2011年08月09日

原子力発電入門(4)ウラン燃料精錬−いったいどこがエコ?

ウラン燃料ができるまでを少し見ていきましょう。

採掘 わが国にはウラン資源がほとんど存在しないため、原子力発電に必要なウランは全て海外から輸入しています。このため、供給源・地域の多様化を図るとともに、調達方法を効率よく組み合わせることにより、ウラン資源の安定的かつ経済的な確保に努めています。
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アフリカ南西部のナミビア共和国の露天掘りウラン鉱山。
長さ3キロメートル、幅1.2キロメートル、深さ350メートルの巨大な露天掘り。
全世界のウラン生産量の約1割を生産している。


精錬 製錬とは、採掘されたウラン鉱石を精製し、純度を高めて粉末状のウラン精鉱(八酸化三ウラン[U3O8]/イエローケーキとも呼ばれる)を作る工程をいいます。
 ウランは、一般に八酸化三ウラン[U3O8]量を取引単位としているため、ウランの生産量とは実際にウラン鉱石[U]を製錬した量[U3O8]ということになります。現在、カナダおよびオーストラリアが製錬能力の多くを有し、2002年では世界全体の約51%を占めています。

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転換 転換は、ウラン235の濃度を高める「濃縮」の実施に必要な工程で、粉末状のウラン精鉱(イエローケーキ)をガス状の六フッ化ウラン[UF6]にします。
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濃縮 原子力発電所では核分裂しやすいウラン235の割合(濃縮度)が3〜4%程度のウランを燃料として使用しています。天然ウランにはこのウラン235が0.7%しか含まれていないため、この割合を高める工程が濃縮です。
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このような工程を経てできたのがペレット。
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 原子力発電の効率を示すとして、よく説明されるのが下図です。
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石炭が220万トンなのに対して、濃縮ウランは、10tonトラックで3台分にしかならない。随分と良さそうですね

・・・・

ちょっと、待った。このウランペレットは、精錬してできたものです。石炭は掘り出されたままの状態。比較すること自体おかしくないでしょうか。

では、鉱山ではどの程度の量が必要とされるのか。

30トンの燃料を作るために
 普通の大きさの原発(100万kW時)を一年間運転するのに必要なウラン燃料は30トンです。
燃料ペレットは燃えるウラン(核分裂を起こしてエネルギーを出すウラン)であるウラン235、約3%と燃えない(核分裂しない)ウラン238、約97%からなっています。
 天然のウラン鉱石中の、ウラン235とウラン238の割合は0.7%と99.3%です。そのため燃料ペレットを作るには、ウラン235の濃度を高くしなければなりません。これを濃縮といいます。
 30トンの燃料を作るために、ウラン残土が約240万トン、鉱滓(低レベル放射性廃棄物)が13万トンでると計算されています(劣化ウラン弾の項参照)。


この鉱物量は、石炭の220万トンをも上回ります。

また、一連の工程に一体どれだけのエネルギーを費やしているのでしょうか?最後の最後にCO2を排出しないから、地球環境に優しいと言うとは、、、先日述べました効率のことといい、ウソばかりなのは明らかです。

 しかも、このウラン残土、劣化ウランでできており、放射能をまき散らします。(半減期45億年)地球環境にも優しくありません。発掘現場では、様々な健康被害が報告されています。
 「大量破壊兵器の原爆は、戦争後も広島や長崎の被爆者に影響を 与え続けている。閉山後のウラン鉱山跡も同じよ。先天性障害を持 つ新生児も増えている。低レベルだから影響がないという科学者ら には、ここの廃棄物を自分の裏庭に持って帰ってもらいたい

 ホピ族
 ホビ族はアメリカの砂漠地帯に住むインディアンである。マヤ文明の末裔と言われており、優れた霊性を持つ。ホピ族の聖地にはプロフェシー・ロック(予言の岩)があり、そこには人類の未来の予言が刻まれている。彼等はこの予言を代々語り継いできた。
フォーコーナーズというホピの住む土地にはウラン採掘所があり、広島市・長崎市に投下された原子爆弾の原料となったウランは、ここから採掘されたものである。


母なる大地から心臓をえぐり出してはならない
もしえぐり取ったならば
それは灰のつまった瓢箪と化し
空から降り
やがて世界を破滅に導く
この瓢箪の灰は
恐ろしい破壊力を持ち
川を煮えたぎらせ
大地を焼き尽くし
生命が育たなくなる
そして人々は不治の奇病に苦しむのだ。


 原子力発電のどこがエコなのでしょう。

本日のまとめ
 「ウラン燃料を作るには、石炭以上のウラン鉱石が必要であり、燃料精製にも多大の費用がかかっている。」

 それにしても、ウラン鉱石が仮にただ同然の価格だとしても、これだけの工程をへたらとんでもなく高価になると思うのは、私だけでしょうか?実際問題、原子力発電の燃料費はいくらなのでしょう。原発推進を声高に叫ぶのならば、各工程の費用を明らかにすべきです。

 たとえ話をすると、アルミと鉄のどちらが空き缶製造に有利かを比較をする際に、
・精錬したアルミインゴット
・生のままの鉄鉱石
を比較して、アルミの方が環境に優しいと強弁するようなものだと思います。

