2015年11月19日

1337.国立がんセンター「がんが見つかってもすぐに治療せず、様子を見ることも検討すべき」

2015111901.jpg・国立がんセンターの津金昌一郎予防・検診研究センター長が「がんが見つかってもすぐに治療せず、様子を見ることも検討すべき」と発言
・福島県民の被曝量は取るに足らないものであるから、甲状腺癌が起きるはずがない。 とする いつもの御用学者の論法を振りかざし、現在起きているのは「過剰診療」だと決めつけた。
・先日紹介した「越智小枝」医師は、「スクリーニング効果」だと主張しており、「専門家」の意見があてにならないことがよくわかる


 私が以前原子力発電所に勤めていたときに、「原子力は安全です」とするQ&Aをたくさん作っていた。その際に一番大事なことは、過去の答弁を調べ上げることであった。そもそも、「原発が安全」などという話は、ウソなのであるから、事実をそのまま述べると矛盾点が噴出するのである。

ウソについてはたくさんの格言がある

・ひとつ嘘をつくと、20の別の嘘をつかなければならなくなる(スウィフト)
・どんな馬鹿でも真実を語ることはできるが、うまく嘘をつくことはかなり頭の働く人間でなければできない。 byバトラー
・嘘が一年逃げても、真実は一日で追いつく(アフリカの格言)

よく使われる言葉に「口裏を合わせる」というのもある。ウソをつくには前もって、大がかりな準備が必要であるとともに、いくら大がかりな準備をしたところ最終的にはばれてしまうということである。
 この格言の一番の肝は、

「ウソには矛盾がある」

と言うことであろう。福島の甲状腺癌多発に対しては、現地の医療状況を大変よくわかっている越智小枝医師が「スクリーニング効果」だと主張していたことを前回紹介したが、この発言を打ち消す大物が現れた。

国立がんセンターのがん予防・検診研究センター長である 津金昌一郎医師である。まず、何者であるかを知るために、経歴は押さえておこう
学歴
昭和50年4月 慶應義塾大学医学部入学
昭和56年8月 慶應義塾大学医学部卒業
昭和56年9月 慶應義塾大学大学院医学研究科入学
昭和60年8月 慶應義塾大学大学院医学研究科修了(医学博士)

職歴
昭和60年9月 慶應義塾大学医学部助手(衛生学公衆衛生学教室)
昭和61年4月 国立がんセンター研究所研究員(疫学部疫学研究室)
昭和63年4月 国立がんセンター研究所室長(疫学部疫学研究室)
平成6年10月 国立がんセンター研究所部長(臨床疫学研究部)
平成15年10月 国立がんセンターがん予防・検診研究センター部長(予防研究部)
平成22年4月 (独)国立がん研究センターがん予防・検診研究センター部長(予防研究部)
平成25年4月 (独)国立がん研究センターがん予防・検診研究センターセンター長
昭和63年5月〜 新潟大学医学部非常勤講師(衛生学)
平成19年8月〜 昭和大学医学部客員教授
平成4年7月〜平成5年7月 ハーバード大学客員研究員(疫学・栄養学)

学会活動
昭和61年〜現在 日本癌学会会員 (平成5 年〜現在 評議員)
平成5年〜現在 日本疫学会会員 (平成13 年〜16 年,平成19 年〜現在 理事)
平成6年〜現在 日本がん予防学会会員 (平成23 年〜現在 理事)


平成4 年 日本衛生学会 奨励賞
平成6 年 日本癌学会 奨励賞
平成22年   朝日がん大賞

 日本の医療界・疫学会・がんのトップの一人と言って良いであろう。かれは、次のように発言している。
がんは誰にでも起こり得る身近な病気であり、その対策は日本人の健康を守る戦いの最前線といえます。そのための第一の砦は、がんにならない(予防する)ことであり、第二の砦は、がんになっていても、早期発見・早期治療により、命を落としたり生活の質を下げたりしないようにすることです
平成18年に施行された"がん対策基本法"には、がん対策における国民の責務として、「国民は、喫煙、食生活、運動その他の生活習慣が健康に及ぼす影響等がんに関する正しい知識を持ち、がんの予防に必要な注意を払うよう努めるとともに、必要に応じ、がん検診を受けるよう努めなければならない」と記されています。私が現在所属している国立がん研究センターがん予防・検診研究センターの使命は、その名の通り、がんを予防するための正しい知識は何であるのか、がんで命を落とさないための最適ながん検診はどうあるべきなのかを研究し、その成果を国や国民に適切に提供することです。その目的は、一人でも多くの国民が、がんにならないように、そして、がんで命を落とさないようにすることであります。

