2011年07月16日

原発安全評価−舞台裏を妄想する

まずは報道から
原発:安全評価、「1次」4項目で 保安院が手法概要公表
 経済産業省原子力安全・保安院は15日、原発の再稼働や運転継続の基準とする「安全評価」の手法の概要を公表した。電力各社が原発ごとに、安全性にどれだけ余裕があるかを評価し、保安院がその手続きの妥当性を評価。さらに内閣府原子力安全委員会が確認する。稼働中のほぼ全原発が対象の「2次評価」は年内に保安院に報告するよう求めるが、定期検査で停止中の原発で実施し、再稼働のカギを握る「1次評価」の報告時期は未定だ。安全委は同日臨時会を開き、保安院の手法の概要を大筋で了承した。
 保安院によると、試験の対象は、「1次評価」が現在定検中の九州電力玄海原発3号機など19基。「2次評価」は、福島第1原発と同第2原発、浜岡原発を除き、1次評価対象や建設中のものを含めた50基。
 安全評価は、「地震」「津波」「全電源喪失」「海水に熱を放出する機能の停止」の四つの場合について、燃料損傷などの過酷事故に至るまでにどのくらい安全性の余裕があるのか定量的に計算する。
 1次評価では(1)原子炉の配管などの機器類に負荷をかけ、健全性が十分確保される値と比べて設計値にどれだけ余裕があるかを調べる。その上で(2)原子炉全体で燃料溶融に至るまでの余裕度も測り、原子炉の弱点を見つける。さらに(3)過酷事故に至らないために各社が講じている対応措置の効果を評価する。また、2次評価では、全電源喪失と炉心の熱を取り除く機能が失われ燃料溶融が起きる「限界値」を算出して設計値と比べることで、原子炉の能力を測る。

 安全評価をめぐっては、保安院が玄海原発の安全性を確認し、海江田万里経産相が6月29日に地元に再稼働を要請したものの、菅直人首相が同日、原子力安全委員会を関与させて安全審査をやり直すよう海江田氏に指示。1次評価が、定検中の原発を再稼働するための要件になっている。【河内敏康、関東晋慈】

毎日新聞 2011年7月15日 21時11分(最終更新 7月16日 0時53分)


 次に、公式書類

第53回 原子力安全委員会臨時会議から

(1) 東京電力株式会社福島第一原子力発電所における事故を踏まえた既設の発電用原子炉施設の安全性に関する総合的評価に関する評価手法及び実施計画 (PDF:263 KB)

 まず、頭に置いておかなければならないのは、この評価手順を作った本当の作者です。保安院には、その能力はありません。そんなのは、電力も百も承知。通常ならば、東京電力が音頭を取って、各電力の担当者に話を聞きまとめ上げます(そういう能力に長けています)。東京が根城ですので、無理が利きますし、資料の用意もでき、なにより保安院とは目と鼻の先に(歩いても20分程度)ありますから。が、今回は絶対に無理。
 東京に本拠がある会社としては、あとは日本原電がありますが、ここの会社の方はいずれも線の細い方が多く9電力を束ねるような力はないでしょう。(地元敦賀の対応だけで、精一杯といった印象があります)

 おそらく、電事連が頭になって(幹事はだれ?・・・私の時は九州電力から出向しておられた方で、パワフルでおもしろい人でした。「電事連の中田です・・・」と時々電話かかってきましたね。そういえば。)います。また、各電力の安全グループが本社から3〜4人程度長期出張の形で、事故発生直後から詰めているはずです。各電力は全て東京事務所がありますし、どこの会社も原発ではトラブルを起こしている(保安院に報告する必要のあるトラブルを起こしていない原発は1基もありません)のである程度のノウハウはあります。

BWRグループは、
・東京
・中部
・中国◎
・東北
・北陸
(能力のある順番です。運転経験が長いところほど場慣れします)
東京はダメ、中部は人ごと(強制的にすべて止められている)、東北は被災、北陸は元々止まっている。となると、中国電力のみで対応することになります(これはこれで調整がいらないので楽)

PWRグループは
・関西◎
・九州
・四国
・北海道

これは順当。今回のいわゆるストレステストは、EUを参考にしているはずですが、この資料を英語で理解する能力は、保安院にはありません。もちろん、電力にもない。当然翻訳を頼んでいるはずです。しかし、専門知識の必要な翻訳です。では、一体その費用はどこが支払っているか?保安院は、当然自分の仕事ではないと思っているでしょうし、こんな翻訳代など出す税金の余裕はありません。当然、カネのでどころは、電力。まあ、この時点からしてどういう結論になるか、みえてしまいます。原発輸出を企てていた東京電力、東芝にその能力は十分にあるでしょうから、東電がケツを持つ(まあ、当たり前と言えば当たり前)かたちで突貫工事の翻訳をしたと思われます。(割り増し料高かったでしょうね・・・)

