2011年07月25日

上空の雲に放射能滞留?−飛行機内測定結果

福島上空、放射性物質滞留か…降雨には問題なし
 福島県の上空8キロ付近に微量の放射性物質が滞留している可能性があることが福島大学の調査でわかった。
 同大で11日に記者会見した渡辺明副学長(気象学)は「3月の東京電力福島第一原発の事故で放出された放射性物質が、成層圏の手前の対流圏上部付近まで上って滞留していると考えられる。ただ、雨として降ってもまったく健康に問題のないレベル」と話している。
 同大は4月15〜29日、観測装置を取り付けた気球を毎日上空25キロまで打ち上げ、約5メートルごとに大気中の放射線量を測定。平均値をとって高度ごとの放射線量の分布状況を調べた。
 放射線の一種であるベータ線の数値が上空約6キロから上がり、8・2キロがピークとなって506cpm(カウント毎分)を記録した。また、上空2キロ付近では、100cpm前後のベータ線や別の放射線のガンマ線が観測された。
 渡辺副学長は「爆発事故で舞い上がった放射性物質が上り続け、対流圏よりも温度が高く空気が軽い成層圏には入れずにとどまっていると考えられる。上空2キロ付近は風の通り道で、現在も原発から放射性物質が放出されている証拠」と分析している。放射性物質が雨に含まれて地上に落下する可能性はあるが、「万一、口に入ったとしても健康に問題はない」と話している。
 国の基準によると、人が全身除染を必要とするのは10万cpm以上
(2011年5月12日07時07分 読売新聞)


 この基準は、福島事故直後改訂基準です。通常は、13000cpmです。

この内容は、福島大学がプレス発表しています。

放射能ゾンデ観測の結果について
2011072501.jpg
ガンマ線のグラフが重要

SNAに問い合わせたところ、熊本−東京の巡航高度は、34,000ft(11,500m 約10km)

以上が予備知識

さて、出発前(機内) 0.12μSv/hr
2011072502.jpg

シートベルトが消えてから(離陸後 20分か) 0.34マイクロシーベルト/時
2011072503.jpg

それからさらに10分後 2.03〜2.54マイクロシーベルト/時
2011072504.jpg
2011072505.jpg2011072506.jpg
この間、ずっと雲の上。場所的には離陸後30分程度ですから、四国〜関西でしょうか?

線量があまりにも高いのですが、こんなものかと思ってました。高度が下がり始めてからは、動画で記録






 高度が下がると目に見えて線量が低下してきます。福島のグラフとぴったり符合しそうです。

東京モノレール内 0.14マイクロシーベルト/時
2011072507.jpg

大気が薄くなるから、このようなものと思っていたのですが・・・その日の帰りの便(最終便)
1.13-1.28マイクロシーベルト/時(離陸後30分)
2011072508.jpg
2011072509.jpg

熊本上空(高度下げる前) 0.13マイクロシーベルト/時
2011072510.jpg

以上考えますと、日本全国の雲には放射能の塵が含まれており、それは巡航高度ではガスマスクが必要な程度となる。(1.3μSv/h > で 東電D区域 全面マスクが必要−根拠は、下記の関連ブログ「セシウム牛は全面マスク域で飼育中だった・・」をご覧ください。今なら,題名は「福島で飼育中の牛には、全面マスク配布を」に変更しますですね・・)
航空機に乗る際には、注意が必要ですし、雨にはできるだけ当たらないよう各自用心する必要があるでしょう。(筆者注:飛行機は換気のために外気を取り込んでいます。飛行機室内にも放射性物質が取り込まれる可能性があります。放射能除去フィルタなど使用しているのでしょうか?このあたりは、専門外ですので、よく知りません)

 航空機をよくお使いで、ガイガーカウンターをお持ちの方、是非調べてみてください。新聞記者のかたなど、いかがでしょう?

参考(地球の大気)から
2011072512.jpg

成層圏まで、放射性物質が拡散している模様。ジェット気流は、こんなイメージか?
2011072511.jpg

追記(2011.7.25)コメントで指摘いただきました。
航路による被曝量は、こちらで計算できるようです。

 ほぼ、近似の値と思われる成田〜ソウル を計算しますと、
2011072513.jpg

となりました。この値は、今回の値とそれほど差はなく、宇宙線のみの値なのかもしれません。

また、
航空機搭乗者の被ばく線量 (09-01-05-11)
 日本の平野部で1日あたりに受ける平均的な宇宙線の線量は0.001mSv(1μSv)であるが、国内線の旅客機に乗ると1時間足らずの飛行で同程度の被ばくを受ける。
ですから、だいたい1マイクロシーベルト/時 くらいが標準的な被曝量だとも考えられます。

