2015年12月28日

1345.「放射能の被害の大半はわかっている」と主張する竜田一人氏の主張

2015122801.jpg・「いちえふ」の筆者竜田一人、新進気鋭の社会は学者、開沼博が「フクシマ安全論」を振りかざしている。
・これらの人物に特徴的なのは、過去の経験を一切無視して、当局の「公式」発表を鵜呑みにしているところにある
・「放射能の被害の大半はわかっている」とする竜田一人氏は、「ノーベル医学賞」候補に匹敵するのではないか。 「科学的」に証明されていないことをいいことに、「放射能安全」教を広める人物たちがいる。彼らに特徴的なのは、「結論」の矛盾を一切考慮することなく、権力者たちの主張をそのままオウム返しに(さも認められた理論として)振りかざすところにある。

 その中でも、目に余る主張をされた人物がいたので、少し紹介したい。モーニングに「いちえふ」を掲載していた(現在もしているのかもしれないが)竜田一人氏である。

・たった数ヶ月の現場経験
・医学的な基礎知識ゼロ

で、「フクシマの健康被害はない」と主張しているのである。まんがで主張しているだけならば、まだ許されるかもしれない。しかしながら、メディアを使って、もじどおり「たった一人」の経験で、放射能の健康被害を否定するとすれば、もう許されないことである。

いまだ危険なイメージが消えない福島への誤解 竜田一人×開沼博対談(1) 週刊ダイヤモンド編集部  2015年12月25日のなかで、彼はこう主張している
――放射能の状況についても、とかくセンセーショナルに伝えられることが多いですね。

竜田「放射能についてわからないことがある」というのは、全体の半分がわからないのではなく、100あるうちの1以外は、汚染状況についても健康影響についてもほぼすべて解明されている、くらいのイメージなんですけどね。
例えば、汚染水関係で現在よく漏れたと騒がれるのは雨水ですが、実際に数値を見ても大した数値ではない。ですが、漏れた事実だけが騒がれる。実際にこうしたニュースの後の周辺海域の魚に対しても放射性セシウムND(検出限界値以下)がほぼ99%以上です(*2)。そこは地元漁協ももっと自信をもって言うべきですよね。
 あの事故から30年近く経ったチェルノブイリでさえも全体像はまったくわからないのに、おなじLEVEL 7の事故が起きてたった5年程度で何もかもわかると、乏しい経験からなぜ言えるのか。

「健康影響についてもほぼすべて解明されている」

とは、いったいどういうことか。それならば、まず福島小児甲状腺調査など、直ちにやめるべきではないのか。

 昭和29年に都築正男氏は、国会答弁で次のように発言している。
○岡委員 先生は広島、長崎以来、世界での原子爆弾症の権威と、われわれは尊敬をしておるのでありますが、先生の目から見られて、原子兵器はつくらぬとしても、少くともわが国における原子核分裂に基く身体障害等に関する治療を中心とする科学的な態勢は、世界に十分に誇り得るものである、日本のこの方面における発展は十分に世界のレベルを越えておる。少くともこれに劣るものではない、こうお考えになつておられましようか。
○都築参考人 それはちよつと私の口から申し上げにくいことでありますが、正直なところ私はそう思わない。というのは、正直なところどこの国でもゼロなんです。日本もゼロで、私はアメリカもゼロと言いたい。何だかんだ言いますけれども、結局結論はゼロです。ですから、どこもゼロなんだから、もし日本が〇・〇〇〇一だけでもプラスであれば、世界一になる。実は日本は零が幾つついた一か知りませんが、何がしか持つております。という点では数学的に比較すれば、いくらか多いかもしれませんか、私どもの力が世界一だというようなそんな慢心は決して持つておりません。世界で一番下だと思つて努力しなければならぬと思います。


 また、百兆円を超える経費で、放射能の影響評価をしていた米国もまた −自著の中でも引用−
 陸海空軍も、核の戦場で放射線を浴びる歩兵・水兵・航空兵がどうなるかを患者のデータから予測しようとした。日本の悲惨な被爆傷害が心にあった軍の首脳連は、放射線の作用をもっと詳しく知りたかった。吐き気はどの時点で始まるか?どれほど浴びたら骨髄に影響が出るか?被爆で思考力や決断力は損なわれるか?動作はどうなるか?兵士を守る医薬はあるか?弱い放射線を何度も浴びた兵士はどうなるか?・・・疑問は次々にでたけれど、結局のところ答えは出なかった。なぜなら、ストーンたちがカールトン・ホテルの会議でもわかっていたように、若い健康な兵士と癌患者が放射線に同じ反応をするはずもないからだ。
 
