2011年05月08日

福島の思い出(8)・放射線管理区域へ

 サーベランス終了後は、中操(ちゅうそう)にもどってチェックシートにチェックをします。

 運転員のパトロール時には、
・五感(変なにおいがしていないか、異常音はないか、煙、蒸気などが漏れていないか)
・振動音を聞くための、ステンレス棒(回転部分に当てて、異音が出ていないかを直接聞く)
・懐中電灯
位しか使用しません。

 管理区域に入るときにはパンツ一枚になって、SS, S, M, L の上下の下着と管理区域に入るためのブルーの薄手のつなぎをきます。いずれも、放射能を防御するような機能はなく、ほこりなどを外に出さないという役割しかありません。最後に軍手と安全靴、ヘルメットをかぶって入域しました。入域の時には、
・ATLD
・フィルムバッヂ
・アラームメーター(通常、10mREM ・・・ 0.1mSV)
を持ち込みます。アラームメーターをならしたことは一度もなく、ほとんどは0mREM、おおくても1-2mREM程度の被曝でした。
 放射線管理区域は、当然飲食などはすべて禁止。トイレもありません。おなかを壊した場合などは、あせりながら退域するしかありませんでした(現場にいた最終年には、管理区域内にもトイレが出来ましたが、これらすべてが放射性廃棄物扱いになるので、コストはかなり高いと思います。)
 退域エリアには温水のシャワー室があり(通常は、放射性物質を落とすためなのでしょうが)汗をかいたときなどには、このシャワーを浴びてさっぱりとしていました(さすがに、浴室はなし)。放射性物質を落とすには、冷水シャワーを浴びる必要があるという噂がありますが、それは嘘。

 その後、放射能が体に付着していないかを体表面モニター(もう少し違う名前だったと思うのですが)でチェックして、ATLD, アラームメーターを読み取り装置に入れると、レシートのような伝票が出てきました。これでようやく退域。

管理区域は、放射能(放射線量ではない)によって、B区域、C区域と分かれていました。
B区域に一回入ると100円?
C区域に1回入ると200-300円
C区域の全面マスク+アノラックで 500-1000円
程度の給与割り増しがあったような記憶がありますが、正確な金額はもう忘れました。

 この当時の当直長は火力発電所上がりの方が多く、発電所の主要設備のことは的確に把握されていました。原子力は、覚えることが多すぎて、いったいどれが重要でそうでないのか、もうわからなくなってしまうようです。主任クラスは、福島第一出身で、当時の話をいろいろとしてくれました。今でもかけないこともたくさん聞きましたが、記憶に残っているのは、
「アラームメーターをつけていると、すぐにピーピー鳴るので、仕事にならない。高線量の時は、外して作業をしていた。」
「体表面のモニターでピーピー鳴っていたこともあった。そういうときは仕方ないので、しばらく外にいる。しばらくすると、半減期が短いので線量が落ちる。」
などという話です。よく考えると、2番目の話は、半減期の短い核種が出ているというわけですから、
・核分裂反応があり
・それが、建屋内にでている
ということですから、とんでもないことです。(さすがに第二発電所では、こんなことはありませんでした)
 とても文章に出来ない危ないことも平気で話してくれました。こういった話は興味がありましたので、たくさん聞きました。100%出力で運転中は、ほとんど操作は必要ありませんので、中操はのんびりしているのです。

1直時にはサーベランスもあって結構大変なのですが、2直、3直は、現場のパトロールくらいで、ほとんどやることはありません。ときどき、警報装置はなりますが、確認して終わる程度の警報です。(本当に危ない警報には、赤枠がはってありました)
 まあ、知らない人が原子力発電所の中操で警報が一つでもなれば、爆発するのでは・・・と考えてしまうでしょうが、そんなことはないのです。

 運転員の勤務中は、外部に出ることが出来ません。従って、1直のお昼ご飯、2直の夕ご飯はすべて、事務本館にある食堂から、出前を頼むことになります。

家計簿が出てきました。いくつか、具体例を書きます

5/16
シーフードマリネ 150
五目きんぴら   60
ライス      60
味噌汁      20
フルーツ     100

5/18
Aランチ     250

学食より安いです。

当直の時は、今調べてみると、食費代ということで一括してとられています。

おそらく、一週間のメニューを決めて、依頼したのでしょうか。
2,000-2,600円
程度でした。
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posted by いんちょう at 21:11| 原子力