2020年06月11日

抗体検査は個人にとっては何の意味も持たない。集団感染の状況を大雑把に把握する目的

 抗体検査は、何の意味も持たない、ほとんど人体実験のレベルと以前より指摘していました。
 抗体陽性でも、PCR陽性=感染させる可能性がある のは、巨人で証明されました。
もちろん海外でも報告例があります。


また、抗体陰性でもPCR陽性になるのは原理的には明らかですが、それもまた「証明」されました。
“パルコ従業員”の20代女性が新型コロナ感染…抗体検査で陰性もその後PCRで陽性に 10歳未満の男の子も感染
06月10日 19:38 東海テレビ
20代の女性は中区の「名古屋パルコ」の従業員で、名古屋パルコによりますと、女性は6月3日に発熱などの症状が出たため、抗体検査を受けましたが陰性でした。

女性は4日は仕事を休みましたが、熱が下がったため5日から7日まで勤務していたということです。

 しかし、7日に味覚や嗅覚にも異常が出たため、9日に医療機関を受診し、PCR検査の結果、10日に陽性と判定されました。
なぜ、症状が出ているのにさきに抗体検査を実施したのか、こんなことをするのは日本ぐらいですね。最初からPCR検査をしていれば、6月3日から隔離ができ、その後の周囲への感染は抑えられたはずです。比較的検査を受けやすい名古屋でもこの状況だとすれば、全くもって情けない話です。


抗体とPCR検査については、下記グラフがわかりやすい。
2020061101.png
 基本的にはこの通りですが、中国の事例では、

5/15 PCR陰性,IgM/IgG抗体陽性 → 5/16 PCR陽性

PCR陰性で念のため抗体を調べるのは理にかなっていますが、最初に抗体を調べて、その後にPCR検査をするのは全くもって意味がありません。これは、厚労省をトップとする日本の公的医療を牛耳っているグループが、なにがなんでも初期検査としてはPCR検査を認めないというガラパゴス医療に固執しているためです。

さて、抗体検査に何の意味があるかと言えば、それは今までの感染がどうなっているかを調べるため。まずまず、まとまっている記事がありましたので、紹介します。

コロナ抗体検査の社員全員への実施が「無意味」な2つの理由
2020.6.10 4:45 峰 宗太郎 ライフ・社会 峰 宗太郎
社員全員への抗体検査は
「無意味」である理由

――現在、全社員に抗体検査を受けさせる企業もある。感染予防などの観点から、検査の実施は望ましいか。

 抗体検査を一般企業が行うことは、3文字でいえば、無意味だ。

 抗体検査は用途が限定される。例えば、疫学調査には望ましいツールで、人口の何%が感染したか過去の状況を示すにはふさわしい。また、コロナ感染を疑われる状態の人がPCR検査で陰性だった際、コロナ感染だと判明させる補完の目的で使うこともできる。

 だが、抗体検査では、どの時点での感染であるかが全くわからない。抗体検査で陽性の場合、改めてPCR検査が必要になる。陰性なら感染していない証明にはなりえるが、この瞬間からまた感染の可能性がある。つまり、結果を何にも生かせないことから、企業が実施する意味はない。

最初の、

「コロナ感染を疑われる状態の人がPCR検査で陰性だった際、コロナ感染だと判明させる補完の目的で使う」

は、中国の例ですね。さすが、中国では感染症をよくわかっている人物がトップにいることが、伝わってきます。

陰性なら感染していない証明にはなりえる

は、大きな間違い。上記、パルコの従業員で見たとおり、発熱直後に調べても抗体は陽性にはなりません。先ほど紹介したグラフによれば少なくとも感染7日間は陽性とはなりません。だから、全く意味がない。その意味のない検査をソフトバンクグループがやってくれました。検査結果はこちらで紹介されています。
[東京 9日 ロイター] - ソフトバンクグループ(9984.T)は9日、同社の従業員や医療機関の関係者を中心とする4万人以上を対象に新型コロナウイルスの抗体検査を実施した結果、陽性率が0.43%だったとの速報値を発表した。任意提出のデータに基づいており、無作為抽出とは前提が異なる。

4万4066件を対象に検査を実施し、陽性だったのは191件だった。検査期間は5月12日─6月8日。検査対象のうち5850件が医療関係者で、陽性率は1.79%。その他の3万8216件の陽性率は0.23%だった。
次のツイートがまとまっています。


