2015年08月17日

1300.荒唐無稽な「世界一」安全な原発の実態

2015081701.jpg・事故のどさくさ紛れに原子力の素人を集めて、民主党の細野が無理矢理作った原子力規制庁。その規制の一端が、原子力推進派の記事で漏れてきた。
・原子力規制のまったくのど素人が、「電力会社」に教わりながら審査を担当し、「責任逃れ」でその場限りの規制を推し進めている。
・主要設備をワイヤーで固定(写真)して、「世界一の安全」を歌っているのが、日本の規制の実態なのである。

 石井孝明氏が、Wedgeの中で興味ある記事を書いていたので紹介したい。

川内原発遅すぎる再稼働−安全規制はここがおかしい
2015081702.jpg「世界一」の厳格規制がもたらすリスク
2015年08月12日(Wed)  石井孝明 (経済・環境ジャーナリスト)
 8月11日、九州電力の川内原子力発電所1号機(鹿児島県)が実に4年3カ月振りに再稼動した。午前10時30分に原子炉内の核分裂反応を抑える制御棒を引き抜き、原子炉を起動させると、午後11時に核分裂が安定して続く「臨界」に到達した。同社は「これまで以上に緊張感をもって、安全確保を最優先に今後の工程を慎重に進めてまいります」とコメントし、9月上旬の営業運転開始を目指す。

 再稼動に先立つ7月8日、記者は同発電所で原子炉に燃料を装荷する作業を見学した。すると、原発構内では不思議な光景があった。

 プラント設備に新しいワイヤーなどが取り付けられていた。そして巨大な金属製の檻(おり)があった。これは何か。別の機会に現地を視察した東京工業大学の澤田哲生原子炉工学研究所助教に聞くと「竜巻対策、地震対策の設備。おそらく邪魔になるだけだろう」と解説してくれた。
 原子力規制委員会が求めた新規制基準では天災への対応が強化された。ワイヤーや檻は地震や竜巻で主要設備が壊れないようにするためのものだ。同原発では国内で観測された最大規模の風速毎秒100メートルの竜巻に耐える対策を行ったが、発生確率は極めて低い。

 世界一の安全対策が、無意味なワイヤーと金属製の檻を取り付けることとはまさしく驚愕である。これではいざというときにワイヤーなどが邪魔になって、あるいは金属製の檻が変形してしまって、元々の設備が役に立たなく可能性すらある。 まさしく、「蛇足」と言ってよい安全向上

 福島原発事故の反省から、原子力規制委員会は2012年9月に発足。政治の介入を受けない「独立行政委員会」となった。そして規制をめぐる約180もの法改正、政令、省令、規則の改正を行った。これらは総称「新規制基準」と呼ばれ、従来規定になかった重大事故や天災への対応などの規制も整備された。
川内原発では覆水タンクなどを竜巻から守るため金属製のネット(中央左の格子状の建物)が設置された

 新基準に基づく審査は遅れ、混乱している。規制委の田中俊一委員長は、「審査は原子炉1基、半年で終わる」と当初述べたが、2年経過して終わったのは1基のみ。法令上は稼働しながら審査することが原則だが、規制委は法的根拠のないまま、基準に合格した原子炉から再稼動を認めると表明した。
 これは、審査が始まる前からわかっていたことである。原子力規制のど素人である民主党の細野が、周りの反対を押し切って作ってしまったのが、この「原子力規制庁」なのである。(原子力安全庁、環境省に設置へ・・人材はどうする?

 規制の実態といえば、次の通り

 日本の官僚機構の宿痾(しゅくあ)は、書類好きの形式主義とされる。規制委・規制庁も同じだ。事業者が規制委に提出する書類は正式なもので8〜10万ページになる。扱う書類はその数倍になり、それを各社社員がトラックを連ね運ぶ。規制庁の役人は書式の間違い、誤字脱字があると、書き直しを求める。どの会社でも社員が総出で、書類の読み直しをしている。

 まあ、これは原子力の規制が始まってから、ずっとの話。本質的なチェックなどできないのが「役所」なのだから仕方ない。むしろ、あらゆる役所の規制がこの程度のものであることを、国民全員が知っておく必要があるくらいだ。

 原子炉は現代の工業技術の粋を集めた設備だ。原子炉、地震、配管、発電設備、防災・防火などの専門が細分化し、審査も各分野ごとに行われる。ところが審査担当官の能力差が著しい。優れた担当者もいれば、「素人で一からこちらが原発の構造を教えなければならなかった。規制庁は寄り合い所帯で、初めて審査を担当する役人もいる」(ある電力会社)という例もある。

