熊本では、停電は市内のほぼ全域で1日もたたないうちに復旧しましたが、ガス、水道のライフラインが2週間程度喪失し、大変な思いをしました。その後も大なり、小なりの影響が続きます。食糧の調達には苦労しましたが、正直なところその2週間に何を食べていたのかは、記憶からなくなっています。ちょっとでも余裕がありましたら、食事を写真などにとって記録されておかれるとよいでしょう。
さて、今回の地震では北海道電力の供給全体がストップ(ブラックアウト)しました。火力発電所が止まったから当然だとか、原発を稼働させていなかったからだという論調が目立ちますが、これは北海道電力自身の能力が足りないために引き起こした人災です。以下、今回の停電についてまとめてみました。
以前電力会社には勤めておりましたが、強電の分野については社内研修と実地で学んだだけですので、もしかすると間違いがあるかもしれません。その点はお含み置きください。
電力の系統につながる発電機は、「同期」発電機と呼ばれます。つまり、同期しながら発電しているわけです。交流は、

のように電圧が時間とともに変化します。このような回路に交流発電機を追加(並列という)するには、当然位相(タイミング)を合わせる必要があります。つまり、電圧がピークになるときには、すべての発電機がピークになるように「同期」をとる必要があるわけです。発電所が稼働開始したときには、系統とはつながっていませんから、勝手に発電しています。それをタイミングを見て並列するわけです。並列する際には、下記のメーターを用います

タービンの回転数が上がれば、早くなり、回転数が下がれば遅くなります。この同期機がちょうど真ん中に来たときに「並列」すれば、発電機が系統につながります。この後の発電機は、自分で発電しているのですが、系統の一員として働きますので、系統の周波数が遅くなれば遅く回り(タービンの回転数が落ちる)、系統の周波数が早くなれば早く回るようになります。火力発電所の場合はタービンの定格回転数はある一定速度しか許容されていませんから、周波数がおちすぎると、設備を守るために勝手に発電をやめるように保護回路がついています。
では、この周波数は何かと言えば、系統全体の負荷によって決まります。周波数を自転車のペダルをこぐ回数と考えてみてください。一分間に50回こぐ必要があっても、平地であれば問題ないでしょう。しかし、上り坂になったらどうでしょうか。一気にペダルが重くなってしまって、普通にこいでいたら50回の回転数を維持することができなくなります。立ち上がるか、誰か別の人の手助けを借りる必要があるでしょう。もし、下り坂になったらどうでしょう。今度はペダルが軽くなりますから、同じ力でこいでいたら早くなりすぎますから、ブレーキをかけなければなりません。このコントロールをするのが電力の中央給電です。周波数が減少してくれば発電量を上げ(それか負荷を減らす=強制停電)、周波数が増加してくれば発電量を下げて、一定の周波数を保とうとするわけです。ご承知の通り電気をためることはできませんので、常に系統全体の需要に見合った発電をしつづけるわけです。つまり電力会社は受け身で発電していると考えることもできるでしょう。イメージとしては、こう考えればわかるかと思います。
以上の予備知識を持って今回の北海道電力のブラックアウトを考えてみます。
なぜ北海道全域で停電したか?
09月06日 09時03分
北海道電力によりますと、震度6強の地震があった午前3時すぎ、北海道全域では、310万キロワットの電力の需要があり、その電力を道内にあるおもに4か所の火力発電所で供給していました。
しかし地震の揺れにより、この4か所のうち厚真町にある苫東厚真火力発電所が停止し、165万キロワット分の電力供給が止まりました。
これによって急激に北海道内の電力の需給バランスが崩れ、運転を継続していたほか3か所の火力発電所も、故障を防ぐため自動的に停止しました。
このため北海道内全域の電力供給がストップし、295万戸すべてが停電したということです。
09月06日 09時03分
北海道電力によりますと、震度6強の地震があった午前3時すぎ、北海道全域では、310万キロワットの電力の需要があり、その電力を道内にあるおもに4か所の火力発電所で供給していました。
しかし地震の揺れにより、この4か所のうち厚真町にある苫東厚真火力発電所が停止し、165万キロワット分の電力供給が止まりました。
これによって急激に北海道内の電力の需給バランスが崩れ、運転を継続していたほか3か所の火力発電所も、故障を防ぐため自動的に停止しました。
このため北海道内全域の電力供給がストップし、295万戸すべてが停電したということです。
電力供給が止まれば力が落ちますから、上記で書いたように周波数が低下します。ある一定程度周波数が低下しますと、火力発電所のタービンの回転数が落ちてきますから(下図参照)設備保護のために発電を止めます。

