わずか5㎍/l にすぎない。しかし、魚の中の亜鉛の濃度は、海水中の濃度の一万倍にも達している。放射性亜鉛は海水中の安定な亜鉛とともに、魚体内に濃縮されたのである。

(このメカニズムは、人間がヨウ素131を甲状腺に取り込んでしまうのと非常によく似ています)

核分裂生成物ではない亜鉛65が一体どこからやってきたのか。炉水中に亜鉛を注入して被曝低減する研究も行っていたようですが、これは亜鉛64をさけておりますし、被曝低減対策として炉心内には亜鉛64はほとんど使われていないはず。

3号機の爆発前後の中性子線の状況
2013102101.jpg

この中性子線がオペフロに使われている亜鉛含有材料(おそらく何かがあるはず)を放射化して、大気中に放出してしまった。なおかつ、このような大規模な中性子(核爆発)反応は一度−3号機の核爆発−しかなかったために亜鉛65は一度しか検出されなかった。

と想像したら、考えすぎでしょうか。

◆関連ブログ
「海の放射能に立ち向かった日本人〜 ビキニ事件と俊鶻丸」-全部知ってる日本政府2013年10月07日
いまだに核分裂が継続し、Sb-125まで検出(メルトアウトの証拠)されているフクシマ2013年06月19日

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タグ:1F 核爆発
posted by いんちょう at 21:24| Comment(11) | 原子力

2013年10月20日

原発事故時の核汚染−年間1ミリから20ミリ許容へ−米国の環境保護庁新指針(案)

 現在年間20ミリシーベルトの避難基準を、1ミリまで下げるようにと政府と住民との間で何度も話し合いがもたれています。一方、日本の同盟国であり、世界最大の核大国である米国は原発事故などの長期に亘る放射能汚染が避けられない場合は、年間20ミリまで被曝を認めるように法律の改正を企てていました。

EPA Relaxes Public Health Guidelines For Nuclear Attacks, Accidents
グローバル セキュリティ ワイヤ紙 2013年4月8日 ダグラス P グアリノ記者
環境保護庁、核攻撃や放射能事故後の公衆衛生指針を緩和
ワシントン ー オバマ政権は、何年にもわたる内部審議及び内部論争を経て、放射性物質が放出される事故の発生または攻撃を受けた場合の対応について提案する新しい公衆衛生指針を発表した。この新指針は、環境保護庁が通常許容する指針より数千倍緩いものとなる可能性がある。
環境保護庁の文書は、「放射能事故に関する防護行動指針」と呼ばれるもので、金曜日の夕方に同庁のウェブサイトにこっそりと掲載された。同指針が目立たないように公開された後、監視団体からの猛反発が巻き起こった。監視団体はここ数週間、ホワイトハウスが一定の状況下において放射能除染作業基準を緩和することにひそかに支持を表明し、環境保護庁の新指針への道筋を作っていたというニュースに懸念を表明していた。
 環境保護庁の職員は2009年1月のブッシュ政権最後の時期において、防護行動指針を発表しようとしていた。しかし新たに登場したオバマ政権は、同防護行動指針案には、環境保護庁が通常許容する基準を何千倍も上回る汚染水を市民が飲むと示唆する指針が含まれていたこともあって、同防護行動指針案の発表を阻んだ。
金曜日に公開された新指針には、そのように著しく緩和された指針は記されていない。しかし新指針は、「必要な情報については、環境保護庁以外の連邦政府機関および国際機関が策定し各種文書に記した勧告を参考にするように」と、指針の読み手に指示している。このことは、指針の読み手が、ある状況下において環境保護庁の飲料水安全法を遵守することは非実際的と考える可能性があるということを示唆している。
 新指針によれば、ある状況というのは、「汚い爆弾」による攻撃、核爆弾の炸裂または原子力発電所の事故の後の状況である。そのような状況の回復には、何ヶ月もかかるかもしれず、あるいは何年もかかるかもしれない。新指針には法的拘束力がないが、連邦政府、州政府および地方政府がそのような状況に対応するさいの準備となることを意図している。
 例えば、環境保護庁の新防護行動指針は、国際原子力機関の指針に言及している。同機関の指針は、飲用水の放射性ヨウ素131の汚染濃度が1リットル当たり81,000ピコキューリー(3,000ベクレル)になるまでは、介入する必要性はないとしている。この汚染レベルは、環境保護庁の飲用水安全法が規定する1リットルあたり3ピコキューリー(0.111ベクレル)の27,000倍緩いものである
「この公衆衛生政策は、ストレンジラブ博士のみが容認できるものだ」と、環境保護に関する責任を担う公僕の会のジェフ ラッチ代表は、月曜日の書面において述べた。ストレンジラブ博士というのは、スタンリー キューブリック監督が製作した映画においてピーター セラーズが演じた主人公である。
 ラッチ氏は他の活動家とともに、新防護行動指針に不備な点があるのは環境保護庁の大気放射線担当責任者であるジナ マッカーシー氏の責任だと述べた。マッカーシー氏は、次期環境保護庁長官に指名されており、木曜日の上院において同氏の指名承認公聴会が行われる。ラッチ氏は次のように言った。「この新防護行動指針がマッカーシー氏に期待できる指導力を表すものであれば、環境保護庁というのは長くて汚いナメクジです。」
環境保護庁のジュリア ヴァレンタイン報道官は本紙への書簡において、新防護行動指針は特定の飲用水基準を提案するものではなく、むしろどのような指針が適切かという意見を求めるものだと述べた。同報道官は、続けてこう記した。「環境保護庁は、この点について州政府および地方政府のご意見を伺いたいと願っています。新防護行動指針に記す飲用水の適切性および可能と思われる基準値についてご意見を伺って、指針に反映させたいと考えております。」
しかしながら新防護行動指針が連邦政府官報に正式に掲載されてから90日間の意見公募期間があるとはいえ、同官報に掲載されるということは「暫定的に適用」されるということである。すなわち、即刻施行されるということだ。
 カリフォルニア大学サンタクルーズ校のダニエル ハーシュ核政策講師は、60もの監視団体を率いてブッシュ政権下での防護行動指針案の実施に反対した。ハーシュ氏は、オバマ政権下の指針はブッシュ政権下の指針案よりも悪辣だと主張する。ハーシュ氏によれば、今回の新指針は、環境保護庁の基準を定めずに、議論を呼んでいる多くの勧告を参照するようにと述べている。新指針の読み手は、詰まる所、他の無数の文書にあたって勧告を探さざるを得なくなるとのことだ。
 「本当に惨憺たるものだと思ったのは、新防護行動指針案があまりにも堕落したものだからではなく、役に立たない文書に成り下がったからです」とハーシュ氏は本紙に述べた。「緊急事態が起これば、防護行動指針を参照し、各種の表を読み、何をすべきかを知りたいというのに、今回の新防護行動指針では参考にならないのです。」
ハーシュ氏の見解によれば、マッカーシー氏は、ボブ パーシアスプ環境保護庁長官とともに、「参照すべき勧告として最も酷いものを盛り込んだ」とのことだ。そうすることで「彼らは、ブッシュ政権下の防護行動指針案とは同一ではない、と辛くも主張することができます。」
 新防護行動指針は86ページの長さだが、全編を通じて他の文書を当てにしたものとなっている。「緊急時には素早く適切な決定を下すことが求められるというのに、新防護行動指針にはいろいろな参照すべき勧告が並べられていますから、事故現場に対応する人間は、どの勧告を参考にすればいいのかわからずに大混乱するでしょう」とハーシュ氏は言う。「こうなったのは、政治のせいです。」
ブッシュ政権下の環境保護庁防護指針案が他にも議論を呼んだのは、緩やかな定義の「最適化」という取組方を除染作業に盛り込んだことだった。「最適化」された除染作業が行われる場合、放射能事故の影響を受けた地域をどのように持続的に復興させるかという決定は、環境保護庁が平時に適用する公衆衛生指針にもとづいて下される必要はない。
 国土安全保障省が最近作成した報告書案によれば、最適化した除染作業を行う場合の決定は、1年当たり100ミリレム(1ミリシーベルト)から2,000ミリレム(20ミリシーベルト)の範囲の放射線量を目標として下されることになるだろう。この放射線被曝量というのは、長期にわたって被曝した場合、約20人に1人がガンを発症すると見積もられるレベルである。これまで環境保護庁は、1980年代に制定されたスーパーファンド法にしたがって、最悪の状況においても長期的にガン発症率が1万人に1人を超えることを許容してはこなかった。
 環境保護庁の新防護行動指針が「最適化」という言葉を使用していないとはいえ、同指針が扱う種類の事故後に環境保護庁の従来の法規や指針を遵守するのは、実際的ではない可能性がある。
新防護行動指針の発表を伝えるための連邦政府官報通知の草稿には、以下のように記されている。「すでに施行されている法規の枠組みのもとで、これまで敷地もしくは施設の閉鎖または回復のための除染作業が行われてきました。今回の新防護行動指針について留意すべきことは、原子力発電所の事故、放射性『汚い爆弾』の炸裂または核兵器事故によってもたらされる汚染の程度および範囲が、これまで行われた除染作業よりも遥かに大規模になる可能性があるということです。放射能事故の深刻度が低い場合には、現行の対応指針および環境除染計画のもとで十分対応できるかもしれません。」
しかしながら監視団体の反論によれば、環境保護庁の新防護行動指針および国土安全保障省の報告書が、放射能事故処理対応者に従来の公衆衛生指針を遵守する必要はないと述べてはいっても、その対象となる事故の種類はあまりにも広範囲にわたるとのことだ。汚い爆弾による事故を想定した多くのシナリオが考えられる。しかし、汚い爆弾に汚染される地域は、多くのスーパーファンド法の適用地より狭いものになると思われる。汚い爆弾とは、従来の爆薬を使用して放射性物質を拡散する兵器のことである。監視団体の見解によれば、連邦政府の政策文書において、そのような除染作業が環境保護庁の現行の法規を遵守する必要はないと示唆することは、多くの状況に関して悪しき先例を作りかねない。環境保護庁の職員および連邦政府機関の職員の何人かも同様な懸念を示している。
 「核爆弾と汚い爆弾を混同したり、原子力発電所の事故と他の種類の事故を混同することは、知的に不正直です」とハーシュ氏は言った。「政府は、次のように言うべきです。『我々の基準は、これまで経験した事故のリスク範囲に基づいて市民を保護しようとするものですが、核爆弾炸裂といった絶対的に急迫した状況が起こるかもしれません。そのような場合、対応が難しくなることでしょうが、そういう場合であっても対応できるように計画することが我々の目的なのです。』」
環境保護庁の新防護行動指針には、放射性廃棄物投棄場として特別に設計された場所が不足しているため、放射性廃棄物を従来の埋め立て式ゴミ処理場に投棄する可能性があるとの提案が示されている。このことも反対活動家の懸念をかき立てた。
原子力情報資料サービスのダイアン ディアゴ氏は、この提案について以下のように述べた。「つまり、原子力発電所の事故は広大な範囲の荒廃をもたらす可能性があり、また膨大な量の核廃棄物を生成する可能性があると認めたということです。その膨大な核廃棄物の量は、国内の放射性廃棄物処理場の処理能力をすべて合わせても対応しきれない量なので、通常の埋め立て式ゴミ処理場に搬送されるか、焼却されて拡散して大気を汚染したり、市民の肺に吸引されると言っているのです。」ディアゴ氏によれば、新防護行動指針は、ふだんの生活におけるありふれたこととして「放射性廃棄物の埋め立て式ゴミ処理場への投棄および焼却処分を『許容可能な』業務にしようという姿勢」を示したものとのことだ。
 しかし環境保護庁のヴァレンタイン女性報道官は、新防護行動指針によって環境保護庁のスーパーファンド法の権威、既存の除染規則または現行の健康安全基準が影響を受けることはないだろうと述べた。新防護行動指針にスーパーファンド法の権威、諸規則および諸基準が多くの状況において適用されない可能性があると記されているにもかかわらず、これらの法規が新防護行動指針に影響されないだろうと言っているのだ。同女性報道官によれば、「環境保護庁は、除染作業基準を緩和しているのではなく、むしろ大惨事の影響への対応と現行の環境基準との間に橋を架けようとしている」とのことだ。


放射能事故に続く国民のがん死亡、うなぎ上りの見込み
2013年4月14日 環境に関する責任を担う公僕の会
 ホワイトハウスは、原子力発電所の事故および汚い爆弾の爆発などの「放射能事故」が起きた場合、事故後の飲料水および土壌における放射能許容水準の大幅引上げについて最終認可をくだした。環境に関する責任を負う公僕の会によれば、本日にも発表される連邦政府官報記載用の最終草稿は、アメリカ市民への放射能被曝に関して「新たな標準」を求める原子力業界の勝利を示すものであった。
 環境保護庁が発行した「放射線指針」(通称は「防護行動指針」で、以下の和訳にも「防護行動指針」と記載)のもと、同庁が従来許可したものより何倍も緩い除染作業が許可されることになる。これらの基準は、広範囲な「放射能緊急時」における避難、避難所の規律、食糧の規制および他の行動に関するものである。オバマ政権は、その第1期政権のとき、これらの指針の施行を阻んだ。この金曜日に認可されたものは、ブッシュ政権下に提案されたものと実質的に同様であるが、最も議論を呼ぶ点に関しては回避したものとなっている。
 防護行動指針は、土壌について国民の長期的被曝量を最高2,000ミリレム(20ミリシーベルト)まで許容している。長年、ガン発症リスクは1万人に1人を超えないようにとされてきた。しかし、この防護行動指針が施行された場合、30年以上にわたって放射線被曝を受けたとき、ガン発症リスクは23人に1人に増加することになる。
防護行動指針は、水に関する正確な新基準作りを後回しにしており、「この点については継続して検討する」としている。しかしながら、防護行動指針を作成する狙いは、放射能事故現場の管理者が現行の基準を無効または停止するにあたってより大きな「柔軟性」を持てるようにすることである。
環境保護庁では、原子力の専門家と公衆衛生の専門家との間で対立があったが、原子力の専門家に軍配が上がった。防護行動指針は、大気 放射線担当のマッカーシー副長官の成果である。同氏の環境保護庁長官就任について、今週、上院で指名承認公聴会が行われる。
長年にわたった内部対立にも関わらず、これらの指針が初めて公的に提示された。日本がフクシマ以降2年において同様な問題に取り組んで来たことを受け、今回の指針の提示となった。
「この公衆衛生政策は、ストレンジラブ博士しか受容できないものです。この政策がマッカーシー氏に期待出来る指導力を示すものなら、環境保護庁は、長くて汚いナメクジです」と、環境に関する責任を担う公僕の会のラッチ代表は述べた。同氏は、環境保護庁の新指針に説得力のある正当性が欠けていることはほとんど不可解であり、この政策は婉曲語法の「玉虫色」の言葉を連ねて定めたものであると指摘した。
ラッチ氏は以下のように付け加えた。「アメリカ市民は、組織の判断ミスによる影響を無意識に受けてガンの発症率を何百倍も増加させられることになりますが、それについて何ら説得力のある正当性がないのです。」
 伝えられるところによれば、防護行動指針は去年の秋に承認されたのだが、その公開は大統領選挙が終るまで差し控えられたとのことだ。マッカーシー氏の指名承認公聴会の直前に防護行動指針が公開された所以は明らかではない。
防護行動指針は、行政機関の意思決定にあたっての指針であり、正式な標準を定めているものでもなければ、飲料水安全法およびスーパーファンド法などの法的要件を無効にするものではないため、短期間に行われる意見公募手続を経て全面的に施行される。そのように簡単に施行されるものであるにもかかわらず、防護行動指針は、放射能緊急時から数日、数週、数ヶ月、場合によっては数年にわたって地上でどのような行動を取ることにするかを決定するもののようである。