 そして事業者が規制庁の審査の特徴として挙げるのは「責任逃れ」だ。上司の言うことに過剰に反応し、責任を事業者側に押しつけ「朝令暮改」が繰り返されるという。福島事故の後に規制当局は「規制の虜(とりこ)」、つまり専門性のある事業者に取り込まれたと批判された。それゆえに今は事業者に厳しい態度を示しているのだろうが、その審査には安全性を合理的に追求したとは言い切れないものも多い。判断が審査官の裁量で左右されて行政が権力を振り回しているように見える。
 これは、通産省の時から電力は苦しめられてきた。担当役人が替わるごとに必要とされる書類が気分で変えられてきたのである。「標準化」を行い、顧問会を作り上げ、あまりにもばかげた役人の横やりをできるだけ防いでいたのに、すべてをご破算にしたために元の木阿弥。今回、川内原発の再稼働を無理矢理開始したが、その後に続く原子力発電所が簡単には出てこないのは、この役所の状況を見れば簡単にわかる。
 「気分」で規制をきめて、不必要な設備を唯々諾々と取り付けた田舎電力会社がトップを切って再稼働となっただけなのである。

 事業者側にも問題がある。規制委・規制庁のおかしな主張に対し、現場の実態を理解してもらう取り組みを尽くしていない。米国では1979年のスリーマイル島の原発事故の後で事業者が業界団体をつくり、技術情報の共有、規制当局との交渉、原発の安全性評価など国民への情報公開を行った。それがきっかけで規制内容は修正されていった。しかし、日本の事業者の動きは鈍い。規制側に主張するという発想が現場にも経営陣にもないのだろう。
これは石井氏が指摘した通り。なぜ、こんなバカなことになっているかといえば、このあたりの寝技得意中の得意である

・東京電力

が、機能不全に陥っているからである。関西電力だけでは荷が重い。こういうときにとりまとめ役として「電事連」が活躍するはずだが、人材不足に陥っていると思われる。(なにしろ、東電の広報として活躍していた尾野氏が電事連にとりまとめ役として赴任するくらいだ)また、各電力に余裕が全くなくなり、なんとしてでも再稼働を行うために、各電力の調整などくそ食らえと、役人の機嫌をとったところが再稼働一番手になっているところからも伝わってくる。
 私がいたときには、米国の規制状況については、東京電力がワシントン事務所を通じてBWROG(BWR オーナーズグループ)に参加して情報を収集し、各電力会社のみならず、役所にまで規制の状況を事細かく説明していたのであるが、今そのようなことは行われているのだろうか。

 これらのばかげた安全対策は、当然社内(原子力以外)からは、総スカンを食らっていることを

 他の原発でも、規制委は明確な指示を出さないことがある。中部電力浜岡原発(静岡県)では津波対策として巨大な防波壁を作った。規制委側の指示はなかったが、自主的に決めた。高さは14〜16メートル、海抜22メートルで「万里の長城」を連想させるほど壮観だ。この対策を規制委側は高く評価したが、同社内部からは「やりすぎ」(営業幹部)との声が聞こえる。この費用は約3000億円以上という。
 この記事は伝えている。

 「過剰に設備をつける」「リスクゼロを求める」。規制委が行う取り組みは一見良く見えるが、専門家が見ると安全性は必ずしも高まっていないそうだ。

 ある研究者は「稼働3年後に事故が起こるかもしれない」と警告した。新規制基準によって監視の必要な設備が増えた。しかし長期に亘りすべての管理などできないはずで、監視の緩くなった機器が壊れるかもしれない。そして「ゴテゴテプラント」が緊急時の対応を混乱させる可能性があるという。

 一つのリスクを減らす行為が別のリスクを発生させる。また「想定外」は常に起こり得る。規制委の新規制基準には、こうした当たり前の発想がない。

 東京大学大学院工学系研究科の岡本孝司教授は、規制委の活動について手厳しく批判する。「行政訴訟や事故時に責任を逃れるためという方針は一貫している。国民の安全を確保するという発想ではない」


 原子力規制の場にいた人間にとっては、すべてが頷ける記事である。そして、この記事の中には、欧米規制当局との「比較」が一切出てこない。小泉氏が指摘するように、「世界一」というのならば、欧米の規制当局の考え方をも参考にした上で、規制を作り上げていかねばならないはず。ところが、竜巻にワイヤーとかまるで素人が考えるような安全対策でことたれりと自己満足しているところからも、そのような視点は一切ないことが伝わってくる。なぜ、米国NRCの専門家や、フランス規制当局の協力を仰がないのか。