書く前に参考にした記事
5 航空機乗務員の被曝線量はどのくらいになるの?
2011072514.jpg
羽田〜沖縄間で 0.95マイクロシーベルトですから、やはりこの測定値は高すぎませんか?
航空会社で測定しているはずですが。。。今回の測定値であれば、2マイクロシーベルト以上となります。

■関連ブログ
セシウム牛は要全面マスク域で飼育中だった・・2011.7.13
記事の裏を読む−本質は、思いもよらないところに2011.6.9
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posted by いんちょう at 13:52| Comment(17) | 原子力
この記事へのコメント
航空機のエンジンの整備をする人は大変ですね。海外の航空会社には、これを理由に日本への運行を忌避するところが出てきても不思議はなさそう。
Posted by 高所恐怖症 at 2011年07月25日 14:39
いつも斬新な切り口の記事、とてもありがたく拝見しています。

子供を夏休みだけでも遠方にと、この夏は飛行機で九州を2往復します。が、このガイガーの値を見て震えが止まらなくなりました。

大至急、航空会社にはフィルターの除洗をお願いしようと思います。このような値が出るには、プルームを直接換気のために吸い込んだと考えられるのでしょうか?
Posted by 主婦@東京 at 2011年07月25日 19:27
ほとんど外部被ばくでしょう。線量が高いのは、飛行機の回りからの放射線です。室内の放射性物質が増えたわけではありません(その証拠に、高度とともに直ちに線量が下がります)

2マイクロシーベルト/時 x 2時間 = 4マイクロシーベルト=0.004 mSv

ですから、被曝量としてはほとんど無視できる範囲です。(職業的に往復するのは、ちょっとイヤかな)

子どもを飛行機に乗せてもたいした問題はないでしょう。
Posted by いんちょう at 2011年07月25日 19:46
小野先生、いつもお世話になります。
先日のキ○ンのお茶について、激しく同意しましたので、私もキ○ンへ抗議のメールをしました。

(返事の最後の1行)

この度いただきました「放射能レベルを公開すべきではないか」というお声は真摯に受け止め、今後の参考とさせていただきます。

でした。
まぁ、「日本の営利企業の決まり文句」ですね!
Posted by kawaski at 2011年07月25日 21:06
こんばんは。いつも興味深く拝読しております。自分は過去10年、飛行機は出張で相当利用しているので被曝量は気になります。小出裕章さんが市販の安いガイガーカウンターでは誤差がかなり大きく信頼性が低いので、表示の絶対値はそれほど気にする必要がないと言っていたのを聞いたことがあります。この点は先生はどう思われますか?
Posted by シロクマ雄 at 2011年07月25日 23:54
信じるものを信じる
それだけです。

意見の決定は、ご自分で。

私の意見はブログに書いています。
Posted by いんちょう at 2011年07月26日 05:36
いつも興味深く拝見させていただいております。
1点だけどうしても気になる記述がございました。

>熊本−東京の巡航高度は、3400ft(115,000m 約10km)

ここはおそらく
34000ft(1桁足らなかった)
11,500m(1桁多かった)
約10km(正)
ではないでしょうか。
3つの単位で相関が取れてないのが気になってしまいました。

これからも続けて拝見させていただきます。
記事の投稿引き続きお願いします。
Posted by にょ at 2011年07月26日 09:00
ご指摘の箇所、訂正させていただきました。

ありがとうございました。
Posted by いんちょう at 2011年07月26日 10:13
院長の線量計が計っていたのは、宇宙線であって、原発由来の放射性物質ではないのではありませんか。
Posted by s.y. at 2011年07月26日 17:43
http://www.nirs.go.jp/research/jiscard/data/index.shtml

をみますと、宇宙線なのかもしれませんが、行きと帰りで随分と差がありますので、影響あるのではないかと思ってポストしています。
Posted by いんちょう at 2011年07月26日 20:40
先日イギリスへの飛行中に計測してみましたが、道中ほぼずっと3μsv/h程度でした。
ロシア上空では最大の3.4μを記録しました。
ご参考までに
Posted by サラリーマン at 2011年07月30日 00:08
初めて拝見させてもらいました。
今度、子供が修学旅行で福岡から北海道まで旅行があり、主人がフレンチ系カナダ人。自身も親の仕事の都合でチェルノブイリの時にフランス近くにいてかなり、原発に関し敏感で今回の旅行に関しても反対です。
海外のメディアとの差がかなりあるのは、読んでいてわかりますが、飛行機で上空通る時に原発事故前と今ではやはり体にうける影響はかわってきてるのでしょうか?
だんだん日本のメディアではとりあげなくなってきてますが、いかがなものでしょか?私自身も検査技師で病院に勤めてますが、なかなか説得する説明が出来ないのでお力頂ければと思いメールしました。
よろしくおねがいします。
Posted by black ice at 2011年10月12日 21:46
black iceさん

