2020年06月13日

コロナ患者が出た熊本地域医療センターの対応

 3ヶ月に1回程度の割合で、熊本地域医療センターの夜間救急に当番医として出ています。前回の出動は、4月7日(火)でした。その日の外来入り口
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おわかりの通り、完全防御です。

発熱患者は、なんとしても診ないぞ。

という意思表示がひしひしと伝わってくると思いませんか?

すでにコロナ疑いの発熱患者がきた場合には、当番医ではなく常勤医が別口から誘導して対応 という形になっていました。当然来院者数は極端に少なく、2人ほど疑いがあると言うことで常勤医に対応してもらったような記憶があります。
そして、4日後に事件が・・・

そのような状況にもかかわらず、この地域医療センターで院内感染が起きてしまいました。

「陰性」訴える患者 隔離遅れた病院 難しいコロナ対応 
6/9(火) 17:07配信熊本日日新聞

 急患で受け入れた患者の新型コロナウイルス感染が判明し、後に看護師など計4人が院内感染した熊本地域医療センター(熊本市中央区)。全国で院内感染が相次ぐ中、当時の病院の対応や経緯を振り返ると、コロナ対策の難しさが浮き彫りになった。

 「気管支ぜんそくの発作で息苦しい」。土曜日の4月11日午後4時56分、救急患者に対応する「休日夜間急患センター」に事前連絡なしで70代男性が駆け込んできた。医師の聴診ではぜんそく特有の音は聞こえず、インフルエンザ検査の結果も陰性だった。

 コンピューター断層撮影(CT)検査をすると、両肺にはウイルス性肺炎に多いすりガラス状の影。男性は「(新型コロナの)PCR検査を2回受けて陰性だった」と話していたが、医師は「逆に疑わしい」とすぐに隔離室へ移して保健所に連絡。PCR検査の結果、午後9時に陽性と判明した。
 何気なく読み飛ばしてましたが、この時点でPCR検査を簡単に受けられるとは思えませんから、医師が疑わしいと考えたのでしょう。医師という身分は明かしているでしょうから、見過ごせない発言です。

この70歳代の男性は、熊本市20人目の症例
20例目(4月11日確認)

【概要】
1 年齢・性別  70歳代 男性
2 職業     医師
3 居住地    熊本市東区
4 症状・経過(本人からの聞き取り)
 4月10日 呼吸苦あり。
 4月11日 医療機関Aを受診し検体を採取。
      19:11 環境総合センターにて受付。
      20:50 検査を実施、リアルタイムPCR陽性を確認。
      21:00 国への報告、確定。
 5月9日  死亡
 医師が自分の症状をはっきりと伝えず、受診。しかしながら、対応は早く、その日のうちに陽性が確認されています。患者検体を地域医療センターでとったようです。

この患者はクラスターを発生してしまったことが熊本市のホームページからわかります。
21例目(4月12日確認)

【概要】
1 年齢・性別  70歳代 女性(20例目の配偶者)
2 職業     無職
3 居住地    熊本市東区
4 症状・経過(本人からの聞き取り)
 4月8日  咽頭痛あり
 4月9日  朝から熱っぽさを感じる。(その後熱が続いた。)
 4月12日 同居家族(20例目)の感染を受け保健所にて検体を採取。
      9:55 環境総合センターにて受付。
      13:30 検査を実施、リアルタイムPCR陽性を確認。

      13:39 国への報告、確定。
 5月14日 退院
振り返ると早さがわかりますね。4月11日は土曜日、4月12日は日曜日であるにもかかわらず、保健所で検体採取し、その日のうちに陽性、隔離

22例目(4月13日確認)
【概要】
1 年齢・性別  20歳代 女性(20例目の接触者)
2 職業     飲食店従業員
3 居住地    熊本市西区
4 症状・経過(本人からの聞き取り)
 4月12日 帰国者・接触者相談センターへ相談。
 4月13日 保健所にて検体を採取。
      10:25 環境総合センターにて受付。
      14:40 検査を実施、リアルタイムPCR陽性を確認。
      15:23 国への報告、確定。
 4月29日 退院
4月13日(月)月には感染確認。職業から、いわゆる夜の街関連ではないでしょうか。それにしても対応は早い

