2011年08月06日

原子力安全庁〜仏作って魂入れず

東日本大震災 原子力行政刷新/信頼回復へあくまで大胆に
 組織面でも、政府は規制機関である保安院を経産省から切り離し、独立性の高い新機関を設置する方向で検討に入った。
 事故後、国内だけでなく国際的にも信頼を大きく失墜した原子力行政。この機会に問題点をすべて洗い出すとともに、ゼロベースから大胆な改革に取り組んでもらいたい。
 その意味からも、原子力の利用と推進を所管する部署を明確に分離することは、原子力行政上、大きな意味を持つ。
 組織改編は保安院を経産省から切り離し、環境省に新設する「原子力安全庁」(仮称)に機能を統合。文部科学省が担ってきた環境モニタリングなどの関連業務も一元化する。来年4月の設立を目指す方針だ。
 まだ細野豪志原発担当相の試案の段階で、調整が必要だが、斬新な発想が随所に見られる。
 保安院とともにチェック機能を担ってきた内閣府の原子力安全委員会の位置付けも見直す。専門的知見を生かした助言・諮問機関「原子力安全審議会」として、安全庁の下に置く。
 安全庁の重要な役割の一つは事故発生時の初動対応だ。事故調査・検証も担当する。ほかにも廃棄物や汚染土壌の処理、除染を実施。放射線医学総合所も所管し、福島での活動を重点的に行うとしている。
 こうした改編で課題となるのは、人材をどう確保するか。注目されるのは、試案で「組織文化の大転換を図ることが不可欠」とうたっている点だ。
 安全庁の幹部人事では、出身府省との関係を断つ「ノーリターン・ルール」を適用する。経産省と保安院の人事交流が批判されたことに配慮した。踏み込んだ対応は評価できる。
 一方、これまで原子力行政に関与したことがない環境省に安全庁を置くことに対し、規制の実効性を疑問視する声もある。ただ、なれ合いを排するためには、これぐらいの「大手術」は避けて通れない。
 海江田経産相は「人心一新」を強調した。人事も組織も、先入観にとらわれない思い切った改革を進める以外に、失われた信頼を取り戻すすべはない。
2011年08月05日金曜日


一体何を考えているのでしょうか?組織を作れば、人材がわいてくると考えているのでしょうか。

昔は、通産省資源エネルギー庁のなかに原子力規制部門がありました。以前、就職活動の際に書いたように、通産省はそれはそれは人気ある省庁。人気があるということは、優秀な人間も集まることを意味します。本当に優秀な人間は、石油、石炭の海外との交渉を伴う部門に配属され,あまり優秀でない人は原子力部門に配属。しかしながら、昇進するにつれて、他部門交流があり、花形部門にいける可能性もあったと思われます。石油、原子力を知っているのならエネルギー関係の仕事をするのにはうってつけですから。
 原子力保安院となり、よく分かりませんが、ある程度人事交流は滞ったとは思われますが、それなりに行われていたはずです。他部門の常識が原子力に入ってくることで、プラスになる面もあったはずです。

 今回は、その交流をやめてしまい、「原子力安全庁」としてしまうようです。優秀な人間がこのような部署を希望するでしょうか?もし、自分の子どもが「原子力安全庁」に就職するといえば、ほとんどの親がやめろというはずです。現在の役人は、電力会社から教育を受け、それでどうにか一人前にしてもらうわけです。(原子力に限らず、どこの省庁もそうです。自前の教育機関を持っているところなどありません。業者と話をして、勉強して、それで規制をやっているのです。そんな官庁がハナから業界よりなのは火を見るよりも明らかなのです)
 電力業界と独立し、メーカーから独立して、どうやって原子力を理解するというのでしょう。本当ならば、3年程度は電力会社、あるいはメーカーに出向し、勉強しなければ、とても理解などはできません。現場から勉強せずにどうやって理解するというのでしょう。
 かっこいい名前をつければ、人が自然に集まってくると考えていたら、おおきな間違いです。もし、このような地に足のついていない省庁を作ってしまえば、今回よりももっともっとひどい間違いを起こすのは目に見えています。

 逆に米国の原子力規制委員会-NRCは、かなり優秀な人材がそろっています。不思議だったのですが、下記の記事で納得できました。

検証・大震災:自衛隊員10万人、史上最大の作戦(4)「情報不足」 危機感抱いた米政府から
 派遣が決まった15日時点では首相官邸は米側と調整する余裕はなく、窓口も不在。NRCの技術者には米海軍をはじめ軍関係者が多い。海軍は原子力潜水艦や空母など「原子炉」を保有し、管理に精通しているためだ。ルース大使は北沢防衛相と頻繁に電話でやりとりし、NRCと引き合わせることにこぎつけた。

 長年の謎が解けました。軍とつながっているために、優秀な人材を集めることができるのです。軍の原子炉といえば,トラブルもあるでしょうし、現実的な解決法を探らなければならない。原子力に優秀な人間を取り込もうとするならば、巨大な予算を持つ軍事部門がない限り、不可能なのです。

 日本の原子力はどうでしょう。原子力の軍事部門がありますか?将来性がありますか。あの御用達学者ばかりの東大でさえ、10年以上前に原子力学科は消滅しました。(システム量子力学などと名前を変えて、残存はしていますが)それほどまでに人気がない学問なのです。今後も優秀な人間が進むとは思えません。過去の栄光を食いつぶしている学問となってしまっているのです。

昨日の児玉教授のインタビュー(必見です)








Video streaming by Ustream
・自分の専門外のことには、素直に知らないという
・自分ができることをすることで「歌でもいい、なんでもいい」被災地の助けをしてほしい。
心に響きました。

 もし、初代原子力安全庁長官が児玉教授になるとするならば、この方がおられる限りは優秀な人材も集まってきます。しかし、政治家持ち回りの省庁ポストとなってしまえば、その省庁がどうなるのか行く先は目に見えています。

仏作って魂入れず

そうなるのは明らかです。

組織をいじりさえすれば、バラ色になるといった幻想を振りまくのはもうやめてください。本当に大事なのは、人材なのです。

■関連ブログ
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posted by いんちょう at 19:53| Comment(2) | 原子力
この記事へのコメント
素晴らしいご意見と思いました。原発の行方注視していますので毎日食い入るように拝読しています。
Posted by じゅんこ at 2011年09月27日 23:24
 コメントありがとうございます。こんなところに書いても、負け犬の遠吠えのようで・・

 賛同していただきありがとうございます。
Posted by いんちょう at 2011年09月28日 15:04
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