参考文献
東京電力原子燃料サイクル 
よく分かる原子力−「少しの燃料で大きなパワー」というけれど

■原発入門シリーズ
  1. 原子力発電入門(1)発電方法
  2. 原子力発電入門(2)もっとも効率が悪い発電方式
  3. 原子力発電入門(3)原子力−莫大なエネルギーの見返りは放射能
  4. 原子力発電入門(4)ウラン燃料精錬−いったいどこがエコ?
  5. 原子力発電入門(5)なぜ、海に面しているのか?
  6. 原子力発電入門(6)放射能と放射線
  7. 原子力発電入門(7)原子力は急には止まれない。
  8. 原子力発電入門(8)−核分裂生成物の半減期と病気
  9. 原子力発電入門(9)−プルトニウム・・神話を超える管理
  10. 原子力発電入門(10)まとめ−絶対安全な原発は無理 
タグ:原発入門
posted by いんちょう at 13:03| Comment(7) | 原子力
この記事へのコメント
いつもわかりやすい記事ありがとうございます。

高木仁三郎さんの本では100万kW級原発1年運転分の核燃料で残土70万tと書いてあったと記憶してますが…時代をえて、含有率が高いところを掘り尽くし、含有率が低いところから産出しているんでしょうかね。

推進派の炭鉱労働者の死者に比べると原発は〜というのが一層怪しさを増しましたね。鉱山の事故数はおそらく産出量に比例するので、放射能被害を別にしても、ウラン鉱山も同じくらい事故が起きているでしょうし。
Posted by まるこめX at 2011年08月09日 18:36
単純に産出量と比べると、事故の予測はたしかにできそうですね。

 ウラン残土は、本当のところ一体どのくらい出るのでしょう?
Posted by いんちょう at 2011年08月09日 20:59
良質(?)の鉱石で、ウラン含有率 0.1〜1%、モノによれば、0.01%程の場合も…と聴きました。そういった、含有率の低いものは、精製の効率が悪いため、そのまま廃棄されるそうです。結果、掘り返して、汚染するだけ…と。
Posted by Monkey3rd at 2011年11月03日 20:36
まぁそれで生計を立ててる人の経済と安全のトレードオフ、ウランのそこ周辺の生物に対する影響(汚染といっても汚染と思うのは人間だけ)と石炭の世界規模での影響(CO2温暖化説が正しいならば)の比較でしょうね。
自分が思う正義を貫きたいという人間の傲慢さが見てとれます。
Posted by こんにちは^^ at 2011年11月04日 14:41
世界のウラン資源の約70%は、いずれかの住民コミュニティがすでに居住しているエリアに存在する。ウラン産出は農村を破壊し、牧草地や田畑を奪い、周辺の水源を汚染する。 ニジェール政府だけでも、2008年に外国の投資機関に対して、広大な北部の土地における122のウラン産出の採掘権を与えた――ここに住むトゥアレグ人のことなど考慮なしに。数多くのウラン産出地域においては同じように、土地の強制徴収と移住を人びとに強要する。1996年1月26日にインドのチャティコチャ村では、警察支援の下、採掘を担当する企業のブルドーザーは、さらなるウラン採掘場所を確保するため、事前警告なしで家屋や納屋、田畑を押しつぶした。
鉱石からウランを取り出すために大量の水が必要とされる。しかし多くのウラン採掘地域で水は不足している。 ナミビアの水道会社「NamWater」が先だって試算したところ、ナミビアで計画されているウラン鉱山が稼働すると、年間5,400万㎥の水が不足することになり――それはオマルル・オムデルのデルタ地帯全体で取水できる量の11倍にもなる。鉱山およびウラン精製施設における莫大な水需要は、現地の住民・家畜・農業との間で水の奪い合いを発生させる。
ウラン坑とその廃棄物の埋立場からの放射性・毒性物質は、そこでの従業員と周辺住民を病気にし、癌の発症率を上昇させる。 旧東ドイツのヴィスムート・ウラン鉱山では、約1万人の元作業員が放射線被害による肺ガンを発症した。キルギスのウラン鉱山町マイルースー市の住民においては、同国の他地域に比べ2倍の頻度で癌が発症している。1955年から1995年にかけてグランツ村(ニューメキシコ州/USA)のウラン鉱山で働いていた労働者には、これらと同じように癌発症率と死亡率が高いことが研究によって証明されている。ウラン鉱山産業における重大な健康被害の数々は、ニューメキシコ州のナバジョで、ポルトガルで、ナイジェリアで、そして他の数多くのウラン鉱山地域で明らかになっている。
Posted by Monkey3rd at 2011年11月04日 22:12
濃度3%の燃料30トンを作った残土が240万トンって、天然鉱石の濃度が0,7%なのに計算合わないんですが
Posted by   at 2017年06月03日 02:56
原子力発電エネルギーは、自給できないというのが正しい。
燃料棒のウランは全て輸入、しかも核兵器の製造工程で出来るもの。ウランの争奪戦を各国で行われることはあり得る。だから原子力発電に賛成することは、戦争に賛成することと同じ。
Posted by キュートライブ at 2017年08月15日 03:00
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