23例目(4月14日確認)

【概要】
1 年齢・性別  40歳代 男性(20例目及び22例目の接触者)
2 職業     飲食店従業員
3 居住地    熊本市中央区
4 症状・経過(本人からの聞き取り)
 4月14日 保健所にて検体を採取。
      11:40 環境総合センターにて受付。
      15:20 検査を実施、リアルタイムPCR陽性を確認。
      15:58 国への報告、確定。
 5月14日 退院
早いですね。これも22例目の1日後

24例目(4月14日確認)

【概要】
1 年齢・性別  30歳代 男性(22例目の接触者)
2 職業     会社員
3 居住地    熊本市中央区
4 症状・経過(本人からの聞き取り)
 4月14日 保健所にて検体を採取。
      11:40 環境総合センターにて受付。
      15:20 検査を実施、リアルタイムPCR陽性を確認。
      15:58 国への報告、確定。
 5月21日 退院
これも早いですね。

28例目(4月18日確認)

【概要】
1 年齢・性別  40歳代 女性(20例目の接触者)
2 職業     看護師
3 居住地    熊本市南区
4 検査機関   熊本市環境総合センター
5 症状・経過(本人からの聞き取り)
 4月11日 勤務先の救急外来で、20例目陽性者に対応。(翌12日まで当直)
 4月13日、14日 休み
 4月15日 出勤
 4月16日 出勤(15:15で帰宅)
 4月17日 出勤するも体調不良により11:00で帰宅。
      夕方になって発熱症状が出たため、新型コロナ相談センターに相談。
 4月18日 帰国者・接触者外来を受診。検体を採取。
      12:23 環境総合センターにて受付。
      17:30 検査を実施、リアルタイムPCR陽性を確認。
      17:40 国への報告、確定。
 5月29日 退院
この女性が、1例目の女性看護師でしょう。この発症で、病院がしばらく閉鎖されました。

32例目(4月19日確認)

【概要】
1 年齢・性別  30歳代 女性(28例目の同僚)
2 職業     看護師
3 居住地    熊本市中央区
4 検査機関   熊本市環境総合センター
5 症状・経過(本人からの聞き取り)
 4月18日 咳症状あり。
 4月19日 頭痛、嘔吐症状あり。
      職場同僚の感染を受け保健所にて検体を採取。
      11:51 環境総合センターにて受付。
      15:30 検査を実施、リアルタイムPCR陽性を確認。
      15:57 国への報告、確定。
 5月24日 退院
看護師、2例目。接触から一週間で症状が出ていることがわかります。

36例目(4月23日確認)

【概要】
1 年齢・性別  50歳代 女性
2 職業     臨床検査技師
3 居住地    熊本市北区
4 検査機関   熊本市環境総合センター
5 症状・経過(本人からの聞き取り)
 4月19日 発熱・咳症状・咽頭痛あり。
 4月23日 発熱症状が続くため、熊本地域医療センターにて検体を採取。
      13:36 環境総合センターにて受付。
      17:00 検査を実施、リアルタイムPCR陽性を確認。
      17:13 国への報告、確定。
 5月12日 退院
検査技師1例目

40例目(5月8日確認)

【概要】
1 年齢・性別  20歳代 男性
2 職業     臨床検査技師
3 居住地    熊本市東区
4 検査機関   熊本市環境総合センター
5 症状・経過(本人からの聞き取り)
 4月24日 熊本地域医療センターを受診して検体を採取。陰性を確認。
 5月 3日〜4日 発熱症状あり。
 5月 5日 市内の医療機関Aを受診。
 5月 8日 熊本地域医療センターを受診して検体を採取。
      17:50 環境総合センターにて受付。
      20:30 検査を実施、リアルタイムPCR陽性を確認。
      20:35 国への報告、確定。

 5月16日 退院
 36例目からの感染だと思われます。36例目の発症がわかったときに、PCR`検査は済ませていますから、マズ間違いありません。ここで食い止められたのがよかったと思われます。2回目閉鎖の原因となった患者です。検査の経緯が新聞記事と少しあわないきがします。