100以上の団体、環境保護庁の放射能拡散に関する緩和策に反対
2013年9月16日 ウィスコンシン ガゼット
 100以上の環境団体は今日、ジナ マッカーシー環境保護庁長官に新防護行動指針を撤回するよう訴えた。同指針は、政府が市民を守るための行動を取る前に、市民が拡散された放射能に多量に被曝してしまうことを許容するものである。
 ニュース報道によると防護行動指針の目的は、日本の福島、ウクライナのチェルノブイリおよびアメリカのスリーマイル島などの原子炉の事故、「汚い爆弾」の爆発、核燃料および兵器施設からの放射能拡散、核輸送事故ならびに他の態様における放射能の拡散に対応する指針を提供することである。
 政府の見積りによれば、旧防護行動指針の公布以来、放射線による健康への危険性は著しく高まっており、今回の新防護行動指針は、放射能拡散後の中長期的期間において「許容可能な」被曝量を著しく増加させることを意図するものである。
反対団体は、その各々の抗議文書において新防護行動指針を以下のように記している。
飲料水について5つの選択肢を提示しているが、それらは飲料水における放射性物質の濃度を著しく増加させたものであり、環境保護庁による現行の飲料水安全法の規定と比較すると、27,000倍も高くしている。
長期的な除染水準を緩和するものである。
食品の許容汚染基準は、高度の汚染基準と時代遅れの基準を組み合わせたものとなっている。
甲状腺および皮膚に多量の放射線被曝を受ける危険性のある人々を避難させる要件を排除するものである。
生涯における全身被曝限度量を排除するものである。
放射性廃棄物の投棄場所として設計されていない地方自治体の廃棄物投棄場に、放射性廃棄物を投棄することを勧めるものである。
違いに橋を架ける会のダニエル ハーシュ会長は、次のように述べた。「市民の放射線被曝を制限する防護的行動を求めるというよりは、むしろ環境保護庁は、市民が従来許容可能と考えられていた被曝より遥かに多く被曝することを認める、と言っているのです。」
 原子力情報資料サービスのダイアン ダリゴ氏は、次のように付け加えた。「環境保護庁は、放射線というものは以前考えられていた以上に毒性があると今では認めているのに、放射線基準を規制するどころか緩和しようとしているのです。」
 反対団体は、マッカーシー環境保護庁長官に「放射性核種に関する防護行動指針」(文書番号第 EPA-HQ-OAR-2007-0268号)について、38ページにおよぶ書簡を送付した。
この書簡には以下のように記されている。「オバマ政権が今回発表した防護行動指針は、多くの点において、ブッシュ大統領が提案したものと同程度に懸念に満ちたものです。また特定の点に関しては、公衆衛生の保護を緩和しようとさえしています。いくつかの点においては、上辺だけの変更がなされました。例えば、新旧の指針において同じような懸念について記されている場合、新指針ではその表現をより曖昧な言葉で記しています。しかし、問題の核心は、防護行動指針が市民を被曝から守る防護的行動を明確化するより、被曝制限目的の防護的行動を勧めることなく市民に多量の被曝を許容するものとなっていることです。我々は、防護行動指針の撤回を求めます。」
書簡に署名したのは、以下の団体の代表者である。
市民の会( Public Citizen http://www.citizen.org/Page.aspx?pid=183
核を超えて( Beyond Nuclear http://www.beyondnuclear.org/
グリーンピース( Greenpeace http://www.greenpeace.org/international/en/
天然資源防護委員会( Natural Resources Defence Council http://www.nrdc.org/
生物学的多様性センター( Center for Biological Diversity http://www.biologicaldiversity.org/
きれいな水を求めて行動する会( Clean Water Action http://www.cleanwateraction.org/
フクシマからの放射性降下物を知る会( Fukushima Fallout Awareness Network http://ffan.us/
シエラクラブ( Sierra Club http://www.sierraclub.org/
核の見張り番( Nukewatch http://www.nukewatchinfo.org/
ロッキー山脈の平和と正義の会( Rocky Mountain Peace and Justice Center http://rmpjc.org/


環境保護庁の対応指針に関して反目する原子力産業界と政治家
2013年9月23日付けグローバル セキュリティ ニュースワイヤー ダグラス P グアリオ記者
ワシントン ー 原子力業界と何人かの民主党上院議員は、アメリカ環境保護庁が新たに発表した放射能事故対応の指針をめぐって反目している。何人かの議員は同指針の基準が公衆衛生を保護するものでないと懸念する一方、原子力業界は同指針がさらに緩和されることを望んでいる。
新しい防護行動指針は4月に環境保護庁が発行したもので、同指針に関する意見を9月16日まで公募していた。同指針の目的は、連邦政府、州政府および地方政府に対し、「汚い爆弾」の爆発、原子力発電所のメルトダウン、国内の兵器施設における問題などの広範囲な放射能事故後の対応について助言を与えることである。同指針が議論を呼んでいる一つの理由は、飲用水および長期的除染に関して長く実施されてきた公衆衛生の指針が、一定の状況において著しく緩和される可能性があるからである。
ある議員側近によれば、何人かの民主党上院議員は、新指針が市民を十分に保護をするものではないと懸念している。議員が正式な意見公募期間に意見を提出しなかったとはいえ、彼らは自らの懸念を環境保護庁に伝える意向とのことだ。「例えば、新指針に関する意見を何らかの形で伝えたり、マッカーシー環境保護庁長官に書簡を送付することなどで意見を表明することになるでしょう」と上述の議員側近は匿名を条件に語ってくれた。この議員側近が名前を明かせないのは、この問題について述べることを許されていないからとのことだった。
一方、原子力業界は、新指針は放射能事故に対応する指針を十分に緩和していないと主張している。原子力業界を代表する原子力エネルギー協会は9月16日に書簡を提出し、環境保護庁は、よりよい仕事をして、市民を放射線被曝から守ることと他の考慮事項との間のバランスを取る必要があると述べた。
原子力業界の意見書は次のように記している。「2011年に日本で地震に続いて、津波および原発事故が起きたことで、基準を緩和する重要性が高まった」というのが原子力業界の意見である。「いくつかの決定が一つの目的(この場合、放射線被曝を防護するという初期の意図)のために下されました。しかし非常に混乱を来すものであったため、社会に資するものであったというよりも社会的損害をもたらしたかもしれません。」
このような主張を裏付けるために原子力業界は、今年発表された2本の論文を引用した。一つは民間の国際放射線防護委員会の論文で、もう一つは世界保健機関による論文である。しかしながら、いずれの論文も防護行動の基準を緩めていた場合、日本の市民の利益になったであろうという直接的な証左を提供するものではない。
原子力業界の意見とほぼ同様に、国際放射線防護委員会の委員による論文が考察しているのは、防護行動と他の一般的な考慮事項との間でバランスを取るという概念についてのみである。
「例えば、人々を彼らの自宅から避難させることは明らかに通常の生活に深刻な影響をもたらします」と国際放射線防護委員会の委員は言う。「必ずしもすべての決定が正当化されたわけではありませんし、本当に利益よりも損害をもたらしたのかということも明らかではありません。」
しかしながら国際放射線防護委員会の委員は、日本においてどの特定の行動に関する決定が明らかに正当化されなかったのかについて詳述しなかった。また同委員は、避難させた人々が自宅に残っていた場合、彼らの総体的な幸福感が増したであろうというデータを提示することもなかった
同様に世界保健機関の論文は、防護行動に関する決定を下す際には、精神的な健康に関わる「放射能リスクおよび非放射能リスクの両方」を考慮しなければならないと述べている。予備的調査にもとづいた世界保健機関の論文は、「フクシマ事故に起因する放射線被曝による日本内外での健康への影響は、社会経済的な影響よりも少ないようである」としている。しかしながら同論文は、メルトダウン後の特定の防護行動を制限していた場合、全体的な状況を改善させたであろうとは述べていない。
環境学者は一方、環境中に放出される放射性物質の量に関して新たな情報が引き続き提供されていることを考えれば、世界保健機関がフクシマのメルトダウンによる健康への影響が長期的には限定されるだろうと示唆することさえ時期尚早だと主張している。
「今何が起きているかを考えてみましょう。日本では大量の放射性物質を海に投棄しています。そのようなことは2011年には誰も予測していませんでした」とカリフォルニア大学サンタクルーズ校のハーシュ核政策講師はグローバル セキュリティ ニュースワイヤ紙に語った。「私たちの多くが、魚を摂取することでガンを発症する可能性があります。」
たとえ健康への影響についての予備的見積が信頼できるものであったとしても、防護行動を緩和することは正当化できない、とハーシュ氏は主張する。ハーシュ氏の環境保護庁の新指針に対する批判は、100以上もの監視団体も支持している。 「何か申し上げようとすれば、世界保健機関は、フクシマでの防護行動が成功したので同様な状況において繰り返されるべきだと示唆しているのでしょう」とハーシュ氏は語った。
原子力エネルギー協会の放射線安全 環境防護担当上級管理職であるラルフ アンダーセン氏は、グローバル セキュリティ ニュースワイヤ紙への書簡において以下のように述べた。「世界保健機関の報告書は、日本における防護行動が逆効果であった可能性があると直接的に述べるものではありません。むしろ、そういう可能性があったのではないかと推論しているのです。」
「我々が申し上げたいのは、権威ある機関が日本における防護行動を評価したうえで利益より損害を生んだと明白に結論付けたということではありません。後からとやかく言ったり、責任のなすり合いではないのです」とアンダーセン氏は言った。そして以下のように付け加えた。「むしろ我々は、フクシマの教訓を活かし、防護行動についての意思決定を下すさい、バランスを取ることの必要性を認識し、柔軟性を高めようと申しているのです。」
原子力業界は、環境保護庁の新指針がそのような必要性を認識し柔軟性を高めるものとなるべきで、そのためには、放射能事故のさいの市民の避難時期に関する指針を緩和する必要があると一方的に述べている。
新防護行動指針によれば、避難に関する決定を下すさいには、市民の事故後1年以内の被曝量が2,000ミリレム(20ミリシーベルト)および事故後1年以降の年間被曝量が500ミリレム(5ミリシーベルト)を超えないように尽力すべきであるとしている。原子力業界は、これを「保守的」であるとし、国際原子力機関の指針にしたがって、年間2,000ミリレム(20ミリシーベルト)から10,000ミリレム(100ミリシーベルト)の範囲を適用すべきだと勧告している。
従来、50年にわたる被曝量を5,000ミリレム(50ミリシーベルト)に抑えることが推奨されていたが、環境保護庁の新防護行動指針は、この基準を排除するものである。原子力エネルギー協会は、今回の環境保護庁の基準排除を支持している。そして、新防護行動指針が長期間の除染は「広範囲の要因を考慮せねばならない」と記したことも支持したうえで、環境保護庁の通常の除染規則は実行可能ではないとしている。
環境保護活動家は、何人かの環境保護庁職員および州政府職員とともに、このような意見に反対している。環境保護活動家の主張によれば、スーパーファンド法は平時に適用されるものだが、環境保護庁が長期的除染活動の策定を規定するスーパーファンド法を放射能事故後にも遵守すべきだとしている。そうすることで、市民が最悪の事態において放射線に被曝したとしても、市民のガン発症率が1万人に1人を超えないようにすべきだと主張しているのだ。ちなみにスーパーファンド法が理想的な目標として掲げているガン発症リスクは、百万人に1人である。
100以上もの反対団体が署名した文書には、以下のように記されている。「『スーパーファンド法適用地』と呼ばれる場所がありますが、それらは州の半分もの大きさで非常に高度に汚染されています。例えば、マンハッタン計画が行われたワシントン州のハンフォードなどです。スーパーファンド法が規定する1万人に1人というガン発症リスクは、このように広大で高度に汚染された『スーパーファンド法適用地』においてでさえ、合理的であると受け入れられてきました。それゆえ、環境保護庁の新防護行動指針がガン発症リスクを緩和すべきではありません。」同文書に署名した団体として、天然資源防護委員会、社会的責任を担う内科医の会およびシエラクラブなどが挙げられる。
上述の文書は、9月16日付けで環境保護庁長官宛に送付されたが、以下のように主張している。「防護行動を緩和または縮小する主な理由は、大規模な放射能除染に繋がる可能性のある事業を行う業界および組織の除染に関する費用削減と責任回避です。主に、原子力発電業界、核兵器燃料サイクル組織およびそれらの下請企業の除染に関する費用削減と責任回避を目的としているのです。」
ほとんどの公的見積によれば、30年にわたって1年当たり2,000ミリレム(20ミリシーベルト)の放射線に被曝した場合、20人に1人がガンを発症すると見られている。一方、30年にわたって1年当たり10,000ミリレム(100ミリシーベルト)の放射線に被曝した場合、ガン発症リスクは上がり、約5人に1人がガンを発症すると見積もられている。
汚染飲料水に関する意思決定について環境保護庁の新防護行動指針は、平時に適用される飲料水安全法を参照するようにと記している。飲料水安全法は、市民が1年当たり4ミリレム(0.04ミリシーベルト)を超えて被曝しないようにと規定するものである。しかし、新防護行動指針は、放射能事故が起きた場合、はるかに厳しくない指針を考慮する意義があるとし、同指針の読み手に場合によっては27,000倍も緩い基準を示す国際原子力機関の勧告を参照するようにと述べている。
原子力業界の主張によれば、環境保護庁は、平時に適用する飲料水安全法を、放射能事故の直後の対応においてだけではなく、中長期的な対応においても適用すべきではないとしている。事故後の中長期的対応というのは、何年にもわたる可能性がある。原子力エネルギー協会は、平時に適用される飲料水安全法は、ガン発症リスクに関する「閾値なし直線モデル」に基づいているとの苦情を呈している。閾値なし直線モデルとは、放射線被曝には安全なレベルというのは一切なく、ガン発症リスクは被曝量に直接比例するというものである。
米国科学アカデミーは、他の学説を拒絶し、基本的に日本の原爆生存者に関する調査と他の統計に基づいて「放射線被曝に安全なレベルはない」との提言を行った。環境保護庁は、同アカデミーの勧告に基づいて「閾値なし直線モデル」を使用している。しかし原子力業界は、飲料水に関する基準策定において、米国科学アカデミーのモデルを「考慮しても良いが依拠すべきではない」とし、「放射能汚染水を実際に飲用した経験に基づく健康被害の統計」を使用すべきだと主張している。
環境保護活動家は、ガン発症リスクを見積もる米国科学アカデミーのモデルから逸脱することに反対しており、環境保護庁の新指針が同モデルから逸脱する可能性があると懸念している。環境庁の新指針に関する9月16日付け意見書において、原子力情報資料サービスのダイアン ダリゴ氏は、環境保護庁の平時に適用される規則の緩和に賛成している同庁の何人かの職員が、国際機関および外国政府機関の職員へのプレゼンにおいて米国科学アカデミーのモデルに異議を唱えたように思われるとの懸念を表明した。グローバル セキュリティ ニュースワイヤ紙の記事を引用しながらダリゴ氏は、あるプレゼンにおいて米国科学アカデミーの閾値なし直線モデルとホルミシスモデルとの比較が行われたと指摘した。ホルミシスモデルとは、かつて環境保護庁および米国科学アカデミーの科学者が否定したものであり、低線量の被曝は実際には有益というものである。
州政府および地方政府の職員は、環境保護庁の新指針に複雑な反応を見せている。ワシントン州健康省放射線事務所は、事故後短期間においては飲料水の指針を緩和すべきだが、環境保護庁の新指針が引用した国際原子力機関の指針のように緩和しすぎるべきではないと述べている。
ワシントン州政府健康省は9月10日付けの意見書において、汚染水のヨウ素131の閾値を1リットル当たり2,700ピコキューリー(99.9ベクレル)とするのは、平時に適用される環境保護庁の飲用水安全法の1リットル当たり3ピコキューリー(0.111ベクレル)と比べると、900倍も緩いと指摘している。同州政府健康省の主張によれば、日本のフクシマ事故後の初期段階において環境保護庁の飲料水安全法に従ったならば、太平洋をわたった放射能降下物に汚染された雨水についての防護行動を実行しなければならなかっただろうとのことだ。
同州政府健康省によれば、フクシマ事故後の初期段階においてワシントン州の雨水は、放射性ヨウ素131による汚染の法的限界を「少なくとも50倍」超えていた。同州政府健康省は、平時に適用される環境保護庁の飲用水安全法は70年にわたる被曝を想定していると主張したうえで、フクシマ直後のこの雨水の汚染レベルでは「なんらの健康リスクも存在しなかった」と強く述べている。
ワシントン州政府健康省と同様にイリノイ州緊急対策機関も、平時に適用される環境保護庁の飲用水安全法は放射能事故直後には厳しすぎるが、国際原子力機関の勧告は緩すぎると考えている。イリノイ州緊急対策機関は次のように指摘した。「 環境保護庁は、飲料水安全法において飲用水の汚染基準を1年当たり4ミリレム(0.04ミリシーベルト)としている。その一方で、環境保護庁は新防護行動指針において、放射能事故後は国際原子力機関の基準である1年当たり10,000ミリレム(100ミリシーベルト)を参照するようにと述べている。」このように指摘したうえでイリノイ州緊急対策機関は、1年当たり500ミリレム(5ミリシーベルト)を超えないようにという指針を勧めている。
環境保護庁はこれまで、50年にわたる放射線被曝量を5,000ミリレム(50ミリシーベルト)に制限するよう勧める防護行動指針を示して来た。今回の新防護指針は、この従来の防護行動指針を削除するものである。イリノイ州およびワシントン州政府は原子力業界と同様、この今回の削除を支持している。しかしながらイリノイ緊急対策機関は、「除染にさいしては危険性を告知する制限的な取組み」を支持している。長期にわたる除染作業は通常、スーパーファンド法にしたがって行われるべきだと明言しているのだ。
カリフォルニア州知事緊急サービス事務所は以下のように述べた。「平時に適用されるスーパーファンド法の除染作業指針は選択肢として提示されるのではなく、放射能事故後の長期的除染作業に関する規則として制定されるべきです。」また同事務所は、平時に適用される飲用水安全法が放射能事故後においても適用されることを支持している。