 「世界一」の安全基準の実態がよく伝わってくる 良記事であった。

 それにしても、推進派も、反対派も全く評価していない規制当局とは、いったい何の存在価値があるのだろうか。

■関連ブログ
原子力安全庁、環境省に設置へ・・人材はどうする?2011年08月11日

  

posted by いんちょう at 20:03| Comment(9) | 原子力
この記事へのコメント
九電原子力見ると
最大排出値
玄海は最高14000CPM
川内は   450CPM

120CPM=1μSVhみたいですから
玄海はほぼ事故してるみたいですね

西、関西、東と汚染させて
瓦礫拡散と同じ手法
Posted by 農家 at 2015年08月18日 14:09
東京からなるべく遠くて危険性が低いのから動かす、これしか考えていない役人と安倍共。一番危険性が低いのは北海道なんだが、どうもオバサン知事も北電もやる気が低いし、恩恵が少ない事にも気付いてしまった感あり。逆に九州はセメント屋が安倍を手助けしてくれるなど恩恵が大きい。これだけで九州が最初に動く事になった、ってだけの話さ。
関西は事故れば近畿経済圏崩壊というリスクが大き過ぎて手を付け辛い。若しかしたら大飯などの判決もデキレースかも知れない、とこの頃思うようになった。八木が困っても、そんなの「俺達には関係ねぇ」ってのが役人の思惑なんだろうなぁ。
Posted by 武尊43 at 2015年08月19日 08:36
川内。世界1安全な原発では、絶対あり得ないのかと。
再稼働そうそう、
黒煙が上がり、九電は様子見に行けど、
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-7616.html
以降、何も発表なし。
また、九電の火砕流シミュレーション。
過去に、3度、川内原発敷地位置まで、
火砕流が到達しているのに、
彼らのシミュレーションでは、
同じ海岸沿いでも、川内よりもより遠くの大川や、弁財天山のま裏の荒川地区が、火砕流到達予想も、
http://textream.c.yimg.jp/res/textream-cimg/69/70/1009508-6ebda3eeno/334/49a073e6230f21b107ab05a97da145fd.jpg
何故か、
そこから5kmしか離れていない、
誰が考えても、標高1117mの桜島から、八重山の南をかすめ、弁財天山の北を通り、川内川沿いに、流体はより、入って来やすいはずの、川内原発周辺が、火砕流や溶岩が迂回している。
http://textream.c.yimg.jp/res/textream-cimg/69/70/1009508-6ebda3eeno/334/d85514d745755026d473ae76d402ab33.jpg
ふつう誰でも不思議に思うことを、
原子力規制委が、何の疑念も唱えずに、
審査を通したと言うことは、国民からのパブコメなど何のその、八百長の、危ない、出来レースをやっていた、ということでしょうね。
何れにしても、溶岩が来ようが、火砕流が来ようが、火山灰が来ようが、実に
危ないのが、川内原発かと。
http://textream.c.yimg.jp/res/textream-cimg/69/70/1009508-6ebda3eeno/334/d5bd55f1090159cfb34c89332ee9a039.jpg
今回解ったのは、原子力規制委の田中さんが、再稼働への審査を通した大前提として、期待していたのとは全く違い、危険度で、今のレベル4の状態から、このまま何も無く収束に向かうのか、それとも、すぐに重大噴火するのかを、火山学者が、1000人かかっても、誰も、確信を以て言えず。海底からも、無数の泡が湧いて来ている、と言う。この状態では、火砕流など、山を駆け下り、鹿児島市街への到達が1分、川内原発のある50km圏までが、僅か5分を考えれば(避難どころか、殆ど何も出来ず)、稼働など、即刻止めるしかないのに。。。
1昔前の日本は、皆、“安全第一”であり、“人命尊重”だった。しかし、今は、事故時責任も、皆他人に押し付け、さらにはその人間関係が、円になっているので、永久に、誰が詰め腹を切るのか、決まらぬ(決めぬ?)まま、人命や人の健康などは踏み倒し、危ないことは承知で、アクロバティックな綱渡りを強行しないと、お上から、お叱り・お咎めを受けるような時代になった。
Posted by 浮き船 at 2015年08月20日 18:58
http://www.kyuden.co.jp/php/nuclear/sendai/s_env_monitor.php

