2015年03月02日

1256.ベルギーの原子炉圧力容器にひび割れ

・ベルギーにある加圧水型原発の原子炉にひび割れが発見された。当局は、もともとあった、進行していないとして、問題ないことを強調している
・以前、沸騰水型原発で同じように原子炉構造物であるシュラウドに海外でひびが発見されたが、日本では同種の問題は生じないと強弁していたが、やはりおなじ問題が生じて対策をせざるを得なかった。
・これは中性子の強い加圧水型原発共通の問題である。早急に検査すべきであるし、また米国の原子力空母に搭載された原子炉も気になるところである。

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a href="http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM26H5T_W5A220C1000000/" target="_blank"> 原子炉の圧力容器にひび ベルギー、停止中の原発 2015/2/26 23:16
 【ブリュッセル=共同】ベルギーの原子力規制当局は26日までに、現在停止中の同国の原発2基について、原子炉圧力容器に最大約18センチのひびがあることが判明したと電力会社から報告を受けたと発表した。

 問題の2基は北部のドール原発3号機と南部のティアンジュ原発2号機。2012年に圧力容器に微細なひびが見つかったとして運転を停止した。当局は13年に運転再開を許可したが、14年3月に圧力容器の耐久性に関する別の検査で安全性に疑問が生じる結果が出て、再び停止した。

 同当局は「(電力会社の)分析は継続中で、圧力容器の安全性に関する結論はまだ出せない」としているが、ベルギー紙ルソワールは、運転再開の見通しはさらに不透明となったと報道。環境保護団体は「2基は閉鎖すべきだ」と訴えている。

 圧力容器の鋼材に、水素によってひびが生じたとされる。電力会社によると、ひびの数は12年の報告では2基で計約1万だったが、その後、超音波検査の精度が高まり、14年には計約1万6千と確認。当初は最大約7センチだったが、最大約18センチに改められた

 ひびは容器の表面から0.5〜15センチ内部にあるという。電力会社は圧力容器の製造時にできたもので、その後変化していないとの見方を示している。
 「エコー」の精度が高まったことで、ひび割れの数が増えて、長さまで長くなる。まるで、どこかの国の甲状腺エコー検査のような話です。そもそもこれほど大きな圧力容器は出荷時にエコー検査をしてひび割れの有無を確認してから据え付けるはずで、製造当時からひび割れがあったというのは信じられない話です。
 原子力発電所の寿命は30年とか、60年とか言われていますが、それを規定しているのは、圧力容器そのものの寿命です。なぜなら、この圧力容器を取り替えることは不可能だからです。
 いくらJR東海の会長が、「原子力は成長産業だ」と主張してみても、実際にはどんどんと撤退企業が増えており、今では原子炉圧力容器を製造する能力があるのは 日本製鋼所くらいのものではないのでしょうか。あれほど巨大なものを一度に作れる機械など人間は持ち合わせていませんから、いくつかの部位に分けて溶接して作っていきます。
 私自身も、タービンローター一体成型の工場立ち会いに行き、巨大なローターを作り上げ、しかも手作業で巨大なローターのすべてに超音波検査をする職人のまじめさに討たれました。室蘭に工場があり、革靴の底から冷気が伝わるほどの寒さなのにです。当時の記憶が正しければ、圧力容器は板金を鍛造といわれる(日本刀を作るようなやり方)で曲げ、ドーナツ状にしてそれらをさらに溶接していく方法で作られていたはずですが、もし間違いだとしたら、ご指摘ください。

 このベルギーの原子炉をどこが作成したのかはっきりとはしませんが、日本製であることは大いにあり得る話です。出荷の際にこのような明らかな欠陥があったとは考えにくいので、運転中に生じたひび割れと考えられるでしょう。

 この圧力容器自身のひび割れに関して、日本の電力会社は

・日本とは素材の検査工程が全く異なる
・原子炉の運転がしっかりしており、水質が諸外国とは全然違うのでひび割れることなどない

などと行っていると思いますが(詳しく知りませんが)、じつは以前沸騰水型原発で同じような事案がありました。原子炉圧力容器内のシュラウドとよばれる部分のひび割れです。最初、このひびが報告されたのはスイスでした。当時の日本の電力会社は