(付録)
以下は、ダイアン ダリゴ氏が意見書に引用したグローバル セキュリティ ワイヤ紙の2013年9月11日付け記事から「被曝量とガン発症リスク」の箇所を訳したものです。
2013年9月11日
グローバル セキュリティ ニュースワイヤ
ダグラス P. グアリノ記者
環境保護庁の新指針に疑念の声
http://www.nti.org/gsn/article/epa-documents-raise-doubts-over-intent-new-nuclear-response-guide/

(抜粋訳)
被曝量とガン発症リスク
環境保護活動家によれば、環境保護庁職員の放射能事故後の除染に関するプレゼンは、閾値なし直線モデルの他に科学的に有効な選択肢があると示唆しているという。そのため、同庁のすべての放射線規制のもとになっている「ガン発症リスク」に関する科学に異議を唱えているように見受けられるとのことだ。
2012年5月、環境保護庁緊急対策事務所のカーダレリ氏が、フクシマ事故に対応している日本政府職員にプレゼンを行った。このプレゼンにおいてカーダレリ氏は、政府職員は「リスク分析方法の限界を率直に認めるべきだ」と述べた。このリスク分析方法とは、ガン発症と被曝量との相関関係を予測するために使用される数理モデルのことである。
[訳注: 参照サイト
John Cardarelli
アメリカ環境保護庁のカーダレリ氏が2012年5月19日に福島で行ったプレゼンテーション(PDFファイル)。多くのスライドが掲載されています。
US EPA Decontamination and Risk Communication Strategies May 19, 2012 A May 2012 presentation?to Japanese officials]

米国科学アカデミーの勧告にしたがい、環境保護庁の公式な政策はいわゆる「閾値なし直線モデル」に基づいて策定されている。「閾値なし直線モデル」とは、日本の原爆生存者に関する調査および他の統計にもとづくものだが、放射線への被曝には安全な水準というものは一切ないという学説である。このモデルは、ガン発症リスクは、個人が受ける放射線被曝量に比例して増加すると仮定している。
しかしながらカーダレリ氏のプレゼンで取り上げたホルミシスモデル等の学説は、環境保護庁と米国科学アカデミーがかつて否定したものだった。ホルミシスモデルとは、低レベルの被曝であれば実際は有益とするものである。
環境保護庁は本紙への文書において、プレゼンで取りあげた「すべてのモデルには裏付けとなる技術的情報がある」と主張してカーダレリ氏のプレゼンを擁護した。プレゼンで言及されたのは、ホルミシスモデル、放射能の危険性は米国科学アカデミーの科学者が認識していたものより低いと考えられるという学説、および、放射能の危険性は従来考えられているものより高い可能性があるという学説である。環境保護庁の文書には、「科学界は、放射能の健康への影響についてまとまっていないのです」と記されている。
ハーシュ氏は、同プレゼンが他の選択肢として引用した学説を「いかがわしい科学のばかげた話」と述べて、環境保護庁のプレゼン擁護を一刀両断に切り捨てた。
「この点について科学界の見解はまとまっていないだって?」とハーシュ氏は続けた。「放射線の健康への影響について、米国科学アカデミーが研究したのですよ。そして、同アカデミーの科学者が全員一致で、『そうだ。放射線の健康への影響モデルとして正しいのは、閾値なし直線モデルだ』という結論に至ったのですよ。例えが不適切かもしれませんが、気象変動否定主義者が『科学界はこの点についてまとまっていない』と言うようなものですね。このような言い方をして、米国科学アカデミーが放射線の問題についてさも小物のように思わせようとしているのです。そして、米国科学アカデミーが環境保護庁と同程度のものだという印象を与えようとしているのです。」
2012年9月にアメリカ国土安全保障省が主催した省庁間会議でカーダレリ氏が行ったプレゼンは、環境保護庁の規制が科学と対極にあり、同庁のガン発症リスクにしたがうことと「実際的な除染」を行うことも対極の位置関係にあると示唆しているようだ。
[訳注: 以下は、2012年9月のガーダレリ氏のプレゼン資料のPDFファイルのリンク。フクシマの除染作業の写真が沢山掲載されています。
September 2012 presentation by Cardarelli to an interagency group led by the Homeland Security Department]
このプレゼンでガーダレリ氏は、フクシマ事故により「我々の考え方を根本的に変える」必要が生じたと述べ、1年当たり100ミリレム(1ミリシーベルト)という基準を選択肢として言及した。1年当たり100ミリレム(1ミリシーベルト)の放射線に30年被曝した場合、米国科学アカデミーおよび環境保護庁が認めた危険率を使って計算すると、300人に1人がガンを発症するという見積もりになる。
国際放射線防護委員会の見積もりでさえ、ガン発症リスクを400人に1人としている。そして、この400人に1人というリスクは、環境保護庁の規則が最悪の状況において通常許容するリスクの約25倍高いものである。(抜粋訳了)
翻訳についてのお断り
 原文には、日本語での通称がわからない団体が出てまいりました。それらについては、英語での名称をカタカナ表記にすることを考えましたが、そうすると団体の性格が伝わりづらくなります。それゆえ、英語の名称を日本語に置き換えました。訳注に参照サイトのリンクを貼った通称不明の団体には、翻訳した日本語での名称を記した上でカッコ内に英語の名称を記しています。
 原文では、放射線単位をミリレムとピコキューリーで記しています。訳文においては原文の数値および単位をそのまま記した上で、カッコ内にミリシーベルトまたはベクレルに換算した数値を記してあります。
 原文を文法通りに一字一句きっちり訳していくと、日本語として非常に読みにくくなる箇所があります。その場合は、関連記事にあたって背景を探り、原文の意味を違えないように言葉を付け加えたり、あまりに長い一文をいくつかに区切ったり、文の並びを入れ換えたりして日本語としてなるべく読みやすくなるように致しました。


米国が、日本の基準以上に被曝基準を緩めようとしているのですから、フクシマの現状を国連に訴えても何の意味もないことが良くわかるのではないでしょうか。東京オリンピックも世界の原子力村が仕組んだ茶番(日本の首相が何を言っても、通常は、国際的には誰も信用しないのは常識です)だと見抜かない限り、真の敵は見えてきません。安倍は世界に恥をさらしたのではなく、単なる操り人形の一人なのですよ。

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2013年10月19日

広島原爆の奇形状況−マルタン・モネスティエ の奇形全書

 放射能で奇形が生まれることは、世界中の科学者の常識で有りながら、「科学」の非常識と言われています。
 最も生々しいと思われる証言は、 広島の助産婦の証言 ー ヒバクによる奇形  です。おそらく、大変な数の助産婦たちがおなじ経験をしたはずなのですが、ほぼ全員が口をつぐんでいます。このような行為は人間でなければ起こりえないことです。奇形については、いろいろと調べていますが、ネットを検索していて、興味深い本を入手しましたので、ここでこの一部をご紹介いたします。(現在、絶版のようです)



p.399 第5部 現代の奇形
フランスの150万人の「奇形児」奇形児
 児童精神医学の専門家メール・デルキュシ博士はこの数字を裏付け、それぞれの子供に両親がいるから、合わせて450万人の人々が直接奇形と関わりがあると述べて人々を驚かせた(この数字は、身体、頭脳、運動系のすべての障害者を合わせたものである)。この数字は増加しているのだろうか。
 一九五八年に、パリでは3OOO人に一人の割合で奇形児が誕生した。この年に1OO万人の子供が誕生したフランス全土にこの割合を当てはめると、年間33OO人の奇形児が生まれたことになる。完全な奇形ではなく肉体の一部に障害のある者については、その数は数えきれないほどであり、単に解剖学的な変形に留まる者について言えば、さらに膨大な数となる。
 一九六二年には、年間一万人の「奇形児」が誕生した。一九六八年のユネスコ会議において、高名な遺伝学の権威であるラミー博士が恐るべき数学をあげた。たとえば、モントリオールの病院で子供たちに実施された調査によると、子供たちの11パーセントが遺伝的疾患に躍っており、18パーセントが原因不明の先天性問主の持ち主であった。この年にヨーロッパ諸国で誕生した子供の1OO人につき一人が、将来肉体や精神に一部あるいは取度の影響を及ぼす染色体異常だと、会議では考えている。
  一九七七年、フランス遺伝院学週間に、医者たちは、フランスでは毎年、12OOOから18OOO人の子供が一つ以上の重度の先天性疾患を抱えていると結論を下した。すなわち、月満ちて生まれた新生児の2パーセント、言いかえれば50人に1人である。
   現実を考えると、これでも楽天的な結論である。一九七八年八月に世界的権威を集めてモスクワで開催された世界遺伝会議の終わりに、ロシアの生物学者ニコライ-P・ドュピニンが、奇形児の出生の割合が25年間に8倍になっていると発表した。その数字は一九五六年には4パーセント、一九五九年には6パーセントであったが、一九七八年には10.8パーセントに遣している。人類の未来に深刻な脅威を投げかけるこの遺伝形質の悪化は、様々な放射線の増加、人体の細胞内に似入する化学物質の増加によって説明がつくだろう。科学が発達した我々の文明は、環境中に突然変異の要因となる物質を驚くほど大量に生み出したらしい。

(中略)

とくに、今日世界中が認めているブエ教授の研究のおかげで、臨月で生まれた奇形児はたいていの場合、奇形児を妊娠した女性を自然流産させようとする自然の選別からの「生き残り」であることが知られている。妊娠初期の三ヶ月間に自然淘汰された胎児の約六〇パーセントは異常児すなわち奇形児である。遺伝学者は、母親が妊娠五ヶ月以前に早産した胎児では、この割合が九〇パーセントに達すると述べている。遺伝学者のクレール・プリセはこの件に関して、「ル・モンド」紙にアンリオン教授の見解を紹介した。教授はこの件について、ときには不適切な時期に、医者が介入し過ぎることを公然と非難している。しかし、彼はまた、医者の側の事情も指摘した。「今日妊娠は、非常に計画的になっており、カップルは失敗したという考えに我慢できず、たいてい医者に圧力をかける。ときには医者としても反対し難いことがある」。
 奇形児の淘汰の問題を考えその出産を抑制する以前に、自然自体が生命を与えない時代が来ているのではないだろうか。

(中略)

奇形児は殺すべきか
 今日も議論は続いており、奇形児の安楽死に関して結論は出ていない。医者の見解も分かれている。ある人々は次のように主張する。確かに、社会的見地からも道徳的見地からも、哀れな奇形児を生き長らえさせることは望ましくない、本人にとっても周囲の者たちにとっても、数年間、きわめて苦痛に満ちた人生を生きるしかないのだから。大勢の医者の意見を聞いた結果、次のように言うことができる。非常に深刻で治療の不可能な一部のケースでは、医者によっては、生まれたばかりの奇形児を生かしておかず、きわめて例外的な状況で両親にも子供本人にも「善行」を施したと誠心誠意信じて、子供は死産、あるいは数時間しか生きられなかったと報告する。また別の医者たちは、こうした「淘汰」は、認めることも反対することもできない、倫理的な断定を下すのはおこがましい、と言う。判断は母親だけに任せるべきである。母親だけが、自分の良心に問うて、自分一人でこのジレンマに結論を出すことができるというのである。このような医者たちは、以上のようなわけでしばしば両親を呼び出し、ほぽ次のような科白を告げる。「お子さんは確かに障害者です。お二人や社会にとって将来重荷となるでしょう。私の子供ならば等々」。それから蘇生術、静脈栄養、その他の延命措置を中止する許可を求める。ほとんどの場合、両親はこの許可を与えない。何がなんでも子供に生きていて欲しいと願う。不具の程度が軽いことを当てにして、そして何よりもすでに愛情を感じているからである。
 三番目は、新生児がどんなに不幸であろうがおかまいなく、いかなる安楽死にも断固反対する医者たちの立場である。彼らの言い分に十分な論拠のあることは認めざるを得ない。彼らは次のように主張する。そもそも数十年前には、奇形児が生まれたら実際にはなす術はなく、生まれたままの状態で置かれたが、現在では打つ手は無数にある。生まれた子供が他の子供たちと同じにはならないことを示す一定の症状が認められたとしても、最近までは、遅かれ早かれいずれ死亡するか、あるいは決定的に「障害者」の部類に入れられていた数多くの異常が、現在では医師、とくに外科医の治療を受けられるのである。緩々な手術により、ありとあらゆる小さな陣宮が明らかに取り除かれ、骨や筋肉の移植により、動いたり、歩いたり、手足を使う機能を回復している。
 我々にはさらに判断の難しい第二の論点は、肉体的に障害のある子供は幸福な人生を送れるかという点である。下肢が発達せず、体のそれ以外の部分が完全に変形した30歳の先天性障害者が次のように述べている。「私が結婚して、妻が障害児を生んでも、その子どもを殺させたいとは思いません。たとえ手や足がなくとも、そうしたきわめて特殊なアウトサイダーにふさわしい環境で幸福に暮らすことができます」。これほど明快な答えはない。この問題について尋ねられた小児科医は次のように答えている。「なぜ、奇形児を生まれたときに殺すのですか。大きくなって結核性脳炎に権り、脳に障害を負った子供を助けるではないですか。その子供たちを殺すべきか否かなどという疑問を出す人はいません。その命は短い。しかし決して不幸ではありません」。
 完全な無知から生じたこの幸福に関する問題について大勢の人々が、幸福という観念を判断できるのは誰かという哲学的な議論を展開している。「奇形児」の延命にきわめて好意的なもう一つの意見がある。多数の母親が、ぞっとして奇形児を見捨てるどころか、健常な子供よりもかわいがり、カの限り献身する。母性愛が嫌悪感にはるかに勝るのである。

(中略)

現代の奇形
 出産の異常、生命が発生する過程の法則の乱れに関しては、普通、偶然を恨むしかないが、それ以外に、とくに人間によって作り出された、人間の過ちあるいは無関心の結巣でしかない奇形も存在する。たいていの場合は、付随的な出来事から生じたもので、その結果は予期せぬものとはいわないまでも、少なくとも予測し難い重大なものであったことが判明したのである。
 中でも深刻なものは、たとえばX線の害である。妊娠中の女性がX線織影を受けると、大頭症や、骨格に奥常のある子供だけでなく、完全に白痴の障害児を出産する恐れがある。

原爆症
 ときには有害光線の影響が、きわめて激しいこともある。一九四五年以後、ある調査団が、周知のように世界で最初に原子爆弾に被爆した長崎の人々に関する遺伝学的調査を行った。被爆以降に生まれた赤ん坊を調査したところ、奇形児がかなり増加していることが判明した。原因は被爆者の性細胞の変化である。遺伝によって永久に伝えられる、回復不可能な変化であった。調査を行った三万人の子供のうち三六三〇人に重大な障害が見られた。その内訳は以下の通りである。一〇四六人の子供が骨格や神経系に異常を示した。四二九人が聴覚器官または嗅覚器官に奇形があった。二五四人が兎唇または舌の奇形を示した。二四三人の内臓に異常が認められた。五九人の肺に奇形があり、四七人の顎に奇形があった。二五人は脳を持たずに生まれ、八人は目または眼窩がなかった。数キロトンの爆弾一つの結果がこれであるから、現在の原子爆弾がこの数千倍の威力を持っていることを知れば、事の重大さが想像できるであろう。当初目的とした全面破壊という効果以外に、予想もつかなかった付随的な効果がすさまじかったことがわかる。

