・高脂血症、高血圧症でかかりつけ
(薬は2剤のみ)
主訴 2−3日前から、耳の外側がいたい。ずっとではないが。昨日がひどかった。顔面麻痺が出てきているような感じ。痛みがそれ程はない。この頃は大分、悪くなった。
診察してみますと、脳神経の異常は見られず、小脳症状もなし。額の皺も両側が寄りますが、右側に軽度の顔面麻痺が見られ、口角も右下が落ちています。
午前中の早い時間だったので、近くの国立病院を紹介しました。付き添いがいないとのことで翌火曜日を受診希望。
・紹介状作成(国立病院−神経内科)
・プレドニゾロン(5mg) 2T 2x (1日分 2錠、を2回に分けて飲む場合の処方の書き方−1回 1錠 1日2回の意味)
・メチコバール(500mg) 3T 3x (同 1回1錠、1日3回のこと になります。)
を1日分のみ処方
右末梢性顔面神経麻痺を疑っての紹介です。
翌、火曜日。国立病院で頭部MRIなどを取ってもらったあとで、入院となったとの連絡が来ました。外来で見ていただいた先生のお話によりますと、最初は耳介にも何も見られなかったが、耳鼻科受診時(末梢神経性顔面麻痺−診断後は、耳鼻科領域になります)に赤い発疹が、外耳道にまで見られていたとのこと。
ラムゼー・ハント症候群 ですね。
と診断していただきました。最初の処方は誤りだったことになります。
このRamsay-Hunt症候群は、国家試験の勉強をした人間ならば全員知っているほど有名な疾患です。(この症候群を知らないような人は、国試に落ちます。間違いなく)
医師国家試験のバイブルと言われている『イヤーノート』から
概念
初感染後、顔面神経の膝神経節に潜伏している水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus VZV)が再賦活化されて生じる。
症状
@片側の顔面神経麻痺A感音難聴BめまいC耳介・外耳道の発疹及び疼痛
治療
アシクロビルの投与(抗ウイルス剤)
予後
Bell麻痺より悪い
振り返りますと、
症状では@とC(但し疼痛のみ) Aはもともと難聴のためわからずBは訴えがなかったような気がします
治療は
・・・プレドニゾロン では、悪化します。(普通の顔面麻痺では、適切なのですが)
国試的には大変有名な疾患ですが、実際に経験したのは初めてでした。
我々は「患者さんが教師。」と教わります。実際の症例と教科書で勉強した症例は、なかなか直接には結びつきません。医師は、全員患者さんたちに教えてもらいながら、日々の外来をやっております。
本職の宣伝?をさせていただきました。
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