2015年03月25日

1265.院内調剤のバーコードチェック

2015032504.jpg・病院・医院にかかって薬をもらうときに、診察してもらった施設で薬がもらえるのを「院内調剤」、他の施設で薬をもらうのを「院外調剤」とよぶ
・一見、「院内調剤」の方が医療機関としてももうけが出そうだが、実際はその逆で医療機関にとっては院内調剤をするメリットは一切ない。
・同じ診察、かつ同じ薬をもらっても支払金額は安く、なおかつ余計な質問もされない。当院では、調剤ミスをなくすために、バーコードチェックを行っている(宣伝)


 当院は、院内調剤を採用しています。院内調剤は、

・患者負担が少ない
・診察後に直ちに薬をもらえるために、楽(特に雨の日など)

という患者にとっては大きなメリットがあります。
(問診票を書いて医師に病状を説明し診察を受けてもらった処方箋を、調剤薬局に持って行くと、
「今日はどうされましたか?」
と聞かれます。
「いや、さっきそれはそこの病院でさんざん説明して、薬もらったんだから、つべこべ言わずに薬出してよ。」
と思うのは私だけではないでしょう)

 しかしながら、医院側にとっては

・処方箋を書くよりも、安い処方料(紙に書いて印刷するよりも、安いのですから話になりません)
・薬価差益はほとんどなく、残薬が出るとそれだけで赤字。
・在庫管理が大変

なので、患者の利便性・負担よりも経営優先となり、院外調剤が大半を占める状況となっています(厚労省は、もちろん院外調剤を推し進めていますが、本来はかかりつけ薬局を自宅近くに持ってもらう目的だったのに、現在ではいわゆる門前薬局ばかりになっているのは、みなさまご承知の通り)。

 院内、院外調剤に限らず、一番神経を使うのが、処方ミスです。実際の処方箋と違う薬剤が出てしまうと話になりません。ところが、人間がやることですから、どうしても間違いがあります。私のところでも、

・2人、3人でダブルチェック、トリプルチェック
・同じ名前で容量の違う薬は採用しない
・処方した薬を録画

という方法でミスをゼロにしようとしているのですが、どうしても月に数件の間違いがありました(処方された薬と、在庫数を比較することで、チェックしています)。もちろん、どの医療機関でも、この間違いは起こりえることです。抗生物質と間違えて、抗がん剤を注射したりといったニュースが流れたのを記憶している人もいるかもしれません。
2015032508.jpg このようなことが起きないように厚労省でも以前より対策を練っており、調剤包装単位(PTP1シート)にバーコードを順次つけるようになってきています。
左の写真をご覧ください。通常よく見る錠剤の方は全く変更がありませんが、裏面にバーコードが印刷されていることがおわかりでしょうか。このバーコードは、1シートごとに印刷されていますので、処方後にこのバーコードを使ってチェックすれば、調剤ミスはゼロになるわけです。

 と言うのは簡単ですが、バーコードで処方をチェックするソフトは、私の知る限り、市販されていません。まあ、市販されていてもおそらく法外な価格がついている(医療関係の情報ソフトは、たいてい法外に高いのです。−もちろん例外あり)でしょうから、貧乏医院に購入する費用が捻出できるはずもありません。

 困ったときには、作ってしまえ・・・で、昨年末よりソフト作成に着手し、現在ほぼ満足のいくソフトができあがりました。構成は下記の通りです。

電子カルテ・レセコン  ダイナミクス
 法外な価格の医療系ソフトが多い中、このソフトは1万円/月 といった定額で販売されています。そのかわり、サーバー、クライアント、ネットワーク関係は自分で購入し、くみ上げねばなりません。(私は独力でおこないましたが、適切なパソコンを購入し、LANケーブルを敷設し、ネットワークを組み、突発的な故障にも対応できる施設は、少ないでしょう。私自身でこれらすべてを行っています。)
 処方の入力も私自身がやっていますので、転記ミスが起こることもありません(時々、私自身も間違うことがありますが、処方を処理する段階で気がついてもらっています。)

