2014年08月06日

1133.どんどんと炉心が溶けていく3号機−チェルノブイリ越えは確実

・3号機炉心の大半がメルトダウンしていたと、東電が解析結果を発表
・炉心が溶融して、原子炉圧力容器を貫通しているのは、当初から想定されており、単にパニックを防ぐためだけに後出しにしてきたと思われる
・メルトダウンした原子炉の廃炉など人間にはできない。今回の発表で本当に重要なのは、放射能漏洩量が飛躍的に増えること。

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 東電が、3号機の燃料の大半が溶け落ちていたと解析を発表しました。
3号機炉心溶融は推定の5時間前 核燃料大部分が落下、福島第1

 東京電力は6日、2011年3月の福島第1原発事故発生時、3号機で従来の推定より約5時間も早く炉心溶融(メルトダウン)が始まっていたとの調査結果を発表した。これまでの想定より早く溶融が進んでいたため核燃料の大部分が格納容器下部に溶け落ちたとしており、今後の廃炉作業は一層困難になる可能性がある。

 これまでの解析では燃料の約6割が溶け落ちたとみていた。今回の解析結果を受け、東電は「大部分が落下したとの前提で燃料取り出し方法の研究を進める必要がある」としている。
2014/08/06 18:40 【共同通信】


NHKはさらに詳しい
3号機 大部分の燃料が溶融落下の解析結果
8月6日 19時22分

東京電力福島第一原子力発電所の事故の検証で、3号機では、これまでの推定より早く燃料が溶け出し、大部分が原子炉から格納容器に溶け落ちたとする新たな解析結果がまとまりました。専門家は、今後の燃料の取り出しがより難しくなるおそれもあると指摘しています。
3年前の原発事故を巡り、東京電力は未解明の問題の検証を続けていて、6日、一部の検証結果を公表しました。
このうち、3号機では、バッテリーで動いていたHPCIと呼ばれる緊急用の原子炉の冷却装置を事故の2日後の3月13日の未明に運転員が手動で停止し、ポンプによる注水に切り替えようとしましたが、うまくいかず、原子炉の冷却の遅れにつながったと政府の事故調査・検証委員会で指摘されました。
これについて、東京電力が原子炉の圧力などのデータを分析したところ、HPCIは手動で停止するより前の3月12日午後8時ごろには機能を失ったとみられ、解析の結果、これまでの推定より5時間余り早い3月13日の午前5時半ごろから燃料が溶け始めて、翌14日の午前7時ごろには原子炉の底を突き破り、大部分が格納容器にまで溶け落ちた可能性があると分かったということです。これまで、3号機で格納容器に溶け落ちた燃料は、一部と考えられていました。

また、今回東京電力は、消防車を使った注水が行われた2号機の原子炉内で燃料と水が反応して水素とともに大量の熱が発生し、メルトダウンに拍車をかけたという新たな解析結果をまとめました。
東京電力は、原子炉の水位が下がって燃料がむき出しになるような深刻な事態になった場合、迅速に十分な注水ができなければ、かえってメルトダウンを進めてしまうことを示しているとしています。
専門家「廃炉作業への影響大きい」

東京電力が行った新たな解析結果について、原子炉の解析に詳しいエネルギー総合工学研究所原子力工学センターの内藤正則部長は「今回、東京電力は、ほぼ100%の燃料が圧力容器(原子炉)を突き破って下に落ちたとしているが、大きめの評価で最も深刻なケースとみるべきだと思う」と話しています。
そのうえで、今後予定されている溶け落ちた燃料の取り出し作業については、「圧力容器の下には円筒状のコンクリート製の部分があり、突き破って出てきた燃料がこの筒に収まっていれば、その中で回収すればよいが、今回の解析のように溶け落ちた量が多く、筒の隙間から格納容器の広い範囲に出ているとすれば、取り出す手順や方法が複雑になるおそれがあり、廃炉作業への影響は大きいと思う」と話しています。


フクシマの状況について東京電力は、非常に楽観的な報告書から徐々に悲観的な報告書に変遷をたどっています。

2014080601.jpg1〜3号機の炉心損傷状況の推定について平成23年11月30日
水に接していなかった一定量の燃料が溶けて圧力容器下部に移動した可能性は
あるが、多量の燃料が格納容器底部に滴下するような圧力容器の大きな損傷は生じていないと推定