ここまでは当然のことですが、発電電力量が低下すれば、それに見合って負荷外す対応法も考えられます。つまり、足りない電力量に見合うように、電力の供給を強制的に減らすわけです。下図は北海道電力の電力系統図です

北海道も東と西で大きく分けられるようですから、西の発電所が停止(今回)したならば、札幌、函館を強制的に停止させて、釧路、帯広、根室などの都市の電力は生かしておき、その間に設備の復旧、あるいは他電力からの融通を行えば、北海道全体がブラックアウトすることなどなかったはずです。その証拠に、地震直後の需要曲線があります。

これを見ますと、朝8時までは何とかある程度の電力供給ができていたのに、需要増加とともに北海道全体がブラックアウトしてしまったことがわかります。つまり、北海道電力は十分な時間もあったのにもかかわらず、なすすべもなくブラックアウトに身をゆだねてしまったわけです。この給電指令所の負荷遮断については、ほとんど誰も指摘しておらず、「原発がなかったから停電した」などというばかげた主張をしている人さえいます。現在の時期は北海道の電力負荷ピークである冬前ですから、できるだけ予備率を少なくして冬に備えます。仮に原発が稼働していたとしても予備率は今と変わらなかったはずです。また、原発は火力と違って柔軟に出力を落とすことなどできませんから、今回の地震ではむしろ電力供給過剰になる可能性があります。そうすれば、周波数が上昇してしまっておなじく、原発の強制停止、ブラックアウトとなってしまいます。また、この時期に泊原発付近で地震が起きてしまえば、泊原発の停止とともに北海道全体がブラックアウトという考えられない事態になってしまいます。今回は、たまたま泊原発では地震はたいしたことありませんでしたが、そういった事態も考えておく必要があります。このような大失態を引き起こした北海道電力に原発を稼働させろとは、いったい何を考えているのかと思います。
さて、負荷調整について述べている記事がありましたので、紹介しておきます。
対応後手、供給遮断間に合わず…ブラックアウト
2018年09月07日 21時42分
専門家は、今回のブラックアウトを避ける手段として、特定地域の電力供給を絞って強制的に停電させる方法があったと指摘する。東日本大震災で福島第一原発などが停止した際、東京電力は一部地域を停電にし、域内全域の発電所が停止するブラックアウトを防いだ。
電力会社は、発電する量と消費する量がおおむね一致するように調整している。需給バランスが崩れると、発電所の発電機が破損する恐れがある。東京電力は発電量の減少分に見合うように、強制的に停電させて電力需要を落としバランスを保った。
2018年09月07日 21時42分
専門家は、今回のブラックアウトを避ける手段として、特定地域の電力供給を絞って強制的に停電させる方法があったと指摘する。東日本大震災で福島第一原発などが停止した際、東京電力は一部地域を停電にし、域内全域の発電所が停止するブラックアウトを防いだ。
電力会社は、発電する量と消費する量がおおむね一致するように調整している。需給バランスが崩れると、発電所の発電機が破損する恐れがある。東京電力は発電量の減少分に見合うように、強制的に停電させて電力需要を落としバランスを保った。
まさしく、これですね。これが中央給電がすべき危機管理です。このような管理のできない北海道電力は、原発を運転するどころか、電力会社としての存在意義さえないと言わざるを得ません。
ちょうど、原発の並列場面の動画がありましたので、紹介します。
動画の初めに出てくるこの写真の真ん中が同期器です。反時計回りにぐるぐる回転しているのがおわかりでしょうか。

「並列します」・・といって同期器を運転員は見ており、ちょうど一番上に到達したときに「投入します」と発電機を系統につなぐ(カメラマンがどの機器が重要かわかっていないため、捜査員の手元しか撮影されていませんが)
最終的に(わかりにいくですが、同じメーターが真ん中を指して止まっていることがおわかりでしょう)

