その後、中国は10日間で1000床の病院を2棟も建設し、体育館の中に軽症用の簡易入院ベッドを作成し、1000万都市を封鎖するとともにPCR検査をごりごりと勧めていたのは皆様ご承知の通り。この状況を見ていると、さすがに日本ではここまでのことはできないかも知れないと不安になってきました。
いざ日本で流行が始まると、発熱患者のPCR検査は除外診断がつかないときのみ。感染力が強力で院内感染の恐れもあるのに、採血、レントゲン、その他あらゆる検査が終わってからでないとやってもらえません。2月までは保険収載もされていませんでしたので、保健所で検査をするしかない状況だったのはまだ、わかりました。3月6日にPCR検査が保険収載されて、これで私のところでもできるのではないか、はたしてどういった手順でやろうかとシミュレーションをしていたものです。
ところが、実際に保険収載されても、当院が契約している検査会社は、検体を受け付けてくれませんでした。感染のリスクがあって・・・と言う説明にやや釈然としないまま、日付のみが過ぎていきます。感染が爆発状況になっても相変わらず、この状態は変化しません。保健所がトリアージを続けて、一般医療機関からの検査はできない状況が続いています(それは、いまも)。
あらためて、保険収載の時の文書を眺めてみて、なにが起きているのかようやくわかりました。検査センターが怠慢なわけではなく、厚労省が一般医療機関でのPCR保険検査を認めていないのです。
新型コロナウイルス核酸検出の保険適用に伴う行政検査の取扱いについて
感染症指定医療機関、それ以外の医療機関で感染症法第19条又は第20条に基づき入院患者が入院している医療機関、帰国者・接触者外来及び帰国者・接触者外来と同様の機能を有する医療機関として都道府県等が認めた医療機関と都道府県、保健所設置市又は特別区において、感染症法第15条に基づく調査(SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)核酸検出にかかる診療報酬の算定要件に該当する場合に限る。)に関する委託契約を締結する。なお、契約が3月6日より後となった場合であっても、3月6日以降行った診療分から適用する。
健感発0304第5号令和2年3月4日
厚生労働省健康局結核感染症課長
厚生労働省健康局結核感染症課長
感染症指定医療機関、それ以外の医療機関で感染症法第19条又は第20条に基づき入院患者が入院している医療機関、帰国者・接触者外来及び帰国者・接触者外来と同様の機能を有する医療機関として都道府県等が認めた医療機関と都道府県、保健所設置市又は特別区において、感染症法第15条に基づく調査(SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)核酸検出にかかる診療報酬の算定要件に該当する場合に限る。)に関する委託契約を締結する。なお、契約が3月6日より後となった場合であっても、3月6日以降行った診療分から適用する。
つまり、保険収載はされたものの、「感染症指定医療機関」、およびそれに準ずる医療機関以外の検査は受け付けないわけです。このため、当院では、3月のはじめから次のような張り紙を入り口に掲示

5月11日には、検査センターより、事実上検体は受け付けられないとの通知も来ました

したがいまして、この報道
唾液でPCR検査実施、保険適用へ 厚労省、安全・迅速化に期待
2020.6.2 10:39
加藤勝信厚生労働相は2日の閣議後記者会見で、唾液を検体に使って新型コロナウイルスの感染を調べるPCR検査の実施を認めると明らかにした。症状が出てから9日以内の人が対象。現在、主に行われている鼻の奥の粘液を綿棒で取る方法よりも、安全で簡単に検体を採取できるのが利点。より多くの人を迅速で効率的に検査できるようになると期待される。
これならば、一般医療機関でもできるはずですが、上記で述べたとおり、やはり無理でしょう。その理由は、おそらく、一般医療機関にPCR検査などと言う「高性能」な検査を開放するつもりはないという国の方針と、それを認めてしまった医師会にあるのでしょう。2020.6.2 10:39
加藤勝信厚生労働相は2日の閣議後記者会見で、唾液を検体に使って新型コロナウイルスの感染を調べるPCR検査の実施を認めると明らかにした。症状が出てから9日以内の人が対象。現在、主に行われている鼻の奥の粘液を綿棒で取る方法よりも、安全で簡単に検体を採取できるのが利点。より多くの人を迅速で効率的に検査できるようになると期待される。
感染を極度に恐れて、コロナの前線から早々に離脱した医療機関は、どこも受診控えによる患者減少で青息吐息。発熱患者をお断りせざるを得ない状況になっていますから、患者からの支持も得られません。結局、自分で自分の首を絞めているのですから、話になりません。
地方のあらゆるところまで張り巡らされている医療機関を活用せずに、このコロナ肺炎に勝てるとも思えませんが、残念ながら開業医自体も、このコロナ肺炎の怖さを理解出来ているとも思えない状況です。いまだかつてなかったような都市封鎖まで行われているにもかかわらず、強制入院措置を伴う「第二種感染症」を外さないとなにもできないとか、なにを言っているのかさっぱりわからない主張が一定程度支持を集めているのです。
第二種に指定されている→休業しないといけない→診察出来ない
と言うロジックです。感染するとある一定程度の重症化が見込まれ、かつ感染力が強いため、第二種感染症に指定されているという本質的な理由さえ理解できているか、残念ながら怪しいものです。診察の際のマスクも不要だという意見も見られました。あれほどマスクをいやがったヨーロッパの人たちが、しぶしぶマスクをつけているのを知っているにもかかわらず。
たぶん、今まで流行したことがない疾患だという認識自体がないのです。今まで勉強した範囲の疾病ですべてを考えているからこそ、感染症専門医たちがこわくない、たいしたことないと未だに主張しているのでしょう。よくいえば大いなる楽観主義、普通に言えば現状把握出来ないバカなのです。
一般の人達が批判しても詮方無い事情かもしれませんが、もしかしたら自分はやばいのかな?と思っている人達にとっては納得できない事柄ですね。
⇒ 新型コロナウイルスは、病原体としては、四種病原体等に指定されている(下記@の3枚目)のに、この厳しい縛りは全くチグハグに感じられます。この@厚労省資料は「案」ですが、その後3月26日に、そのとおりに閣議決定されているとの報道です(下記A)。
@ https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000615582.pdf
A https://mf.jiho.jp/article/205930
⇒ おそれいります。「第二種感染症」のくだりですが、正しくは「二類感染症」だと思います。さらに細かくは、新型コロナ感染症は「指定感染症」ですので、感染症法で定める一類感染症と二類感染症についての様々な措置が、政令によって準用される、ということになるかと(下の@とA)。
@ https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000615582.pdf
A https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000589748.pdf