2014080602.jpg「福島原子力事故における未確認・未解明事項の調査・検討結果〜第1回進捗報告〜」について平成25年12月13日
事故後、溶融した燃料のうち、一部は原子炉圧力容器下部プレナムまたは原子炉格納容器ペデスタルへ落下している。燃料の一部は元々の炉心部に残存していると考えられる。ただし、運転員によるHPCI手動停止以前に充分な原子炉注水が出来ない状態になっていたことが判明したため、事故進展がMAAP解析による推定よりも早まっていると推測されるため、従来の予測よりもより多くの燃料が格納容器内に落下しているとした。




2014080603.jpg「福島原子力事故における未確認・未解明事項の調査・検討結果〜第2回進捗報告〜」について平成26年8月6日
事故進展が早まり、燃料を冷却できない時間が長期化した結果として、原子炉圧力容器も破損するとの結果となった。


 ついに1〜3号機すべてが、メルトダウンしてしまっていたことを東京電力が認めたわけです。なにもしらない「有識者」と言われている人は、廃炉が遅れるなどととぼけたことを抜かしていますが、フクシマを廃炉にすることが不可能なのは、チェルノブイリを見ればみんなわかること。それよりも、大事なことは大半の核燃料が溶け落ちたわけですから、フクシマからの漏洩放射能量の見積もりが大きく間違っていたことになります。(東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故に係る1号機、2号機及び3号機の炉心の状態に関する評価のクロスチェック解析)つまり、チェルノブイリを遙かに超える健康被害が出る証左でもあります。

トンデモ学会を地で行く、下記人物はなんの根拠もないまま、次のようにつぶやきました。

未だに間違っていなかった主張しているようですから、さすが と学会の理事 だといえましょう。

あと気になるのは、NHKの動画で出てきた3号機の建屋状況。4号機と壁(南側)には鉄板で保護されており、タービン建屋との間にはなにやら建物ができています。(左は事故直後東電のホームページの写真を探しても、このような工事についての言及は一切ありません。いったい何をしているのでしょうか?チェルノブイリの石棺を思い出させますが・・・
2014080605.jpg2014080604.jpg


参考ページ
【東京電力ホームページ】「福島原子力事故における未確認・未解明事項の調査・検討結果〜第1回進捗報告〜」について
【東京電力ホームページ】「福島原子力事故における未確認・未解明事項の調査・検討結果〜第2回進捗報告〜」について
メディアによる真実隠しは続く。

■関連ブログ
1103.メルトダウンした福島の地下はどうなっているか。2014年06月27日
3号機爆発で生じた関東平野の汚染2013年11月19日



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タグ:1F3
posted by いんちょう at 20:52| Comment(17) | 原子力
この記事へのコメント
ホ学会信者は教祖が重要な間違えしてても知らんぷり

