2011年6月17日 5号機 【点検情報】浜岡原子力発電所5号機主復水器細管損傷の調査状況について [PDF:246KB]
今までは、運転情報だったのが、点検情報とさらに一ランク重要度が下がっています。が、見る人が見るととんでもない状況になっていることがよく分かります。例によって、コピーなどが出来なくなっておりますし、改ざんの可能性もないとはいえないため、ここにハードコピーをおいておきます。

まず、上の図から。結構わかりやすい図が示されています。エンドキャップが真横に吹き飛んで細管が損傷。さらにその奥は、蒸気の圧力で破損したと思われます。エンドキャップから出るのは高圧の一次系の放射能を含んだ炉水。海水の圧力よりも大きく、この位置関係で外に漏れていないと言い張るのは、工学的な妥当性を欠きます(絶対に、海水側に漏れています。まあ、環境には影響ない範囲だとは思いますが)。もっとも、広報部の立場になれば、ここは言い張るしかありません。事情は、よくわかりますよ。
この配管のキャップが、どうして吹き飛んだのか?やはり、施工ミスでしょう。今頃は、この復水器を作った工場検査結果から、だれが溶接したかまで調べ上げているはずです。おそらく、溶接員の施工ミスということに落ち着くと思われます。
まあ、これまではいいでしょう。驚いたのは、下の図。着色部は、塩分の影響があったと書かれており、
・復水貯蔵槽
・制御棒駆動ポンプ
・水圧制御ユニット
・圧力抑制室
まで、塩分の影響があると示されています。原子炉系からの塩分の除去は進んでいると書かれていますが、これら復水貯蔵槽につながるラインの塩分については一切記述がありません。
とくに制御棒駆動装置に塩分が入ってしまったのはもう致命的。
なぜ、入ったのか不思議ですが系統図を見ますと、復水ポンプと復水昇圧ポンプのあいだから制御棒駆動水ポンプの吸い込み側に配管があります。ここから復水貯留槽に逆流する形で、塩分が系統に流入。制御棒駆動装置(CRD)まで塩分が進入したのでしょう。
また、残留熱除去ポンプを通じて、圧力抑制室まで塩分が流入したと思われます。
とくにこの炉系はABWR。制御棒駆動装置が改良されています。

よく見てください。ここには、ボールベアリングが使われています。ここに塩分が入ってしまいますと、致命的。(最悪、制御棒駆動が出来なくなる)スクラム水のところにCRDはつながっているはず(ここはあんまり詳しくないので、もしかしたらシールされているのかもしれませんが)
さらに圧力抑制室にまで塩分が入ってしまうとは・・・
今回の報告は、点検情報に分類しているようですが、早晩おおきな発表をせざるを得ないと思われます。
すべては、系統隔離を直ちに行わなかったとがめです。1円(トラブル報告)を惜しんで、100億円を失いました。
もし、記者のかたなどみられておられましたら、中部電力が手ぐすね引いて質問を待っている復水器のトラブルではなく 、上記で述べた原子炉系統の塩分の影響について質問してください。特に、制御棒駆動装置の塩分流入は、安全に直結するはなしです。
(もともとの設計がトラブルを起こしにくい水圧駆動なのに、水が常に存在しているところに電動駆動を採用するのは、安全的にはどうなのでしょうか?日本お得意の改良だとは思いますが・・)
そういえば、この発表に対する報道各社の報道(ブログ参照)では、この問題点を指摘していた記事はみあたりませんでした。
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