以上が必要な予備知識である。これらの知識を持って、朝日新聞の記事を参照してみる。

 ■過剰診断とみるのが合理的 津金昌一郎さん 国立がん研究センターがん予防・検診研究センター長
 日本全体の甲状腺がんの罹患(りかん)率(がんと診断される人の割合)から推計できる18歳以下の有病者数(がんの人の数)は福島県の場合、人口から見て2人程度。実際にがんと診断された子どもの数は、これと比べて「数十倍のオーダー(水準)で多い」とは言える。

 数年後に臨床症状をもたらすがんを前倒しで見つけているという「スクリーニング効果」だけでは、この多さを説明できない。現時点では放射線の影響で過剰にがんが発生しているのではなく、「過剰診断」による「多発」とみるのが合理的だ。
 最初の一文で一生懸命策を弄して書いた越智小枝医師の「論文」が撃破された。見事である。せめて、「口裏を合わせる」べきではないかと私は感じてしまうが。

 過剰診断とは、将来的に症状が現れたり命を脅かしたりすることのないがんを診断で見つけてしまうこと。がんの中にはゆっくりと成長するもの、そのままの状態にとどまるもの、そのうち小さくなったり消えたりするものもある。

 大人の甲状腺がんについては韓国の報告などで、過剰診断による増加が明らか。精度の良い検査の普及などで韓国では1年間に甲状腺がんと診断された人は1993〜2011年の18年間で15倍に増えたが、亡くなる人の数はほとんど変わらない。
 これは、まさしく「近藤誠」理論である。この理論を一番馬鹿にしていたのは、国立がんセンターではなかったのか。(私自身も近藤誠理論は信じるに値しないと考えていることを付け加えておく)
 子どもの甲状腺がんについてのデータは、これまでほとんどない。しかし、大人の甲状腺がんや子どもの他のがんの観察から、がんは成長するだけでなく、小さくなるものもあることがわかっている
 私の医学的知識では、放置して良い癌は新生児の「肝芽腫」しかなかったと記憶しているのだが、いつのまにか甲状腺癌も「放置すべき」がんの仲間入りをしてしまったのだろうか。

 一方、放射線の影響という主張に対し、私がそうではないと考える一番の理由は、地域ごとの放射線量とがんと診断された子どもの数が比例する「量―反応関係」が見られないと判断できるためだ。現時点では疫学的にはデータが少なすぎ、放射線量が高かった地域ほど、がんの子どもの割合が高いとは評価できない。

 そもそも「多発」の原因が被曝(ひばく)なら、数十倍というオーダーの増加は相当の大量被曝を意味する。しかし、福島県民の被曝線量はチェルノブイリ原発事故による住民の被曝線量と比べて低く、過去の経験や証拠からそうとは考えにくい。被曝から発症・多発までの期間も早すぎる。放射線が原因の可能性はゼロではないが、極めて低いと考えるのが自然だ。
 この理論は、昔からよく聞く。

「自分たちで過小評価しておいた放射線のリスク評価を用いて、「科学的」には因果関係が証明されないからその被害は原発の放射能が原因ではない、と被害を切り捨てる」

である。まさに、推進派(体制派)の面目躍如。さらに、あろう事かこの医師は、癌検診、甲状腺癌の手術にまで否定し始めた。
 これらを明確にするためにも調査は続けるべきだ。ただ、過剰診断が強く疑われる現状では、調査を県外にまで広げるべきではない。たとえ1人が利益を受けたとしても、それよりはるかに多い人が本来診断されないがんを発見され、治療を受ければ、生活の変化を含めて様々な不利益を被ることになる。福島県の子どもたちの場合でも、がんが見つかってもすぐに治療せず、様子を見ることも検討すべきだ。福島県で甲状腺がんで亡くなる人は、死亡率からみて40歳まででも1人以下である。