その他のデータも紹介します。

東京
<新型コロナ>抗体検査5.9%陽性 市中感染の可能性 都内の希望者200人調査2020年4月30日

厚生労働省、東京の献血者の検体で抗体検査 0.6%陽性2020年5月15日

第二回東京の500例測定は陽性者4名、前回と合わせ千例で0.7%2020年6月4日 19時30分

次は、慶応入院者の実数
入院前PCR検査の陽性件数について 慶応大学
[期間]   [人数 人/人中] 
4月 6日-12日  0/97   (0%)
4月13日-19日  5/67  (7.46%) ※
4月20日-26日  2/60  (3.33%) 
4月27日-30日  0/34  (0%)


大阪
付属病院に外来受診の1%に新型コロナ抗体 大阪市立大の研究チームが発表2020年5月1日 19時1分

神戸
外来患者の2.7%に新型コロナの抗体 神戸・中央市民病院が1000人調査
毎日新聞2020年5月3日

 ざっと見ると、日本の感染率は数%だとはいえるでしょう。これは集団免疫が獲得されると考えられる60%以上を遙かに下回ります。

次に各国の比較


モスクワ
モスクワで5万人に抗体検査、市民の12.5%が感染2020.05.24

NYも多いですが、とりわけ多いのが以前問題になった原子力空母セオドア・ルーズベルト
この原子力空母は「集団免疫」を獲得している。と言ってもよいかも知れません。

 抗体検査は手段を見るときには非常によい指標です。抗体陽性が数年間続くとすれば、陽性者の割合で人口のどれぐらいが感染したかを判別することができるからです。しかし、検査を受けた個人には何のメリットもありません。

抗体陰性であってもPCR陽性
抗体陽性であってもPCR陽性

つまり、個人の診断、休業の目安には全くならないのです。実施する意味があるとすれば、感染が強く疑われる患者のPCR陰性の場合は、抗体検査をする価値があります。(中国の例)

 そして、日本では抗体検査のことを全く理解されていないので、超一流企業とされる銀行で、馬鹿げた規制を始める始末
SBIが会見前、記者に異例の抗体検査 「現在の感染調べるものではない」疑問の声も
6/9(火) 9:45配信西日本新聞
 ネット金融大手のSBIホールディングス(東京)などは8日に東京都内で開いた記者会見で、新型コロナウイルスの抗体検査を受けることを記者の入場条件にした。記者に消毒や検温を求める企業や省庁はあるが、採血し感染歴を調べる抗体検査は異例。「感染症拡大の防止」が目的で、抗体があることを示す陽性反応が出れば入場を断る予定だったという。専門家からは対応の有効性や妥当性を疑問視する声も上がっている。
 もちろん、産業医と相談して決定したのでしょう。この産業医は抗原抗体反応について、素人以下の知識しか持ち合わせていないわけです。抗体陽性者を入室させないとは、意味が全くわかりません。もし、これが入り口で「抗原」検査をしているのならば、(感度は低いのですが)理解出来ます。感度の低い抗原検査で陽性になるような人を会見場に入れてしまったら、集団感染のリスクになるからです。なぜ、こんなお粗末な対応を平気で「大企業」と呼ばれる会社がとってしまうのか。
 日本の医療業界があまりにもお粗末なことを天下の下にさらしてしまいました。個人個人の健康には全く興味がなく、集団全体でどうかしか考えない医療界、厚労省。個人、個人を大事にしない国家が繁栄するはずもありませんね。

現時点での市中感染率、無症候はどのくらいか2020年04月26日
「抗体検査」が無意味であることを天下に示した巨人2020年06月04日

  
posted by いんちょう at 17:26| Comment(2) | Covid-19
この記事へのコメント
出たばかりの”NONUKES voice No.24”(『紙の爆弾』2020年7月号増刊)に小野先生の寄稿があります:
「新型コロナ肺炎は現代版バベルの塔だ」pp.58-65.

同号には、郷里の川内で原発反対運動を推進されてゐる向原祥隆氏(南方新社代表、奄美の動植物に関する良書とか鹿児島の歴史書等の出版)も報告されてをり感無量です(「コロナは二三年で終わるだろう。だが、川内の直面する問題は、未来永劫」pp.140-141)。
Posted by 渡邉 建 at 2020年06月12日 11:05
ご苦労様です
国会で280床民間病院
コロナ対応に成ったら
月¥7000万円の赤字とか
目一杯 補填がまず先

手を上げた開業医にPSSのPCR検査装置を
老人入院施設にも
9割補助で導入
マスクより安い

http://www.rokusaisha.com/kikan.php?group=ichi&bookid=000624

買いに行きます
Posted by 農家 at 2020年06月12日 11:30
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