2011年05月28日

浜岡5号機−環境への放射能漏れ発表(その隠蔽体質を暴く)

 浜岡原発でのトラブルについて、コメントをいただきました。ありがとうございました。
元記事第一報 浜岡5号機の海水リーク(細管破断?)
元記事第二報 浜岡5号機細管破断(プレス発表より)

 まず、訂正から。中部電力のプレス発表は、非常にわかりにくくしてあります。なんと、このトラブルは、運転情報に分類されるらしいです。(トップのプレスリリースには当たらないという判断)原子力村の隠蔽体質が如実に示されていますので、ここで例示させていただきます。

・起きたこと自体を隠すことはしないが、説明せず、軽く発表する
・どんどんとぼろが出る
・最後にあっと驚く新事実が出てくる
(どこかで、聞いた話ですね・・・)


まず、このトラブルは、プレスリリースに当たらないという判断です。
http://www.chuden.co.jp/energy/hamaoka/hama_info/hinf_about/index.html
(1)軽度な機器の故障があったとき
(2)燃料破損の疑いなど主要なパラメータの有意な変化があったとき
(3)管理区域内で水・油などの漏えいがあったとき
(4)救急車の出動要請や火災報知器の作動など

すでに、この範疇に収まるものではありません。(そんなことは、中部電力の(少なくとも原子力村)は最初からわかっています)

この運転情報の一覧はここから(なぜ、あえてわかりにくくするのか。私には全く理解できません)
http://www.chuden.co.jp/energy/hamaoka/hama_info/hinf_unten/2011.html

ここから、今回のトラブルの公開情報を得ることが出来ました。まず、第一報
http://www.chuden.co.jp/energy/hamaoka/hama_info/hinf_unten/__icsFiles/afieldfile/2011/05/15/230515douddenritu.pdf
2011052801.jpg

 なんと、導電率上昇しか、発表していません。中操が大変な事態だったことは、その後漏れてきた情報から明らかです。しかも、もれた海水の量には全くふれていません。(記事に400トンと書かれているのは、記者が質問したからでしょう。)中部電力は、前にも書いたように定量的なデータを公表しようとしていません。以下抜粋

 当社は、2011年5月14日13時に5号機の原子炉を停止しました。 原子炉の冷温停止に向け操作を実施中、16時30分頃に主復水器チ1の水室(A)内の水の純度を監視している導電率計の指示値が上昇し、その後、(B)から(F)全ての導電率計の指示値も上昇するとともに、原子炉水の導電率(原子炉冷却材浄化系)も上昇しました。 このため、復水器内で熱交換に用いている海水が復水系へ流入した可能性があると判断し、原子炉への海水の流入防止のため、給水ポンプ等による原子炉への注水を中止、および循環水ポンプ全台(3台)を停止しました。 現在、原子炉は安定しており、操作手順書に従い、冷温停止に向けて操作を継続しており、本日午後に冷温停止となる見込みです。

 大事なのは、赤字の部分。原子炉水の導電率が上昇したと言うことは、原子炉内に海水が入ったことに他なりません。発表はしていますが、中日新聞などの記事に書かれていないと言うことは、おそらく、説明をしていない(説明しないと普通はピンとこない)のだろうと思われます。

本事象は、放射性物質の漏えいに係わる事象ではありません。

しらじらしい。これだけの細管破断が起きて、外部に漏れていないはずがありません。・・何度も繰り返しますが、原子力村は、きちんとわかっています。もし、わかっていなかったとすれば、原子力安全委員会に就職してください。きっと、厚遇してくれることと思います。

