

白血病の初期症状がよく描かれています。さすが、手塚先生です。
手塚治虫の原発に対するスタンス(一貫して反原発だったとのこと)
コメント欄より−metroさんありがとうございました。

研修医時代から、どのようにして白血病を見つけるかについてはよく聞いていました。大学病院の第二内科(血液内科)の外来初診で見つけられることはまずなく、ほとんどどこからかの紹介なのです。大学では歯科口腔外科からの紹介が比較的多いとのことでした。
・歯茎からの出血が止まらない
・歯肉腫脹
などから白血病を疑い、採血をして白血病を見つける。
熊大の歯科口腔外科は、随分と優秀なんだなぁと思ったものです。
なぜ、このような症状が出るのでしょうか?
血液の工場である骨髄は、読んで字のごとく骨の中に存在しています。

骨髄の中にある造血幹細胞から、血液が作られます。そして、血液は、
・白血球・・体内に侵入してきた異物を除去する-->(感染による発熱)
・赤血球・・肺で酸素を受け取り全身に運ぶ------>(貧血)
・血小板・・血液を固め、止血に働く----------->(血が止まりにくい)
の大きく3つの成分で構成されており、不足することによって右のような症状が現れます。
白血球が異常に増加し、通常は赤い血液が白くなってしまうことから,白血病と名付けられたのです。採血をすると文字通り、肉眼で分かるほど白く見えます。
造血幹細胞−全ての血液成分の親玉−が増殖することが多いため、結局この子どもである
・白血球
・赤血球
・血小板
のいずれもが影響を受けることになります。
通常は、
・白血球の異常増加
・赤血球、血小板の異常減少
が同時に起こることが多いのです。白血球は見かけ上増加していますが、出来損ないの製品であるが故に、感染を防ぐ効果はほとんどありません。まれに、白血球すら極端に減ってしまう白血病もありますので、
・白血球は増えても、減っても、白血病の可能性あり
白血球以外の成分(赤血球、血小板)に異常なければ、様子を見ることも多くなります。しかしながら、前の検査結果から極端に変化しているならば、精密検査をする必要があるでしょう
ここで、私が発電所に勤めていたときの健康診断書を例示してみます。
(今から20年前の検診結果です)

所属が発電部第一保修課 27歳の時です。
当時は発電所の放射線管理区域には入っていました。
年間被曝量は12-30mREM = 0.1-0.3mSv/year
程度。この程度の被曝量でも半年に一回血液検査をしています。
さて、細かく見てみます。大事なのはこの部分

ん、、今気がつきましたが、血小板が入っていません。これは、ちょっと片手落ちのような・・・。(法定の検査では、必要ありません。が、今では測っても測らなくても、検査費用は変わりません)
まず見るのは、
・白血球数
・赤血球数(ヘモグロビン)・・貧血
・血小板
に異常数値が出ていないか。(例えば貧血+白血球増加など複数系統に異常が見られた場合は、精密検査をおすすめします)
注:赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット(,MCV,MCHC)は全て、赤血球の検査ですので、複数系統にはなりません。・・・貧血があれば、通常は赤血球数とヘモグロビン、ヘマトクリット全てに異常が出てきます
そして、次に大事なのが白血球百分率−血液像になります。単に白血球の数だけを調べていても早期の異常を発見することはできません。従いまして、私の放射線従事者用健康診断でもきちんとこの血液像を調べているわけです。
おのおのの血球成分を顕微鏡で見てみます。
リンパ球(略号、以下おなじ Lym)

単球(Mo)

好中球(Neu)桿状核と分葉核

好酸球(Eo)

好塩基球(Baso)

つ白血球の中身が酸の色(赤)になるか塩基(青)になるかで名前がつけられています。
さらに
・その他 (Other)
という分類があります。ここに入ってくるのが、骨髄球(Myelo)といわれるようないわゆる未熟な細胞です。この未熟な細胞が血液内に出てくるようになってしまいますと、まず白血病ということは間違いありません。(仮に、白血球数その他全て正常であっても)
白血病−異常に多い白血球 ・・ 血液が白く見えてしまう

