
「100ミリ・シーベルトまでは問題ないと言う人もいれば、危ないと言う人もいる。何が本当なのか、よくわかりません」。東京都の主婦(37)は、不安げに話す。
この主婦の不安は当然だ。100ミリ・シーベルトより低い放射線の影響がどれほどなのか、はっきりしていないからだ。
放射線の健康影響の土台になっているのは、広島・長崎の被爆者の追跡調査だ。放射線影響研究所(広島市)が、被爆者約9万4000人と、広島・長崎在住だが原爆爆発時に市内にいなかった約2万7000人の計約12万人を現在も継続して調査している。
最初に影響が出たのは白血病で、原爆の2年後から増え始め、6〜8年後に最も増えた。ただし、被曝(ひばく)量が5〜100ミリ・シーベルトだった約3万400人では、被曝が原因とみられる白血病の死者は4人で、明らかに増えたかどうかはわからなかった。白血病以外のがんは、25年後の1970年ごろまで明らかな増加はみられなかった。
現在では、1000ミリ・シーベルトの被曝をした人は平均して、被曝していない人に比べ、がんの発症率が1・5倍高く、被曝量とがんの発症率はほぼ比例関係にある。だが、被曝量が少ないほど被曝していない人との差は小さくなる。同研究所主席研究員の中村典(のり)さんは「実際には何らかの影響があるのだろうが、12万人の調査で統計的に差が出るのは、100〜200ミリ・シーベルトくらいまで」と話す。それ以下の量の被曝では、どの程度の影響があるのかはっきりしないという。
100ミリ・シーベルト未満の放射線の影響は動物実験などからの推定になるが、専門家の間でも意見は分かれる。〈1〉低い放射線量でも、量に比例して発がん率は増える〈2〉一定量以下の放射線はまったく影響を与えない〈3〉放射線量が低いからといって発がんの危険はあまり減らない――などの説がある。
同研究所の調査から推計すると、100ミリ・シーベルトを1度に被曝した時の生涯の発がん率の増加は1・05倍程度になる。それを多いとみるか、少ないとみるかは、個人によって受け取り方が違う。科学技術社会論が専門の東京大学教授、藤垣裕子さんは「どこまでを許容するかを決めるのは、社会であり市民自身」と話す。
チェルノブイリ事故後の欧州では、住民が加わって被曝の低減に取り組んだ。日本でも今回、住民自らが周囲の放射線量を測定したり、放射線量の高い場所を除染したりといった取り組みが進んでいる。
「『ただちに影響はない』といった上からの一方的なメッセージではなく、被曝放射線量への対策なども市民が参加して決めることが納得や理解につながる」と藤垣さんは話している。(中島久美子、館林牧子、野村昌玄)
(2011年8月18日 読売新聞)
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・読売新聞 正力氏が原発推進
・放射線影響研究所 ABCC(米国)が前身
この2つだけで、どんな内容になっているかは、読まずとも分かります。この研究こそが、100mSv安全の根拠となっているのです。
ABCCの設立は、1947年。原爆が投下されたのは、1945年 2年以上経過しています。原爆投下直後は、やけどなどの全身熱傷でなくなる方も多かったと思われます。
その原爆投下直後の状況については、「原爆体験を世界に」橋爪文〜NHKラジオ深夜便からをお聞きになってください(後半部分)あの終戦の時期に2年間生き延びられたのは、いったいどれだけの方でしょう。つまり、この研究は1947年当時に生きておられた方を母集団としており、それ以前になくなられた方は全く含まれません。当時のことです、白血病を発症していたとしても
・この子は食事を満足にとれなかったから、栄養失調で死んでしまった。こんなにやせ細ってしまって・・ほんとうに申し訳ない
・ちょっとした打ち所が悪くて、死んでしまった(おそらく、血小板減少による易出血性)
そういった理由で調査されることもなく他界されてしまった方々が数多くいたのは間違いありません。(橋爪さんの話をお聞きになってください)
2年経ち、そういった方がふるいにかけられたあとで、この研究が行われました。その状態でも、1.05 倍に増えてしまっているのです。たかが、5%でしょうか。
40名のクラスで言えば、2名に当たります。わたしの小学校、中学校、高校の同級生でガンでなくなったのは、今までたったの2名です。それが、20名以上になるのですから、それはもうそれだけでも信じられないことです。
また、この研究は一回の原爆投下だけですから、
100ミリ・シーベルトを1度に被曝した時の生涯の発がん率の増加は1・05倍程度になる。
