2011年05月20日

浜岡5号機細管破断(プレス発表より)

 本日の最後は、軽い話題にしようと思っていたのですが、無視できないプレス発表がありま
したのでそちらに変更します。東電時代の思い出がなかなかかけません・・・

 中部電力が、浜岡原発5号機の事故についてのプレスを出してきました。
http://www.chuden.co.jp/energy/hamaoka/hama_info/hinf_tenken/__icsFiles/afieldfile/2011/05/20/230520shuhukusuiki5u.pdf
(配列が乱れるので、長いアドレスはいやなのですが・・・なお、このプレス発表文、トップページからはアクセスできません。プレス一覧にも載せていません。)改訂されると困りますので、いちおう取り込んではります。(なぜか、電力会社のpdfは、コピー、ペーストが出来ず非常に苦労します)
このソフトで、一応解決
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損傷した細管
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やはり、複数本(報道によると20本)が破断しています。おそらく、再循環配管(すみません、この系統がどの発電所にも普遍的にあるものか、私には記憶がありません。火力発電所にもこんなルートあるんでしょうか?)のエンドキャップが外れて、細管に当たったのでしょう。しかし、ねじを切った後などはありませんので、溶接なんでしょうね。

2011052003.jpg

模式図を見ますと、これはコストダウンをはかったABWRの設計のようです。原子炉に再循環ラインがないため、ECCSのポンプなどがかなり減らされているはずです。まあ、多ければいいというものではありませんが。

それはさておき、この再循環ラインは、電動給水ポンプ(停止操作中だったからタービン駆動を使っていないのでしょうか?)の先にありますから、ほとんど炉圧70kg/cm2の圧力がかかっていたはずで、20cmの配管といいますから、
70x10x10x3.14 = 21tonの重さが加わっているはず。その割には、ぱっとしない構造です。おそらく,沸騰水型の運転改善のために作られた配管だと思うのですが・・・違うかもしれませんが・・。
 わたしは、当初タービンのはねと思っていましたので、それに比べれば、まだまし。

しかし、いっぺんに20本もの細管が破断することは想定していません。
 
中部電力は、

また、主復水器の海水側である水室内に残留している海水から、放射性核種であるコバルト60を僅かに検出しました。コバルト60は、原子炉冷却水に含まれる天然のコバルト59が、中性子照射により変化したもので、原子炉冷却水中に一般に含まれる放射性核種です。 事象発生当時、主復水器内は真空状態であり、細管損傷により細管内部の海水が主復水器内へ流れる状態でした。水室内にコバルト60が移行したのは、主復水器の真空を解除した後であると評価しており、真空解除前に海水の出入口弁を閉止していることから、コバルト60を含む海水の海への放出はありません。今後、水室内に残留している海水の処理を行います。

 こんなことを言っていますが、きれいに物事がいくはずありません。そもそも、海水の出入り口弁の密閉性は完全ではありません。(たしかバタフライ弁だったと思います)

 運転中は、細管の中を海水がながれており、外部側(写真を撮った側)が原子炉一次水となります。圧力較差からは考えると普通は流れ込むはずはありません。

しかし、かなり大量(500ton)に海水が流れていますので、中操はかなり混乱した状態だったはず
・炉水伝導度上昇
・復水器圧力低下

等の警報が鳴り響いたはずです。

中操での事象把握から、この系統を隔離するまで、
・どれだけの時間がかかったのか
・その間の系統流量変化はどうだったか
・真空度の変化はどうだったか
・非常用炉心冷却装置、あるいは残留熱除去系をどのタイミングで起動させたのか。

などをすべてを明らかにする必要があり、またそうしないと海水に放射性物質が移行していないことを証明できません。海水配管と原子炉一次水が細いパイプを通じて接しているという沸騰水型の弱点を突かれました。(加圧水型原子炉では、こういうことはありません)

わたしとしては、この復水器の真空を解除する段階で、海水にもある程度のコバルト60が放出されたとみるのが妥当でしょう。(検出できるかどうかは別です)・・・海水中のコバルト含有量をごく微量としか発表していません。もう、Bq/kgで発表すべき時代です。(結構みんなわかります)

 全体的にこのプレス発表は、定性的で、破断された細管の本数も記載されておりませんし、停止操作を行って、いったい原子炉出力がどのくらいになったときに、どれくらいの時間で、どれだけの海水が流れ込んだのかといった定量的な評価が全くありません。意図的に入れていないのでしょうが、これこそ、原子力村の広報方法なのです。

 この再循環ラインは、おそらくすべてのABWRプラントで採用されているはずで、ただちに見直しをかける必要があります。(同等の事故がいつ起きてもおかしくありません。定格運転中に起きると、結構大事(おおごと)です(爆発することなどはありませんが))

追加:再循環ラインがABWR特有というのは文中にも書きましたように自信がありません。火力の復水器にもついているものなのかも。(しかし、そうはいってもこのようなトラブルが初めてというのが気にかかります。もし、複数回起きているならば、このフランジ部はねじ込み方式などに改良されているはずです。)
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posted by いんちょう at 23:20| 原子力