2017年11月29日

1443.大口病院事件を15年以上前に予見していた−小説「安楽病棟」

 1年以上前に起きた「大口病院殺人事件」をご存じでしょうか。35床足らずの亜急性期病棟でありながら、2ヶ月半で48人もの入院患者が点滴のあとに死亡した事件です。毎日一人、院長は「特に土日に多かった」とまで、発言しています。

 その病院が、事件の解決をみないまま再開されるようです。
大口病院、入院患者受け入れ再開へ 名称変更も検討 (カナロコ by 神奈川新聞)
昨年9月に入院患者2人の連続不審死が発覚した大口病院(横浜市神奈川区大口通)が、昨年末から停止していた入院患者の受け入れを年内にも再開する方針であることが11日、病院関係者への取材で分かった。今月中に病院名を変更することも検討している。一方、連続殺人事件として県警の捜査が続いている中での再開について、行政側は慎重な姿勢を示している。ことし1月に就任した鈴木峻院長によると、入院病棟を全面改装する予定で、受け入れ規模は10〜20床。鈴木院長は「周辺に入院患者を受け入れられる病院が少なく、地域医療としての役割を果たすため」と説明し、「地域医療の信頼を積み重ねていきたい」と話した。

 この事件が表に出たときから、わたしは一看護師のうらみによる単独犯でも、一医師あるいは薬剤師の思いつきの犯行でもないと主張してきました。
 ばれないように人を殺すのは大変なことです。一人や二人ならいざしらず、数十人もの人間を闇に葬るようなことなど、単独犯では決して不可能なのは医療者ならば全員が簡単にわかります。いわゆる「姥捨て山」状況になっているのではないかとずっと考えていたのですが、以前読んだことがあるのにすっかり忘れてしまっていた「安楽病棟」がまさにこの大口病院の原形であることに先日教えてもらって気がつきました。

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深夜、引き出しに排尿する男性、お地蔵さんの帽子と前垂れを縫い続ける女性、気をつけの姿勢で寝る元近衛兵の男性、異食症で五百円硬貨がお腹に入ったままの女性、自分を23歳の独身だと思い込む女性……様々な症状の老人が暮らす痴呆病棟で起きた、相次ぐ患者の急死。理想の介護を実践する新任看護婦が気づいた衝撃の実験とは? 終末期医療の現状と問題点を鮮やかに描くミステリー!


 主人公は、大学を卒業して間もない看護師です。最初に患者の生活歴が描かれます。その中には慰安婦を実際に陣地へ送り届けた人の話などもあり、大変興味深いものです。全員が戦争経験者であり−年齢から考えて当然のことですが−いずれの話にも引きずり込まれます。おそらく,各人ともに実際上のモデルがいるのだと思われます。その病棟長として、患者の造詣も深い医師が赴任します。オランダではもう20年以上前に安楽死が法律で定められ、Quality of Life から Quality of Death が重要になってきていると講話をします。
 その後、しばらくたってから、それまで元気だった痴呆症の患者さんが次々亡くなっていきます(といっても数ヶ月で8名ほど)。多いとも言えますが、明らかに多いというわけでもない。しかし、直前まで元気だった人が急になくなることに疑問を持った主人公の看護師がそれらの患者の共通点を探し出します。全員が、ある医師が処方した薬剤を内服していたり、アンプルを注射されたりしているのです。疑われないように6時間以上経過してから亡くなっているため、この主人公以外は誰も怪しいとも思いません。

 最後に、この主人公が一人旅に出て、医師宛にながい手紙を書いています。その中に、

香月康雄先生

 拝復 過日ご注文いただいた薬品は別便にて送付いたしました。お手元に届き次第、同封の受領書にご署名の上、ご返送ください
 なお、先般の理事会でも申し合わせたとおり、薬品使用後の経過については、各症例ごとに直接私宛にご報告下さいますよう重ねてお願い申し上げます。
 敬具
 4月5日
終末期医療研究会 会長 木部準一