・溶接をきちんと管理している
・水質管理をきちんとしている
・素材が違う

などとして、日本の原発でひび割れなど生じ得ない などと説明していたのですが、いざ検査をしてみるとあちこちでひび割れが発見されました。
沸騰水型軽水炉(BWR)の炉心シュラウド交換 (02-02-03-12)
・実験的に多額の費用をかけてシュラウドを交換した1F-3がMOX燃料を導入、核爆発を起こし、廃炉になってしまったことは皮肉です。

 今まで日本の原子炉でこのような報告がなかったのは、単に検査していないだけでしょう。早急に原子炉すべてについて、検査を行うべきです。何しろ、今日本で稼働している原子炉など、1台もないのですから。

あとは世界中を我が物顔で孝行している原子力空母の原子炉も気になります。その原子炉が破裂したら、本当にもう一巻の終わりです。

posted by いんちょう at 21:59| Comment(15) | 原子力
この記事へのコメント
これは欧州発、世界終末に繋がる惨事なのに、日本のマスコミは一切報道しません。
特にNHKはスマホやPCから、プロバイダーを通して、受信料1000円取るべく画策中との報道があります。真実は自分で勉強して見極めなければならないという先生のいつもの言葉を痛感しました。
http://www.news-postseven.com/archives/20150302_306822.html?PAGE=1#container
Posted by 東京のイナゴ at 2015年03月02日 22:20
私の場合最初に入社したのは石油会社でしたが、あそこにはご存知のように原油精製過程でできるガスを保存する球形タンクがあります。予めタンクメーカーの工場で曲げ加工をして作った板を現場で溶接して其の溶接線を全線X線検査をします。

形状からもお判りのように上向き・横向き・下向きの全ての溶接姿勢が必要ですから、最上位の溶接資格を所持する溶接工を必要とします。問題点があったら、全てほじくり直して再溶接・再検査をし直します。

入社当初にそれらのフィルムをチェックする仕事をやらされて、何千枚というおびただしい数のフィルムをチェックする仕事をやらされました。

原子炉圧力容器はこうした球形タンクとは比較にならないくらいの難物ですから、当然厳しい検査をしている筈です。しかし飛んでくる中性子のために脆性化するのも当然の話しです。

溶接がどうとか、水質管理がどうとか、なんてのは戯言です。そんなのがひび割れの原因ではないですね。素材が違うなんてあり得ません。日本の鉄鉱石は全て輸入品です。球形タンクその他の圧力容器よりもはるかに寿命が短いのは当然の話しです。

検査機器の発達もあるでしょうから、当然全ての原子炉圧力容器を検査し直す必要があります。其の傷が容器の表面に出ているようでは、完全にアウトです。本当なら内部から検査するのが正解です。
Posted by ハマの住人 at 2015年03月03日 07:26
こんにちは、
別話ですみません。

ーーーーーー
今年の
1月末ころ。

汚染水タンクに落っこちて
事故ったから、
安全確認するまで、
緊急せいのない作業員の見合わせ。

って、
ニュースありましたよね?
ーーーーーー
それから
どうなったとか。
フクシマの進捗とか
全然ニュース上がってこないんですけど‥

どうなったかと
気になっちゃいました。
Posted by 先生の本かったよ。 at 2015年03月03日 10:38
院長先生、いつも有益な情報を提供して下さり有難うございます。

ちょっとお伺いしたい事がありまして
コメント欄を使わさせて頂きました。

大変個人的で失礼な質問なのですが
ここしか信用できる所がなく、失礼を承知で
書き込みましたので、迷惑になった場合は
無視して消して頂いて構いません。

勝手な事をして申し訳ありません。

その、お伺いしたい事なのですが
どなたかお詳しい方がいらっしゃった場合に
アドバイス頂けると幸いです。

当方、仕事の都合でどうしても
栃木県の 日光鬼怒川近辺に泊まりでいかなくては
いけなくなりました。

ただでさえ関東、東北に行く事は避けていたのに
福島第一原発の近くという事でとても困惑しております。

個人的な事をここに書き込んでしまい大変申し訳御座いません。

仕事ですので、どうしても避けて通れません、
どなたか現地の汚染状況や、注意点など
アドバイス頂けたら幸いです。

自分でも調べてみましたが最近の情報がなく
(調べた限りでは結構汚染されている情報を目にしました)
公表されているものはあてにならないと思いましたので
信用できる医院長先生のサイトのコメント欄を
利用させて頂きました、勝手な事をして申し訳ありません。