 二〇世紀初頭までは、奇形といわれる人たちは、見世物小屋で大変な成功を収めて、少なからぬ人たちが生活に不自由しない状況であったことが書かれており、またインドなどでよく見られる奇形が太古の昔から存在していたこと、双頭の女性を中国の皇帝が愛したことなどが書かれています。奇形の問題は、人間の倫理・道徳にも深く関与し、答えのない難しい問題であることが痛感させられました。

 フクシマ後の世界は一体どうなるのでしょうか。

◆関連ブログ
じわりと増え始めた奇形児(鎖肛、口蓋裂、多指・・)2013年08月08日

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posted by いんちょう at 19:23| Comment(3) | 原子力

2013年10月16日

台風が暴いたストロンチウム測定時間と破損の恐れがある1F高レベル汚染排気筒

台風26号の影響で、フクシマに大量の雨が降りました。
2013101601.jpg2013101607.jpg
Bio Weather サービスから

台風による大量の雨水をため込むことはできないので、東電はセシウム、ストロンチウムを測定の上で放出。

報道関係各位一斉メール 2013年
福島第一原子力発電所における台風接近に伴う降雨の影響について(続報3)

平成25年10月16日
東京電力株式会社

 福島第一原子力発電所における台風接近に伴う降雨の影響の続報についてお知らせいたします。

 台風の影響により、以下のエリアで堰の水位が上昇していることから、緊急時の措置として、当該堰ドレン弁の開操作により、堰外へ排出いたします。

 ・G3エリア(北):午前8時56分にドレン弁開により開始
 ・G3エリア(東):午前8時56分にドレン弁開により開始

 なお、G3エリアタンクは溶接型であり、多核種除去設備(ALPS)処理後の処理水(セシウムとベータ核種を除去しトリチウムを含むもの)も貯蔵しております。パトロール等で漏えいのないことを確認しておりますが、堰内の水についてセシウムとストロンチウムを分析し、排出基準以下である事を確認しております。

 ※排出基準:
 ・セシウム134:15 Bq/L未満
 ・セシウム137:25 Bq/L未満
 ・その他のガンマ核種が検出されていないこと(天然核種を除く)
 ・ストロンチウム90:10 Bq/L未満(簡易測定法により計測)
 ・タンク内の水質等を参考に、他の核種も含めて告示濃度基準を満たすこと

 各エリアの堰内の水の分析結果は以下の通りです。

 <G3エリア(北)>
 ・セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:14 Bq/L)
 ・セシウム137:検出限界値未満(検出限界値:18 Bq/L)
 ・ストロンチウム90:0.88 Bq/L

 <G3エリア(東)>
 ・セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:13 Bq/L)
 ・セシウム137:検出限界値未満(検出限界値:17 Bq/L)
 ・ストロンチウム90:1.0 Bq/L

 また、すでにお知らせしているCエリア(東)の堰内の水の分析結果について、誤りがありましたので、お詫びして訂正いたします。

 誤)ストロンチウム90:2.4 Bq/L
 正)ストロンチウム90:2.5 Bq/L

なんと、ストロンチウムの分析がほんの数時間で終わっています。水産庁の役人は、ストロンチウムを測定するのは、4週間かかるから測定しても意味がない と豪語していましたが、今回の台風騒ぎで嘘がばれました。なぜ、放出するときには簡単に−しかもリットル当たり1Bq以下の精度で−測定できるにもかかわらず、人間の口に入る食品になったとたんに調べようとさえしないのでしょうか。
 サカナの骨などを対象にすれば、ストロンチウムが大量に検出されることでしょう。ストロンチウムを含めた形で、きちんと水産物を測って初めて、「風評被害」が吹き飛ぶわけですが。。どうやらやる気は全くないようです。ダブルスタンダードも甚だしい。

そして、台風のフクシマと言えばもう一つ心配なところがあります(もちろん一つではないのですが)
島第1原発:1、2号機の排気筒支柱鋼材に破断
毎日新聞 2013年09月18日 21時04分
 ◇他原発の再稼働審査に影響する可能性
 東京電力は18日、福島第1原発1、2号機の排気筒の支柱の鋼材8カ所に、破断などの損傷を確認したと発表した。東日本大震災の揺れで壊れたとみている。排気筒は事故後、1、2号機の原子炉格納容器の圧力を下げるベント(排気)に使われた。原発で最も高い耐震性能が求められる重要施設の損傷で、今後、他原発の再稼働審査に影響する可能性もある。

 東電によると、排気筒は1、2号機共用で高さは約120メートル。望遠カメラを使って調べた結果、支える鋼材の接合部440カ所のうち、高さ約66メートル部分の8カ所にひびが入り、ずれるなどの破損が見つかった。現在、排気筒は使っていない。大震災後の余震にも耐えたことから「現時点で倒壊の危険性は低い」としている。ベントを行ったため放射線量が高く、人が近づけない場所があるため、損傷の詳しい調査方法を検討している。【渡辺諒】

東京電力福島第一原子力発電所1,2号機排気筒の支柱鋼材の破断に係る報告についてから
2013101603.jpg2013101604.jpg

この時の評価を見ると、地震のみ。風速20メートル程度の風に耐えきれるかどうかは全く評価していませんし、NHKの報道でもフクシマ原発の現場の状況は全く触れられていません。なぜ、この排気筒が怖いかと言えば・・

10シーベルト超/時の放射線量(原爆爆心地並み)で紹介したとおり、排気筒の根元が非常に高レベルに汚染されているからです。
2013101605.jpg2013101606.jpg

 根元がこのような状況ですから、足場を組み立てるわけにも行かず、もしこの鉄塔が倒壊−今年大丈夫でも来年はもうまずいでしょう−したら、手の施しようがない状況に陥るのは明らかです。(54m-66mの高さで、ほぼ全周に渡って破断しているわけですから、ほとんど余力がない)
 まあ、燃料の表面線量が10万Sv/hと知ったあとでは、なんだその1万分の1程度か・・なんて思ってしまいますが。。

 仮にこの鉄塔が倒れても、「直ちに危険はない」として、誤魔化されるんでしょうね。みんな。

◆関連ブログ
オリンピックの影に隠れきれなかった海洋汚染2013年09月06日
10シーベルト超/時の放射線量(原爆爆心地並み)2011年08月02日
使用済み核燃料の表面線量10万Sv/hr(新品の1億倍)・・4号機プールが危険なわけ2013年10月13日

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2013年10月15日

火力燃料費4兆円で日本がつぶれるというデマ

 原発が止まった当初は、このまま再稼働しなければ、停電で死人が出る と脅してきました。実際二夏を経験した今となってはこの言葉の嘘がばれてしまい、この停電による脅しは影を潜めました。この冬も節電要請などはしない見込みとなっています。

 原発を推進する大きな理由は
・地球に優しい(発電中に二酸化炭素を発生しない)
・電力のベストミックス(稼働させなければ停電)
・経済的に最も有利

の大きく3つがありました。上の二つの嘘がばれてしまい(今時、原発は地球に優しいなどとほざこうものなら、石が飛んでくるでしょう)、ここぞとばかりに原発の経済性を宣伝始めました。
火力燃料費3.6兆円増 2013年度、原発停止で経産省が再試算
2013.10.8 22:41 [原発・エネルギー政策]
 沖縄電力を除く電力9社で2013年度、原発停止に伴って火力発電の燃料費が、東日本大震災が発生した10年度から3兆6千億円増加するとの再試算を経済産業省がまとめたことが8日、分かった。
 今年4月時点の試算では増加額を3兆8千億円としていたが、為替動向を織り込み、計算し直した。12年度との比較では5千億円の増加となる。
 9日に開く電力需給に関する検証委員会で示す。燃料費の増加分は電気料金に上乗せされる。経産省は電力会社に一層のコスト削減を求める方針だ。
 経産省の集計では、震災後の9電力の原発停止に伴う燃料費の増加額は11年度が2兆3千億円、12年度が3兆1千億円で、13年度はさらに膨らむ計算となる。
 13年度の内訳は、石油が2兆1千億円、液化天然ガス(LNG)が1兆7千億円、石炭が千億円それぞれ増加し、原発用のウランは3千万円減少する見通し。

 さすが産経新聞、自分では全く調べずに、大本営の発表を垂れ流す。報道の鑑と言っていいでしょう。
 原子力の宣伝でなされていることで、本当のことなど一つもありません。本当の発電単価など、電力が当然知っているわけですから、原発が最も高い、通常の意味では採算に載らない電源であることは百も承知です。なぜ、すがりつくかと言えば、総括原価方式のもとでは最も儲かるから。

また、次のニュースも

柏崎刈羽、再稼働へ正念場 福島の汚染水深刻化 管理能力に厳しい目
SankeiBiz 10月14日(月)8時15分配信
(前略)
 原発1基の再稼働は、東電に年間1200億円の収支改善をもたらす。今月末、三井住友銀行や地銀など28金融機関からの約770億円の融資の借り換え期限を迎えるが、28金融機関は借り換えに応じると東電側に伝えた。11〜12月には、昨年5月に政府認定された総合特別事業計画を見直した新たな収支計画を策定し、年末にも3000億円の新規融資を受けたい考えだ。
 これだけを見ると原発は夢の様な電源です。本当のところはどうか。以前、発電原価を計算していますので、再掲します。

火力発電を参考にして、少し数値を設定します。
形式 効率 必要燃料(/kwh) 燃料単価 発電燃料単価 等価料金
石油 0.4 0.228リットル 66円/リットル 15円/kwh 4.1兆円
石炭 0.5 0.268kg 8.2円/kg 2.2円/kwh 0.6兆円
LNG   0.54   5876Btu   0.001677円/Btu 9.8円/kwh  2.7兆円
欧州単価 6.3円/kwh 1.7兆円
米国単価 2.1円/kwh  0.6兆円

原発の電力量は、2009年の約2798億kWhを利用

LNG火力は、このところ急に価格が上昇しています。
2013101501.jpg

足元を見られているのと、電力が価格を安く導入すると原発再稼働の妨げになるために、わざと輸入価格を上昇させている様に思えます(ヨーロッパの約5割高、米国の5倍の価格で輸入)石炭火力と組み合わせれば、原発の不足分など簡単にまかなうことができます。

原発の稼働率を80%としますと、原発一基一年間当たり
110万キロワット×24×365×0.8 = 77億kwh
の発電量

1200億円÷77億kwh = 15.5円/kwh

となります。石油火力でも燃料費はこれほどは高くはありませんから、東電が出してきた1300億円の収支改善は銀行を騙すためのデマとすぐにわかります。(この程度の検算もしないのでしょうね。融資をする銀行は)

火力の燃料単価は簡単にわかるからいいのですが、原子力の燃料単価はどこにも書かれていません。たとえば、核燃料税(約10%)を参考にしますと、2005年の実績が179億円とありますので、ざっと燃料価格は、1790億円ということになります。

そうすれば、核燃料単価は

1790÷2790=0.6円/kwh

程度となります。使用済み燃料は新品核燃料の1億倍に放射能が激増しますので、最終処分が必要となります。このコストが一体いくらになるのか、誰も試算したことはありませんし、廃炉のコストが一体いくらになるのか、まだ誰も知りません。

モデル試算による各電源の発電コスト比較
2013101502.jpg
の非常に甘い試算(当時は六ヶ所村のコストが1兆円程度と見込んでいたはずです)でもフロントエンドとバックエンドを合計すれば、2.3円/kwhと石炭火力並みの費用がかかります。単純に新品燃料の費用だけで、どちらが儲かるかという計算は全くナンセンスなのです。

なぜ、マスコミは自分で検証しないんでしょうか。原発が一番経済的というデマを垂れ流すのはもう本当にやめてもらいたいと思います。

◆関連ブログ
弱者をだしに原発再稼働をもくろむ政府と国賊電力2012年06月25日
発電コストの厚いベールを剥がす−原発=安価は洗脳だった・・2011年07月21日

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2013年10月13日

使用済み核燃料の表面線量10万Sv/hr(新品の1億倍)・・4号機プールが危険なわけ

 4号機の燃料プールからの燃料取り出しが、いよいよ始まります。これでしくじったら、世界が終わりとか、プールが地震で倒壊しても半径1000キロが住めなくなるといった話を良く聞きます。しかしながら、なぜ危険なのかといった説明が一切ないために、半信半疑でいる方も多いことでしょう。私自身は4号機プールからの燃料取り出しは、本質的なフクシマ収拾の第一歩であり、かつもっとも容易なステップだと思っています。何しろ、今ある技術を総動員すればできるわけですから。

 4号機燃料プールに貯蔵されている使用済み燃料。私が本店の原子力技術課に勤めているときに燃料グループの人間から教えてもらったのは、
「使用済み燃料が空中にあれば、近くにいる人は全員即死するよ」
の言葉でした。では、実際の表面線量はどの程度か。

Case3 使用済燃料貯蔵プール(汚染水)への転落から
2013101309.jpg
使用済燃料棒の表面の線量率:108mSv/h
とありますから、105Sv/hr = 100,000Sv/hr (10万Sv/hr)です。

松江市の質問事項に対する回答について
2013101311.jpg
これで見ても、2x107mSv/hr ですから、だいたいオーダーとしては正しいですね。

ヒロシマの爆心地が103Svですから
2013101301.jpg

約4秒表面近くにいれば、爆心地の線量を浴びてしまうわけですから、たしかにそこら中にいる人は即死します。

軽水炉の使用済燃料 (04-07-01-02)
図1 放射性核分裂生成物の減衰
2013101302.jpg

10年で約100分の1になりますが、それでも使用済み燃料の表面線量率は、1,000Sv/hrもあります。このような燃料が1331本も4号機の燃料プールに貯蔵されているわけですから、倒壊したら終わりという言葉も頷けます。では、この使用済み燃料を再処理して作られる高レベル放射性廃棄物の線量も合わせてみてみましょう。

高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)とはどんなものなのでしょうか
 液体状の高レベル放射性廃棄物をガラス原料とともに高温で溶かして、ステンレス製の容器(キャニスタ)に入れて冷やし固めたものをガラス固化体と呼んでいます。
 つくられた直後は放射能、発熱量共に高いのですが、時間の経過にしたがってその値は小さくなっていきます。また、適切なしゃへいなどの対策を施すことで安全に管理できます。

Q.ガラス固化体とはどんなものなのでしょうか。A.ガラス固化体は液体状の高レベル放射性廃棄物をガラス原料とともに高温で溶かし合わせたものをステンレス製の容器内に入れて冷やし固めたものです。ガラス固化体は直径43cm、高さ約1〜1.3mの円筒形、重量は約400〜500kgです。
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Q.ガラス固化体は近づいても大丈夫なものなのでしょうか。
A.製造直後のガラス固化体は放射線量が高く人が近づくことはできません。しかし、放射線量は放射能量と同様に時間の経過に従って減衰しますし、適切な遮へい等により影響は十分低減できます。

 製造直後のガラス固化体(日本原燃(株)仕様)の放射線量は、その表面の位置に人間がいた場合、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告の中で100%の人が死亡するとされている放射線量(約7Sv(シーベルト))をわずか20秒弱で浴びてしまうレベル(約1,500Sv/h)です。
 しかし、放射線量は対象物から距離をとることや、遮蔽を施すことによっても、その影響を低減することができます。例えば、製造直後のガラス固化体でも、1m離れた位置に厚さ約1.5mのコンクリートの遮へいをほどこすことにより、法令上の管理区域(この区域に立ち入る人は浴びた放射線量の管理をする必要があります)を設定しなくてもよいレベルになります。
 ガラス固化体は、処分するまで30年から50年の間貯蔵され、さらに、処分を行う段階においてはオーバーパックという厚い金属製の容器に封入されるので、その表面における放射線量はずっと減少します。
 例えば、50年後には放射能が約1/5になり、表面の放射線量は約1/9になります(表面で約160Sv/h、表面から1m離れた位置で11Sv/h)。さらに、オーバーパック(厚さ19cm)に封入することにより、オーバーパック表面の放射線量はずっと小さくなり、表面で約0.0027Sv/h、表面から1m離れた位置で約0.00037Sv/hとなり、1m離れた位置に約0.8mのコンクリートの遮へいをほどこすことにより、法令上の管理区域を設定しなくてもよいレベルになります。
2013101304.jpg