私は、ご主人に賛成です。もちろん、定量的な分析はありません。雪も心配です。あえて危険を冒して、旅行する必要はないと思います。
Posted by いんちょう at 2011年10月12日 21:58
今月、上の子が小学校に上がる前に家族で沖縄に飛行機を使って行く予定をしているのですが、福島原発事故由来の放射能が飛行機内に入り込んで既に汚染されていないか心配です。
大丈夫でしょうか。
Posted by ぷよぷよ at 2012年02月10日 17:52
 もちろん汚染されているでしょう。しかし、地球上で汚染されていないところは既にありません。

 大丈夫かどうかは補償できませんが、放射能とともに生きていくしかないのです。我々は。飛行機自体の線量自体は高くありませんので、旅行によって被曝が増加することは考えなくていいと思います。
Posted by いんちょう at 2012年02月11日 03:46
院長先生、

いつも貴重な記事ありがとうございます!院長先生の記事を読み、少しでも放射能の影響を少なくするよう勉強しています。

先日、3/30にシアトル=成田間を往復しました。Radexの計測器を持参したのですが、離陸後すぐアラームが止まらなくなりよく見たところ、計測機を見てみると、なんと2.85μシーベルト(!)でした。その後、1.70-2.50μシーベルトの間を行ったりきたり。離陸後5時間以上、ベーリング海峡沖をすぎアメリカに大陸に近づくまで、ずっと1μシーベルト以上でした。恐ろしくなりました。

乗った飛行機はAir Canadaでしたが、通常ならまっすぐアメリカ大陸方向に向かうのですが、成田上空で飛行通路を変更していることにも気がつきました。成田から離陸した後、直接東に向かうのではなく、一旦南方に飛行して海に出た後、その後東に進路を変更していました。成田に向かうときは、福島・宮城沖500マイル以上前から進路を南に変更し、その後南から成田に向かう進路をとっていました。やはり、航空会社は線量の高さを知っていて、遠回りしてでも、できるだけ高濃度のところは避けているのでしょうか?

国内線でも結構線量が高いです。3月下旬に羽田=鳥取間を飛行機で旅行しましたが、一番高いところでは1.75μシーベルトでした。やはり国内線でも1μシーベルト以上です。

最初は「飛行機内の線量は高いからこんなもんだろう」と思っていたのですが、バンクーバーからシアトル間を飛行したので線量を計測してみると、一番高度が高いところ(雲の上)でも0.2μシーベルトが最高でした。

そう考えると、国内線も成田上空を通る国際線とも線量がものすごく高いといえそうです。最近、飛行機にのるとしばらく体が異常にだるくなるのは線量のせいなのかと思ってしまいます。

ちなみに足元1メートルの空間線量も図ってきました。シアトルと東京で比較すると、

シアトル:
室内0.07μシーベルト
屋外0.10-0.13μシーベルト

東京(六本木):
室内0.15μシーベルト
屋外0.2-0.3μシーベルト

シアトルは50キロ先に広島長崎の原爆をつくったHamford原子力研究所があるので全米でも線量が比較的高いといわれていますが、東京はシアトルの線量の倍でした。

また飛行機にのったら線量を計ってレポートします!

PS:ちなみに先日日本を旅行したアメリカ人の友人は、日本旅行後、乾いた咳がでて肺炎のようになり病院にいったそうです。日本を旅行したアメリカ人の多くが同じ症状をうったえているのは偶然でしょうか?
Posted by なおみ at 2012年04月01日 06:47
最近、アラスカン航空の従業員2800人のうち280人が脱毛、赤い斑点、充血等の健康被害を訴えているそうです。ABCのニュースとシアトルローカル局での映像を見つけました。アラスカン航空は制服を取り替えることにしたらしいですが、いまだ原因不明。

King 5 News Seattle
http://www.king5.com/home/Alaska-Airlines-Flight-Attendants--150127485.ht

ABC
http://abcnews.go.com/blogs/lifestyle/2012/05/rashes-hair-loss-caused-by-flight-attendant-uniforms/

機内の線量3μsv毎時として、一日3時間のフライト往復、一ヶ月20日働くとすると、年間被爆量は、

3μsv x 6時間 x 20日 x 12ヶ月 = 4,320μシーベルトですが・・・

だ、大丈夫なんでしょうか?

従業員の方の健康が心配されます。
Posted by なおみ at 2012年05月12日 16:45
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