排気塔から最大13000 CPM 100μ
今でも470 CPM=4μsvh
ずっと出っ放し

トリチウム 使用済み燃料

30cmの灰は明日にも有り得る
貝部電源喪失 非常電源も灰が詰まって停止

Posted by 農家 at 2015年08月21日 01:19
僅か2年で、国のありようをガラリと変えた安倍さんは凄いが、日本に昔からあった、“安全第一”、“人を大切に”、“人命尊重”などは、今は寧ろ死語であり、大ピラに口に出して言えば、寧ろ「人でなし!」と、非難される世の中になったのかも知れず。火山学者は、誰もこの先読めぬのに、白煙や海底バブルも沸く、依然桜島がレベル4の状態で、電力が川内を止めようとしないのにも驚くが、下記も驚愕・震撼の極みである。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150820-00000042-mai-bus_all
事故後、韓国はすぐ、福島・宮城・茨城・岩手・青森・群馬・栃木・千葉8県の水産物一部輸入を禁止。更に2年前、汚染水漏れ理由に全面禁止拡大の措置を続行。日本は「基準値以上の放射性物質非検出(添付の様にそうでもなく)故、規制には科学的根拠無し」を主張。規制撤廃求めるも、応じる気配無かった為、この程、日本WTOに提訴。菅。高飛車に「危ないと言うなら、その科学的根拠出せ」と言うも、本根拠はICRP見解。事故前の年1mSvでさえも、日本人。交通事故同様年5千人が死ぬ事に(あく迄妥協でその基準を決め)。だから個々の食品が喩え、基準値(Bq/kg)内でも、環境線量上れば、事実上その値も上昇、食通じ、それに比例し人は多く病死し。だからこそ、チェルノの経験則をも踏まえ、今も50ヵ国もが、輸入規制に。しかも米除けば、食品は全数ではなく、現行抜取りか抜き打ち検査。漏れあるは当然で、腹から放射線発散の人も。更にはセシウム134と137の検査はしても、一方の原子炉から大量に出たと推定、同様に危険なストロンチウム90は、手間と金の両方かかるを言い訳に非検査。私自身ラベル見、これら県の農水産物は食べず。特に魚の場合、依然浜通りから汚染水垂れ流し。海底中心に汚染深刻なのを知っている故。農水省ならば、水産庁中心に尚更熟知。日本からの規制緩和要求に応じない故と言うも、こうしたゴロツキ的言いがかり。人権蹂躙な脅迫罪で反訴されず?「我が国。汚れた危ないモノ。無理やり、自国民の口に突っ込もうとし。」と。欧州米露中等の大国の規制拡大には黙認、韓国・台湾だけ、今まで誹謗して来た(両者。嘗ての我が国の植民地でもあり、ズケズケ言いやすかった?)訳故、近隣小国への虐めの構造透けて見え。日本自体は、本行為で国のイメージ落とし。「日本。野蛮!」と。これ、日本の権益を守るだめでも何でもないし(寧ろ逆効果)、海外に出ている日本人。白い目で見られ。損あれど、何の国益も無く。外国人も含め、誰も、怖いものは怖い。やはり、ヤバイものには、当たりたくはないでしょう。こう言った提訴は、「福島の事故を起こしてしまい、貴国に不安を駆り立てて、申し訳なかった」と言った上で、取り下げた方が、賢いかと。
http://textream.c.yimg.jp/res/textream-cimg/78/b0/1009501-el5feeeno/9545/796e7015f369377c2bcc992a75769573.jpg
Posted by 浮き船 at 2015年08月21日 07:34
1発に数十発砲撃を返したということで、次は北朝鮮の番です。
常識外れの新指導者の下、大規模報復とかありそうですね。
当初は都市部への攻撃は避けるとして、ノドン・スカット数百発、攻撃目標には「原発」も当然入ってますよね。
日本にも飛んでくるかもしれませんね。
第二次朝鮮戦争の始まりでしょうか?
ここ1.2週間は、要注意ですね。
Posted by uttegaeshi at 2015年08月21日 20:54
>「標準化」を行い、顧問会を作り上げ、あまりにもばかげた役人の横やりをできるだけ防いでいたのに、すべてをご破算にしたために元の木阿弥

この辺は異論がありますね。
何を言おうと東電は津波から逃げて回って事故で役人に規制強化されてしまったのだから、自業自得でしょう。

勿論、旧保安院にもクズはいることが外野の目にも明らかになってますが。
Posted by 岩見浩造 at 2015年08月22日 21:43
昔から、某原発のある地元では原発に関する危ない話を聞いたことがありました
Posted by 匿名希望 at 2015年08月27日 13:03
原発村は日本の食糧庫を狙っています

福島原発事故で私たちは東日本の食糧庫を奪われました
次は西日本の食糧庫というわけです
また事故に見せかけて過失して放射能をばら撒く気です
分かりやすすぎます

大量の病人を作って巨額の富が得られますし(目的1)
日本の食糧が食べられなくなれば輸入で得をする連中が内外にいます(目的2)
Posted by ももも at 2015年09月01日 04:50
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