実は、一言で白血病といっても
・急性白血病
・慢性白血病
と2つに分かれ、急性白血病は、さらに
・急性骨髄性白血病
・急性リンパ性白血病(小児に多いとされる)
と別れます。
そして急性骨髄性白血病は、FAB分類で
M0 急性骨髄球性白血病、未分化型
M1 急性骨髄芽球性白血病
M2 分化傾向を持つ急性骨髄芽球性白血病
M3 急性前骨髄球性白血病(APL)(ICD-10: C92.4)
M4 急性骨髄単球性白血病(AMMoL)
M4Eoではinv(16),t(16;16)転座が代表的な遺伝子異常。化学療法の感受性が高い。
M5 急性単球性白血病(AMoL)
M5a
M5b
M6 赤白血病
M7 急性巨核芽球性白血病
と細分化され、それぞれ予後、治療法も異なってきます。まとめると、
白血病はいろいろあって、それぞれ性質が異なる
というわけです。しかも一つ一つの症例数は少ないのですから、1〜2年程度でなにが分かるというのでしょう。なにも分かるはずがありません。ほとんどの医師が敬遠するのは、まあ当然といえば当然です。
この血液像。実は、福島第二原子力発電所内で計測できるように、立派な自動血球測定器がありました。(ただし、未使用)理由を聞いたところ、担当の人は、
「実は、血液検査を外注して変な値が出ると困るから、自分のところで測れるるようにしておいたんだよ。今となったら笑い話だけどね」
と。
それを聞いて、わたしは背筋が寒くなりました。なぜなら、昭和46年(1971)頃に福島第二原子力建設準備事務所が発足、営業運転開始は昭和57年(1982)と比較的新しいプラントだったから(私の入社は、1988年)です。その時でさえ、白血球に異常が出ることを恐れていたということは、一体なにを意味するのでしょう。そして、そのデータを隠そうとした意図が会社にあったこと(隠す必要はなかったのですが)・・恐ろしい話ではありませんか。
顕微鏡像に興味がある方は、下記リンクをご覧ください。(私にはこれ以上の説明はできません)
血球
血液形態学
Q&Aは適宜記事中に追加していきます。
質問
幹細胞に、腫瘍性の変異がおこって、どれほどの期間で、臨牀症状が出てくると、血液内科学では、考えられているのでしょうか。
回答
腫瘍性の変化を起こすには、細胞の遺伝子のうち増殖、分化を司る遺伝子が複数個(3〜4)損傷される必要がある。さらに、免疫力によっても左右される。例えば、T-cell(リンパ球)が損傷されている場合には数週間。増殖能力の落ちた高齢者では、半年程度になることもある。20〜50代であれば細胞分裂も盛んであり、通常は2〜3ヶ月程度と考えて良いのではないか。
■関連ブログ
白血病入門(1)熊大の研修医時代2011.8.20
タグ:白血病
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20110812dde012040031000c.html
教えていただきたいのですが・・・
幹細胞に、腫瘍性の変異がおこって、どれほどの期間で、臨牀症状が出てくると、血液内科学では、考えられているのでしょうか。5ヶ月で白血病になるというのは、現代医学で、説明可能なのでしょうか。
受精卵ですと、5ヶ月で、胎盤と胎児を含めれば、数キログラムまで成長しますが。
血液検査でCK38↓ LD250↑ ALP463↑ 尿酸2.2↓ CRP3.566↑白血球数11470↑でした。甲状腺異常あればもっと腫れるから甲状腺の検査項目は必要ないとの事でした。放射線影響はそんなに早く出ないから関係ないとの診断でした。
ご心配なことと思います。放射能の影響は既に出ていますので、病院の言うことは残念ながら認識不足だと思います。
小児リンパ性白血病の典型的症状は、
http://onodekita.sblo.jp/article/47696763.html
をご覧ください。赤血球、血小板も変化があれば疑います。
a00@onodekita.com
まで、スキャン、もしくはデジカメ撮影の上送付していただければ幸いです。