JR東海の会長は、
≪平和利用国日本の技術に期待≫
 使用済み燃料の処理が不可能だとの理由で原発反対を唱える声を聞くが、放射性廃棄物の発生量は火力発電に比べ遥かに少なく、捕捉、貯蔵、管理が可能である。しかも再処理・再利用することで量的に減少し保管期間も短縮する。技術的には数百年程度に短縮する見込みが立っているという。

と恥ずかしげもなく述べていますが、核のことを何にも知らない、勉強もせずにうそを平気でついているのです。これで会長なんですから、日本の経済界も人材の宝庫ですね。

使用済み燃料を10年間冷やしたあとで、この高レベル放射性廃棄物を六ヶ所村で作るとすれば、なるほど数値として合います。

4号機のプールが倒壊して、そこらに使用済み燃料が飛散してしまったらどうなるか。人間は当然近づけませんし、ロボットなどの機械もすべて誤作動を引き起こします(回路中の電子などが飛ばされてしまうためとのことです)。ヘリコプターなども当然近づけないでしょう。これを心配しているからこそ、理屈のわかっている人が騒いでいるわけです。

 そして、この問題は4号機にとどまりません。
1号機〜6号機の燃料プールには
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もの燃料がいまだに貯蔵されていますし、さらに福島の4号機の近くには6375体もの使用済み燃料が使用済み燃料共用プール内に保管されています。

主要メディアが語らない核燃料6375本の共用プールの存在
2013101306.jpg2013101307.jpg

これらの燃料は全部取り出して、ドライキャスクに保管するしかありません(とりあえず、100年は持ちます)
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この使用済み燃料が溶けてしまった1〜3号機の格納容器内部など、想像もできないでしょう?われわれはとんでもないモンスターを作り上げてしまったのです。

なお、新品燃料は通常木箱に入れられ配送されます。人間が近づいてもまったく問題のないレベルです。(このため、4号機では最初に新品燃料が試験的に空中に取り出す形で搬出されました

新燃料が使用済み燃料になることで、2mSv/r -> 108 mSv/hr 約1億倍もの放射能を持つわけです。

未使用燃料の表面線量(参考)
新燃料表面線量率
ウラン燃料約0.03mSv/h
MOX燃料約2.2mSv/h

具体的な手法については、下記に詳しく書いてあります。4号機の燃料プールには海水も注入したはずです。海水で汚染された燃料を使用済み共用プールに入れても他の使用済み燃料に影響を与えないのでしょうか。また、高燃焼度燃料は、ドライキャスクにも入れられないようです。ほとんど積んでいる状況であることが、良くわかるでしょう(そして、これは1〜4号機の中では最も簡単な収束方法であることも再度確認ください)
福島第一原子力発電所4号機使用済燃料プール等からの使用済燃料取り出しの安全性について
◆関連ブログ
原子力発電入門(9)−プルトニウム・・神話を超える管理2011年08月17日
1F-1/2主排気筒が高放射能汚染している理由2012年10月14日
もっとも危険で、最も簡単な4号機燃料プール2012年07月19日
原発ゼロの小泉純一郎と、再稼働を推進するJR東海2013年10月03日
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2013年10月12日

20131011「フクシマの真実と内部被曝」(80分)熊本市講演会

 「原発ゼロ・自然エネルギーへの転換を求める熊本の会」主催のもと熊本市民会館の第5,第6会議室で講演会をいたしました。講演会を企画いただきありがとうございました。

参加者約70名。今回は初めてUstream による生中継も併せて行い、そちらの視聴者が120名ほどでした。Ustreamは録画しておりますので、こちらでもご覧になれます。(20分ほどあとから始まります)



内容は、
動画の目的
・原発事故そのものとその影響を把握
構成
私のバックグラウンド
原発の原理・問題点・電力が推進する理由
フクシマ事故の推移と放射能汚染
内部被曝とその影響
我々はこれから何をどうするべきか

について、約80分

講演の評価 回答39名(普通・・2名 まあまあ・・4名 良かった・・33名)平均評価4.8点
今回のアンケート結果
でした。

書籍販売 http://onodekita.com/DVD/
この動画のDVD版も500円/枚(送料込み)で販売します。(今までのすべての講演会についても、承ります)ただし、手焼きで対応しますので納期2−7日程度になります。ご了承ください。

 今回は、フクシマの放出量をやや定量的に扱い、1963年当時の核実験放出総量を上回ったことも説明しています。今までご覧になってことのある方も、ご覧いただければと思います。

講演会を開催したい方へ(条件等

今までの講演会一覧

今回のUstream 中継で使った器具

(この三脚は、2011年購入当時7000円だったんですが・・・)

を利用しました。通常Wimaxは使用していませんので、24時間600円のサービスを必要に応じて利用。CEREVO LIVESHELLは、パソコンなしにUstream 中継が可能な非常にコンパクトな装置。一度設定してしまえば、あとはビデオと接続して電源を入れるだけで生中継が始まります。音声は上記のビデオ用のワイヤレスマイクをつければ、このプレゼンのようにはっきりと聞きやすく録音できます。無線のポインターを使うことによって、自分自身の視線もそらすことなく、切れ目なく、ストレスなく発表できます。話しているときにできるのは、せいぜいポインターのボタンとスライドの前後送りの2つのボタンの操作くらいですから。(マウスなどを動かすと、頭が混乱します)
 なお、Youtubeアップの編集は、

を使用しています(現在は、X6が最新です)。バックグラウンドで、ビデオを流しながら、自分でポインタ合成をしながらビデオキャプチャーします。詳しくは、フクシマの真実と内部被曝(100分) 20130310徳島公演をご覧ください。

◆関連ブログ
フクシマの真実と内部被曝(100分) 20130310徳島公演2013年03月31日


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posted by いんちょう at 23:59| Comment(0) | 原子力

2013年10月11日

10月24日(木)第9回院内勉強会のおしらせ

下記の通りの日程で、勉強会を行います。参加ご希望の方は、下記要項をご覧の上、お申し込みください。当日の勉強会の様子は、Ustream生中継を実施いたします。(どなたでもご覧になれます)

日時 平成25年10月24日(木) 13時30分 〜 15時00分 (講演−約1時間程度)
場所 熊本市横手1−2-121 小野・出来田内科医院
電話 096−355−7532
演題 今月のブログ注目記事
内容 ブログ記事の概略を紹介した上で、質問を受け付けます。講演会ではなく、ざっくばらんなお話会をイメージしてます。
費用 無料
参加者 16名(駐車場は12台あります。できれば、公共交通機関をご利用ください。)
応募方法 こちらのページからお申し込みください。先着16名
申し訳ございませんが、電話・メールでは受け付けておりません。

病院へのアクセス
2012082808.jpg
西山中学校前すぐ
新町電停徒歩7分
医院の前が駐車場です。満車の場合は地図中のPが駐車場です。一方通行もある狭い道ですので、ご注意ください。すこし離れたところには、コインパーキングもあります
2012040604.jpg

駐車場入り口がややわかりにくいため、新町交差点から駐車場までの動画を撮影しました。参考にどうぞ。−奥の駐車場であれば、(名前が書いてありますが)どこに駐めていただいてもかまいません。


横手郵便局から医院まで(新町と逆側です)


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タグ:勉強会
posted by いんちょう at 23:59| Comment(1) | 原子力

2013年10月10日

重要な情報は暗号化して連絡を-PGPの簡単な使い方

 私のコメント欄に書き込みをされた方2名ほどから本名ではなく、ペンネームにしてくださいと依頼がきました。そのうちのおひとりと電話で話したのですが、大企業では従業員の名前をネット中でロボット検索する部門があり、その部門から不適切発言をしないようにとお叱りを受けたとのことでした。私が会社勤めをしていた1995年当時は、まだ少数のプロバイダーが一般音声電話回線にモデムで接続するサービスがようやく始まった頃でしたから、思いもよらないことでしたし、そのようなことを日本の大企業がしていることにも驚きました。

 もっとも、インターネットは核攻撃を受けたときなどに通信網が途絶しないようにと開発された代物で有り、スノーデン氏が米国NSAではネット上のあらゆる情報は盗聴されていると曝露したのも当然の話です。

最近、話題になっている原発ホワイトアウト

 一説によると、ここまで曝露するとはけしからんから、現職官僚と思われる著者を特定するよう捜査が始まっている。らしいのですが、私が読んだ感想は、マスコミやネットに書かれている内容ばかりで、驚くようなことはなく、更に原発の悪口を書いているようでありながら、

・脱原発派が非合法な手段を使ってまでも情報を集めている
・フクシマの汚染はたいしたこともないのに、知的レベルがちょっとだけ高い主婦が騒ぎすぎている
・朝鮮人が送電鉄塔に細工をして、停電事故を起こしたというかなり作為を感じる設定
・厳寒期にディーゼルが起動しないという現場を知っている人間からすると全くもってナンセンスな事故原因(一ヶ月に一度はサーベランス試験をしており、いざというときに凍結のため複数号機が全く稼働しないことなどまずありえない−そもそも室内に発電機はある)

といったかなり高度な情報操作とも思われる内容も含まれており、読後感はかなり悪いものでした。(購入はお勧めできませんが、上記注意を頭に入れて読めば、電力会社の権力掌握の狡猾な方法などは参考になるかもしれません)

女性の魅力で正義感のあふれる中央官僚を籠絡したジャーナリストが取った連絡手段は、次のように書かれていました。p.140(ネタバレ含みます)

 結局、二人は同一のGmailアカウントを共有して連絡を取ることにした。おなじGmailアドレスとGmailパスワードを共有し、自分から自分へメールを送る仕組みだ。これであれば一つのGmailアカウントでやりとりが閉じられているので、、メールが間違って他人に転送されたりすることもない。
(中略)
 相手に読んでもらいたいメールを送るたびに、LINEでクロネコの顔のスタンプを送る。クロネコメール便を送りましたので読んでください、という意味だ。これであれば、二人のやりとりはクロネコのスタンプしか残らない。通信会社から捜査当局に開示されることがあっても、全く意味がわからないだろう。
 クロネコのスタンプを受け取ったら、プライベートのスマホやパソコンでGmailを読む。端末からGmailへのアクセス記録が一定期間グーグルのサーバー上に残るのかもしれないが、地球上を駆け巡るGmailについて、発信者と受信者が実質的に特定できない状況下、しっぽをつかまれることもないだろう。
 そして、本当に決定的な証拠については、必ず二人であって手渡しすることにした。ネット上に全く痕跡が残らないことが一番安全だからである。


 一見完璧と思われるこの手法のどこに穴があったのか・・・種明かしは小説の後ろにかいてありました。




ネタバレですので、ご注意





p.281(情報を漏えいできる役人を特定したあとに)
 警視庁は裁判所の令状を取って、携帯電話会社から、西岡の通話記録、位置情報、電子メール、インターネット・アクセスの情報を入手した。これらの情報を解析したところ、まず、西岡がLINEで頻繁に玉川に連絡を取っていることが判明したのだ・・
 警視庁はすぐに、携帯電話会社から、玉川の通話記録、位置情報、電子メール、インターネットアクセスの情報を同様に入手するとともに、LINEに対しても、裁判所の令状を取って西岡と玉川とのやりとりを開示させた。
 クロネコのスタンプが使われたやりとりが、ちょうど審議官の機密漏えいのあとに発見された。USBメモリーやマイクロSDカードのやりとりがされたのではないか、ということで、宅配便会社からも、西岡の自宅、玉川の自宅、玉川の勤務先等の荷物のやりとりについての情報が入手されたが、荷物のやりとりの記録は一切残っていなかった。
 しかし、西岡と玉川のインターネット・アクセス記録を見ると、ちょうど同時期Gmailへの頻繁なアクセスが見られた。それをグーグルに問い合わせた結果、二人が同一のアカウントにアクセスしていることが判明したのだ。
 捜査令状に基づき捜査当局が開示を請求したところ、グーグルはあっさりと電子メールの内容を開示した。


 当然でしょうね。LINEでやりとりをすれば、ばれるのは当たり前。あまりにも幼稚な仕掛けにこちらが情けなくなるほどです。では、どうすれば良かったのか。その答えを言う前に、一つの本を紹介

サイモン・シンの暗号解読(上・下)


 上巻に出てくる話で一番驚いたのは、ローマ時代の有名なカエサルも暗号を使っていたという事実でした。有名な

来て、見て、勝った
平 文 Veni, vidi, vici,
暗号文 YHQL, YLGL, YLFL

さえも、カエサル暗号という手法で暗号化されていたのです。(私の知る限り、暗号化について触れた日本の歴史書はありません)そして、この暗号と暗号解読が歴史上、大変大きなウェートを占めていたことがひしひしと伝わってきます。また、古代くさび形文字だけで書かれた粘土板を手がかりもないままにどのように解読したかなど、知的好奇心を大変くすぐられます。
 軍事通信は、、敵にも傍受される通常無線を使うため複雑に暗号化されます。暗号で大事なのは、アルゴリズム、暗号キーをどのように配布するかであり、そのことに長年苦心していたわけですが、近年のコンピューター発達で公開鍵と秘密鍵のペアで、暗号キー配布問題が解決されました。(素因数分解を用いているそうですが、私には原理など理解できませんでした)書籍の中でPGPが紹介されていますので、そのソフトを紹介いたします。ライセンスの問題があったり、Windows7ではインストールできなくなったりして困ったのですが、Portable PGPが比較的使い勝手が良さそうなので紹介します。(Windows, Mac, Linuxバージョンがあります)

Widowsの場合は管理者権限で起動します。
2013101001.jpg

起動後、キーファイルを作成(自分のキーが必要ない場合は作成する必要はありません)
2013101004.jpg

次のような画面が出てきますので、電子メールアドレスとパスフレーズを決めて、キーを作ります。
2013101003.jpg

作成されたPublic Keyを、暗号化ファイルを送ってもらう人に送付します。たとえば、私の公開鍵(Public Key)

暗号を送りたい人は、その人物の公開鍵をKeyringの Public Keyのところにインポートします。
2013101010.jpg

MIT PGP Public Key Serverに登録しておきますと、
2013101012.jpg

から、たとえば私なら(onodekita)で検索すると公開鍵を簡単にインポートできます。
2013101011.jpg

そして、いよいよ暗号化。テキストをコピーペーストするのが簡単(Targetが送りたい人物の公開鍵になっていることを確認してください)
2013101005.jpg

テキストをコピーして、Encryptを押しますと・・・別のウイドーが開いて、暗号化されたテキストが表示されます。
2013101006.jpg

もはや、何が何だかわかりませんね。このテキストをDecrypt ASCII-Armored Textにコピペします。
2013101007.jpg

そして、復号(Decrypt)を押しますと・・
2013101008.jpg
このように、自分で決めたパスフレーズを要求する入力画面が出ますので、それを入力すれば・・
2013101009.jpg

と簡単に復号できました。

では、玉川はどうすれば良かったのでしょうか。私なら次のようにします。

・自分のブログを立ち上げて(ジャーナリストだから、当然持っているでしょう)、連絡を取りたいときには、ブログ主は本文に、ブログ主以外はコメント欄にある決められたフレーズを書くように取り決める。たとえば、今の時期だと「家の近くにある2本のキンモクセイが香ってきました」とか。(そして、その符号は毎回暗号メールの中でその都度、一般的な言葉で有りながら重なる可能性のない言葉を指定するようにします)

・PGPで暗号化した上で、
−2chでほとんどアクセスのないようなジャンルの掲示板にアップ。
−自分なりの掲示板をサイトの中に隠して作ってそのままアップ(掲示板作成ソフトなど、そこら中に転がっています)
Dropboxなどのクラウド共有ソフトに保存する。
(追記)
−ブログ主は、コメントとして暗号をサイトに埋め込み、上記「合い言葉」を記事中に入れる。(写真もあればなお良い)