教祖は金目でしょ?
Posted by あほらしあらし at 2014年08月07日 01:31
東電の6日発表の記者会見
http://www.47news.jp/CN/201408/CN2014080601001457.html
本件に関しては、事故当初、東電は、漏れ量は、チェルノブイリの2〜3割だと言っていた。
それが、今年5月になって、米国政府発表で、1.8倍、
http://buzznews.asia/?p=29547
EU傘下の機関発表で、3倍が漏れたとなっているので、
http://enenews.com/eu-funded-research-fukushima-atmospheric-release-210-petabecquerels-cesium-137-upper-bound-simulation-chernobyl-estimated-70-85-petabecquerels
東電ももはや、隠しきれなくなって、
「チェルノブイリよりも、多く出たことは、察してね。」ということで、
やんわりと、そのような情報が出てきたのだと思う。
1機しか爆発していないチェルノブイリに比べて、そもそも3機とも
メルトダウンした福島第一からのリークが少なかったとしたら、
おかしい話なので。
実際、私自身も、東電に、最近、「米国とEUから、こんな情報が出ている
が、本当の処、どうなんだ?」と訊いたら、「今は、1Fの収束の方で、
忙しいから、答えられない。」との返事が返って来た。
東電には、具体的な情報を出させる必要と、福島で起こっていたことを無視し、
川内で再稼働させようとしている訳だから、政府には、吉田調書を、1Fを
爆発させた一翼を担った吉田の、「公開されたくない。」とする、身勝手な意図
ではなく、ここまでの事故になったのだから、国民の総意として、
絶対、公表させる必要性がある。
それをすることで、事故の真相究明と言うだけではなく、
これから、さらに来る健康被害の予測と対策にもなろう。
(小野先生が言っているように、東北・関東を中心に、
 健康被害は、とてつもなく、大きなものになって行く可能性を懸念する。
 従来、五輪とは、皆が健康な時に健全にすべきもの。2020年のその開催
 など近隣他国に譲り、日本自体が、これから6年、1F収束と予防・治療に
 専念した方がいいのではないか?さもないと、他国にいい処を見せようと、
 隠蔽は、今以上に、深刻なものとなり、被害は拡大する。
 それでも、安倍が、「全ては、風評被害」、「1Fは完全にコントロール
 されている。」と言い張るならば、彼が、国会議事堂を浜通りに移転、
 永田町の全国会議員と霞ヶ関の全役人、及び、自らの家族をも引き連
 れ、双葉に遷都、皆がそこに永住する、と。
 これで、初めて、自分の言っていることに説得性と信憑性を持つ。
 推進・脱原発問わず、合意可の案として、彼に提起しているが、返事がない)
それと、日本は、法治国家。
猛毒物を環境にばら撒いたのだから、勝俣・武藤・武黒だけではなく、
サリン撒いたオウムの時にやったように。
幇助犯・教唆犯・共犯併せて、悪党はドミノ式
に、容赦なく、捕まえるべきでもある。
Posted by しらあしらほあ at 2014年08月07日 08:29
御用学者や政府を信じた人々もアホですが、
それでも信じて福島に残った人達のこれからの健康被害に対する責任は誰が取るのか? 子供達の将来は?
これからもっとひどくなるのに、帰還推進なんて、あり得ない。今すぐ国の責任で線量の高いところを閉鎖して人々を避難させ健康チェックをするべき。


Posted by そら at 2014年08月07日 08:31
菊池さんって方。ウィキペディア情報では「ニセ科学フォーラム」実行委員とありましたが自分たちに都合の悪い情報を流す人たちをニセ科学と糾弾しながらも自分たちはもっと非科学的、、、、wあきれますねw
Posted by moony at 2014年08月07日 09:26
東京で被ばく対策に気を使うのはぶっちゃけ気休めでしかないのでしょうか。
それを言っちゃおしまいですか?
信じる者は救われる、希望を捨てるな、諦めないでー!でしょうか。
こうなりゃ生きてるうちに旨い目にあったもん勝ち、やったもん勝ちですね。
冷静な人が多い日本て凄いな
こんなんでも日本の領土が欲しいんですね
どうせ死ぬなら安楽死したいな〜


Posted by なおたん at 2014年08月07日 12:19
> 御用学者や政府を信じた人々も
> アホですが、
> それでも信じて福島に残った
> 人達のこれからの健康被害に対する
> 責任は誰が取るのか?
> 子供達の将来は?

誰も、責任なんて、取らないですよ。
川内再稼働など見ても、わかるじゃないですか。
安倍は、はっきり、
「事故時は、電力の責任だ。」と言い、
規制委は、
お墨付きらしきモノは与えるも、
「安全だとは言わない」で逃げている。
そして、九電は、事故時など、政府が
何とかしてくれると思っている。
こう言う構造で、事故が起こらない方が
不思議。
今後、爆増すると言われている、
福島の健康被害の事案でも、
安倍は、
「福島第一は、完全にコントロールされている」
「日本には、健康被害はなく、健康被害だけだ」
と叫んでいるし、その前の
「食べて、応援」
「放射能付きのがれきを全国で
 受け入れなければ、日本人じゃない」
それらのはさはか、かつむごい発言で、近づかなくてよい、
危険な罠に落ちた人間がどれだけ
いるかわかりません。
本人・家族・遺族は、
病院で、仲間をつかまえて、
集団訴訟にし、刑事・民事両面で、
被害者の身体から検出された、
放射線物質を、物証として、
裁判所に提出し、
東電・政府・黒子の役人
あたり多数を最高裁まで、国民皆で、
引き回すのが最適案なのでは。
長く、懲役に入るのが嫌な人は、
彼らは、今まで、
やる事をやって来たんだから、
解釈改憲が決まった時点で、
彼らと司法取引して
我々の身代わりに、多国間が戦う
戦場に行ってもらうと。
奴らのこと。
実績として、原発3つ爆発させたので、
爆発物扱うとか、何か、現場で仕事が
出来そうじゃないですか。