 で、このできた翻訳を電事連にかけ、(会議室の確保も大変なんです。都心では。東京電力もしくは、電事連がどこかに24時間借り切っていることでしょう。ダイビルなんて、よく使いました。)関西電力がとりまとめて、それを保安院に説明して、それから資料を作る。7枚の資料ですから、これも作るのは結構大変です。おそらく1次評価はこの電力、2時評価はこの電力と役割分担を決め、夕方に明日の朝8時までと締め切りを区切って、どうにかまとめ上げたのでしょう。発表から一週間足らずですから、おそらく不眠不休。
 保安院は出てくる書類に文句をつけて手直しさせる。(保安院にも電力関係者が詰めています。おそらく)最後に、メールか何かで送ってもらって表紙だけ自分の名前にして、安全委員会に説明する。保安院が、第3者に説明できるように(電力に)してもらっているところをみますと、保安院も電力も精根尽き果てているでしょう。
 今の状況では、保安院の後ろに電力担当者が詰めているわけにもいかず(武藤さんなど適任でしょうが)、原子力安全委員会に質問されても、「検討します」としかいえないのは当然。保安院の担当者は、発電所に行くのは電力がお膳立てする原発ツアー(といっていいでしょう)だけですから、現場のことなど分かるはずもないのです。(役所がとんちんかんなことを言うのは、役所とつきあいのある方は全て納得されることでしょう。原子力ももちろん同じ)

さて、内容について少しコメント。

長くて読む気がしませんが、
・原子炉
・使用済燃料プール
の両方について触れているのは、前進です。

「クリフエッジ」・・この言葉は、初めて聞きました。いつの間に原子力学術用語になったのでしょうか。英単語、話しの流れからしますと、ここまで言ったらダメ な状況なのでしょうか。

地震、津波に関しては、・・・ふざけた対応・・・
・ドアにパッキンをつけて防水化
・ガレキ処理の重機配備
でよいとしていますから、新しい内容はおそらく出てこないでしょう。

「全電源喪失」
@内的事象PSAの知見を踏まえて、全交流電源喪失を起因事象として燃料の重大な損傷に至る事象の過程を明らかにするとともに、その場合の全交流電源喪失の継続時間を明らかにする。

注)内的事象PSA(内部だけで起きる事故に対する確率的安全評価−−例えば弁が壊れる確率がこのくらい、捜査員がミスする確率がこのくらい、と決めていき−これがイベントツリー−どのくらいの割合で、事故が起きるかを評価する手法のこと・・説明下手ですが、懐かしい言葉です。これは、以前から使われている述語です。)

 これは、全電源喪失が起きた場合の炉心損傷までの時間でしょう。PWRは、どのくらい余裕時間があるのでしょうか?BWRは、原子炉隔離時冷却系(RCIC)がありますが、弁の操作用電源などを考えると数日程度になるのでは?この期間では、大規模災害の場合には、外部電源の復旧は困難ですが、大丈夫という結論に持って行くはずです。

最終的な熱の逃し場(最終ヒートシンク)の喪失
内的事象PSAの知見を踏まえて、最終ヒートシンク喪失を起因事象として燃料の重大な損傷に至る事象の過程を明らかにするとともに、その場合の最終ヒートシンク喪失の継続時間を明らかにする。

 おそらく、海水ポンプの喪失を考慮に入れていると思います。浜岡ならば、取水トンネルを考えなければなりません。これも上記RCICがあるので、数日足らずで爆発でしょう。ここの復旧は、それこそ数日では不可能。(ですが、電力は可能といいはるのは、容易に想像できます)

 ある程度、今までの知見を踏まえて、報告書を作れるとは思いますが、それでもやはり膨大な時間がかかりますし、今はネット時代ですから、この報告書を公開しないわけにはいかないでしょう。(それとも、企業秘密が含まれているとして黒塗りしますか?)

そもそも、なぜこういった事象を考慮していなかったのか。それは設計上対応できないからに過ぎません。こんなことが実際に起きたら、大丈夫な原発など地球上に存在していません。(福島で初めて証明されました)

以上は、私の妄想であり取材などは全くしていません。ご了承ください。

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