2015032504.jpg Windowsのタブレット端末を使った調剤チェックソフト
・Venue Pro8
・充電機能付きUSBハブ
・バーコードリーダー
・USB-LAN


構成


 バーコードは、高性能のものを使用した方がよさそうです。反射する材質にバーコードが印刷されていたりすることもおおいので、安物のレーザーバーコードスキャナーでは、読み取りに苦労することが結構あります。
 担当者のバーコードを入れ、患者IDを入れると、左側に処方された薬が出てきます。その後に薬剤のバーコードを入力すれば、チェックしてくれるわけです。正しい薬剤の場合は、ピンポンと鳴りますが、間違えた場合には次のようなエラー音声が流れます。

・その薬は処方されていません
・バーコードが違います
・既にチェックしています
・未登録薬品です。バーコードを登録してください

 音声でエラーを読み上げるのは仕事に使う場合には非常に有効で、パソコンの画面などを見て、メッセージをチェックしたりとか、あるいは画面を操作する必要がありません。

すべての薬剤のチェックが終われば、調剤された薬がレシートに印刷されて出てきます。現在のところ、ざっと7〜8割の薬にバーコードが印刷されている感じです。

 導入して3ヶ月程度がたつのですが、調剤するのが非常に気楽になった とのことです。私の方でも、初めて同名異容量の薬(フロセミドの40mgと20mgとか)を安心して採用できるようになりました。

 この種のシステムを導入している院内調剤の薬局は、おそらく日本にはなかろうと私自身は自負しています。
 もちろん、このソフトは非売品なのですが、ご興味のある方は私までお問い合わせください。(ダイナミクスを採用されている医院以外には使用できません)

 なお、院内の在庫管理も、じつは自作のソフトを作成して、こちらは無料で公開しています。
 やっていることは、原発、放射能のことだけではないんだよ、というわけで、少し自慢をさせていただきましたw

posted by いんちょう at 21:57| Comment(12) | 日記
この記事へのコメント
全くの話「調剤薬局」花盛りですね。内幕を知れば誰でもが開業したくなります。

医院の隣接地に最低一軒。大型総合病院ですと周辺に数軒。其れ以外に商店街にもあちこちにちらほら。

お薬手帳を持ってきましたか?と脅されて持っていきますが、流し目で検閲して、ハイ、ご苦労様。

当方C型肝炎・高血圧・血糖値・蕁麻疹対策の薬を頂いて食後に感謝の言葉を唱えながら飲んどります。

後、欲しいのは、放射能を洗い流す薬でしょうか。
Posted by ハマの住人 at 2015年03月26日 10:56
薬を頂くシステムにいつも疑問を抱いていました・・
先生のような病院ばかりになると良いのですが
輩ばかりですから無理なのでしょうかねぇ・・

先生のご活動、本当に頭が下がります。
Posted by きむら at 2015年03月26日 14:11
いつも情報を興味深く拝見しております。
薬剤のバーコード認証のシステムは、調剤薬局向けですが、クオメディカルという会社の“ミスゼロ子”というシステムがあります。私は使ったことがありませんが(病院薬剤師をしています)、レセコンと連動していて、薬剤をピッキングするときにハンディ端末でバーコードを読み取り、誤調剤を防止するようです。でもレセコンに薬剤を間違って入力したら意味無いですけれど。
院内調剤で毎日400〜500枚以上の外来処方箋と格闘している身としましては(うちはほぼ100%院内)、いちいちバーコード認証していたらいつまでたっても調剤が終わらないので、そんな余裕のある+調剤料をしっかり取れる調剤薬局がうらやましい…。
滅茶苦茶大変な錠剤の一包化を、患者さんの要望からドクターがオーダーなんてしようものなら、もう溜息も出ません。院内調剤では一包化加算取れないんですから。外に処方出してくれ〜と半泣きに叫ぶ毎日ですが、患者サービス+保健財政的には、院内処方の方がどう考えてもいいですよね…。
Posted by ともとも at 2015年03月26日 19:37
院外と院内のはなしですが、外来患者の院内調剤が大規模に許されているのは、先進国で日本だけです。薬局が儲ける為に、院外になったと思っている方が多いとしたらそれはあやまりです。
医療は命に関わります。安全措置の役割も持っており、その為のシステムであり、
薬局が儲けるためのシステムではありません。
西洋医学では院外が当たり前で院内は特殊な事例になります。
何故、諸外国では始めから別なのか、
知っていますか?
医師も人間なので、ミスもあるし
悪い事考える人もいるからです。