ところで、やはり6日発表の1F。建屋周囲の地下水放出http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140807-00050003-yom-sci 推進屋寄りの読売。モノには、言い方もあるもんで、凍土壁が難航し、凍らない為、海にスルーで流すしかないだけなのに。“地下水を遮断する地中の凍土と並び、建屋に流入の地下水を減らす、汚染水増加抑制対策の柱に位置付ける”かあ。。。 Nice!
Posted by 誰も、責任なんて、取らないですよ。 at 2014年08月07日 12:26
推進派のウソに対抗するため、

「放射線安全デマ対策ハンドブック」

をWerdで作りました。内容に問題があれば
ご指摘下さい。
●ttp://yahoo.jp/box/eNTG2P
(●をhに変更)
Posted by 三木俊治 at 2014年08月07日 12:32
三木さんへ
 早速読ませていただきました><というのも、つい数日前にFBのほうで絡まれましたので><
その人とのやり取りの中で査読付き論文だから信憑性が高いんだなどの発言もありましたw有る意味タイムリーなので騙せると思ったんでしょうが私自身は査読付き論文に意味など求めていなかったのでスルーしましたw日本人は権威に弱いというのも確かにあります。そこも加味されますといいようにおもわれます。その方は私と専門的なやり取りし論破したかったのでしょうが私は素人だと明言し専門的な議論など素人同士でできるはずもないでしょうというとそんなことは思っていないと引き下がり(この時点でかなり興奮していたようで)「高校生でも理解できる内容のことすらご存知無いのであれば、リスクの評価も出来ませんし、ただ、わからないから怖いというのであれば、幽霊が恐いと言っているのと変わりはありません。」等の工作員属性バリバリの挑発をしてきましたが前後の私の発言内容について勘違いしていること指摘し、冷静な発言をお願いしたところおとなしくなってくれました><駄文が長くなり失礼致しました。
Posted by moony at 2014年08月07日 18:18
小野先生
お邪魔しております。私の投稿をお認め頂きありがとうございました。

moony様
はじめまして。あんまりスマートな出来ではないのですがお役に立てば幸いです。
論文の権威があったほうが良い、というご意見はごもっともです。
ところで、この手の医療論文の場合はエビデンスレベル(証拠能力の高さ)というのが一番重要だと思います。アメリカの医療政策研究局では、信頼性を八段階で評価していまして、メタ解析論文というのがトップグレードでして、続いて大規模無作為対照比較試験研究、などと続きます。
私の紹介した研究の中では、WHOのラドンの研究などがメタ解析に該当するはずです。なので、ラドンの研究で低線量域において高い直線回帰性(ストレートに直線)が出ているのは推進派にとっては否定しがたい証拠にはなると思います。
もちろんこれを否定する人間もいます。低線量域では誤差が大きいので、エビデンスがあるとはいえないだろう、という理屈です。しかし分子生物学実験等でICRPがLNTを認めているのだから、ほっておけばいいでしょう。
FBでは私もよくからまれますよ(笑)ああいう所でヒマにしている人間は相手にする必要はありません。
Posted by 三木俊治 at 2014年08月07日 19:11
完全にコントロール QT @Tanisennzo: 「福島第一原発では高濃度の汚染水が地中に漏れ出し、これに汚染された地下水およそ200トンが、毎日、海に流れ出していると見られています。」

汚染水浄化後 海へ了承求める
-----------------------------------
先ほどのtw引用

本日朝3時NHKラジオnews 1回放送のみ
漁業者に了解を求めるとか言ってました。

地下水で溶解燃料の灰で漉して
海洋にに放出
Pu燃料の灰
もう数トンは流出かな
数年後 世界生物 消滅のおそれ。

Posted by 農家 at 2014年08月08日 10:04
新聞では
一応浄化装置(未だ未完成)
を通過して放出となっているが
画を書いたのみで了解を求める