と言う表現になります。すなわち、今回の原子力災害のように1年間継続して100mSvに当たる線量を被曝し、そして将来にわたって毎年被曝する集団などは今までいなかったのです。(そんなことをしたら、殺人罪でその責任者は告訴されます)1年間立てば、DNAは修復するので大丈夫というのは、全く根拠のない話だとわたしには思えます。(根拠があるならば、教えていただきたい)
被曝は蓄積するという考え方が主流ですし、そういった放射線管理を今までしてきています。(生涯にわたる積算被曝量と、疾患の関係を疫学調査しています)
原子力発電施設等 放射線業務従事者等に係る疫学的調査(平成17年から平成21年) p.32から

この表を見てください。20万人を超える職業的被曝の大規模調査ですら、累積被曝量 10mSv未満の区分が74%を占めているのです。(わたしも、この集団に入ります)この表を見て、驚かない東日本の方がおられますでしょうか?(わたし自身、今大変驚いています)累積で20mSvを超える被曝をしている人すら、16%(33,950人)しかいないのですよ。この部分にほとんどの福島の人が入るのではないでしょうか。その数約200万人。あり得ません。許されるような疫学調査ではないと私は思います。
下記は、白血病発症の解析資料です。

これによると、有意差は一応出ていません。
ただし、これは外部被曝のみの線量です。原子力発電所では、福島中通り地区の汚染がありましたら、全面マスクをしなければ、仕事ができません。汚染区域で全面マスクをせず、内部被曝をさせた場合の統計などは、もちろんこの世の中にはありません。
山下氏がつい、
山下:200万人の福島県民全員です。科学界に記録を打ち立てる大規模な研究になります。
と口を滑らせたのです。この100mSvは広島・長崎のABCC研究から導かれたものですが、100mSvはそもそも、
シュ:住民がリラックスしやすいようにと、年間100ミリシーベルト被曝しても大丈夫だともおっしゃっている。通常それは原発労働者の緊急時の被曝上限だと思うが
とドイツの記者が指摘しているように、これ以上では明らかに危険だから職業被曝はこれを限度としようという話なのです。
毎年、100mSvを浴びて大丈夫などということはどこの教科書にも書いてありません。
山下:100mSvでも大丈夫だから心配いらない、などとは言っていません。ただ、100mSv未満ではがん発症率の上昇が証明できていない、と話しただけです。これは広島、長崎、チェルノブイリの調査から得られた事実です。
と本人も話しています。
チェルノブイリは、年間5mSv以上となる線量区分のところは居住禁止とし、立ち入り規制を今でもかけていますが、それでも皆様ご存じの通りの有様です。福島では、このような居住制限は一切せず、20mSv/yearまでは全く問題ないと説明し、故郷を離れるストレスの方が危険。と話しています。
これでは、欧米人が ここは別世界( 'It was like visiting another universe' )といっているのは当然です。今まで人類がしたことのない経験を、住民が危険性を全く知らないまま、行わせているのですから。
チェルノブイリ以上の悲惨な状態が起きないか、わたしは心配でなりません。
なお、影が薄いのですが、日本医師会は下記の文書を2011.5.12にプレスしています。
平成23 年5 月12 日
文部科学省「福島県内の学校・校庭等の利用判断における暫定的な考え方」に対する日本医師会の見解
社団法人 日本医師会
文部科学省は、4 月19 日付けで、福島県内の学校の校庭利用等に係る限界放射線量を示す通知を福島県知事、福島県教育委員会等に対して発出した。
この通知では、幼児、児童、生徒が受ける放射線量の限界を年間20 ミリシーベルトと暫定的に規定している。そこから16 時間が屋内(木造)、8 時間が屋外という生活パターンを想定して、1 時間当たりの限界空間線量率を屋外3.8 マイクロシーベルト、屋内1.52 マイクロシーベルトとし、これを下回る学校では年間20 ミリシーベルトを超えることはないとしている。
しかし、そもそもこの数値の根拠としている国際放射線防護委員会(ICRP )が3 月21 日に発表した声明では「今回のような非常事態が収束した後の一般公衆における参考レベルとして、1〜20 ミリシーベルト/年の範囲で考えることも可能」としているにすぎない。
この1〜20 ミリシーベルトを最大値の20 ミリシーベルトとして扱った科学的根拠が不明確である。また成人と比較し、成長期にある子どもたちの放射線感受性の高さを考慮すると、国の対応はより慎重であるべきと考える。
