2015年03月24日

1264.事実を書いたマンガ「美味しんぼ」に「エビデンス」を要求した放射線影響協会

・福島の真実を描いた「美味しんぼ」に放射線影響協会が、エビデンスが書かれていないと抗議文を寄せていた
・しかし、フクシマの線量を測ったとされるデータは、「ハードディスクの故障」などという信じられない理由で隠蔽するのが福島県である
・原爆放射線の影響を隠蔽する目的としか考えられない米国の作ったABCCがこの協会の前身で、現在でも「合法的」に死亡診断省まで調べ上げる放射線影響評価を続けている


1059.美味しんぼの鼻血騒ぎ−事実を書いただけで「風評」助長?でも紹介しましたが、福島県の鼻血騒ぎに国、県が「風評」をまき散らすとして、強く抗議をしました。マンガに本気で抗議するなんて、馬鹿げているとは思うのですが、なんと放射線の問題では、トップレベルと言って良い「放射線影響協会」が協会の名前で、抗議文を書いていたことに最近気がつきました。しかしながら、あまりにも稚拙な論理で文章が書かれていますので、ご紹介します。本当にこの人達、トップの人たちなんでしょうか?

美味しんぼ」福島の真実編へのコメント

 「週刊ビッグコミックスピリッツ」4月28日及び5月12日発売号に掲載された「美味しんぼ」の放射線による身体的影響に関する内容について、日本放射線影響学会有志の見解を示します。漫画雑誌に掲載された内容に関して、学術団体がコメントすることの是非に関する議論もしましたが、当該週刊誌の発行部数が直近の2014年1〜3月において188,385部(一般社団法人 日本雑誌協会)と多いことと表題が「福島の真実(・・)編」であることから社会的影響が大きいと考え、表明するものです。
 さすがに良識的な学会員もいるのでしょう。マンガへのにまともな抗議に反対する委員がいたことは、救いですね。20万部と言えば、読売新聞の50分の1程度で有り、かつ掲載された「スピリッツ」の読者層は、10〜30代の独身男性と思われますから、大騒ぎするほどのことではありません。そもそも「スピリッツ」を読めばわかりますが、「美味しんぼ」は他に掲載されている若干エロチックなマンガとは路線が違いますから、実質的な読者の数はそれほどたくさんはいません。大騒ぎする必要はないのです。

 低線量放射線の身体的影響については、これまでに数多くの学術研究が行われており、以下のことが明らかになっています。
 放射線被ばく後、数週間以内に現れる身体的な異常を放射線による早期影響といいます。放射線による早期影響は、ある一定の被ばく線量を超えると現れます。被ばくした100人に1人以上の割合で影響が現れる最低線量をしきい線量と呼び、これまでに数多くのしきい線量に関するデータが蓄積されてきました。成人で最も低い線量で現れる影響は、睾丸への被ばくによる一時的不妊で、しきい線量は100 mGyと推定されています(国際放射線防護委員会2007年勧告, ICRP Publication 103)。これより低い線量の被ばくでは、鼻血や全身倦怠を含めて臨床的に観察可能な放射線が直接原因となる身体的影響は報告されていません。
 いまだに放射線影響協会が、閾値があるとする学説にこだわっているとは呆れました。この文章の中で、めにつくのは「報告されていません」の言葉です。核兵器、放射能に携わる研究で、不利な報告はすべて握りつぶされますから、「報告されていません」のは当たり前です。自分たちが認めていないから、存在しないというのは理論として成立していません。

 残念ながら、作品中では登場人物の被ばく線量に関する記載がありません。もし、これはフィクションであると言うのであれば、「福島の真実(・・)」という言葉は不適切ということになります。もし、実測値があるならば公表すべきですし、今後の放射線防護のためにも正確な状況の記述が重要です。
 一番嗤ったのはこの文章です。自分たちが経験したことを書いているのですから、真実以外の何者でもありません。学術論文ではない単なるマンガに「エビデンス」をつけろと平気で言う神経に恐ろしさを覚えます。これは、原爆被曝者の体験には実測値がないから「真実」ではないと難癖をつけているようなものです。そもそも、本人が実際に経験したことを語っているのに、「真実」とはよぶなとは・・ あきれ果てて言葉もありません。

 震災がれきは岩手県由来のものであり、福島県のものではありません。がれきを焼却した焼却工場周辺において、住民の被ばく線量が焼却以前に比べて高くなるような測定値は存在せず、大阪市・大阪府は発行元の小学館へ正式に抗議しています (http://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000266273.html)。したがって、作中で描かれた放射線の身体的影響に関して、これまでのところ、これらを支持する学術研究結果はありません。
 東北一帯で発生したガレキには、放射能がすべてついており、全く必要さえなかったのにガレキを全国に拡散したことに一切反省していません。しかも、ここも同じ論理です。「学術研究結果」がないから、事実とは認めない。教科書に書かれていないから、そんな被害が起きるはずない と主張しているわけで、学問とは言えない言いがかりです。教科書に載っていないから、公害被害を認めないと言っているのと等しい。真実は学問のずっと先を行くという謙虚さが一つもありません。

