今回の入門シリーズは、この講義を参考にしながら、私なりにまとめたものです。従いまして、具体的な数値・・・例えば炉心の大きさ、出力・・・などが抜けていますが、そこはご了承ください。
また、ICRP(International Commission on Radiological Protection: 国際放射線防護委員会)と ECRR(European Committee on Radiation Risk:欧州放射線リスク委員会)の違いについて、補足しておきます。
内部被爆の問題は、次のたとえが大変わかりやすいと思います。
「ICRPの健康基準なんか、信用してはいけない」
(週刊現代 2011年8月6日号)
− 日本政府が錦の御旗にするICRPのモデルには、どんな問題があるのか。
ひとつは、やはり内部被曝の危険性を過小評価している点です。
外部被曝と内部被曝の違いは、こうイメージしてください。石炭がくべられている暖炉の前に私が座ると、身体を温めることができます。しかし、その赤熱した石炭を食べて体内に取り込もうとすれば、どうなるでしょうか?私はすぐに死んでしまいます。それが、外部被曝と内部被曝の危険度の違いです。
もう、3度目の記載ですが、肥田舜太郎氏の動画
内部被曝を軽んじてはいけません。mSvなどの単位で計測できるようなものではないのです。
■関連ブログ
われわれは原発事故にどう対処すればよいか(肥田舜太郎氏)2011.6.26
さて、1回目からまとめます。
・原子炉でお湯を作って(火力と全くおなじ原理)発電する。特殊な方法ではない。
・発電効率はもっともわるい。明治時代の蒸気機関車を図体をでかくしただけ
・核分裂で熱を生成し、ヨウ素、セシウム、ストロンチウムなどの放射能を大量に作り出す。
・ウラン燃料を作るには、同等火力の石炭以上のウラン鉱石が必要であり、燃料精製にも多大の費用がかかっている
・蒸気を冷やすために海水が必要。海水を取水するため、日本の原発は沿岸に立地している
・放射能には3種類(アルファ線、ベータ線、ガンマ線)がある。外部被曝はガンマ線、内部被曝はアルファ線、ベータ線が問題となる。
・原子力発電は停止しても、相当量の崩壊熱が数年間残る。
・核分裂生成物は体内に入り、内部被曝を引き起こす。また、放射能がなくなるには数百年必要
・使用済燃料は数万年の管理が必要。
以上。
では、絶対安全な原発は作ることができないわけを説明しましょう。
・核分裂反応を止めても、崩壊熱が数年間出続ける。
・使用済燃料の管理には数万年
これが全てです。つまり、なにか事故が起きたとしましょう。当座の応急処置を数年間続け、さらに燃料を取り出さなければなりません。そんなことは不可能です。地震があっても、津波があっても、数年間は大丈夫なように、機械が設計できると思いますか?今の津波対策では、への突っ張りにもなりません。
ストレステストは、カネの無駄で書いたように現在の事故対応は、非常用装置が動いた時点で解析をやめています。少なくともその手順を燃料取り出しまできちっと担保できるようにしなければなりません。それは、ストレステストよりももっと前の話です。
原子力の技術者ならば、全員分かっています。この話が全く表に出てこないのはなぜでしょう。私には不思議でなりません。
福島は燃料が溶融して、圧力容器から下に落ちてしまっています。このように溶融した燃料を取り扱う技術はありませんし、今後も開発できないでしょう。すなわち、福島の原発立地点は、数万年の管理が必要な地点とすでになってしまっているのです。この地域をどう管理していくか。また、日本全国に散らばってしまった莫大な放射性廃棄物をどうするのか、答えは明らかです。
■関連ブログ
ストレステストは、カネの無駄2011.7.7
子供だましのシビアアクシデント対策2011.6.25
■原発入門シリーズ
- 原子力発電入門(1)発電方法
- 原子力発電入門(2)もっとも効率が悪い発電方式
- 原子力発電入門(3)原子力−莫大なエネルギーの見返りは放射能
- 原子力発電入門(4)ウラン燃料精錬−いったいどこがエコ?
- 原子力発電入門(5)なぜ、海に面しているのか?
- 原子力発電入門(6)放射能と放射線
- 原子力発電入門(7)原子力は急には止まれない。
- 原子力発電入門(8)−核分裂生成物の半減期と病気
- 原子力発電入門(9)−プルトニウム・・神話を超える管理
- 原子力発電入門(10)まとめ−絶対安全な原発は無理
タグ:原発入門