成人についてももちろんであるが、とくに小児については、可能な限り放射線被曝量を減らすことに最大限の努力をすることが国の責務であり、これにより子どもたちの生命と健康を守ることこそが求められている。
国は幼稚園・保育園の園庭、学校の校庭、公園等の表面の土を入れ替えるなど環境の改善方法について、福島県下の学校等の設置者に対して検討を進めるよう通知を出したが、国として責任をもって対応することが必要である。
国ができうる最速・最大の方法で、子どもたちの放射線被曝量の減少に努めることを強く求めるものである。
手短に言いますと、とくに小児にとっては、年間20mSvは高すぎる。ということです。
どこかのブログで、小児科の先生から「100mSvまでは大丈夫なんだから、がたがた言うな」と怒られたとかいてありました。
現在の医師は、日本医師会の言うことなど聞きはしませんが、それでもこの文書を医師会が出していると言うことは、医師全員が知らなければなりません。(おそらく、ほとんどの医師は知らないはずです)その上で各医師が判断し、「俺は、100mSvまで安全だ。」と言うのならば仕方はありません。わたしには信じられないことですが、主義主張は各人の自由ですから、強制することはできません。
医師を選ぶ権利は、患者側にあるのですから。
今回のブログは、わたし自身大変な衝撃を受けたことを再度ここに書いておきます。
60万アクセスありがとうございました。
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http://www.rerf.or.jp/radefx/late/cancrisk.html
http://www.rerf.or.jp/radefx/late/leukemia.html
ページはアーカイブしているので、「なぜか消えた」り「書いてある内容が変わった」としたら私がアップします。
某SNSで放射能被害のコミュニティを主宰しているのですが、そこへ転載させていただいてもよろしいでしょうか?
です。
福島県伊達市小国地区という、避難勧奨地点(戸別に庭先・玄関先を測定し、避難を勧める)の地区に自宅があります。
国・行政・東電の直接の話を聞く機会が何度かあり、確認したところ、今回の低線量での被曝に関して、「因果関係が証明できないかぎり、健康被害に関する補償はない」という話でした。(明らかに統計的なデータがあったとしてもそれは認めないという事です。これは後日、現地オフサイトセンター担当者のみの見解だと困るので、経産省に直接連絡して確認しましたが、同じ事でした。)
放医研の方の話では、現在の医学のレベルでは因果関係を証明することは不可能との事でしたので、結果、今後もし健康被害が起こったとしても、国は責任を負わないと言っていることになります。(事実、そういう事になりますか?と再度、経産省に聞いたところ、その通りという事でした。)
先日の東電とお話する機会の時にも、健康被害に関して補償する用意はあるか聞いたところ、因果関係を証明できなければすることは考えないとの事です。(同時に、農作物が売れない・自主避難しているなどに対しても、原発の事故以外に別な理由があるかもしれないので、補償はよく精査してから国と協議して考えるという回答。)
事故後、4月の段階で問い合わせた地元行政には「年間100msv〜20msvの中で一番安全な低い値を考えているのだから、年間20msv以下は全く問題がない。そこにいて、普通に生活していてください」と言われました。その後、7月に避難勧奨地点に指定はされませんでしたが、自宅線量を伝えたところ(この時の線量は4月より、当然下がっています)自主避難できるなら、した方がいい。補助は何もないけれど。と言われました。
本当に何も信じられないし、行政に働きかけようと動いても事故後、何も変わらない(かえって除染は住民の力も必要、いつまでか分からないけれど、除去したものの仮置き場もご近所同士話し合って決めてくれ(伊達市)流したものは川にながれるけれど自然浄化に任せるしかない(福島市)と状況は悪くなるばかり。しかも自宅は井戸がその流れ込む川と同じ水位で、流れが溜まる場所のすぐ脇…)。日本ってこんな国だったのかと思い知らされる日々です。
長文すみません。
1.05倍のところですが,「…今までたったの2名です。それが、20名以上になるのですから、…」の計算が,少し分かりにくいです。
毎年毎年1.05倍かとも思いましたが,「生涯」1.05倍のようで…。