(病状に合わない、若しくは、わざと
死に至らしめる薬を与える

医師の処方(調剤の正確さではありません。)

医師が病状に合った薬を選んでいるかを
チェックする機関なのです。

だから、経営が別でなければいけない
決まりがあります。

先生は九州なので、特に、薬剤師や薬局の
職能に理解が無いのは仕方がないと思います
が、何しろ薬剤師のおじさんたち自身が
分かっていないですから、未だに多くの
薬局が病院や医師に禁止された上納金を
渡しているのが、実情ですし、
医師がおかしな薬を選んでも黙っている。
ような、存在意義ゼロの実態もあります。

薬剤師を雇わず、事務員に分包調剤させる
ぶっ飛びの悪慣習を続けている薬局も!

先生は、誠実で間違えも無いでしょうが
そういう医師ばかりではありません。

先生のお考えや少人数の院内調剤にとやかく
言うつもりはありませんが、
間違った理由で院外調剤が全て悪いかのような言い様は止めて頂きたいです。

医師の儲けの為に不必要な薬や合わない薬を
処方されている患者さんは沢山います。
医師が調剤まで手中にする事の弊害は、
想像以上にありますよ。出て来ないだけで。

何故、そういうシステムなのか、
本当の理由を知って下さい。

ちなみに、欧州では、慢性疾患にその都度の
診察は要りません。3カ月から一年、一回受診すれば薬局で繰り返し薬を買えます。経過は薬剤師に話し飲みにくいものから飲みやすい薬に変えたり、血圧などは種類を変えることも薬剤師が選び連絡するだけでokが多いです。薬剤師は必要と思えば調剤せず、受診を勧めます。日本ほど、医師が守られ、権限が大きい国はないですよ。

なので、薬局いじめは止めて下さい。
職能を理解してから、言って頂きたいです。
決して薬局のお金儲けの為ではないし、
このような考えが、薬局にお金を要求する
医療機関を生んでいると思います。

儲けさせてやるんだから、上納金よこせ。
払わないなら院内調剤にすると脅す。
過剰な薬を患者に出し、
文句を言う薬剤師や薬局は排除してしまう。

被害は、患者さんが受けます。

院内調剤ありきには、弊害が多いのです。
Posted by 薬剤師です。 at 2015年03月27日 21:39
続き 訂正
医師の権限が守られている。でなくて、
増大させているのほうが、近いです。

何かしら薬局に文句が有るので
薬局不必要論を唱えいらっしゃるのだと
思いますが、首都圏と九州は違うし、
このような考え方が、九州の医療を遅らせる
原因にもなっている気がします。

患者さんの為を思う薬剤師やまともな薬局が
出ていってしまい、嘘をついてもうかるジェネリックに無理やり代えてしまったり、患者に害を与えるような、いい加減な薬局や薬剤師が残る。

原発の構造にとても似てないですか?

女性差別もひどいし、どなたかのツイの様に
差別を扱う会で、女性パネリストがいなかつたり。国会や地方議会も女性が少なすぎて戦前の様です。

シングルマザーが夜昼働いても貧困状態だったり、低所得の人のほうが、社会保険税高かったり、狂ってます。。

差別の心って凄く近くに、確実にあるのが今の日本ではないでしようか?
自分と違う人を認めない心は、

自分の儲けの為にあんな不健全な原発にしがみつく心と、実は、同じものなのではないでしょうか?