40代女性看護師の感染が判明したのは1週間後の同18日。女性は隔離室などで男性の看護に当たったが、マスクにフェースシールド、ガウン、手袋と完全防備。マスクと手袋のみで男性からインフルエンザの検体を採取し「中リスク」と判断された看護師もいる中、感染した看護師は「低リスク」だった。
この方は28例目だと思われますが、30歳代の女性29例目のことは記事では触れられていません。

同センターは18日から一般外来や急患センターの受け入れを休止。5月7日に再開したが、翌8日に4人目となる20代男性臨床検査技師の感染が判明し、再び休止を余儀なくされた。しかし、これが院内感染のさらなる拡大を防ぐことになる。

 男性検査技師は3人目の感染者と濃厚接触したとして、2週間自宅待機。大型連休中に発熱したが、7日に出勤した。発熱が自宅待機期間の終了後だったため、PCR検査の必要はないとされるケースだったが、杉田裕樹院長が「念のために」と民間会社で検査を受けさせたところ、陽性だった。
民間会社で受けさせたとあり、詳細が不明だったため、病院に問い合わせました。

(回答)
・地域医療センターは「帰国者、接触者外来」機能がある
・このため、自らの判断で民間会社にPCR検査を出しても、保険が認められ、実質無料で検査出来る

とのことでした。PCRを保健所ではなく、医療機関で行うには大変厳しい縛りがあるのですが、「帰国者、接触者外来」があれば、保険を使えるのは以前ご紹介したとおり

 また、風邪の症状がある職員は自宅待機して72時間後にPCR検査し、陰性であってもさらに8日間休むよう勤務ルールを厳格化。藤井医師が「厳しすぎて勤務態勢が逼迫[ひっぱく]している」とこぼすほどの念の入れようだ。
これは、まさにソノ通りですが、72時間後にPCR検査ができる体制が日本では全く整っていません。この手法は、この病院が「接触者外来」機能を持っているからこそ、実現出来る世界標準手法なのです。一般の病院、クリニック、ましてや、一般企業では絵に描いた餅。
 全くおかしな話です。

 この70代男性は、自分も含めて結局8名に感染を拡大(20代女性が発端かも知れませんが)させてしまいました。新型コロナの感染力のすさまじさを改めて実感させられました。

なぜ、日本のPCR検査は全く増えないのか。2020年06月03日

  
posted by いんちょう at 22:26| Comment(2) | Covid-19
この記事へのコメント
凄い粘った記録お疲れ様です。

私の仕事関係で死んだ人、体調不良で早退した日から、3日後にPCR陽性判定だったのです。検査は3日後でしょうが、もし23例目、24例目位早ければ一命取り留めた可能性があると思います。

話は変わり、毎週テレビタックルでデマカセ垂れ流してる木村盛世、今日の放送でも「医療キャパに余裕がある夏の内に感染しておく方がお得」「若い人は重症化する率が低い」とまたやっていましたが、あの出演陣からすら白い目で見られていたのが印象的でしたね。

最後、豊田真由子にすら、欧米みたいに大量に死んだらどうなるか、同居している中高年にかかったらと想像するのが普通だと世供されてました。

抗体検査一択の731野郎ということでしょう。多分、国の中枢にもああいうのがいるんでしょう。
Posted by 岩見浩造 at 2020年06月14日 12:40
お忙しい中、いつもありがとうございます。

医療に携わる方々が、常に感染危険の中、患者のため診療下さることがよく分かります。
罹患者かどうか不明な患者を用心をしながらの診療は、常に緊張され大変お疲れになることでしょう。国民として、感謝申し上げます。
感染の心配が少しでも無くなる様、PCR検査拡充となります様に

私の調べた6月日本の検査数です(ホプキンス大データーより)
3日3814→4日3894→5日3356→6日3829→7日3985→
8日3036→9日2365→10日4205→11日3622→12日3084→13日3477→14日3954

世界の死者数
2位ブラジル(イギリスを抜く)
7位メキシコ ☆ここまでが1万人以上
9位インド(ドイツを抜く)
上記の他、ロシア・ペルー・チリが大幅に増加しています。
Posted by ぼんぼ at 2020年06月14日 15:25
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