LEDメーターだとこんな感じです。位相がそろったときに、並列します
中央制御室は札幌でしょうから
遮断決断は出来ないような気がします
結果すべて遮断ですが。
電力網というのは生き物みたいですね
電力会社としての必要な要件を失った集団ではと…大切な事を忘れた組織の明日は無し♪
電力会社に勤めたことがあるとのことですが事務系ですか?
まずは第3種電気主任技術者レベルの知識を身につけた上でブログを書かれたほうが良いのではないでしょうか…
一般人は信じてしまうでしょうから
過去問はどれも10~15年分はやったのですがね。
現場で機械を扱った時に印象に残った機器と、教科書的な学問とのギャップはどこでもあるので気にはしませんがね。
もっとも、下記の平成29年では出題されたようです。「電力」かと思っていたら「機械」で出るんですね。
https://denken-ou.com/kikaih29-4/
先回りして言っときますが、どうして間違っていると思ったのか、具体的に指摘しない人物のコメントって一般には価値がないと思います。むしろ日本語能力の欠落か陰険と思われて終わりでしょう。
技術系質問サイトにも昔からこういう手合いがよくいて呆れていましたね。もっとも、2chの資格板だけは答え合わせと解説が目的なので、そんな態度を取る奴は相手にされませんが。
で、ネットでよく話題になってる泊再稼働の話ですが、それこそ電力系統を学んだ人間が聞いたら小野氏と同じようなコメントをして笑い飛ばすのではないでしょうかね。そういう背景を無視して小野氏の前で資格名振り回しても、お里が知れる訳です。「泊再稼働すべきだった」が間違いなので触れたくなく、些末な突っ込みで誤魔化そうとしてるのが見え見えだから。
電気の史料館は原発のサービスホールと違って解説が非常に充実して案内役の東電OBが付いて回ってくれるので、何度も行ったのですよ。お土産コーナーは電気の参考書が揃い踏み。
電験はそれで取れたようなものです。
原発事故後休館してますが、震災前から社員教育にも使っていたと思しき施設でもあります。東電以外の例えば電中研か文科省に移管して原発の展示を入れ替えれば今でも十分通用する内容。で、ここ以外に強電の解説をする博物館は知らないですね。
一言、対策って何処に発電所を建てるのですか?
まとまった土地を簡単に電力会社が手に入れられるかどうか
考えて見てはいかがでしょうか、その資金は何処から出るの?
当然、立地調査、土地の買収など時間がかかるでしょう。
中央集権の全体主義国家ではあるまいし物わかりの悪い人が多いんですね。
理由は周波数だけでなくもう一つあります
何故シャットダウンするかその理由やどういうことになるかが解らないと
シャットダウンの理由はカルフォルニアの2012年大停電の記事を見れば簡単に解ります。
https://www.washingtonpost.com/local/trafficandcommuting/aging-power-grid-on-overload-as-us-demands-more-electricity/2012/08/01/gJQAB5LDQX_story.html?noredirect=on
関電も大停電ですから
負荷が減って
原発 2箇所ぐらい
緊急停止かも知れませんね
停電は呼吸器の人1人
発電機室内運用 2人
以上は亡くなられました
北海道電力も被災した苫東厚真発電所と同等の出力のコンバインドサイクルを建設中
こちらは来年の2月から1号機が営業開始
石狩湾新港発電所の概要
http://www.hepco.co.jp/energy/fire_power/ishikari_ps/outline.html
>原動力の種類
ガスタービンおよび汽力(コンバインドサイクル発電方式)
>出力 合計170.82万kW
1号機56.94万kW
2号機56.94万kW
3号機56.94万kW
>営業運転開始(予定)
1号機 2019年2月
2号機 2026年12月
3号機 2030年12月
私は運転員でないので自分では操作しませんが、並列操作は運転員の後ろでいつも見てます。
高浜原発4号機の動画では、人が同期メーターを見ながらタイミングを合わせ、回転数と位相を合わせ、人がスイッチを操作して並列してます。
LEDメーターの動画では、40秒過ぎにスイッチを操作してAUTOに入れてます。AUTOに入れた後は、機械が自動で回転数と位相を合わせ並列してくれます。1:00過ぎにLEDが赤色から緑色に変わります。その瞬間に並列してます。
最近の発電機は自動同期投入装置がついてます。
例えば
http://www.daiichi-ele.co.jp/product/product_0018.html
LEDメーターの動画とよく似てますね。
来月試運転 >運転開始
57万kw3台
停電は人を殺す
産業家庭に巨大損失
道民 箱詰め 観光客帰れない
関電未だ7000戸停電
1週間
和歌山が酷かった 未だ5000戸
熊本地震のとき私も当時ほぼ似た状況でした。北海道の方々、頑張ってください。
気になるのは、政治的に改憲(98・99条に緊急事態条項など新設)に利用するつもりでしょうか。でも日本は、災害時でも、改憲してまでの緊急事態条項は必要ないと、災害時法規にくわしい弁護士さんもおっしゃってました。過去の二・二六事件の後の戒厳令と同様、戦争への道として使われそうで怖いです。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/279662