TBI実験(健康人の全身照射)で研究者は、血液と尿を分析して「生物学的線量計」を見つけたかった。生物学的線量計とは、人体の浴びた線量を物語る生化学変化をいう。もし見つかれば、戦場の軍医は、被爆者をざっと検査し、助かる兵士と死ぬはずの兵士をてきぱきと区別できる。一九六三年に空軍の某将校がこう書いている。「放射線が生体に破壊的な作用を示すとわかって以来、研究者は身体の浴びた線量をきれいに語る生化学的・組織学的・臨床学的な変化を追い求めてきた。」(中略)
 照射の後、血球、染色体、アミノ酸、酵素、血漿タンパク質、脂質をくわしく調べた。しかし軍の医師たちは、信頼に足る生物学的線量計を見つけるには至っていない。線量の指標になったのは、すでに臨界事故の犠牲者や日本の被爆者でわかっていた傷害、つまり吐き気や食欲不振、脱毛などがいつ始まり、どの程度の症状がどれくらいつづくかだ。それだけを手がかりにする状況は今の今までほとんど変わっていない。


 放射能の被曝研究に関しては、ヒロシマ、ナガサキのみ(だと主張している)のだから、これ以降ほとんどシンポはない−いや、むしろ後退しているほど−のである。そもそも、医学部の授業でも、放射能の影響に関する授業は一切ない。ベースが一切ないところで、「大半の健康被害がわかった」などと言える代物ではないのは、誰がどう考えても当たり前の話だ。

という状況である。内部被曝に目を向けたとたんに、今の医学でも何にもわかっていないことなど明らかなのである。それを大半がわかったというような人物が未だに両手を振って、大手メディアに出演していることに驚きを禁じ得ない。

 勉強しないからこそ、何もかもわかった気になる。こんなことがなぜ、許されているのか。なぜ、こんな底の浅い主張にだまされてしまうのだろうか。

■関連ブログ
1340.最悪の原発事故が起きたのに「科学的」に健康問題を否定する御用学者、医師たち2015年12月11日
【NHKスペシャル】見過ごされた被爆〜残留放射線 63年目の真実〜 登場人物にみる論功報奨2013年01月03日

 
posted by いんちょう at 21:24| Comment(12) | 原子力
この記事へのコメント
元々放射線で死んだ作業員をタイベックを着たまま火葬したとかなんとかの「反対派のデマ」なるものを創作する御仁ですから。

全部の本を確認した訳じゃないけど、そんな話は聞いたことが無い。
事故前の放射能ネタの大半は、線量の隠蔽です。アラームメーターを外して作業しただとかB区域での作業だったのにホールホディで50万カウントいったとかね。

そもそも彼は1巻の時点から何であれ程鮮明な背景が描けるのでしょうか。
http://ojima537-21.blog.so-net.ne.jp/archive/20150211
上記は花輪和一氏の刑務所の中ですが
単調な刑務所暮らしでさえ、記憶だけで描くとどことなく細部は曖昧・適当になっているように見えるのですがね。
Posted by 岩見浩造 at 2015年12月29日 00:55
>医学部の授業でも、放射能の影響に関する授業は一切ない

 この事を世間に知らしめなければ、一般人は理解出来ないでしょう!!
 私もこれは知りませんでした(驚)

 ココが一番のキモですよ!!

そうかぁ、『影響』は何も分かっていないんですから、授業なんて出来る訳有りませんね、、。
 私は光工学で放射線についても一応一通り「勉強させられた」んで、医学者は「影響」について勉強させられるものだと思い込んでいました(^_^;)
イヤー!勘違いしてましたぁ、、。
Posted by 武尊43 at 2015年12月29日 04:20
竜田一人先生の次回作に大いにご期待!(笑)
いや、そもそもエンターテインメントな作品を描ける才能がないから、ああいうルポ漫画を描かざるを得なかったのでしょうけど。
当分は「いちえふ」の印税で食べていけるでしょうけど、その後の生活の見通しが付かないとなれば、そりゃマスコミからの取材などなんだのの依頼をガンガン受けて、稼いで溜めていくしかないでしょうね。

ちょっと話は変わりますが、自分は大手メディアのワイドショーでコメンテイターをしている人の発言はハナっから信用しない事にしております。
だってあの人たちは、その仕事をしなければ食べられない、不安定な収入な人達なのですから。自分の生活がかかっているのですから、そのためにはお上の御用にも奴隷にもなりますがな。

そういや今日からコミケですね。
あと、この年始には、Eテレで浦澤直樹の「漫勉」の再放送も。
Posted by 新潟県民 at 2015年12月29日 09:14
「健康影響についてもほぼすべて解明されている」

ぜひノーベクレル平和ボケ賞(症)を進呈したい。


{なぜ、こんな底の浅い主張にだまされてしまうのだろうか。}

何を信じていいかわからない自信の無い人達に強く言い切ると簡単に信じますからねぇ、
安心する方向に、
一部の事のみ都合よく抜き出して信じやすいんですよ、
まあ自分自身もある程度そんな感じだと自覚すれば大間違いはしにくくなるんでしょうけど。
Posted by 南部のアホな大阪人 at 2015年12月29日 15:38
>医学部の授業でも、放射能の影響に関する授業は一切ない