すみません、えらそうに意見言って。
でも、意見交換や相互理解のない状態は,
なんか、危なくて嫌な感じなのです。
Posted by 薬剤師です at 2015年03月27日 22:50
こんにちは。
関係ないはなしで‥
ーーーーーー

注文していた
『放射線像』手に入れました〜。

写真家さんの
活動に
頭が下がります。
ありがとうございます。
Posted by 先生の本かったよ。 at 2015年03月28日 08:20
なんか九州が文化果つる場所のようなご意見があるようですが、見当違いじゃないですか?

私は支給された薬を飲んだ結果については医師にも報告し、其の上で其れを飲み続けるか、量を変更するか、別な薬にするかの医師の判断の資料を提供している積もりです。

病名が同じでも全ての患者が同一の薬でいいということは、ないでしょうし。其の薬に拒否反応する人もいるでしょうし。

医師や薬局任せで唯々諾々と薬なんか飲んでいないのは、日本全国、どこでも同じじゃないですか?
Posted by ハマの住人 at 2015年03月28日 10:37
もともと、医師が大量投与して儲けるからイカンので別々にするという話だったような気がするのですが、老人は相も変わらず大量の薬を貰っていますよね。

高校生が大学を決める時に、儲かるから、楽だからという理由で薬学部を選ぶ事が多いようです。人の為になりたいなどという、意識はからきしないんですもん。6年通った分ペイしなきゃ、という感じでしょうか。世も末。
Posted by 主婦 at 2015年03月28日 20:39
薬剤師です さんへ

 それは、九州の薬剤師のレベルが低いのではなくて、本州の医師のレベルが低いんじゃないんですか?そんなに間違いがあると言うことは。

 また、上納金云々の話は、明らかに名誉毀損です。そんな話は聞いたことはありません。もし、本当にあるのならば訴えるべきです。文化果つる九州でも、その程度の常識はあります。
Posted by いんちょう at 2015年03月28日 20:44
九州の薬剤師です、そっかレベルが低いんですね。だから調剤薬局なのにお薬のダブりも気がつかずに平気で同じ薬を出すんですね。
名前が違うから患者さんは気がつきませんが、薬剤師なら一目瞭然です。 

そのために高い点数がついてるはずなのですが、レベルが低いならしょうがないですね〜。

あと病院がお薬で儲けるのは無理です。消費税いれて100%に近い割合で納入されてるのがほとんどで、期限が切れると赤字ですよ。

まあ薬物動態もチェックせずにジェネリック花盛りの薬局では違うでしょうが。
ワンドースから始まり、何にでも点数がつく薬局は良いですよね、薬剤師に高い給料が払えるはずです。 うらやましいでーす

上納金の話、大学の友人で開局している面々に
アンケートしてみましたが、聞いたことも見たことも無いそうですよ。いつの時代のどこの話でしょうか?週刊誌レベルの噂話ですか?
Posted by AKB45 at 2015年03月29日 00:26
まぁ、職能の分離が確立してない所がミソです。調剤は薬剤師しかしてはいけないというのが法律上の原則なんですが、未開発国日本では、但し書きで例外を認めたのが永遠に続いているので、例外が原則になった・・
そう言う意味では、原爆の平和利用という詭弁が常識になり、核エネルギーの膨大さ、非人道性が隠蔽されて来のに似てますね。
日本的と言えば、日本的なんです。
9電力会社の売上は、12兆円ぐらいですが、医療・介護の売上は50兆円ですよ。原発村より医療村の方がより腐敗してると思いますよ。
ただ、本質は、そのルールメーカーとレフリーをやってる一部の官僚組織が元凶だと思いますがね・・

100年前も人は生まれ、生活して、子孫を残し死んで生きましたように、基本は数百万年変わってないという原点に立って議論をしていけば明るい灯火が見えると思います。
Posted by 薬剤師です2 at 2015年04月11日 18:06
領収書発行の際、レセコンで重複投与の可能性ありと毎回
表示が出ても無視して患者さんにそのままで処方し続けています。
結局のところ誰も医者にモノを言わず、薬剤師も事務員も職を失いたくないので黙っているという関係ですね。
この世は医師にとっては暮らしやすいと思います。


Posted by 事務職員です at 2015年05月02日 23:23
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