2011年08月11日

水俣と福島(上)−企業城下町では真実は封殺される

信じられないのなら、日本国民をやめてもらうしかない」で紹介させていただいた山口和也氏の記事です。

2011年8月5日(金)熊日から
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(前略)
 国策である原発を受け入れてきた各地域は今、政府と電力各社の動きに振り回されている。
 それは、国の手厚い保護を受けたチッソが起こした水俣病の悲劇を抱える不知火海沿岸地域や日本の国策としての米軍基地を押しつけられてきた沖縄の困難とダブって見える。福島と同じく国策に翻弄された地域で起きたからだ
 水俣病を取材してきた熊本日々新聞と、基地問題を見据えてきた沖縄タイムスの合同で国策と地方の関係に迫る。
 ◇  ◇
 チッソ水俣工場は化学製品の原料を製造、提供し、近代日本の経済成長に貢献した。東電の福島志摩原発は、日本の中枢である首都圏に電力を安定供給してきた。いずれも国策を背景に進出したが、受け入れる地元も誘致運動を展開した。過疎の地域を浮揚させるチャンスととらえたからだ。
(中略)
こうして進出した巨大資本が企業城下町を形成するのに、それほど時間はかからなかった。

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 チッソの社員は「会社行きさん」とあこがれの対象で、水俣とチッソは「血のつながりにも似た交情を深めた」と市史はつづる。
 1959年、企業城下町を象徴する出来事があった。当時の熊日によると、水俣病の原因を工場排水と考えた漁民らがチッソに排水停止を迫り、おおきな騒ぎになっていた。即座に水俣市長、市議会、商工会議所、労働組合など「オール水俣」ともいうべき28団体が熊本知事に陳情した。漁民とは逆に「市税総額1億8000万円の半分をチッソに依存している。排水を止めてくれるな。」と言う要望。地域が患者や漁民を包囲する構造がここにはあった。
 福島原発のある双葉町の住民約800人が避難するホテル。「町民の3分の1は東電と関連会社に勤めている。東電や原発の悪口など言えるはずはなかった。」
 実際、町議会議長経験者は、「東電を批判するものがいれば、私が許さなかった」と自戒を込めて明かした。企業城下町でもののいえない雰囲気が作られていった点でも、水俣と福島は共通している。
 それだけではない。水俣では患者が「病気がうつる」「おまえたちのせいで魚が売れん」と差別され、補償を求めると「カネ目当てか」とののしられることもあった。結婚、就職での差別もあった。
 4月、福島県の小学生の兄弟が県外の避難先で仲間はずれにされたと報じられた際、宮本水俣市長は「差別や中小を繰り返してはならない」といち早く声明を発表した。水俣病の苦渋の歴史を踏まえた対応だった。(中略)
 国策とそれに呼応した地域によって、巨大企業を頂点とする支配の構造が形成された水俣と福島。甚大な人災は、こうした土壌から生まれた。


 福島原発で事故後、収束のめどが全く立っていないにも関わらず、オール玄海で原発再開を推進する玄海および佐賀県。また、運転再開ばかりか、増設すら口に出す敦賀市長。
 水俣の描写と恐ろしいほどつながります。企業に自治体の財政を握らせてしまうことがいかに恐ろしいことになってしまうか。そして、行くところまで行き着かない限り、やめられない。日本が太平洋戦争に無謀にも突入した時代と全くおなじです。先の敗戦に本当に何も学んでいなかったことがよく分かります。

 まわりを思いやって行動を控える。日本の美徳と思います。しかし、自分自身で考え、行動しなければならない時代が来ました。先入観にとらわれずに、自分自身の頭で考える。一番大切なものは何かを常に考えておく。

「安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから」

 今度こそ、みんなで力を合わせて実現していきましょう。

■関連ブログ
信じられないのなら、日本国民をやめてもらうしかない。2011.6.28
posted by いんちょう at 16:02| Comment(3) | 原子力
この記事へのコメント
福島の事故で本当にこの国は敗戦から何も学んでこなかったんだなと感じます。
マスコミはまるで戦時中の大本営発表で、真実を伝えるのはフリーのジャーナリストだけです。
田原総一郎は今回の震災・事故を第二の敗戦といいましたが、むしろ開戦と思います。
行政や電力会社は無策、放射能が日本全国にばら撒かれ状況はどんどん悪くなっています。
旧ソ連でも対応はもっと迅速でした。

我々一人一人が行動を起こさないと取り返しの事になりそうです。
Posted by zaf at 2011年08月11日 18:02
児玉先生ではありませんが、自分たちができることをできる力で無理せず、精一杯することが一番大事だと思います。

 電話、FAX、ネットでの発信、等々あきらめず、地道にやっていきましょう。

敵は信じられないくらい強大です。
Posted by いんちょう at 2011年08月11日 20:04
佐藤栄佐久さんが、著書でこういう実情を「日本病」と書かれていましたが、正義とは「お城のお殿様の言うとおり」であって、城下町では誰も文句を言えない、これは敗戦があっても、変わらない日本の病気だと思います。日本=○○さんの言うとおり、であって疑問をはさむ人はみんな「非国民」です。ここはホモサピエンスとして暮らせる場所なのでしょうか。あまり自信が持てません。
Posted by lunachan335 at 2011年08月11日 20:55
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