
「放射性物質は海で希釈される。魚を食べてもまず心配ない」。福島第一原発事故で海に放出された放射性物質をめぐる識者の見解だ。水俣病に詳しい医師の原田正純さんは、新聞で見て「腰を抜かすほど驚いた。」という。
水俣病では海に排出された有害物質が、食物連鎖を通じ生物に濃縮され、最終的に人間を犯すというプロセスが証明済み。水俣病不知火患者会の大石さんは「国も企業も御用学者も水俣病から何も学んでいない」と憤る。
(中略)
情報隠しや攪乱はは水俣病でも繰り返された。工場排水を与えて発症したネコ実験の結果をチッソは伏せたままだった。1959年、「原因物質は有機水銀」と熊本大学が発表した際には、チッソよりの学者や業界がアミン説や爆薬説まで唱え、特定を遅らせた。
水俣病は今年、公式確認から55年。紛争を長引かせてきた最大の理由は「被害」と「補償」の関係だ。
被害の面では、国、熊本県とチッソがその範囲を狭く小さくとらえようとした。複数症状の組み合わせがなければ水俣病と認めず、地域や生まれた年で救済対象を外した。微量汚染を軽視し、沿岸全住民の健康調査すら未着手だ。
水俣病の歴史が教えているのは、被害をありのままに認めることの大切さだ。福島で放射線の健康被害がどうなったか分かるのは何年も先。
(中略)
補償をめぐっても水俣病は教訓を提示する。長らく行政責任を認めようとしなかった国は、チッソに保証金を支払わせ、自らは背後からチッソを金融支援してきた。その構図が国の責任を曖昧にするとともに「チッソがつぶれたら救済されない」との空気を生み、補償の範囲を狭くし水準も低く押さえ込んだ。
原発被害に対する国の賠償制度も、原因企業東電が窓口となり、国が支援機構を通じ背後から支援する。水俣病と二重写しだ。水俣病と同様に被害者より原因企業を優先することになりはしないか。
発生を防げなかったばかりか、被害を拡大させ、補償も後手後手に回った水俣病。その経験を水俣の今後と福島にいかしたい。また、そうでなければならないと思う。(熊日編集委員 山口和也)
原発事故の隠蔽、御用学者のあまりにもひどい説明を聞き、私も水俣病との類似点を感じ、以前記事にしたことがあります。(東大・専門家を信用するな)
この時は、政府側の説明について、単純に調べただけですが、
この記事を見ますと、
・情報の隠蔽
・被害の過小評価
・原因企業の延命
と、なにからなにまで水俣病とおなじことをやっています。
電力会社は、他に比肩するもののないパワーをいまだに持っています。このままでは、またおなじことを繰り返すのは間違いありません。
放射能は目に見えません。見えないものは信じられない、信じようとしない。なぜ、ヒロシマ、ナガサキそして、チェルノブイリから目を背けることができるのか。私には不思議でなりません。
お盆で里帰りされる祖先に対して申し訳ない気持ちでいっぱいです。
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