いつも夕方8時過ぎから寮長室に集まって飲んでいた4−5人のグループがありました。同期は、学卒が3人高卒が3-4人程度だったでしょうか。全部で20名足らずしかいないわけですから、新人の比率はかなり多くなります。
福島原発地帯の東電社員というと、当時は結婚相手なんか、よりどりみどりだっただろうと思われるかもしれません。しかし、理系の人間が多いためか、なかなか独身寮をでれない人も多かったのです。今ではそんなに年とは思いませんが、30代前半ともなるともう寮の主(ぬし)といった雰囲気を漂わせていました。
給料はまあまあ、仕事は忙しいときは忙しいが、ある程度自由になる時間がある。有給休暇は基本的に取りやすい。寮に住んでいれば、食事の支度、風呂の準備などなにもしなくて良い。洗濯機、乾燥機まで寮に備えてあり、トイレは共同なので、トイレ掃除の必要もない。
早く結婚したくなるようなきっかけが非常におきにくい環境なのです。
そんなときに飲んだくれてする話しとすれば、まあ、いずこもおなじ、
・女性のはなし(事務所の誰がいいとか・・)
・上司の悪口
・ちょっとまじめな仕事のはなし
・昔話
くらいでしょうか。
年に何度かは寮全体の飲み会もありました。
理想に燃えていた研修社員時代。
本店の研修で、
・原子力はいかに安全か
・いかにコストパフォーマンスがいいか
・どういった仕事をするのか
などと、今まで勉強したこととは全く違う分野のことなのですっかり信じ切っていた私ですから、素直な質問が出ます。
保修課電気グループの佐藤さん(30代前半でしょうか?)の方に、その時に質問してみました。
私)「原子力は本当に安いんですか?」
佐藤)「なにいっているんだ。高いに決まってるだろ。安いはずがないよ。そんなの当たり前だ。」
私)「どうしてですか?」
佐藤)「そりゃ、放射線管理区域があるだろ。効率は悪いし、被ばくはするし、一つ一つの機器も火力仕様と比べると倍以上するんだぞ。これで安かったら、おかしいよ。」
保安課ジャニーズ顔の 小林さん(今回の福島原発災害で、被ばくのことを説明する東電社員の一人として、TVに出ていました。)も割り込んできました。
小林)「だいたい、どんな廃棄物も、表面の放射能を取り去るために、除洗といって、機器をひとつひとつウエス−ぼろ切れ−でふくんだぜ。それだけでも大変だよ。管理も面倒だし。」
私「でも、安いって習いましたが」
佐藤)「まあ、仕事を始めたら分かるよ。」
これ以上議論するまでもないと、質問は打ち切られてしまいました。
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