 現行の検査を続けながら、放射線の影響の有無について冷静に分析する必要がある。これは、国の責任でやるべきことだ。


 さいごには、癌検診がまったく無意味とまで発言しているのである。ここで冒頭の彼の発言を思い出してほしい

・癌に一番大事なのは、早期発見、早期治療である

と述べているではないか。甲状腺癌に限っては

・早期発見は無意味
・早期治療は不要

という。これを矛盾と言わずになんというのか。

癌の早期発見、早期治療を主張する国立がんセンターの職はなげうって、直ちに近藤誠門下に入門すべきではないのか。

 真実を知るには、かならずしも膨大な知識を持つ必要はない。

・矛盾はないか?

さえ、気にかければ誰にでも見抜く能力はある。

 それにしても、国立がんセンターのセンター長から「治療する必要はない。癌を放置せよ」と言われた福島県民はいったいどう考えるのだろう。

■関連ブログ
1334.原子力村の巣窟である池田信夫主催のGEPRに原稿を寄せる南相馬に住む女性医師2015年11月12日
「自分たちで過小評価しておいた放射線のリスク評価を用いて、「科学的」には因果関係が証明されないからその被害は原発の放射能が原因ではない、と被害を切り捨てる」2013年05月29日

 
posted by いんちょう at 22:32| Comment(13) | 原子力
この記事へのコメント
近藤誠理論ですね。
がん検診による過剰医療。がんセンターある程度は認めてるってことでしょう。
実際、乳がん検診は30歳未満では有意差なし。40代でも検診を毎年受けても20%しか助かりませんからね。
胃、肺がん検診に至っては日本以外は有意差なしですよ。

ただ、被曝による甲状腺癌は検診をせずとも増えてくでしょうけどね。私はそう思います。
Posted by 温泉天国 at 2015年11月19日 23:21
あ、がん検診の有効性(というか無効性)は
以下のページで


科学的根拠に基づくがん検診

http://www.ncc.go.jp/jp/kenshin/about/gankenshin.html
Posted by 温泉天国 at 2015年11月19日 23:27
 岡山大学の津田敏秀教授の研究論文が海外で発表されてから、厚労省もこの津金教授なども相当焦りだしたみたいですね(笑)
疫学的に50倍なんてことは起きない、と断言されそういう論文を一度も読まずに、スクリーニング効果だ、と決めつけていた事をバラされてしまったんですよね。厚労省も「因果関係を明確に否定するのも難しい状況」と言い出してるんですよ。ここまで言い出すという事は、最早白旗を上げるのも近いかなァ(怒)
どっちにしろ外圧に弱いニッポンそのものの人達ってことで、、。 
 所で全くの別件なんですが、先生は木下黄太氏と喧々諤々の間柄だったですよね?私もチョット前カキコしたら完全拒否され、ブログそのものも閉鎖だそうです。ハッキリ言ってケツの××小さ過ぎる、と思って震えてしまいました(笑)私のハンネ調べたらしく「いろんな所に書き込みしている奴」だそうですから、きっと先生の所も覗きに来てるんじゃないですかねェ、、。
書いた中身はシールズや反原発集団が東京で行っているのは行けない事みたいな事を書いて居たんで、チョット反論しただけなんですよね。それと四枝不自由者はどうやって逃げたらイイのか教えて貰いたい、と書いただけなんですがね、、。まぁ最後に「ご自愛ください(笑)」と書いたのがいけなかったかなぁ(悲)♪♪
Posted by 武尊43 at 2015年11月20日 00:21
犯罪者じゃなければ金も稼げないし人の上には立てないよ
この国のシステム
Posted by うんこ at 2015年11月20日 07:26
放置させて転移したところで、これは甲状腺癌ではなく、転移先の癌です〜とやるのかな
Posted by たま at 2015年11月20日 08:40
彼らの本音は、「おまえら福島県民は実験台なんだから最後まで経過を観察させろ」じゃないですかね。
Posted by nn at 2015年11月20日 09:56
家内から「あなたはそうかもしれない、こうかもしれない、って、ふらふらして自分の思うことを言わないわ」って言われたことを思い出す文章ですね。

