2011年07月07日

ストレステストは、カネの無駄

 玄海町長が容認し、知事が首相と会えば、再開すると言っていた昨日、首相がいきなり「ストレステスト」なるものを打ち出しました。福島の事故は3月。現在は7月。するならするで、なぜ最初から指示しておかないのでしょうか?大いに疑問が残るタイミング。ストレステストを受けているのは、カン自身ではないですか。

 まあ、それはさておき。

ストレステスト。この評価をするような余力が、メーカーに残っているのでしょうか。BWRグループは、現在FUKUSHIMAにかかり切りですから、安全評価に人を回せる状況ではとてもないと思われます。

 また、このストレステストをするには、1プラントでおよそ 10-30億円 程度かかるはず(人件費と、耐震の計算費用)です。こんな無駄金を電気料金から徴収するのは認められません。すくなくとも、どの程度の費用がかかるのかを発表してから、テストを進めてください。電気料金が上がるでしょうね。きっと。

 さて、どうして無駄というのか。

 いま山の場所がずっと昔は海だったことご存じでしょう。あのヒマラヤでさえそうなのですから。

つまり、地球のことを本当に分かっている人なんて、いないのです。


もし、原子力発電所の直下で、大規模な土地の隆起、陥没が起きれば、どうなるか。
あるいは、地割れが起きたら?

活断層がないから起きないといえるのでしょうか?そんなこと誰にも分かりません。もし、起きたら終わり。計算するまでもありません。

福島原発でも、50cm程度の地盤沈下が起きています
本当に、配管など大丈夫なのか。私は疑問です。(ここまで解決に手こずるところを見ると、おそらくあちこちで主要配管の破断が起きているはずです)


まあ、このあたりをいっても、なんだかんだでごまかされるでしょう。

もうすこし、技術的なはなしをしてみます。

 
沸騰水型(BWR)原子炉で例を一つあげましょう。

2011070701.jpg

原子炉に直接接続する配管なかで、最大口径がこの再循環配管です。設計では、この配管が瞬間に破断しても、炉心の冷却に問題がないように非常用炉心冷却系(ECCS)が配置されているという説明です。

 たしかに、流出する流量よりも、ポンプ流量の方が多ければ、燃料が露出することはないでしょう。そこは正しい。

 では、事故が起きたとします。

ECCSポンプ起動−原子炉水位上昇

ここまでは想定内です。では、それからは?炉心が冷えるまでには5年程度は最低でもかかります。ずっとポンプを動作させ続けるのですか?では、そのあとどうやって、燃料を取り出すのですか?

 すくなくとも、再循環が破断した位置までは格納容器内に水を張らないといけないはず。・・・いわゆる水棺

2011070702.jpg

しかし、この方法は今まで検討したことがないとはっきりと書かれています。つまり、再循環配管の破断はポンプ設計の数値として利用しているに過ぎず、絵に描いた餅なのです。

さらにこの再循環配管が破断した場合は、その推進力で原子炉が傾いたり、配管の保温材が圧力抑制プールに入ったりと言ったことも考える必要がありますが、当初の設計ではこういった想定は全くありません そもそも安全安全と話していた最初の設計がいい加減。しかも、こういった保温材の問題、ジェット噴射の問題などが表面に出てきたのは運転開始から20年以上たってからなのです。(だれかが、実際に考えたのでしょう。これは、米国NRCが1983年に未解決安全問題として、取り上げました。日本語ただし、PWR説明が主。)

 私はこの話を本店で初めて聞いたとき愕然としました。

「我々の世代に尻ぬぐいをさせる気か?そんなことくらい、ちょっと考えれば分かるじゃないか。しかも、10年以上未解決のままだろ・・・」

こんな問題ばかりが出てきました。(これは、あくまでも私がちょっとだけ担当した、おそらくごく一部のはなし。全体では、やまのような懸案事項があり、そのたびにメーカーにお金が落ちていくわけです。「原発は、ひげそりの柄を売るようなもの」。電力会社はカネを払い、その最終的な尻ぬぐいは、最終消費者−我々です)


それに気がついた電力は、どういってごまかしてきたか。

それが LBB (Leak Before Break)の理論。

つまり、破断する前には、漏洩がある。それを見つけて止めるので大丈夫ですよ。

と言いかえるのです。

 そうすれば、事故に至ることはありませんから、安全です。安心してください。

こういった論理構成をしています。

ご存じでしたか?


ストレステストで、

再循環配管が破断した場合の
・短期的
・中期的
・長期的
事故の収束の仕方を明示するようにしてください。

また、浜岡、玄海のように
・取水トンネルがある設計の場合には、これらトンネルが何らかの原因で損傷し、海水が取り入れられなくなった場合の評価

これは、最低必要です。

は、ないですね、ないという評価をしています。」

では、ストレステストになりません。

ここまで、ご覧になる方がどれだけおられるか・・・・

このような訳の分からない費用を計算するのには、積算 とよばれる方法が使われます。

まず、メーカーの技術者の単価。

主任技術者クラスですと、1,000万円程度の年収が予想されます。(本当はもっと高い)会社のもうけを考えると、この技術者は、3,000万円/年の売り上げが要求されるでしょう。年間の就業日を200日としますと、

15万円/日 の稼ぎが必要となります。

さて、この評価をするのに、必要な日数をまあ、かりに半年くらい 150日としましょう。

報告書は、おそらく都合の悪い評価を隠すためにも、百科事典10冊分程度にはなるでしょうか。
(この物量で圧倒して、まずいところを隠すのは原子力ではよく使われる手法)

もっとも、浜岡の場合は、取水棟が壊れた場合のストレステストを見るだけですから、物量を増やしても何の役にも立ちません。

15万円/人・日 x 5 x 200 =1億5000万円

これは、純水に人件費だけ。間接経費として、この人件費の6割。

コンピューターの計算、その他に おそらく同等かそれ以上
(日本のプラントは、標準化が全くされていませんので、ここのプラントで再評価する必要があります)

ざっとみても、 10億円/プラント でしょう。

それが、50基。 評価だけで、500億円近い費用がかかると思って間違いありません。

そんな無駄な費用をかけるくらいなら(全く後ろ向きの費用です)、川崎ガスのようなコンバインドサイクル発電を作ってもらった方がよほどまし。

ということを言いたいわけです。。
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posted by いんちょう at 17:37| 原子力