2011年05月18日

運転員をスケープゴートにしないでください。非常用復水器問題

東京電力の原子力推進CMです。


何人か知った顔があります。サービスホールの女性たちなど、いい会社に就職できたと喜んでいたことでしょう。加害者側になったとはいえ、胸が痛みます。また、発電所立地点である大熊町、双葉町、富岡町、楢葉町の豊かな自然・・・いったいどうして。。
やはり、このようなCMが必要なことこそが、問題だったのでしょう。

http://mainichi.jp/select/today/news/20110517k0000m040122000c.html
福島第1原発:1号機、冷却装置を手動停止 炉圧急低下し
2011年5月16日 21時47分 更新:5月17日 1時40分 
 ◇炉心溶融早めた可能性も
 非常用復水器は、全電源喪失の際に唯一、原子炉を冷却できる装置だ。東電は「地震の16時間後に炉心の大部分が溶融した」とする解析結果を15日に公表したが、これほど速く炉心溶融が進むという結果は「非常用復水器が停止した」という想定に基づいていたからだ。非常用復水器が働いていれば、それだけ炉心溶融を遅らせられ、ベントや外部からの注水などの対策がより効果を発揮できたはずだ。
 地震発生後には大津波警報が発令され、原発内の作業員も認識していた。だが運転員は非常用復水器を動かす弁を開閉し続ける作業に追われた。東電は「非常用電源やポンプがすべてだめになることまでは想定しておらず、通常の手順に基づいた操作」と説明する。
 非常用復水器は古いタイプの沸騰水型原発特有の装置で、同原発では1号機にしかない。2〜6号機の冷却装置と違い、駆動用のポンプを必要とせずに冷却できるが、弁の開閉でしか制御できない難点もある。非常用復水器を作動すると原子炉の温度や圧力が急激に下がり、炉を傷める危険性がある。炉を健全に冷やすには難しい操作が避けられず、こうした特有の作業が深刻な事態を招いた可能性も否めない。【酒造唯】
 

 枝野官房長官も
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110518/dst11051801330005-n1.htm
枝野長官「冷却装置説明を要求 1号機 津波前に手動停止か
2011.5.18 01:32
 東京電力福島第1原発事故で、1号機の非常用冷却装置が地震後約10分で停止したことに関し、これが手動で停止された可能性があり、枝野幸男官房長官が17日の会見で「事実関係と経緯について詳細に東電に報告を求め、それを踏まえて評価、判断する必要がある」と述べた。


 東電、原子炉安全グループにいたのですが、この非常用復水器の存在は知りませんでした。(ちょっと聞いたような記憶もありますが・・)このような受動的な原子炉冷却装置をGEがあらかじめ設置していたことに、GE設計の非凡さを感じさせます。さすが、このようなシステムを作り上げた技術者連中です。畏敬の念を感じます。

参考
http://www.japc.co.jp/tsuruga/teiken/tsuruga1/28/press/150904_4.pdf
非常用復水器の系統図
2011051802.jpg
 設置コストが非常に高かったためでしょうか、それとも熱出力が大きくなりすぎて、このような受動的冷却器では、冷却できなくなったのか、この復水器の設置は1号機のみです。これがあれば、電源消失時にも曲がりなりにも冷却が継続できる。すばらしいと思います。現在起動中の発電所には、このような受動的な(電源を必要としない)冷却器を設置しているところは、おそらくない(少なくとも東京電力には)のです。

 ただ、記事に書かれているように,

非常用復水器を作動すると原子炉の温度や圧力が急激に下がり、炉を傷める危険性がある。

ようです。いままで、1号機は地震などで何度もスクラムしており、そのたびにこの非常用復水器が働いて、結構痛い目にあっていたのでしょう、温度、圧力をみながら、調整していたと思われます。今回は、津波があったのですが、地震後は、所内電源消失。テレビのサービスコンセントは、停電となったとおもわれます。(事務本館,免震重要棟はどうだったのでしょう?)少なくとも、中操ではテレビは見られなかったのではないでしょうか。
 いままで、津波警報は何度も発令されましたが、せいぜい80センチ程度。こんな大規模な津波が襲ってきたことは今まで一度もありません。それよりも、地震の被害による設備損傷の方に気がとられていたというのは間違いないでしょう。

 だとすれば、今までの手順通りに、非常用復水器を止めてしまったのも頷けます。

 以前、バケツで核燃料を取り扱い、JCOで臨界反応事故を起こしてしまいました。この際も、最初は作業員が手順を勝手に省略して事故を起こしたことになっておりましたが、いろいろ調べると、作業効率を上げるために会社としてこのような工程になっていたことがあとで発表されました。 

 話は変わりますが、原子力発電所で一番立場の弱い部署は、どこだかご存じでしょうか?基本的に発電所は、電気を発電する代わりにあらゆるものを消費します。請負工事などを発注するのは、東京電力ですから、協力企業からは、「お客さん」と呼ばれます。ペイペイの担当者でも、数千万から数十億の定期検査の元締めになるわけですから、それはそれは大事にしてくれます。理不尽なことをいっても、怒られることはありません。基本的にはそういった立場なのです。
 が、運転員の場合は、下に協力企業はつきません。すべて、自分たちで操作を行い、パトロールをします。当然、予算もほとんどありません。3交代で比較的時間は自由になるとはいえ、夜勤はやはり身体には応えます。
 発電所の中では、予算がなく、結果として権力が弱いのです。

 今回も運転員たちは、情報が限られている中で、手順通りに運転をしていたに過ぎません。せめられるべきなのは、原子炉を保護するためにこういった手順を作った操作手順担当者、一番の責任者は40年以上も経過する老朽原発を継続運転することにした経営陣、そしてそれを追認した原子力保安院、原子力安全委員会ではないのでしょうか。

 そうでなければ、会社のために一生懸命操作を習熟した運転員の立場がありません。

 皆様にもそういった目で、この報道を読み砕いていただけますと幸いです。
タグ:s 1F
posted by いんちょう at 20:49| 原子力