2016年4月熊本大地震。熊本県からの支援要請を拒否し、激甚災害指定を遅らせたりする始末だったとする記事も。…熊本地震を、改憲の口実にするためにわざと指定を遅らせたのでしょうか。
http://news.livedoor.com/article/detail/11422702/
> 正直なところその2週間に何を食べていたのかは、記憶からなくなっています。
私も食べ物に困りまして冷凍品やお菓子で細々と。。お店も食品は売り切れて何も売っていませんでした。やはり輸入品とかではなく、地産地消のシステムを確立していかないと大変かもと痛感しました。コンビニの棚にも食料品・日用品は殆ど何もなく。水道も止まりトイレも洗濯もできず、ご飯も炊けずフロにも入れませんでした。12日後あたりに水道回復しても泥水がさらに1ヶ月近く。仕方なく泥水でシャワーや洗濯です。でもさすがに泥水ではご飯が炊けませんので、他県の行政から派遣されている水配給タンク車のところまで自転車で行って2Lペットボトルを持って並んでました(たしか一人一日4L、つまり2本までだったかな)。再開した銭湯もずっと行列だったようです。
もし将来、佐賀の玄海原発や、鹿児島の川内(せんだい)原発ほか、韓国の多くの原発も事故った場合、熊本も風向き的にモロかもしれません。。(たしか夏は南西、冬は北西の向き)。
> 韓国の原発で惨事 「西日本の大半避難」の推定 (最大2830万人が要避難)
http://www.asahi.com/articles/ASK36451LK36PLZU002.html
310万KWの発電中に165万KW分の電力がストップすれば通常の対策ではブラックアウトの可能性が高く、緊急時の対策が必要で中央制御室は電力重要のバランスをとる(特定地域の電力供給を絞って強制的に停止)、次に供給電源の確保で本州側からの供給(60万KW)、次に水力の始動、水力の起動は発電設備ではもっとも早く電力を供給でき、中央制御室から遠隔操作できる(現在の水力発電所はほとんど無人)。
ただし電力重要にあわせてもっとも電力需要が少ない時期にあわせてメンテナンスをしているのでどれだけの供給量があったのか不明だが北海道電力は110万kw位の総発電量があったので、80万KW位は供給できると思うが問題がある。
遠隔通信網は支障がなかったと思う(通信方法は。光ケ−ブル、マイクロ、通信線ケ−ブルの3ル−ト位を確保しているし通信機器も蓄電池で半日以上稼働する)、しかし導水ゲ−トを上げる電力が喪失した可能性がある。
北海道電力の電力供給量マップを見ると水力の多くは南東側に多く、震源地に変電所の要があり多くの水力発電所が始動できなかった可能性がある、さらに電力供給迂回ル−トもない(広大な北海道の特性で本州なら迂回ル−トは3系統ぐらいある)
後は北側の水力発電所を始動させる、次に始動させるのは水力の次に始動が早いガス発電(始動時間は40分位)ところが北海道電力はほとんどガス発電がない後は石炭火力で始動時間は最短4時間位で始動させ、供給量に応じて給電の対策さえ間違えなければブラックアウトは防げた。
院長が指摘する北海道電力のブラックアウトは人災だの指摘は当然で、北海道電力の構造的な脆弱性体質で危機管理に問題が露呈した。
泊原発が稼働していればブラックアウトしなかったの論調はピントズレで泊原発を柏原発と間違えるレベルだと思う。
その小規模な地震が収束したら、いよいよ千葉沖で大地震が発生するとも言われております。
今回の北海道のケースを引き合いに出して、将来第二次関東大震災ともいえる大地震が発生し、関東地方の発電所が壊滅的な損害を被った時に備えて、柏崎刈羽原発を今から早急に再稼働しせておくべきだ、という論調が今後出てきそうな気がしますね。
本来東京を原発事故から守るために裏日本の僻地に原発を設置したのが、かえって関東が壊滅的被害を受けても、電力源は確保されるという結果になるのですから。
・100ミリシーベルト以下では健康被害の報告はない
・福島はチェルノブイリとは比較にならないほど放射性物質の放出が少ない
・チェルノブイリは原子炉が爆発したけど福島で爆発したのは原子炉じゃなくてその回り
などと言っています
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=42111
フェースブックにシェアしました。ありがとうございます。
まぁ今後は他の電力会社もこれ幸いとばかりに、同じような事を始めるでしょうね。
原発労働者が白血病になったときに、労災が認定される被曝の基準が5ミリシーベルト以上であるということを知ると、この意見は崩壊しますね。
日本政府が、日本の厚生労働省が、100ミリシーベルトよりもはるかに少ない被曝線量で、この労働者は被曝によって白血病になりましたと認定しているんですからね。
http://hokinet.jp/22.html
いつまでもデマを撒き散らしているようなものですよ?
九州出身だったのは皆さんご存知でしょうか?
HTLV-1というウイルスで風土病の可能性が有ります、だから被曝由来とは誰も言って無いね
もう一つ
送電コストを無視すれば批判も当然でしょうね