いろいろなことを持ち出して、話の内容がふらふらしていますね。そして、最後の結論まで逃げ腰な感じですね。

権威者ほど、ほかの権威者の言うことに弱いということですかねぇ。

私は、いつも最後には自分の意見を家内に話すようにしています(嘘
Posted by 恐妻家 at 2015年11月21日 02:57
 Twitterに書いたことをこちらに転写します。

 昨年今頃、家内が血尿を出して「膀胱がん」を疑い病院(土曜日のお昼過ぎでしたから、これから行けるところは何処かと、必死で検索)に行きましたら後日の話で、検査の結果、其れは大丈夫そうだが、「乳がん」の疑いありということで、公務員共済病院(私も長年通院している)へ直行。検査の結果乳がんの初期だが手術するという話に。4日で退院してきました。

 担当医師は抗癌剤は、使わないと明言しています。以後大丈夫そうで元気です。薬は飲んでいます。一時は遂にアレが来たかな?と疑いましたが、「年の所為」らしい。

 様子を見るだなんて、とても我慢の出来ない話です。状況にも依るでしょうが私がそう言われたら、別な病院に行きますね。なまじ国立だからそうゆうことになるんでしょうが、ふざけた話です。患者や家族の身になって考えてみろと言いたいですね。経験者のご意見は如何でしょうか?
Posted by ハマの住人 at 2015年11月21日 11:50
こんばんは。近藤誠理論がよく分からず、門下に入門とあったので新選組の近藤さんの事かと思ってしまいました。

国立がんセンターのセンター長なら、患者さんから裁判起こされた等見聞きしたことはあるだろうから、ガンと診断された人、しかも子供に様子見でいいとか言うとは思えないのですが…。自分の考え方を変えるきっかけがあったとしも、方針変えすぎでひどすぎます。子供の甲状腺がん多発は予想されてるのに!
Posted by ポニ方 at 2015年11月30日 22:54
http://blogs.yahoo.co.jp/koredeiino345
こういう自称医者がいるんですが先生の目から見てどう思いますか?
Posted by kaizo at 2015年12月02日 18:53
これって、どう読んだらいいのかね
小野さん解説ヨロ

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151201-00000095-jij-int
Posted by 123 at 2015年12月02日 20:57
近藤誠理論と放射脳って相性がいいんですよねぇ。それで、また現代医療を否定して被害が広がるっていうか。。。(うちの嫁さんも近藤理論にはまっています)

小野先生の良いところは、お医者さんとしての独自のバランス感覚の中で、自分が確信をもったことを語っていることだと思っています。(嫁は難しいって言います)

しかし、フクシマもだいぶ忘れられてきましたね。私自身も日常生活があるので同じだと思いますが。

状況に好転の兆しがいつも見えないことが、いつも疑問に思ってしまいます。(先生は見えておられるのかもしれませんが)

世の中って本当に???ですね。
Posted by 恐妻家 at 2015年12月04日 00:54
311以後、クラやらハマやらといった安価な回転寿司屋が日本中に異常に増えていったが、これらは一種の国策会社ではないのか?
大量の「国産米」や出所不明の魚介類を大量に消化でき、しかも被害を地域的にではなく全国的にすることができる。
店内も自動放送の類が常時多数あり、人間が思考不能化していくような環境になっている。
もちろんこれは仮に国策の一部だとしても、国民を破壊し国民の形成する国を破壊してゆくという点で、普通の意味での国策ではなく反国策的国策という自滅政策にすぎないが。
Posted by wfg at 2015年12月07日 15:14
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