北海道がんセンターの西尾正道名誉院長が YouTube でそのように発言しておられました。本当かと思って、これまで4名の医師に尋ねましたが、本当でした。

「医者でもないのに放射能の人体への影響についてコメントするな」みたいなことを言う人がいます。しかし、医者は本当に何も教えられておらず、知らないのです。
放射線技師も知ったかぶりで発言している人がいますが、それは「放射線」についてであって、放射性物質(放射能)についてではないのです。
Posted by 村上茂樹 at 2015年12月29日 20:00
あと、もう一つだけ(笑)

>何を信じていいかわからない自信の無い人達に
>強く言い切ると簡単に信じますからねぇ、安心する方向に、
>一部の事のみ都合よく抜き出して信じやすいんですよ、

これを読んで思い出したのは、昭和の時代に、戦史ヲタク達の間で囁かれていた歴史のIFに関する話ですね。
あの゛運命の5分間゛がなければ、日本海軍はミッドウェー海戦に勝利していた!
とか
あの時レイテ湾に突入していれば、少なくともそこにいた米艦隊には勝て、その後第一遊撃部隊は作戦目的を果たすことができた!
とか
戦艦大和は無敵である!
とか
烈風の開発・実戦配備がもっと早く実現していれば、米艦戦のベアキャットと対等にやりあえたはずだ!
といった類の。
しかもそれを言い出したのが、当事者でもあった旧海軍関係者だったというのが何とも。
しかし平成の世となり、その当事者達がこの世を去ったので、若い研究者達が恐る恐る資料を持ち寄り検討してみたら、実はこれまでそういわれてきた事は、実現する可能性すらなかった、荒唐無稽な発想に過ぎなかったそうで。
まぁ、そんなものなんですよ。
Posted by 新潟県民 at 2015年12月29日 22:34
本当に原発が安全なら、へき地に作る必要はないし、そもそも五重の壁などいらない。放射能が無害なら学者たちはこぞって収束作業のボランティアに行ってみるとよい。家族連れの作業が出来るはずである。 
Posted by Tokyo at 2015年12月29日 23:02
『おなじLEVEL 7の事故が起きてたった5年程度で何もかもわかると、乏しい経験からなぜ言えるのか。』まさにコレだと思います。思考停止させようと躍起な人達だという印象しか与えられないのだと、推進派はなぜ客観視出来ないのでしょうか。
Posted by yoshi at 2016年01月04日 01:11
統計的には不明だが、目眩は非常に多い。心原性、内耳性ともに多い。めまいを扱う診療科はちっとは気付いていないのかな。脱毛も多い。男性は気付きにくいが、元々髪の毛が長い女性はさぞや枕元の毛髪や風呂の排水口の詰まりに難儀していることだろう。美味しんぼで話題になった鼻血は最近は多くない。しかし、線量の低いところからホットスポットに転居した人には当初に多い印象がある。肌が何となく汚くなるのも初期の変化に多い気がする。女性は気付きやすいだろう。ガンは非常な勢いで増えている。それも直腸の平滑筋肉腫や、両即乳房で病理タイプの異なるガンが同時に発生するなど、医師が一生に何度会うかどうかのようなガンが混じている。甲状腺がんは男性にも容赦がない。東京の人は伊藤病院を覗いていみるとよい。待合室はかつては婦人科さながらで、椅子の埋まり具合も半分ほどであったが、今や増設にも関わらず立ち待状態である。男性もざっと10人に1人程度ではないか。「女性の付き添いではないか」と思う人もいるだろうが、採血室に行くと本人が呼ばれるので患者本人だと分かる。放射能障害はない、と言い切る人々は伊藤病院の風景の変化を説明して欲しい。追加して言うと、認知症のような記憶障害、注意力の低下、情動が不安定で切れやすくなる例も目立ってきている。どこの会社も人間関係の悪化や社員の能率の低下で困ってません?社員の抑うつやガンや突然死で戦力の低下に備えておく方がいいですよ。
Posted by Kannnai at 2016年01月17日 22:32
竜田一人は本物。彼を見くびらない方がいいと思う。
事実を見て書いた人だ。
Posted by ふう at 2016年01月27日 08:28
放射脳ブログ見ていておもしろいわw
バカすぎてw
Posted by 放射脳ブログ見ていて面白いw at 2016年01月30日 06:39
お知らせ

福島第一原発周辺のモニタリング・ポストで事故直後に記録されていたガンマ線スペクトル・データを読み取り、放出された放射能の種類やその変化、移動について丁寧に考察しました。その結果、定説化している従来の事故分析は、多くの重要な点において見当違いであることが明らかとなりました。その概要版をブログにアップしましたのでお知らせします。

「福島第一原子力発電所事故の考察(モニタリング・ポスト編)」
http://ashidakouto.blog.fc2.com/blog-entry-1.html
Posted by 足田考人 at 2016年03月11日 18:26
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