 私達、放射線影響学会員は、放射線の生物影響を遺伝子、細胞、動物、及びヒトなど様々なレベルで研究しています。偶然ではなく、再現性をもって放射線が原因となる生物影響とそのメカニズムを明らかにしようと不断の努力を積み重ねています。しかし、生物影響の現れ方は多様で、動物実験が困難な研究もあります。そのため、放射線の人体影響については、未知のことが多く残されています。作中では、放射線がフリーラジカルの生成を通して身体を構成している細胞にあらゆる悪い作用を及ぼすような描写があります。しかし、被ばくして直ぐに生命に関わるような影響でない場合、影響が明らかになるまでに人体では十年単位の長い時間がかかります。したがって、放射線によるフリーラジカルの発生だけが生物影響を及ぼすということでは片付かないことは明らかです。
 ここで自ら、放射線の人体影響については、未知のことが多く残されていますと言っているのに、なぜ前文では、そのようなことは「報告されていません」として、事実を切って捨てることができるのでしょうか。まさしく自己矛盾です。全文の根拠自体を自ら打ち消しているのですから、文章の体を成していません。書いていて、恥ずかしくないんでしょうか?

 事実(・・)と真実(・・)は、明確に分けて描くべきであり、事実を描くのであれば、どのような状況でどのようなことが起こったのかについてできる限りの丁寧な表現をする必要があります。
 「真実」と言う言葉は極めて重く、安易に使うべきものではありません。今回の漫画作品での取り上げ方から、放射線の生物影響を解明することは、私達、日本放射線影響学会員への付託と重く受け止め、今後も益々研究に精進する所存であります。

日本放射線影響学会員有志
同 代表
  福本 学
 ここで主張することが全くわからなくなりました。筆者に寄れば、事実と真実は違うそうです。Wikiで調べてみますと、

「真実」嘘やいつわりでない、本当のこと。まこと。
「事実」実際に起こった事柄。現実に存在する事柄。

「真実」の反対語は「ウソ」に当たるわけですが、このマンガは嘘を書いているのですか?事実=真実 だと思うのですが、事実であっても、真実でないことがあるのでしょうか。

 放射線影響協会が、指摘している放射線被曝量を明らかにしろとの話ですが、福島県はなんと「ハードディスクが壊れた」という理由で、事故当初の放射線被曝のデータを非開示としています。

事故直後の甲状腺被ばく実測値「ハードディスク故障」で不開示
投稿日 : 2015-03-24

 被曝データがないのだから、「真実」ではないと言いながら、その一方で「被曝データ」を隠す。全くもって、恥を知れです。

 さて、この放射線影響協会の前身はABCCであることはご存じの方もおられるでしょうが、この団体は一度でもフィルムバッジを持った人間を「合法的に」住民票を使って追いかけて、死んだら「合法的」に死亡診断書で死因を確定するという恐るべき大規模疫学調査をやっています。
 おそらく、今回の原発事故による被曝者も同じような調査を行っているはずです。(そして、結論は被曝による影響はなかったとされることでしょう)

 ところで、この鼻血問題。当時野党だった国会議員がこぞって、その問題を取り上げていたのですが、放射線影響協会の方々は、そのときも「真実」ではないとして、「教育」してあげていたのでしょうね?

この放射線影響協会の理論を突き詰めれば、次の言葉に行き着きます。
 昔から、この種の団体が根拠とするのはこのようなことなのです。


美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲の書評を見てもよくわかりますね。

お口直し?に動画でもどうぞ。

総統閣下が「美味しんぼ」鼻血問題でお怒りのようです by schun1

■関連ブログ
1059.美味しんぼの鼻血騒ぎ−事実を書いただけで「風評」助長?2014年04月29日
チェルノブイリから五年後に起きた広範囲の人口減少2012年10月10日
フィルムバッジを持つということ(放射線管理の長い手)2011年06月25日
2013年05月29日
「自分たちで過小評価しておいた放射線のリスク評価を用いて、「科学的」には因果関係が証明されないからその被害は原発の放射能が原因ではない、と被害を切り捨てる」

1066.総統閣下は鼻血問題でお怒りのようです2014年05月11日

posted by いんちょう at 20:37| Comment(8) | 原子力
この記事へのコメント
こんにちは。

週末たけのこ掘り
行ってきました〜。
近所だしエイや〜と。

予想通り風邪になって
今年からきた花粉症とあいまって
凄いことになってました〜。
月曜火曜だうんです。

探すとき
掘るときに
ササ落ち葉をガサガサ。

ーーーーーー
ボクの妄想(空想)話しです。
信じないでね。

しいたけ、山菜、
たけのこ、お茶‥‥
植生もあるけど
セシウムボールがないと出ない。

たぶん
標高、風の流れ、葉っぱ
集めて、
霧、雨、雲が‥‥

あ、妄想です。
Posted by 先生の本かったよ。 at 2015年03月25日 09:56
美味しんぼといえば、飯坂温泉の件はどうなったんでしょうね?