(例)家の近くにある2本のキンモクセイが香ってきました
2013101015.jpg
この次にコメントとして、暗号を入れます。(わかる人はこのブログのソースをご覧ください)
<!-- この両端の書式間にPGP暗号を埋め込む(改行可) -->


どうです。これならわからないでしょう?そして、メッセージを受け取る側は、コメント欄に「綺麗なキンモクセイですね。壁紙に使わせていただきました。」等の差し障りのないコメントを書く。読んだことが確認できれば、ソースの中のコメントだけ削除して、記事の内容は全く変化させない。
つまり 

ブログ主 ブログの中に上記コメントとして書き込む
情報提供者 ブログに非公開コメントとしてPGP暗号を書く

不特定多数の人が覗いているブログであればあるほど、足はつきにくくなります。いくらアクセス記録を取り寄せたところで、ある程度の人気ブログであれば(ジャーナリストであれば持っている可能性が高い)疑う方が難しい。

 非常に大きなファイルの場合は、暗号化(ファイル暗号化ソフトもたくさんあります。決してばれないような長いパスワードを上記PGPで送れば良い)した上で、マイクロSDに保存してはがきにセロテープでくっつけて送るのもかなり確実でしょう。(紛失しても解読される可能性がない情報ですから、足がつくことがない葉書を使えるのです。配達記録の残る宅配便などを使えば、足がつくのは当たり前です。)葉書が届いたら、ブログのコメント欄に「綺麗なキンモクセイの葉書ありがとうございました。」と書く。

ともかく、玉川のように平文でメールを送るのは最低で、さすがセキュリティに甘い日本人だよ・・と本当に思います。

もし、書くのをはばかれる内容の文章がありましたら、PGPで暗号化した上で私のメールアドレス a00@onodekita.com までおくられるか、このブログのコメント欄にお書きください。(こうすれば、捕まる可能性はありませんでしたね)

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(追記)
日本軍の暗号はとうの昔に解読され、山本五十六の撃墜命令を米国が出したときに、英国のチャーチルがそんなことをすれば、暗号解読がばれるからやめるようにと反対したのは有名な話です。日本軍の暗号はすぐにひらがなとして打ち出され、それを英訳するのに苦労したという報告もあります。暗号をもじったペンネームの方なら、もう少しお調べください。 第二次大戦における日本海軍の暗号 (暗号)暗号の一例
タグ:暗号 PGP
posted by いんちょう at 23:59| Comment(9) | 日記

2013年10月09日

フクシマ後に急増する川崎病−放射能被曝も一因か

川崎病、罹患率最高に
 主に乳幼児がかかる原因不明の病気「川崎病」の4歳以下の罹患率(人口10万人当たりの患者発生率)が2012年に264・8人となり、1970年の全国調査開始以来最高となった。日本川崎病研究センター(東京)がまとめた。
 新たな患者は1万3917人で、58%が男児。患者の発生は1月に多かったという。
 川崎病は全身の血管に炎症が起こり、発熱や結膜の充血などの症状が現れる。後遺症として心臓の冠動脈にこぶが残り、心筋梗塞などを引き起こすことがある。原因不明だが、感染症との関連が疑われている。最近では1986年に全国規模の流行があり、いったん減少したが、90年代半ばから再び増加傾向にある。


 良く聞く川崎病。一体どのような病気なのでしょうか。川崎市で多かったからではなく、この疾患群を最初に報告した川崎富作氏の名前に由来しています。

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頸部のリンパ節の腫脹、目の充血、手足口病、発熱・・震災後から非常に耳にする症状です。この疾患は病状を聞いても、なかなかピンとくることがなく(苺状舌などのキーワードが入っていれば別)、国試の勉強の時には随分と悩まされました。たとえばこんな感じ 

91F50
11か月の男児。発熱と発疹とを主訴として来院した。5日前から発熱を認め,2日前から右頸部が腫脹して痛がり,昨日,躯幹の発疹に気付いた。体温39.2℃。全身に紅斑を認め,手背と足背とは浮腫状に腫脹している。右頸部リンパ節は母指頭大に腫脹し,圧痛がある。両側眼球結膜は充血し,口唇に発赤と腫脹とを認める。胸腹部には特に異常所見を認めない。赤沈68mm/1時間。赤血球320万,Hb 10.4g/dl,Ht 31%,白血球18500(桿状核好中球18%,分葉核好中球46%,好酸球2%,単球6%,リンパ球28%),血小板32万。CRP13.5 mg/dl(正常0.3以下)。

 国試で一番大事なのは最初の一般症状、全身症状です。このような訴えを良く聞きませんか?

では、この川崎病、何がどこまでわかっているのでしょうか。

川崎病の今後−疫学と原因究明
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1982年と1986年にピーク。1986年と言えば、チェルノブイリがあった年。
川崎病の全国疫学調査成績
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 チェルノブイリがあったのは1986年4月ですから、病気の発症がやや早い印象は受けます。

川崎病は、いま―聞き書き川崎富作


p.131から
 第一次流行(1979年)の実態を詳しく見ていくと、いろいろなことがわかります。一月から七月にかけて明らかに異常発生が起きている。九州、四国、中国、近畿までが三月をピークに患者の増加を見せました。ちなみに9歳以下の子どもの人口10万人当たりの罹患率(三月)は、九州が57.2、中国が82.5、四国120.1、近畿54.2です。不思議なことに、北陸だけは32.5と低く、ピークはありません。
 さらに東日本の各地域でピークを見てみると、興味深い傾向がはっきり浮かび上がります。具体的には、関東・甲信越ではピークが四月、東北地方は五月、北海道になると6月とピークの時期が時間とともに北上したのです。これはまるで桜前線と同様、北上する動きです。
 僕は爆発的な流行を見せた四国の愛媛県へ調べに出かけました。松山日赤と、愛媛県立衛生研究所の医師らが積極的に協力してくれました。川崎病患者の発生は地域的にまず東予に始まり、中予へうつったあとで、南予へ移動していたことがわかりました。これはインフルエンザの流行パターンとおなじだったのです。これらのデータから、研究班では「川崎病は、ウイルスかバクテリアやその他何らかの病原体による感染症と考えざるを得ない」という結論に達します。しかし、患者ののどや血液などを調べても、どこからも病原体なるものはいっこうに見つからなかったのです。

 三年後、未曾有の大流行を経験することになります。1982年の患者数はなんと15,519人に上りました。各地で大病院の小児科病棟が川崎病の患者であふれ、病院によっては老化にベッドを持ち込んで収容するほどです。(中略)
 ただ、この年の流行では前回のようなピークの北上という動きはなかった。むしろ、全国各地でばらばらに流行が始まったのです。もちろん、山形から岩手へという具合に、隣接した地域間で徐々に流行の動きが見られるなど、各地域での伝播は明らかでした。流行の始まりは前年の12月からで、翌年5月にピークを迎え、7月には収束しています。

 こうした動きに厚生省の研究班は、「過去2回の流行から、川崎病は3年周期で流行を繰り返すのではないか」として、1984年1月、流行を監視する「サーベランス」活動をスタートさせました。我々の予測では1985年の前半に流行があるはずでした。ところが患者はいっこうに発生しない。「3年周期は幻か」と考えていた矢先の11月初旬から、日赤医療センターには川崎病の入院が相次ぎ、瞬く間に満床になりました。僕は「第三次流行だ」と実感しました。
 日赤医療センター小児科の入院患者のデータで見てみると、この一年間の患者層数は930人で、うち川崎病の患者は114人と15.9%です。これが翌1986年の1−3月の三ヶ月間だと、入院患者総数216人、うち川崎病は71人と、実に32.4%を占め、川崎病の患者の割合が倍増しています。首都圏で川崎病の患者がいかに多発したかがわかるわけです。


これほど大規模な疫学調査をしながら、なぜ原因が見つけられないのか。この調査の指揮を執った人物の名前を見て、わたしはピンときました。

川崎病と闘う日々
加倉井氏はとても丁寧に話を聞いてくれました.私は原著やその後の地方会の発表,たくさんのカラー写真を持っていったので,それを広げて説明しました.すると,「疫学調査はされましたか」と聞かれました.私はそんなことは全然考えていませんでした.加倉井氏は,「公衆衛生院の疫学部に重松逸造という方がいます.熱心な先生ですから,ぜひ重松先生に会ってください」と言われました.
 病院に戻り,神前先生に報告したら,すぐに行ってこいと.重松先生に電話をして,その日の 6 時過ぎに伺いました.重松先生は,加倉井氏と同じようにじっと聞いていて,「おもしろそうですな」と言われ,「しかし,いまから昭和45年度の研究費はとても間に合いませんよ.厚生省のこういう研究費はほとんど前の年に決まっています. 1 年遅れ, 2 年遅れのつもりでやったらどうですか」.そう話されたときに,電話が鳴ったのです.重松先生が電話を取って,「ああ,いまここにみえていますよ」と.電話のあと,重松先生は「加倉井君が電話をかけてきたところをみると,彼には研究費の腹づもりがあるに違いない.では,やりましょうか」.
  それからは重松先生の独壇場で,申請書作りに私も何回も通いました.そうしたところ,昭和45年度の厚生省科学参事官室の医療研究助成補助金でトップの200万円がつきました.そしてその年に第 1 回の疫学調査を行ったわけです


川崎病の疫学調査で「重松逸造」の名を聞くとは思いませんでした。
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この人物のやってきたこと
・「環境庁の水俣病調査中間報告「頭髪水銀値は正常」、論議必至。(一九九一年六月二三日付読売新聞)重松氏は水俣病の調査責任者で、水俣病被害者とチッソの因果関係はないと発表したのです。
・「黒い雨「人体影響認められず」広島県、広島市共同設置の「黒い雨に関する専門家会議」(座長・重松逸造・放射線影響研究所長、十二人)は、十三日、「人体影響を明確に示唆するデータは得られなかった」との調査結果をまとめた。(一九九一年五月一四日付毎日新聞)ここでも重松氏は調査責任者。
・「イタイイタイ病について環境庁の委託で原因を調査していた「イタイイタイ病およびカドミウム中毒に関する総合研究班(会長・重松逸造放射線影響研究所理事長)とし、イ病の発症過程を解明するに至らなかった。イ病では、認定患者百五十人のうち、既に百三十四人が激痛の中で死亡している」(一九八九年四月九日付読売新聞。)
・岡山スモンの記録「スモン研究の思い出。前厚生省スモン調査研究班々長重松逸造。結局は後で原因と判明したキノホルムに到達することができませんでした」重松氏はスモン調査の責任者でありましたが、キノホルムの因果関係はないと発表していたのです。
・九三年一月一三日、岡山県の動燃人形峠事業所が計画している大規模な回収ウラン転換試験の安全性を審査していた「環境放射線専門家会議」(重松逸造委員長)は、ゴーサンを出しました。じつにあらゆる公害問題においての政府・企業の利益になる決定に、重松氏が責任者となっているのが分かります。


 そして、チェルノブイリ調査団の団長に選ばれ、(wiki)
1990年4月、IAEAが発足させたチェルノブイリ原発事故をめぐる国際諮問委員会(IAC)の委員長に就任。各国から集められた200人の専門家集団の責任者として、ソ連国内の汚染状況と住民の健康の調査、住民の防護対策の妥当性の検討を目的とする国際チェルノブイリプロジェクト実施にあたった。翌1991年5月、ウィーンのIAEA本部で開かれたプロジェクト報告会において、汚染地帯の住民には放射能による健康影響は認められない、むしろ、「ラジオフォビア(放射能恐怖症)」による精神的ストレスの方が問題である、1平方km当り40キュリーという移住基準はもっと上げてもよいが、社会的条件を考えると今のままでしかたないであろう、との報告をまとめ発表した

と恥ずべき報告書を作り上げたにもかかわらず、大物医師として疫学界に君臨し、叙勲まで受けました。この人物が疫学調査に立ったからには、真相が解明されるはずもありません。感染症のように風に乗って流行する。なぜ、放射能が原因の一つとしてあげられなかったのか。この人物を疫学調査のトップに持ってきたからではないのでしょうか。そして、電話で「被曝」との影響が云々されると大変だから、カネをつけるからキミが押さえてくれたまえ と言われた。なんて考えたら、妄想のしすぎでしょうか。

 川崎病と被曝。もう一度考えてみる必要があると思います。

激増している川崎病は被曝症状と似ている


福島の甲状腺ガン増加をチェルノブイリと全く同じ文言で否定する日本人医師たち2013年03月03日
長崎原爆訴訟−内部被曝を無視する裁判所により棄却2012年06月26日

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タグ:川崎病
posted by いんちょう at 21:24| Comment(20) | 原子力

2013年10月07日

「海の放射能に立ち向かった日本人〜 ビキニ事件と俊鶻丸」-全部知ってる日本政府

ビキニ環礁(水着のビキニの語源)で行われた水爆実験−太平洋戦争当時は、日本委任統治領−


この水爆実験で被曝したのが第五福竜丸。この事件に対して、詩人のアーサー・ビナード氏は、

「国防省の常識から言えば、水爆実験という軍事機密を目撃した人たちをそのまま帰してしまうことはまずありえないのです。まず考えられるのはその場で撃沈してしまうと言うことです。だから、第5福竜丸の23人が、生きて焼津に帰れたと言うこと自体が驚嘆に値することなのです。彼らはそんな奇跡を起こした23人なのです。」
原爆と原発 ホピの聖なる預言 (ムー・スーパーミステリー・ブックス) 小原田 泰久 (著) p.124

と述べています。この被曝事件に対して、日本政府が各界の若手研究者を集めて構成したのが俊鶻丸でした。この時に得られた教訓を番組にしたのが「海の放射能に立ち向かった日本人〜ビキニ事件と俊鶻丸(しゅんこつまる)〜」です。

消されるとは思いますが、動画を紹介しておきます。

etv_uminohousyanounitachimukattanipponjin1 投稿者 soekosan


etv_uminohousyanounitachimukattanipponjin2 投稿者 soekosan

当時の計測器 作成者は 岡野眞治氏
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「あの頃はね、秋葉原にジャンク屋があってね、アメリカが放出した部品が随分あったんですね。そういうものを集めて、我々が欲しい真空管なんかもその中から拾ってこなきゃいけないですからね」

 このようなホンモノの力量のある科学者は、もう日本にはいないでしょう。世界に誇ることのできる学者だと本当に思います。

俊鶻丸に乗るに渡ってもらった寄せ書きの一部には、「実験動物」にはなるなとの警告が。今のフクシマ医科大にいる教授連中に爪の垢を煎じて飲ませたいものです。
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当時の学者も、放射能汚染は「琵琶湖にインク一滴を垂らしたようなもので、検出されるわけがない」と発表したのですが−結局何にも知らずに、都合のいい学説とやらを垂れ流す−、俊鶻丸がそのデマを暴きました。

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1207Bq/l と言えば、かなりの汚染です。

そしてマグロの汚染
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可食部はそうでもありませんが、脾臓、肝臓などの消化器に高レベルに蓄積しています。これがわかっているからこそ、フクシマの漁業調査では、頭と内臓を除いて、可食部のみで、しかもセシウムのみを測定して、汚染の有無を判断しているのでしょう。俊鶻丸の検査の悪用です。そして、これらの内臓はインスタントラーメンなどの調味料として、有効利用されていることでしょう。

放射能安全神話をまき散らす、中川恵一を首謀とするグループは、

と述べていますが、実態は次の通り
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放射能は当然生物濃縮します。











マグロの汚染はどんどん広がりますが・・
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 米国との協議のあと、健康には被害を及ぼさないという理由で、調査自体を中止して、出荷規制自体をやめてしまいました。あまり騒ぐと米国の核戦略に迷惑をかけてしまうという理由でしょう。

番組の最後には、海水汚染は決して一様ではないとの検査結果まで
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 なぜ、貴重な検査の結果がフクシマで生かされないのか。海の恵みで生きてきた日本。その海を汚してしまっているのに、オリンピックに浮かれることができるのはなぜなのですか。

◆関連ブログ
海水中のストロンチウムはセシウムの10倍。深刻化する海産物の放射性セシウム濃縮2013年07月03日

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posted by いんちょう at 23:00| Comment(11) | 原子力