現状は、開放型地下燃料冷却装置(自然水)
で駄々漏れ。
もし凍結で地下水止まったら地下大爆発では?
Posted by 農家 at 2014年08月08日 12:49
今すぐ福島は閉鎖しましょう。
そして、徐々に線量の高くなりやすい地域も。
Posted by そら at 2014年08月09日 22:36
まぁ前々からここのブログでは言われており、自分なりに覚悟はしていたのですが、今改めて、人類がこれまで体験した事のない、そして解決不可能な災厄を、他ならぬ我が祖国が抱え込んでしまった事に戦慄しております。
こうなってしまった以上、どう考えても、事実上日本は終了したとしか思えないのですが・・・。
今はまだなんとか誤魔化せる状況ですけど、あと数年もすれば、日本政府とて、その事実を認めざるを得なくなるでしょう。そうなった時、果たしてどうなるか?
まぁ、一見ノーテンキな日本政府とて、陰ではすでにこの事を把握し、日本が終了する時に備えて、色々極秘に計画を練っていると思いたいです。恐らくその計画は、我々小市民にとっては最悪の内容なのでしょうけど。
そしてその計画のコードネームは、「D計画」だったりして・・・(汗笑)。
Posted by 新潟県民 at 2014年08月10日 10:55
他のブログで見たんですが…(どこのブログだったかはあちこちたくさん見すぎて忘れてしまいました)

今年の5月にアメリカで福島の原発事故はチェルノブイリを超える世界最悪の原子力事故だという資料があり、そのブログ主がアメリカに問い合わせると資料を開示してくれたと。そしてそれを日本語訳で書いてあるブログがありました。

どこのブログだったか思い出せればいいんですが…
Posted by セージの葉 at 2014年08月11日 15:20
今日の新潟日報朝刊より

●福島第1原発
 炉心溶解判断基準見逃す 
 東電、事故後5年間

 東京電力は24日、福島第1原発事故当初の原子炉の状況について、核燃料が溶け落ちる「炉心溶解(メルトダウン)」ではなく、前段階の「炉心損傷」と説明し続けたことが誤りだったと発表した。東電が炉心溶解を公表したのは事故後2カ月たってからだが、事故対応の社内マニュアルに照らせば事故後3日後には炉心溶解と判断できたはずだった。事故発生から5年間、社内調査で判断基準の存在を見逃してきたことになり、東電の危機対応のずさんさに批判が出そうだ。

・公表遅れの原因に
 東電は当初、「炉心溶解を判断する根拠がない」と説明していた。だが、泉田裕彦知事は以前から東電が事故直後に炉心溶解を把握していたはずだと主張し、県技術委員会が東電に対する調査を進めていた。
 社内調査の結果、今月になってマニュアルの中に炉心溶解の判断基準の記述が見つかった。炉心損傷割合が5%を超えていれば炉心溶解と判定する、との記載があったという。
 東電によると、原子炉格納容器内の放射線量の監視計器が回復した後の2011年3月14日午前5時ごろには3号機の炉心損傷割合が30%、同7時すぎには1号機が55%と当時発表していた。この時点で炉心溶解と判断できたことになる。
 東電はこれまで県技術委には、「炉心溶解という用語の定義が定まっていない」などと、結果的に事実と異なる説明をしてきた。
 東電本店の白井功原子力・立地本部長代理は新潟日報社などの取材に対し、「社内の確認が不十分で誤った説明をしてしまい、申し訳ない」と述べ、謝罪した。東電は第三者を交えた社内調査に乗り出す方針だ。
 泉田知事は「事故後、5年もの間、重要な事実を公表せず、技術委員会の議論に真摯に対応してこなかったことは極めて遺憾だ。メルトダウンを隠蔽した背景などを調査し、真実を明らかにしてほしい」とのコメントを発表した。

・社内の情報共有甘く
 (解説)
 東京電力が原発事故の深刻さを示すのに最も重要な炉心の状態を表現するためのマニュアルを作成していながら、福島第1原発事故で全く活用されなかったことが判明した。地震や津波への対応だけでなく、情報伝達や広報体制の面でも備えが不十分だったことが浮き彫りになった。
 マニュアルは、炉心が5%を超えて損傷していれば「炉心溶解」と定義していた。東電は事故4日後の2011年3月15日には、1〜3号機で定義を大幅に超える割合で損傷しているとの評価を公表したものの「炉心溶解」との表現は避け続けた。記者会見で溶解か損傷か「急いで定義することは考えていない」と説明したこともあった。
 東電が正式に炉心溶解を認めたのは事故から2カ月後。東電は「もっと早い段階で炉心溶解と判断できた」と説明しており、過酷事故を想定したマニュアルの存在が東電内部で浸透していれば、厳しい判断が求められる事故初期の段階で不必要な情報の錯綜(さくそう)を避けられた可能性がある。
 事故から5年近くたっても東電の情報隠蔽(いんぺい)体質に対する不信感は根強いが。東電自らの対応のまずさが招いた結果だ。重要資料に関する社内の情報共有が甘かったとすれば、さらに不信感が増すことになりかねない。
Posted by 新潟県民 at 2016年02月25日 21:48
今日の新潟日報朝刊より