現地にお住まいの方や、原発近くに行った事がある方からの
放射能から身を守るためのアドバイスを頂けたら幸いです・・

大変失礼しました。
Posted by きむら at 2015年03月03日 11:24
圧力容器の脆性が高まっているということでしょうか?

参考:埋め込み動画の2:44辺りから
http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-544.html
Posted by ジョージ at 2015年03月03日 14:53
きむらさん
私は専門家ではありませんが、千葉からの避難者です。
埼玉や栃木日光のあたりにも親戚がいますし、やむをえず千葉に行くことも年に数回あります。船橋の近くで相当汚染の高いところなので、きむらさんのご心配がよくわかります。
年末に千葉に行ったときは、子どもが高熱と鼻血をだしたり、私は帰りの飛行機のなかで、今までにないような鼻の奥が焼けるような痛みと頭痛を感じました。
日光は相当ひどい汚染ですね。「測ってガイガー」というサイトで、最近の計測をみることもできます。地上5cmで、
3.728μSv/h
計測日:2014年11月16日13時
計測機器:HORIBA PA-1000Radi
計測場所:屋外 地表 5cm
というデータがありました。日光です。2012年だと8μ

すでにご用意されているかもと思いますが、
花粉症用ゴーグル、N95マスク、ガイガーカウンター、
廃棄してもいいバッグや靴、上着、帽子など
ミネラルウォーターは、関東のいろはすは関東の水です
土地のキノコなど食べないようにお気をつけください
Posted by ゆっぱ at 2015年03月03日 15:42
きむらさん
こんにちは。

ーーーーーー
行くのは、1日だけですか?

内部ひばくは
ほこりと食べ物 かと。

花粉症のふりして
マスクとめがね。
必要ないもの持っていかず。
古い
服と靴とカバン。
帰宅前に
スーパー銭湯で脱ぎ捨て。

ーーーーーー

こんなんで、どうでしょうか?
Posted by 先生の本かったよ。 at 2015年03月03日 17:42
今日雨に濡れて帰ってきたら、鼻血です。

こんなに立て続けは、さすがにはじめて。
どうなってるんでしょう?

私の身体の劣化か?
それとも福一の状態の悪化か?
はたまた、両方?
Posted by 風 at 2015年03月03日 23:28
きむらさん、こんばんは。

日光鬼怒川 出張の件、御愁傷さまです。

出来るだけ、書かせていただきます。

ご存知の通り、栃木県日光市近辺はホットスポットになっています。

地上は、高い所では0.4〜0.5μSvくらいです。

通常計測値では、0.2〜0.25μSvくらいと思います。

この程度の線量は北関東では良くあることですが、最低限の防護措置を講じなければなりません。

マスク装着と服に付いたほこりの管理が必要です。

外部被爆よりも吸気による内部被爆に注意しましょう。

幸い今の季節は花粉シーズンなので、
河童のようなN95マスクを屋外屋内を問わず付けていても変ではありません。

マスク使用時にはマスクの表面に付いたほこりを直接触らないよう特に注意して下さい。

屋外で着用した服は屋内退避時にビニール袋などに入れほこりの再飛散を防ぎましょう。

屋内退避時には、出来るだけ早く、お風呂に入って体や頭を洗いましょう。

ホットスポット外出時に着ていた服は、
出来うる限り早く洗浄が必要です。こまめに洗濯機で洗いましょう。

吸気被爆に特に注意して下さい。
ほこり、土、花粉に、セシウムやストロンチウムなどの放射性部質が含まれています。


Posted by わるなすび at 2015年03月03日 23:48
私の大学時代の学友で現コマツ当時小松製作所に就職した奴から、以下のメールを貰いましたので紹介しておきます。