2013年10月04日

オーストラリア(南半球)の核汚染

赤ちゃんの骨でストロンチウム計測(2)−オーストラリアの人体実験でオーストラリアの核汚染状況を少し述べましたところ、在豪女性から「核実験でそんなに汚染されるはずがない」とのコメントをいただきました。もちろん、私には汚染の理由などわかるはずもありませんが、現状どれだけ汚染されているかを知ることは大事でしょう。私が教えてもらった限りでは、オーストラリアも決して安全、安心な移住先とは言えないという残念な事実でした。

Allowable Lifetime Dose applied to Australian Fallout Mapの抄訳
オーストラリアでは、イギリスが12回の核実験を行った。そのうち9回の実験に関して、オーストラリア政府が降下物マップを公表している。
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その9回分の地図を合成した。ほぼオーストラリア全土が汚染されていることが一目瞭然である。
もちろん、実験と実験の間にはある程度の期間があいており、放射性物質が崩潰していることを考えれば、厳密な放射線量を記載した地図を作製することはできない。しかし、参考にはなるだろう。
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合成汚染マップの見方
黒: 非常に高い生体蓄積(の懸念がある地域)
濃い灰色: 高い生体蓄積(の懸念がある地域)
灰色:生体蓄積(の懸念がある地域)
灰色がかった白: 直接的な生体蓄積がない地域

さて、ガブリエル計画(注:サンシャイン計画の前の呼称)の目的は、以下の通り。

「ガブリエル計画

ガブリエル計画の目的は、戦時における核爆発による降下物の放射性毒性を評価することである。

核爆発により生成する破片の総量、および、世界規模の試験調査において粘着紙に吸着した降下物の総量とを比較した。

粘着紙の正確性は、おそらく50%未満だろうが、[この報告または地図作製において、] 粘着紙の正確性は100%とする。

(注意)オーストラリアの降下物データは、粘着紙法を用いて作成した。上記報告書において、オーストラリア人の降下物への被曝量はおそらく50%以上低く見積もられている。)」

つまり、オーストラリア政府が発表した放射線量マップも、初めから5割以上低い見積もりに基づいて作成されたものである。よって、合成汚染マップも実態より甘いものである。

話は変わって、ストロンチウム90の怖さのみが喧伝されているが、ストロンチウム89も実は危険なものである。ストロンチウム89は、半減期が短いので、すぐに安定したジルコニウムに変わる。そのため、ストロンチウム89に被曝して間もなく病気になったとしても、病気の原因がストロンチウム89ということは言いづらい。ストロンチウムはいわば「消える弾丸」である。



ポール ラングレー氏は、オーストラリアの著名な反核運動家です。同氏は、英仏の核実験によるサウスオーストラリア州の汚染を調査するために、同州水道局に対し、貯水池の放射能汚染測定記録を請求されました。
以下、
My Story Radiac – A Trail of Evidence by Paul Langley
より、サウスオーストラリア州水道局とのやり取りおよび証拠隠蔽の疑いに関する箇所を抜粋訳のうえ、再構成したものです。


1996年2月16日、私は、サウスオーストラリア水道局のチーフエクゼキュティブのフィップ氏から書簡を受領した。書簡に添付されていたのは、1966年から1995年までのすべてのサウスオーストラリアの水道に関する放射能測定記録表であった。1952年から1965年までの測定記録表はなかった。
記録がなかった時期というのは、イギリスの核実験の期間(「小規模な実験」と言われる兵器安全性試験も含む)に対応する。
私は、サウスオーストラリア州水道局に失われている記録に関して問い合わせの手紙を書いた。そして、1996年5月15日、フィップス氏から回答を頂いた。「すべての存在する放射線に関する記録は、2月にお送りしました。」つまり、サウスオーストラリア水道局は、それ以前の測定記録については知らない、と示唆しているのだった。
しかし、我々は、以前にも水の放射能測定が行われていたことを知っている。核兵器試験安全委員会の委員長であるティタートン教授が、1960年代初め科学雑誌において、何回かの水質検査の結果に言及していたからだ。データを入手できなかったとしたら、ティタートン教授の論文は、研究者からどのように評価を受けていたというのだろうか。
ヘレンカルディコット医師は、太平洋でのフランス核実験による放射性降下物に関する水質データを探し求め、ようやく入手したとのことだった。しかしながら、ツーン氏は、特定の秘密報告書を探し求めていたのである。
[訳注:ツーン氏というのは、オーストラリア アトミック ソルジャーの会の会長さん。]
州政府は、サウスオーストラリア水道局をイギリスとフランスの共同事業体に売却することで民営化した。1995年11月2日、私は、当時の社会資本整備大臣であるオルセン氏に手紙を出した。そして、1950年代から現在までのサウスオーストラリア州全域の貯水池の放射能観測記録を求めた。
私は書簡において、オルセン氏に尋ねた。
サウスオーストラリアの人々がデータの公開を拒絶されたとはいえ、「私が求めているデータは、英仏の利益に関わりがあると見るのが妥当だ」とオルセン氏が考えたのか、と質したのだ。
また、サウスオーストラリアの水道について継続中の放射能測定に関する責任を、英仏の企業に委任することは果たして賢いと言えるのか、とも尋ねた。
放射能測定に関する責任は、[英仏の]利益と真っ向から相反する。水道水の放射性降下物を測定する必要性は、主に英仏が当事者となった行為から生じたものだからである。
1995年11月7日、私はオルセン氏の事務所から回答を受けた。そんなに速く回答を頂けて嬉しかった。書簡には、私の要求は、目下検討中であると記されていた。(了)


翻訳に関するお断り
原文に読みづらい所があり、筆者の意図を正確に訳せているか心もとないところがあります。そのような箇所は推測で訳しましたが、大きくは外れていないと存じます。
ラングレー氏によれば、イギリスは、オーストラリアにおいて12回の核実験を行ったとのことです。
一方、日本語のウィキペディアによれば、イギリスがオーストラリアで行った核実験は、9回と記されています。
さらに、英文のウィキペディアには、イギリスがオーストラリア領で行った核実験は21回で、そのうち、オーストラリア大陸における実験が9回、と書かれています。
また、フランスは、仏領ポリネシアにおいて1996年までに核実験を200回程行いました。
以下、参考サイト。

ウィキペディア「核実験の一覧」
List of nuclear weapons tests
世界の被爆者は今 「フランス核実験とその被害者の権利回復運動」

そして、すべては気づき−海外から見た日本の姿−
オーストラリアで計測された放射能高汚染から。




メルボルンにある車の水滴の汚れで5マイクロシーベルトを超えています。九州の汚染状況から考えても、これがフクシマの汚染とは考えにくいと私自身は思いますが、3号機のプルームが赤道を経由して直接南半球に来れば、このような結果が出るんでしょうか?セシウム134/セシウム137の比を取れば、由来など簡単にわかるはずですが、調べてはなさそうです。
 どこかに逃げたら安全、安心というわけではありません。日本人が世界中にちって、各地の線量を測定し始めています。地道なことですが、核産業にとっては大変憂うべきことでしょう。そういえば、本日は次のような報道が流れていました。

台湾の島、高い放射線量 原発の廃棄物施設影響か 桜美林大、首都大学東京、琉球大調査
 原発などから出た低レベル放射性廃棄物の貯蔵施設がある台湾南東部の蘭嶼(らんしょ)島で、放射線量が比較的高い地点があることを確認したと、桜美林大などの調査チームが27日、都内で開いた報告会で発表した。施設はずさんな管理が指摘されており、チームは詳しい調査の必要性を強調した。

 過去に津波に襲われた可能性を示す痕跡も見つかり、中生勝美(なかお・かつみ)・桜美林大教授は「津波で放射性物質が海に流出する恐れもある」と話した。

 調査は8〜9月に実施。島の北部の集落で、道路上の1カ所(地上約15センチ)で毎時67マイクロシーベルトを記録した。ずっといると1日で1ミリシーベルトを超える計算になる。ほかにも1〜2マイクロシーベルト程度の場所があった。
 貯蔵施設は島の南端にあるが、風の影響で北部まで放射性物質が運ばれたり、過去に人為的に持ち込まれたりした可能性があるという。
 地層調査では、海から運ばれたとみられる細かい砂が複数の層になっているのが見つかった。津波か大型台風の波で運ばれたと考えられる。
 施設は海抜約5メートルに位置し、高さ約5メートルの防波堤がある。だが、門は鉄柵で津波が入るのを防げない構造。防波堤の強度にも問題があるという。
 蘭嶼島には主に先住民が暮らす。施設は、住民に知らされないまま建設され、ドラム缶約10万本が搬入された、住民の反対で1996年からは新規搬入はない。施設では、壊れたドラム缶から別のドラム缶に中身を手作業で移し替えていたなどと指摘されている。
 調査チームには首都大学東京と琉球大も参加した。
 (共同通信)


香港もかなり線量が高く、東南アジアも高いとの報告が来ています。気がつけば、汚染地ばかり。

◆関連ブログ
赤ちゃんの骨でストロンチウム計測(2)−オーストラリアの人体実験2013年09月16日
香港の高い線量−ホテル室内0.50uSv/hr ディズニーランド 0.26uSv/hr2013年08月16日

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posted by いんちょう at 23:09| Comment(17) | 原子力

2013年10月03日

原発ゼロの小泉純一郎と、再稼働を推進するJR東海

山本太郎が当選したとたんに「現実的」ではないと脱原発の旗を下げてしまったのと対照的に現地を視察して「脱原発、原発ゼロ」を唱え始めた小泉純一郎元首相が、なんと中部地方でぶち上げました。

小泉元首相 原発ゼロ訴え 講演会 安倍政権に決断促す2013年10月2日 朝刊
 小泉純一郎元首相が一日、名古屋市内で講演し「原発ゼロを実現し、循環型社会を目指すべきだ」と強く訴え、脱原発の立場を明確にした。

 小泉元首相は二〇一一年三月の東京電力福島第一原発の事故に伴う被災者への補償や、事故収束の費用を含めると「原発ほど(発電)コストが高いものはない」と明言した。

 安倍政権は原発再稼働に前のめりだが「核のごみ(放射性廃棄物)の最終処分のあてもなく、原発を進めるのは無責任だ」と指摘。「今、原発ゼロという方針を自民党が打ち出せば、一挙に(脱原発への)国民の機運が盛り上がる」と述べ、原発ゼロへ向けた安倍首相らの政治決断を重ねて求めた。

 最後に「日本人はピンチをチャンスに変える特性がある。今こそ、原発をゼロにして(太陽光など)再生可能エネルギーによる循環型社会をつくるという夢に向かって結束できる」などと訴えた。

 講演会は大垣共立銀行(岐阜県)などの主催で、傍聴希望は先着順で事前に募集。中部財界の関係者ら二千五百人が集まり、マスコミにも公開された。

 小泉元首相は一一年五月、講演で原発依存度を下げ、自然エネルギーの開発を促進すべきだと発言。今年九月下旬には、ビジネス誌の創刊五十周年の記念講演で、原発ゼロの必要性を主張したと一部週刊誌で報じられた。

 同月二十七日に元首相と会食したみんなの党の国会議員は、短文投稿サイト「ツイッター」に「元首相は原発は廃止するべきだと強く思っています」と書き込んでいた。


 言っていることは全くもって正しい。中部と言えば、JR東海。東海道新幹線グリーン車には、WEDGEなる雑誌を配置して、無料で持って帰れるようになっているのですが、2013年9月号
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読む気も起きません。JR東海は、実現不可能なリニアモーターに経営資源を全投入する予定のようで、電気をどか食いするリニアを走らせるには、原発再稼働が絶対に必要です。JR東海会長の噴飯物のインタビューが産経新聞が掲載していましたので、引用いたします。ここまでウソをついていいのかと言うほどの嘘ばかり。



JR東海会長・葛西敬之 再稼働が必要なこれだけの理由
2013.9.30 03:14 2013100302.jpg 大飯原発4号機が定期検査に入り、原子力発電の稼働は皆無となった。政府は原子力規制委員会の安全審査を待って再稼働させる方針であり、年明けに稼働が期待されるが、原発に反対する勢力による規制委員への心理的な圧迫や一部メデイアの情緒的な報道姿勢を考えると、安心はできない。
 ≪国富流出と電力コスト上昇≫
 放射能への恐怖心と反原発ムードを蔓延(まんえん)させたのは民主党の定見を欠くエネルギー政策とポピュリズムだった。鳩山由紀夫首相は就任早々、2020年までにCO2の排出を1990年対比で25%削減すると国際社会に宣言した。何の根拠もないものだった。そこで民主党政府は原発比率を50%に高める計画を定めて辻褄(つじつま)合わせを試みた。2011年3月に福島原発事故が起こると、菅直人首相は一転、原発ゼロにし自然エネルギーで代替する空論に乗り換えた。

 当時、日本は地震、津波、原発事故に恐慌を来し、「放射能が怖い、原発は嫌だ」という心理状態に満ちていた。この時こそ政府は一歩踏み込んで、日本経済の生き残りに原発は不可欠だと説くべきだった。人心の動揺を鎮静すべき政府が不安を煽(あお)り立てた責任は重い。1ミリシーベルトの除染基準や40年での廃炉などはその典型であり、理性的なエネルギー政策論は封じられてしまった。これが現状である。

 その上で今、国民の期待の最たるものは安定的経済成長と安全保障である。その大前提は自前の基幹エネルギーであり、それは原子力以外にない。この真実を知れば人々は自ら正しい選択に行き着く。その第一歩はこれまでの思い込みを問い直すことである。

 例えば、今、日本は原発を火力発電で代替するため、毎年4兆円の国富を既存の化石燃料代金に加えて流出させている。その結果、電力コストは既に25%上昇した。自然エネルギーはさらにコスト高で、活用の場面も異なる。原発の再稼働だけがコスト増を解消し、電気料金値上げを回避できる。結論は自明ではないか。

2013100303.jpg 燃料費が年間4兆円も増大?バカも休み休み言って欲しい。私の分析でも、核燃料費はLNG、石炭よりも高く、さらにウランとLNGの燃料費試算(『環境問題』を考える)原発は燃料費さえ火力発電に劣る!!においても、だいたい1兆円程度の火力燃料費の増加と試算されています。2009年の原発供給実績は、2779億kwhですから、もし仮にこの燃料費が4兆円かかったとすれば、その火力の燃料費は 14.3円/kwh となってしまいます。石炭、LNGの燃料費を考慮すれば、こんな数字にならないのは明らかです。せいぜい多くて2兆円程度。しかも、ウラン燃料費を差し引くことができるのですから、貿易に与える影響はそれよりも更に低くなります。電力会社の計算を鵜呑みにするなんて、経営者としては失格。できるのは親方日の丸JR東海の会長くらいでしょう。

 ≪脅かされるエネルギー安保≫
 前政権は東京電力に徹底的な人件費削減を強いるなどして値上げを抑制したかに装った。しかし東電の発電コストの50%近くは燃料費であり、9%程度の人件費では桁が違う。過度の人件費削減により職員の質的劣化と士気の低下が進行し、電力の安全・安定供給能力を確実に毀損(きそん)しつつある。速やかに正常に戻すべきではないか。

 原発停止は石油・天然ガスの輸入交渉で日本の立場を弱め、高く買わされる。中東情勢の混迷で輸入が途絶すれば絶体絶命である。エネルギー安全保障の観点でも原発の再稼働は急務ではないか。

 そもそも、この燃料費増大議論が成り立たないのは、先ほど述べたとおり。しかも、今冬も電力の節電要請はしなくて済む(節電定着で電力に余力 今冬見通し、経産省発表 )との見込み。つまり、原発がなくとも日本の電力の需要は十分にまかなえるのです。

 これまでに原発事故による死亡や、放射能被曝(ひばく)による発病が記録された唯一の事例はチェルノブイリで、即死者は31人であった。火力発電に伴う死亡者はその千倍強に及ぶとされる。千年に一度の大地震に福島原発の構造体そのものは耐え得た。津波被災への緊急対応の不手際は否定できないが、放射能による直接的な死亡者はなかった。その教訓を生かした深層防護の徹底により日本の原発の安全性は飛躍的に高まっている。火力発電よりも遥(はる)かに安全な原発を速やかに再稼働すべきではないか。