 次の第3報(第2報は,記事にしています

http://www.chuden.co.jp/energy/hamaoka/hama_info/hinf_unten/__icsFiles/afieldfile/2011/05/26/230526haikitouhaigasu.pdf
2011052802.jpg
浜岡原子力発電所の排気筒排ガスからの 微量な放射性物質の検出について(続報)
当社は、2011年5月18日〜5月25日まで通気したフィルタを5月25日に分析した結果、5号機排気筒のフィルタから、微量な放射性物質コバルト58を検出したことからお知らせします。 評価の結果、今回検出したコバルト58の全放出量は3.6×10E5ベクレルと推定しました。 これによる人体への影響は、3.8×10E-8マイクロシーベルト/年であり、これは通常1年間に受ける放射線量(1260マイクロシーベルト)の330億分の1程度と、極めて小さい値で人体への影響はありません。 (筆者注:比較の対象が、レントゲンになり、CTになり、さらには20mSv, そして 100mSvと増大していくのは、みなさまご承知の通り)
 フィルタ通気期間中の5号機の作業状況から、コバルト58を検出した原因は、原子炉水の浄化を行っている原子炉冷却材浄化系で、使用済み樹脂の収集槽への排出に伴い、収集槽内でコバルト58が空気中に移行し、収集槽の排気ダクトを通じて、排気筒へ流れ検出したものと推定しました。 そのため、原子炉冷却材浄化系での原子炉水の浄化操作を中断しました。収集槽の排気ダクトには、放射性物質を除去するためのフィルタを設置しており、今後、コバルト58が排気筒へ流れた原因調査と必要な対策について検討します。 なお、原子炉水の浄化操作の中断により現在は、コバルト58は検出されていません。


 ようやく、定量的な数値が出てきました。外部に放射能漏れを起こしているにもかかわらず、軽微なため(まあ、どこかで桁が全く違う放射能漏れが続いているため、記事にはならないようです)プレスリリースにしていません。しかし、赤字でかかれている原子炉冷却材浄化系を止めてしまうのは、非常に深刻なトラブルになっていることをしめします。本来これを回していないと、原子炉内の汚染水が浄化できず、線量がなかなか下がりません。これを止めざるを得ないところに深刻さの一端をのぞくことができます。
 しかも、東芝の技術陣は、ほとんど福島にとられており、中部電力としてはまともな対応をしてもらえない(メンテナンスは、東芝・日立に丸投げです。電力会社自らでは、何も出来ません)状況で、かなりいらだっているのだろうとおもいます。。
 私が第2報で、指摘したとおり、外部の放射能漏れを起こしています。そんなこと、最初からわかっていたことで、これは隠蔽していたのです。(この第3報まで同時に出すと、おそらく次のような見出しになったはずです)

浜岡原発5号機、首相指示を受けての停止中に、海水が炉内に大量流入。外部への放射能漏れも



 これを避けたいために3回に分けて、小出しにしたわけです。

 浜岡が定格運転中でなく、不幸中の幸いでした。

 今回は浜岡を例にとって、解説してみました。もっともっと、大規模にした状態が、現在の福島の状況です。

※ 原子力のトラブルは、
・原子力村の住民からみてはたいしたことないのに大げさに取り上げられる
・大変深刻なトラブルなのに、ほとんど論評されない
の二つに分けられます。今回は、後者であるのは間違いありません(情報統制が非常にうまくいっていると思われます。・・・福島の陰に隠れただけですが)

追記(2011.5.28 8:30)
炉内の海水は早急に取り除かねばならず、それには原子炉浄化系を使うしかありません。それにもかかわらず、停止させたと言うことは、これ以上の環境放射能漏れを避けたい(発表したくない)という経営判断だと思われます。大げさですが、廃炉も視野に入っている状態です。もっとも、経営陣はそこまでは考えていないでしょうが、長期化すると手に負えない問題(内部の腐食など)が起きてくるのは明らかです。また、何かあったら、ひっそりと発表することでしょう。今後の展開に要注目です。

追記
 福島原発の現状について、私と同じ危機感を持っている方のインタビューを読みました。是非お読みください。

小沢一郎・民主党元代表インタビュー:一問一答2011年 5月 27日 (金)

追記2(2011/5/30)
長すぎてわかりにくいとありましたので、3行にまとめてみます
・浜岡5号機、通常停止操作中に、復水器の損傷で、海水が原子炉内に100トン?流入
・放射能漏れも起きたが、騒ぎをこれ以上大きくしないために経営判断?で炉水をきれいにする系統を停止している。(廃炉につながる可能性も)
・メーカーが福島に人員をとられて、復旧見込みがたっていないかも。(想像)。
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posted by いんちょう at 06:05| 原子力