まさしく、この通りです。人をうまく殺すには、あれこれ試して症例を集めなければなりません。薬剤の種類、容量など何度も何度も試行錯誤せざるをえないのです。

 ここまで読んで、大口病院事件との類似性に戦慄しました。大口病院は、こんな試験段階ではもはやありません。看護の経験がある者ならば、全員がおかしいと思う大量の死亡者。そして、お飾りのような院長の発言(おそらく、現場経験はほとんど無いのでしょう)。香月先生のような 終末期医療に意味理想に燃えた医師ではなく、もはやビジネスとして作り上げたのが、この大口病院ではなかったのでしょうか。もし、安楽病棟に出てきたような組織があるとすれば−おそらくあるのでしょうが−大口病院は氷山の一角に過ぎないという想像さえできます。

 そして、大口病院院長がぽろりとこぼした 「(死亡者は)特に土日に多かった」の発言。土日に亡くなられれば、仕事を休まなくて済むと考えていたとしてももはや驚きません。

 是非、この小説を読んでみてください。終末期の難しさ、理想について深く考えさせられることと思います。

 大口病院事件が起きたときに、何人かの医師にこの事件の特異性を話してみたのですが、大半の医師はおかしいと思っていませんでした。むしろ、看護師さんの方が異常さに気がついているくらいです。専門外のことにはあまり興味を示さない専門家集団だと改めて思い知らされました。
 もし、自分で実行すると想像してみると、その困難さに愕然とするとは思うのですが・・・

■関連ブログ
1397.大口病院事件を別の角度から切り込んでみる2016年10月01日

 
タグ:医療
posted by いんちょう at 20:51| Comment(6) | 原子力
この記事へのコメント
>何人かの医師にこの事件の特異性を話してみたのですが、大半の医師はおかしいと思っていませんでした。

これがすごい。病棟全体が見えるのはやはりNs達ですね。
Posted by Tokyo at 2017年11月30日 11:54
 大口病院の事件なんかコロッと忘れて、今月は一週間神奈川県の病院に入院して膀胱の腫瘍摘出の手術を受けました。

 術後30時間位連続で、入れ替わり、立ち代わり、点滴を受けていました。ぼんやりとポタポタ垂れるのを眺めていましたが、流石に泡立っては居ないようでした。

 手術をしたのは主治医でありませんでしたが、尿道にかかっていなかったので、完全切除できたようでしたが、腫瘍ではなくて「ガン」だったそうです。

 来月から10回程度、尿道から、テラルビシンと称する抗がん剤を注入しなければならないことになりました。スッキリした気分でしたがまた少し憂鬱になっています。渡哲也みたいにはなりたくないので、頑張ります。
Posted by ハマの住人 at 2017年11月30日 18:34
20年ほど前、貧困層向けの姥捨てビジネスとして、大阪府に安田病院というのがありましたね。

ま、大学病院の患者を実験に使いたがる体質を見ても、やりそうではあります。
医療批判本も花盛りですし、そういうものが流行ると言うことは、批判されるネタがあるということでしょう。
当人の承諾を得ない安楽死ビジネスが流行っていても驚きはしません。
遺族からろくすっぽコメントが取れないから、捜査が進展しないのではないです鐘。
その捜査をしてるのも、あのどうしようもない格好だけの神奈川県警ですからね。
Posted by 岩見浩造 at 2017年12月03日 18:39
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160526-OYTET50017/

安田病院事件についてはネット上の記録がほとんど見当たらないですが、当時の報道はほぼ上記の内容だったと思います。

御存知かもしれませんが、参考にどうぞ。
Posted by 岩見浩造 at 2017年12月04日 23:13
 渡哲也さんをネタにして誠に申し訳ないと謝っておきます。シモの話ですが前後の違いということで。

 こうゆう話は施術経験者でないとご理解頂けないので、書きべきことではなかったかと反省しています。

 でもやっぱり、アレの影響はなかったのかと、最後は其処に辿り着くんですよ。家内の乳がんも含めて。歳の所為だけにしたくないんですよ。

 今年の締め括りに、尿検査を依頼することにしています。これまで問題はありませんでしたが。
Posted by ハマの住人 at 2017年12月05日 18:11
被ばくの副作用を軽減するサプリです。
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Posted by DRNO at 2017年12月13日 21:55
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