まず、重大な過誤が一点。JCOで大内さんが被爆死したのは、放射線被曝ではなかったのでしょうか。原発事故でもたくさんの人が死んでいますし、なにをもって火力より安全と言っているのか意味がわかりません。
NHKスペシャル 被曝治療83日間の記録 〜東海村臨界事故〜を見て欲しいものです。日本人がつい最近放射線障害で手の打ち所もなく被爆死されているのに、全く無視。しかも、記者もその間違いを全く指摘していない。チェルノブイリの強制障害31人だけって、よくもまあ言えたものです。フクシマのあとでも火力より原発が安全というこの神経。
まあ、高級子供服で有名なミキハウス社長もまた
「原発は危険というけど、(原発が稼働した)この50年で、交通事故で100万人以上が死んでるわけです。原発でそんなに死にましたか?」
と平気で言うくらいですから、JR東海会長のみをやり玉に挙げるのは少し良くないですね。


 自然界で浴び、医療で日常的に用いられる放射線量に比べ、1ミリシーベルトの除染基準は過剰である。それにより強いられた避難生活のストレスがもたらす健康被害は遥かに深刻である。チェルノブイリ・広島・長崎で蓄積された知見なども生かし、科学的合理性のある除染基準に改定すべきではないか。

おそらく、現行の20ミリで十分との考えでしょうが、年間20ミリは職業的な放射線従事者の上限です。

第四条  事業者は、管理区域内において放射線業務に従事する労働者(以下「放射線業務従事者」という。)の受ける実効線量が五年間につき百ミリシーベルトを超えず、かつ、一年間につき五十ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。

科学的と主張するくらいなら、この電離放射線規則まで変更すべきでしょう。この法律が存在していることを知っているんでしょうか。それとも、福島の子供は放射線業務に従事していないから、この法律を守る必要はないと、御用学者よろしく考えているのでしょうか。


 ≪平和利用国日本の技術に期待≫

 使用済み燃料の処理が不可能だとの理由で原発反対を唱える声を聞くが、放射性廃棄物の発生量は火力発電に比べ遥かに少なく、捕捉、貯蔵、管理が可能である。しかも再処理・再利用することで量的に減少し保管期間も短縮する。技術的には数百年程度に短縮する見込みが立っているという。

 放射性廃棄物を数百年に短縮する技術がどこにあるんでしょうか。もし、あるのだったら世界に売り出せばいいじゃないですか。いくらでも需要があります。なぜ、フィンランドがオンカロを作っているのか、NUMOが一生懸命数万年の管理が必要だと高いカネをかけているのか。この無知、無能な経営者の言葉は、「神国ニッポンには、神風が吹く」と言い続けた軍部と全くおなじです。自分の知らないことをさも知っているかのように説明する。しかも、この戯れ言を平気で掲載する産経新聞。マスコミの姿勢としてあり得ません。産経新聞は、この技術の裏付けを取っているんでしょうね。掲載するからには当然。いくら本人がしゃべったとしても、これでは単なる宣伝、大本営発表です。しかも「正論」として掲載しているのですから、ものすごく悪質

 一方、化石燃料による大気汚染は年間推定100万人以上の人命を奪っているとされるが、汚染ガスの捕捉、貯蔵、管理は不可能だ。発生源である火力発電の代わりに原発を活用して汚染を減ずることこそ人類の福利ではないか。

 東電の無限責任は政策的合理性がない。除染、廃炉は国が関与する別組織で行い、東電は利用者負担で電力供給に専念させるべきではないか、等々。

 今、世界の趨勢(すうせい)は原発の利用拡大に向かい、再処理能力を保有する唯一の完全平和利用国、日本の先進的技術に期待している。世界とともに歩むことが国益にとっても正しく、環境汚染防止という地球規模の大義にも沿うものだ。

 同盟国の米国や多くの友好国は日本の原発再稼働を歓迎するだろう。また、原発の安全確保策や健康面から見た放射線の許容基準も国際的権威ある専門家の支持を得られるだろう。そうなれば、これまで萎縮してきた国内の専門家も発言しやすくなるだろう。原発の再稼働は内外の合理的な政策論や専門的英知の立体的な支援の中で進めることが望ましいと思う。(かさい よしゆき)


 再稼働をするのなら、民間で原発保証保険なるものを作ってください。電力会社が不始末を起こしても知らんぷりの経済界。バカにつける薬は、本当にない。 そう思います。

 やや、痛快なのはこの人物を目の前にして、小泉が脱原発の講演をしたこと。笑えますね。

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2013年10月02日

電気自動車から、柏崎稼働に走る姉川尚史常務の思い出

 日本には東電を盟主とする沸騰水型(中部、東北、北陸、中国)と関電を盟主とする加圧水型(北海道、四国、九州)の大きく二つの原発があります。私が以前聞いたところに拠れば、なにか大きな設計に起因する事故が起きても、全部の原発を止める必要がないようにわざわざこの狭い日本で2つの炉形を採用したとのことでした。
 事実、沸騰水型は、(大きく報道はされていませんが)原子炉の下部から制御棒が入り、かつ最上階に使用済燃料プールがあるといった今回のシビアアクシデントを起こす原因となった設計上の欠陥があきらかになりました。沸騰水型は、現在でも建設コスト、発電コストともに加圧水型とは比較にならないほど不利なのですが、それでも東電が採用し続けた理由は、加圧水型よりも安全性に優れているとされてきたからです。今回の事故で、唯一の利点である安全性が根底から崩れてしまったわけですから、沸騰水型原発を新しく採用するまともな国はないでしょう。(補助金がついていれば別ですが)
 そして、規制委員会に再稼働を申請しているのはいずれも加圧水型の炉形を採用している電力のみです。沸騰水型原発はどうなるのだろうかと思っておりましたら、なんと事故を起こした東電が一番乗り。(トップを走るような能力を持つような沸騰水型原発採用電力は東電以外にはないことが、良くおわかりでしょう。)

その先陣を切った東京電力にかつてお世話になった姉川尚史氏の顔がありました。
田中龍作ジャーナルから
東電・柏崎刈羽原発 シナリオ通りの安全審査申請
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東電の姉川常務は百科事典のような膨大な資料を添えて安全審査の申請書を提出した。=27日午前9時30分 原子力規制庁 写真:筆者=



 私が本店原子力技術課に勤務しているときに、建設部の尾本彰課長(事故当時 原子力委員会委員)のもとで安全グループの副長をしていた姉川尚史氏がでてきたのには驚きました。。私は発電部の武藤栄課長(事故当時副社長)−(発電所の)安全グループだった高橋毅副長(前1F副長)のもとで仕事をしていました。建設中の発電所の安全を考えるか、既発電所の安全を考えるかの違いはありましたが、電事連でもおなじ立場で参加をしていましたので、大変お世話になりました。かなりのマックオタクで、1994年当時に尾本課長(かれもマックオタク)とともに、当時はまだ珍しかったイーサネットでLANをはり、マック関係の雑誌に特集が組まれたほどでした。
 当時の発電部はまだワープロ全盛でしたが、私が入ってからWindowsのパソコンを1台購入してひとりでWindowsをつかっていましたら、姉川氏が後ろで私の画面を眺めて、「ウーン、うつくしない」と一言。真意を聞きましたところ、マックはなめらかにマウスカーソルが移動して、かつ速く動作させると加速がついて、うつくしいとのこと(このアルゴリズムは特許で守られていて、Windowsでは採用できないらしいです)。とにかく一風変わっていました。

 私が会社を辞めるときに、「本当は何になるんだい?」と聞いてこられたので、姉川さんには正直に「医学部に進学して、精神科医になりたい」と話しました。(会社に医学部受験を話すと、入学試験さえ妨害されるのではないかと当時はおそれていました)その時に、餞別としていただいたのが 「生きがいについて 」神谷 美恵子 (著)でした。


 その後も年賀状のやりとりはしていたのですが、途中でなんと進路を変更。

原発から電気自動車へ転身
技術結集次世代へ挑戦
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 「石油エネルギーに頼り切っているクルマ社会を変えなくては」

 東京電力で原子力発電所を担当する技術者だった姉川尚史(たかふみ)さん(50)が、電気自動車(EV)の開発を進めたいと会社に申し出たのは2002年のことだった。
 電力会社の花形部門から、海の物とも山の物とも分からない新分野への異動希望に上司らは驚がくした。
 電池でモーターを回すEVは、排ガスが出ず、環境に優しい乗り物として、18世紀から始まる自動車開発史の中で常に注目され続けてきた。が、航続距離の短さなどで普及せず、ガソリン車の後塵(こうじん)を拝してきた。

 当時は、充電に8時間もかかって航続距離は100キロ程度、価格は何百万円……。「EVの普及は難しい」。社内でもその見方が大勢を占める中、姉川さんは、「地球温暖化が進む、これからの社会には絶対に必要なもの。だからこそ自分にやらせてほしい」と粘り強く説得を続けた。

 姉川さんは大学院で原子力工学を学び、同社の発電電力量の38%を占める原発事業に約20年間、携わった。発電の世界では、早くから石油だけでなく、原子力、天然ガス、水力と特定の電源に偏らない分散化が進められてきた。

 生活者の足であるクルマはそうではなかった。

 姉川さんの熱意に会社も重い腰を上げた。「やる以上は退路を断ってやれ」。そう送り出された

 同社は04年、横浜市鶴見区の「東京電力技術開発研究所」に、「電動推進グループ」を設置。姉川さんがマネジャーに就き、開発を本格化させた。

 それまでは航続距離を伸ばすことに主眼が置かれてきたEV開発。だが、姉川さんには、「航続距離は短くても、急速充電が可能な小型車なら市場で受け入れられる」という考えがあった。姉川さんは急速充電技術の開発に的を絞った。

     ◎

 「神奈川には、新車開発を支える技術がある。電気自動車だって何だって新しいモノを生み出せる環境がここにある」

(中略)

 姉川さんらが開発に成功した急速充電技術を搭載した富士重工業の「スバルR1e」の試作車が06年6月、発表された。09年にはついに家庭用電源からでも充電可能な普及車が発売される。充電器は横浜市の精密機器メーカー製、大容量の新型リチウムイオン電池は相模原市のメーカーが製造する。京浜工業地帯で培われた技術が新しい時代のクルマ作りを支えている。

 エンジン音がせず、風が流れるように走る電気自動車は、21世紀の「空飛ぶ軽い羽」。化石燃料からクリーンエネルギーへと、自動車産業を根本から変える先駆者となるのか。姉川さんの胸には、新しいクルマ社会の未来予想図が描かれている。(有泉聡)(おわり)
(2008年1月12日 読売新聞)


 「退路を断ってやれ」と言われてまで新分野に飛び込み、これから本格的な電気自動車の普及が期待されていた矢先に311がおき、彼の運命も大きく変わってしまいました。事故が起きる前に一度だけ電話で話したことがあるのですが、「東電というのはひどいところだ。人の成功をねたんでここまで陰湿にやる人間がいるとは呆れてしまった」とこぼしていました。充電用のプラグの開発からやっていたとのことですが、東電に大事故が起きてしまい、当然の帰結として原子力村に再度引きずり込まれてしまいました。

東電役員に並ぶ「異端者」 にじむ危機感(真相深層)
原子力部門のナンバー2となる常務執行役に、原子力設備管理部長の姉川尚史(56)を抜てきした人事も波紋を広げた。

原発の技術者である姉川の経歴は異色だ。原子力部門の中枢から技術開発研究所に転じて電気自動車(EV)の普及に奔走した。EVの充電方式で世界標準をめざす「チャデモ協議会」の事務局長を務め、むしろ自動車業界で名が通る。

事故を受け原子力部門に戻った姉川に転機が訪れたのは昨年3月。原発のストレステストの報告書で、東電は239カ所もの誤りが見つかった。

「なんでこんなに間違えるんだ!」。問いつめた原賠機構の幹部に姉川は平然と答えた。「従来のように原子炉メーカーに任せればミスはゼロだがそれではダメ。自分たちの手でやるのが大事だ。私は会社の文化を変えたい」。姉川を原子力改革の要にあてる構想はこの時に固まった。

東電が設けた「原子力改革監視委員会」の事務局を率いると、昨年10月の初会合で「事前に必要な津波対策を取ることは可能だった」とする見解をまとめ、対策の不備を初めて認めた。姉川は「会社の見解は変わった」と発言。OBから「裁判でどうなると思っているんだ」と責められても意に介さなかった


 姉川さんらしいと私は思います。やや猫背で訥々としゃべる感じは、20年前と少しも変わっていない印象を受けます。

どうなる福島原発、汚染水問題【言論アリーナ】(上)何が起こっているのか?では、田原総一朗、池田信夫、石井孝明といった蒼々たる御用論説員とやり合っています。
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 姉川氏一人をとっても、東電の人材の豊富さが良くわかると思いませんか?1993−95年に本店にいた私は、今考えれば大変貴重な経験をさせてもらいました。一度、姉川さんとお話しできればおもしろいと思うのですが、叶わぬ夢でしょうか・・・

◆関連ブログ
近藤駿介原子力委員長の電力業界との癒着2012年05月24日

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posted by いんちょう at 22:36| Comment(4) | 原子力

2013年10月01日

ヨウ素100万Bq/kgを超えていたフクシマ葉物野菜−311直後の放射能汚染実態

本当の情報とニセモノの情報。どこで見分ければいいのでしょうか。ニセモノの情報は、権威をまといかつ数字や統計の裏付けがあり、どこからどう見ても文句をつけられないが、何となく胡散臭い。逆にホンモノの情報は、その逆で権威も何もない人が数字の裏付けも何もなくぽろっとこぼしたことだが、信用できそうだと思え、かつあとからあとからその情報を裏付ける資料が出てくること。まさしく、

「どんな馬鹿でも真実を語ることは出来るが、 うまく嘘をつくことは、かなり頭の働く人間でなければならない。」サミュエル・バトラー

の言うとおり。このことを頭に入れておけば、いろいろなデマに騙されなくなります。特に国連の傘下の各機関、東大をトップとする科学機関、NHK、読売などのマスコミに登場する御用学者、論説員。たいてい「聖書」に書かれていることをオウム返しに話すだけですので、聞いてておもしろくありませんし、発展がありません。肩書きではなく、発言者の名前を覚えておけば、−膨大な人数がいますが−ああ、またこいつか、あるいは、ああまたこの組織の人間か。とだんだんと騙されなくなります。

ヨウ素119万Bq/kgの汚染でヨウ素剤を飲んだ福島医科大学の医師・看護師で紹介した記事の中に書かれていた内容
当時の放射性ヨウ素の貴重なデータがある。福島市の南東に位置する県立医大近辺で3月15日(爆発から3日後)に採取された葉菜の検査記録だ。県が測定し手書きで残したその資料には、ヨウ素だけで1キロあたり119万ベクレルが検出されたことが示されている。

当時医大で医師・看護師などに「安定ヨウ素剤」を配ったのも頷けるデータだ。しかし、私たちにはそうしたデータが公表されることはなかった。


なにげにすごい発言ですし、説得力もあります。しかし、何しろ証拠がない。とかいておりましたら、とあるかたに一級の資料を教えてもらいました。

とても、探せない場所 2011 年経産省プレス発表
2011年6月3日 東京電力株式会社福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所周辺の緊急時モニタリング調査結果について(3月11日〜15日実施分)
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4葉菜(3/15 18:21)
I-131 1,190,000Bq/kg
Cs-137 169,000Bq/kg

3葉菜(3/15 17:58)
I-131 1,230,000Bq/kg
Cs-137 109,000Bq/kg

と確かに記してあります。この当時強烈なヨウ素雲がこの一帯をおそったことの紛れもない証拠です。なぜ、こういった重大な情報が隠されてしまっているのか。

なかには3/13 13:00の時点であちこちに 30uSv/hrを超える地点がある情報まで含まれています。初めて見ました。
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もう一度、事故当時のJVJAの生々しいレポートを見て、何が起きたのかをしっかりと思い出しましょう。とても、東京オリンピックなどと浮かれている場合ではないことはすぐにわかることでしょう。






◆関連ブログ
ヨウ素119万Bq/kgの汚染でヨウ素剤を飲んだ福島医科大学の医師・看護師2013年06月16日
震災時の原発周辺動画2011年11月19日 

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posted by いんちょう at 22:55| Comment(12) | 原子力