

この漫画を読まれた方は、このシーンが記憶として残っておられると思います。血液を交換すれば、白血病は治るのでしょうか?
以降、現在の治療法について簡単に説明します(専門医の先生方、添削をお願いいたします)
白血病の型(急性リンパ性白血病−小児に多い−か、急性骨髄性白血病−成人に多い)かを決めるために骨髄検査をします。

この説明図では、おしり−腸骨−から取っておりますが、わたしの研修医時代は、胸骨から取っていました(採取場所は、医療機関によって異なります)数え切れないくらい行った手技ですが、患者さんの中は「魂を取られるような気がする」と言われる方もおられました。。医学生の中には変わったやつもいて、正常骨髄標本作製のアルバイトとして5,000-8,000円程度−詳しくは忘れた−をもらって、骨髄を採取されたやつもいました。「もう、2回目は絶対しない」との感想でした。(時々、医学部のある大学ではバイトとして張り出されるようです)
しかしながら、どうしても必要な検査ですので、疑われた場合はこの検査をするしかありません。ある程度の侵襲を伴う手技ですので、必要と判断したときしか行いません。表面麻酔などをかけ、痛くないように心がけていますが、針を刺すときではなく、骨髄を「えいっ」と空の注射器で吸うときに痛みが来ます。
診断がついたあとに、次の流れとなります。

はじめに薬物療法が来ます。
この薬物療法で白血病細胞を殺さない限り、造血幹細胞移植(骨髄移植)のステップには進めないのです。
そして、この薬物療法のもっとも大変なことが、治療そのものではなく、その下に書いてある支持療法なのは白血病の治療を行った医師ならば、全員が知っていることです。
・白血球が低下することによる日和見(ひよりみ)感染−人工的にAIDSに近い状態となります
・血小板減少による出血
・赤血球減少による貧血
・悪心、嘔吐にともなう食欲減退
・凝固系異常による−播種性血管内凝固症候群−(簡単には説明できませんのでWikiを紹介します。理解できるのは、医師のみかとおもいますが。私もあまりよく理解できていない病態です)
この対応のために、担当医は昼も夜もなくなります。
しかしおかしいと思いませんか?これは、白血病に伴う症状
・白血球減少
・貧血
・血小板減少
を助長しています。あきらかに矛盾しています。

つまり、血液の工場を破壊してしまい、たりなくなったら
・輸血
・血小板輸血
を行い、感染症には抗生物質、抗ウイルス剤を投与して、自分の骨髄が回復を待ちます。回復しない限り、支持療法を続けるしかありません。この病態を悪化させる方向で治療を行うしかないところが、白血病の治療が大変な理由の一つです。
白血病の治療は、基本的には化学療法で白血病細胞をゼロにします

入院当初は、白血病細胞が約1kgあるとされます。寛解導入療法で、骨髄の中で、未熟な細胞が5%以下(施設によって、この診断基準は異なります。確か熊大二内科では3%としていたような記憶があります)−重量で1g以下−になった場合を完全寛解(CR: complete remission)と呼びます。一回の寛解導入療法でこの完全寛解までなればよいのですが、抗がん剤の効きやすい白血病(t(8;21)、inv161、t(15;17)1)-専門医による訂正-の場合が1回で済むくらいで、この完全寛解に持ち込むのはかなり大変です。私の担当した50代の患者も1回では完全寛解に持ち込めず、大量の化学療法を2回してどうにか完全寛解となりました。この完全寛解しにくい白血病というのは、残念ながらやはり予後も悪いのです。
私が研修医の時には、化学療法で完全寛解になった症例は、他者から(近親者)の骨髄移植を国立病院に依頼していました。今はどうなのでしょうか?

治療にはほぼ年のオーダーが必要となり、その後も1ヶ月に1回程度の外来受診が必要となります。
>■白血病入門シリーズ
白血病入門(1)熊大の研修医時代2011.8.20
白血病入門(2)初期症状と血液データの読み方2011.8.23
白血病入門(3)白血病の種類と原因2011.8.25
タグ:白血病
例えば、当時SFだった覚醒下脳手術は、現実のものです。
骨髄移植は、現在も、全身麻酔をかけて腸骨(腰骨)から採取するケースもありますが、薬物投与により、末梢血幹細胞を採血することも可能になっていて、この漫画のようにドナーから採血してそのまま、患者さんに輸血するイメージですね。(他に臍帯血からの移植もあります。)
また、漫画としては、当時の読者がイメージできる絵にする必要があるので、読者のイメージする医療=当時の医療レベル=医学史を知る上でも興味深い作品です。
ご指摘ありがとうございました。修正させていただきました。
また、間違い発見されたら、ご指摘ください。