最初からデマ臭かったですが、

ネット上を検索してもあまりきちんと検証されていないような…。

デマだったとすると、デマを流した犯人がいるはずですが、

犯人探しはだれもやってくれていないようですね。

風評ではなく実害が出た、と大騒ぎしていた人たちに言いたいのは、

雁屋氏の生活を脅かすようなことをした責任をどうするのということです。

だれかきちんと検証してくれないんでしょうかね?

読売新聞では自分の誤報を検証するシステムを整備したはずですから、

ぜひ自己検証して欲しいものです。
Posted by 木村裕行 at 2015年03月25日 14:17
国が決めた避難基準の判断材料になるはずのデータを、通常の事故では直後からモニタリングカーで集めるはずが、地震で道路の陥没があるわ、放射線の測定の専門家が集まらなかったりで、満足に測定することもできなかったのに。関係者ならそれを知っていたはずなのに全く言及せず、おまけにそんなお粗末な観測体制で集めた少ないデータをもとにしているのに、「被ばく量が少ない」などとよく断言できるものだと思います。
Posted by フルーツサイダー at 2015年03月25日 21:06
記事のタイトルとは関係ないですが
これ酷い記事だとおもいました。

外国以外は一か所を除いてすべて東北か関東圏。
http://find-travel.jp/article/3424
http://find-travel.jp/article/3424/2

神秘的なアルビノとは聞いて呆れます。
Posted by リーモス at 2015年03月26日 22:52
エビデンスと言えば、日本医学会のH.23の公開フォーラムで質問したことがあります。

昨今のEBMではエビデンスレベルが問題で、二重盲検法によるプロスペクティブな研究が最もエビデンスレベルが高いが、放射線被曝に関するものはレトロスペクティブなものばかりで、エビデンスレベルが低いのではないかと質問しました。

放影研の大久保氏からは、指摘されるようにエビデンスレベルは低い、という回答を得たと思います。

(日本医学会のホームページで、
H.23.10の「放射線と人体」という項目で、
「フロアーとの質疑応答」をクリックすると
ビデオが見られるようです。
38分余りあるのですが、
どのへんにあるのか確認していません(すみません m(_ _)m))

自分たちはエビデンスレベルの低い研究に基づいて偉そうに発言しているのに、黙らせたい相手に対してエビデンスを要求するのは、卑怯としか思えませんね。
Posted by 木村裕行 at 2015年03月27日 14:30
武田邦彦氏がブログの中で書いていたので・・・

福島原発一号機の爆発映像はNHKで見た。続いた3号機の爆発映像は先進国から流れてくる映像だった。そして4号機はアラブのアルジャジーラしか私は見ることができなかった。
http://takedanet.com/archives/1022733459.html

4号機 爆発 40秒〜 TV9 - FOURTH NUCLEAR EXPLOSION AT THE FUKUSHIMA - JAPAN EARTHQUAKE

https://www.youtube.com/watch?v=gDXEhyuVSDk
Posted by 大和 at 2015年04月01日 13:31
もしかしてアルジャジーラは1号機の映像なんでしょうか?
Posted by 大和 at 2015年04月01日 13:41
こんにちは。ごぶさたしています。きのうツィッターのタイムラインに流れてきた記事をさきほど拝見したのですが、まだ見ておられない方にお勧めしたくて厚かましくも再訪させていただきました。去年の春の記事なので、先生やこちらを訪れる方々はとーっくに読まれているとは思うのですが、時差の都合でいまごろあらためてのご紹介を。
ママレポ通信〜「美味しんぼ」騒動をめぐる、おかあさんたちの声〜 http://momsrevo.blogspot.jp/2014/05/blog-post.html?m=1

いろいろなことが思い出されますが、当時のご当人たち、おとなもこどもも、の発病への恐怖が、日常の言葉で迫ってきていました。いえ、あれ以来いつも心に抱える苦悩と、取り巻く世間の無理解による孤独感、そしてそれでも生活を続ける苦難を一人でも多くの同胞が知らなくてどうするという思いをいだきました。

水俣の原田正純医師が言っていた通り、おかあさん(に限りませんが)たちは、肌で知っているのです。医師や学者や役人がどう言いつのろうと、真相を知っています。わたしは改めてそう思いました。

まだお読みでない方ぜひ読んでみてください。何度でも蒸し返していきます。

PS この記事に一件だけコメントが付いていてとても懐かしいおなまえにぶつかりましたです。活発な方ですね。
Posted by マツダマツコ at 2015年11月21日 16:47
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