●東電に「溶融」マニュアル
 福島事故2ヵ月曖昧な説明に終始
 「情報隠し」厳しい批判

 2011年3月11日の福島第1原発事故発生直後、1〜3号機で燃料が溶け落ちる「炉心溶融」(メルトダウン)が起きたかどうかをめぐり、東京電力や政府は曖昧な説明に終始した。放射性物質の放出状況などから、炉心溶融の可能性が高いとの報道が繰り返しなされ、専門家も同様に指摘したが、東電が公式に溶融を認めたのは事故から約2カ月後。「情報を隠した」「事故を矮小化しようとした」などと厳しい批判を受けた。
 
 1〜3号機の状況をめぐっては、事故発生翌日の3月12日、経済産業省原子力安全・保安院の中村幸一郎審議官(当時)が記者会見で「炉心溶融がほぼ進んでいると言及。この発言に懸念を示した首相官邸の指示で、中村氏は会見担当を更迭された。その後、政府や東電の担当者からは、炉心溶融に対し慎重な発言が目立つようになった。
 当時、東電や保安院に対し、記者会見での説明内容について事前協議を徹底するよう官邸から指示があったことが、政府の事故調査委員会の聴取などで判明している。
 一方、東電は核燃料の「損傷」が起きていることは間違いないとした上で、3月15日に炉心の損傷割合が1号機で70%、2号機で30%、3号機で25%などとする暫定的な試算結果を公表。4月27日に損傷割合をそれぞれ「55%」「35%」「30%」に訂正したが「炉心溶融は起きていない」との説明を続けた。
 さらに保安院も東電などとの議論の末、4月18日「溶融の程度は燃料を取り出すまで確定しない」として、炉心溶融に否定的な見解を取りまとめた。
 東電は事故から約2カ月後の5月15日、1号機で地震発生から約5時間後の3月11日午後7時半には炉心損傷が始まり、翌12日早朝には、大部分の燃料が圧力容器の底に溶け落ちたとの試算を公表。初めて公式に炉心溶融を認めた。
 5月24日には、2号機も3月15日午後8時ごろ、3号機も3月14日午前3時ごろに大部分の燃料が溶け落ちたとの試算を公表し、溶融を認めた。

・無視なら非常に問題
 
 伴英幸・原子力資料情報室共同代表の話
 トラブルが起きた際には、マニュアルに従って対応するのが通常で、当時は本店を含め総掛かりで対応していたのに、「炉心溶融」という決定的に重要な判断について、今ごろになってマニュアルの存在が判明したとはにわかには信じがたい。国会などの調査でも分からなかったのか。電力会社は、ある程度状況を把握してから発表しようとする傾向があり、マニュアルが無視されていたとすれば、非常に問題だ。

・東電の作為を感じる

 吉岡斉九州大教授(科学技術史)の話
 事故から5年のタイミングで発表することに東京電力の強い作為を感じる。福島第1原発の建屋が水素爆発した時点で、炉心溶融が起き、大量の水素が発生していたことは明らかだった。そこから官邸も炉心溶融を前提に動いたわけで、ピントがずれている。柏崎刈羽原発の再稼働を見据え、地元のポイントを稼ごうとしたのかもしれない。東電に何らかの意図があるのは明らかだ。第三者を加えた社内調査も東電に批判的な人物を加えなければ意味がない。
 
Posted by 新潟県民 at 2016年02月25日 22:27
本日私がこの記事に書き込んだコメントで、「炉心溶解」と記してある箇所はすべて、「炉心溶融」の間違えです。
このコメント欄をごらんの皆様と、引用もとの新潟日報には深くお詫びいたします。
Posted by 新潟県民 at 2016年02月25日 22:32
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