原子炉圧力容器の事を彼らはシュラウドと言っているが、すごく大きなものだから日本製鋼所でも鋳造一体品を作るのは大変だろう。

私がコマツに勤務していた時、シュラウドを受注して作った事がある。輪切りの鋳造品を作り、これを溶接して作った。すごく大きなもので肉厚でもあるので、専用の溶接機を作り溶接して作成した。CO2溶接で、専用回転機械にシュラウドを載せて、これを回しながら溶接した。

水素によるひびワレが考えられ、これを防ぐには結晶粒の微細化が最も効果があるので、輪の鋳造にはMoやVなど、結晶粒微細化元素を入れ、溶融温度を上げ過ぎないよう、電気炉の操業には細心の注意を払った。

ヘアクラックは確かに製造時に出来たものだろうが、圧力器のヘアクラックが成長したとすれば、作り方に問題があったのだろうと思う。私が小松に入社した当時は圧力容器を作っていたが、作るのはともかく運搬が大変で、儲からないので止めてしまった。

現在のようにコマツが金沢港に工場を持っていれば作り続けたかもしれないが、当時は小松市の工場で作り港まで運ばなければならなかった。運搬途中の道路や橋の補強まで必要だったから、儲かる筈がないのだ。
Posted by ハマの住人 at 2015年03月04日 07:15
低め表示の文部省測定でも
全国で0.1μsvh
超える 前後でてきました。
欠測多いし

http://ma-04x.net/all.html

Sr90は見事に 半分測れば出る。
昨日国会
Posted by 農家 at 2015年03月04日 09:14
コメント頂いたみなさま

コメント欄を使わさせてくれた院長先生

本当に有難うございました。

ここでしかこのような回答は得られなかったと思います。

本来は危険な場所に行かなくてはいけないのに

頑丈なマスクをする事が不思議に思われること自体が

おかしな事ですよね・・・

仮病を使いたい気分です・・・

これからもずっと院長先生を応援させて頂きます。


きむら
Posted by きむら at 2015年03月04日 22:51
きむら様
こちら福島の中通りから西日本に避難した者です。日光は中通りと変わらないくらい汚染したところがあります。東北道を通って福島に入った時も栃木県内で北に行くほど、ガイガーカウンがぐんぐん上がります。春は砂ホコリなどと一緒に放射性物質が舞うので、私は、今はもう行きませんが、以前は、脱ぎ捨てられるものだけを着て、靴も履き捨て、福島から出るときには温泉で体中をくまなく洗ってきました。マスクはもちろん、外に出るときはつるつるした素材のビニールヤッケか雨具を着て作業し、食料も水も持参し、福島県内では自宅を含め可能なかぎり宿泊しませんでした。できれば、仮病をつかってでも早く帰宅されることを願います。数年後に甲状腺の病気や白血病になっても誰も助けられません。私自身は、ホルモンバランスがおかしくて、甲状腺の異常を疑ってます。無理して福島に何度も往復したことを後悔しています。お気をつけて。
Posted by 避難でおっとっと at 2015年03月05日 05:51
> 避難でおっとっと

さま

コメント頂きまして、ありがとうございました。
とても参考になりました。
院長先生コメント欄使わせて頂きありがとうございました。
Posted by きむら at 2015年03月05日 09:15
圧力容器は継目溶接がない一体化した製造技術で作られていますよ。
シュラウドとは炉心構造を覆っている部分で
ヒビ=事故ではありません。
原子炉燃料で核爆発を起こすことは不可能ですよ。
圧力が全く足りませんし、反射材も有りません、中性子源も無し
臨界はあり得ますがさすがに臨界超過は不可能です。
圧力容器でなく炉内構造物です、炉心保持している構造物を単に覆っているものってだけ。水の流れを分離する仕切り板であり
BWRの場合は炉の上部構造物である汽水分離機や蒸気発生器を保持する物
元東電原子力技術者なら
試験片ってのも当然ご存知ですよね。
調べるのは試験片で十分な結果が得られますよ、定期点検のたびに日本では試験片を取り出し調べてますよ。
知らないとしたら本当に原子炉技術者ですか??
Posted by ミカエル at 2016年04月15日 23:24
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