2011年09月21日

原発の脅し(2)〜電気料金が高くなる

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 原子力には神話が3つあります。
・絶対に安全
・止めると電気が足りない
・最もコストが安い

このうち、前2つはウソだと国民にばれてしまいました。最後のコストについては、まだだますことができると思っているようです。8月下旬の報道

東電、値上げ10%超打診、政府第三者委は難色
 東京電力が、電気料金の10%以上の値上げを、東電の資産や経営状況を調べている政府の第三者委員会「経営・財務調査委員会」に打診したことが27日、分かった。
 原子力発電の代替で稼働している火力発電の燃料費負担が収益を圧迫しているためで、8月の標準家庭の電気料金に当てはめると値上げ幅は660円以上となる。だが、調査委は値上げを認めず、東電に一段のコスト削減を求める方針だ。
 東電が打診したのは、燃料費の調達コストを料金に反映させる「燃料費調整制度」に基づくものではなく、原発停止に伴う抜本的な料金改定だ。
 東電は、定期検査で相次いで運転を停止している柏崎刈羽原発(新潟県)が再稼働するまで暫定的に値上げし、再稼働後は値下げする方針を示したという。
(2011年8月27日14時40分 読売新聞


まあ、ウソとすぐわかる話ですが、つきあってみましょう。

「賠償込みでも原発は安い」と言い張るエネ研の狂った感覚
2011年9月5日 掲載
<デタラメ試算のオンパレード>
 賠償金を含めても原発は火力発電よりコストが安い――。経産省所管の財団法人「日本エネルギー経済研究所」が、こんな試算をハジキ出した。この研究所は、6月にも「日本中の原発を停止したら、毎月の電気代が1000円ハネ上がる」なんて試算を発表した機関だ。性懲りもなく、「原発は絶対に必要ですよ」「廃止したら大変ですよ」と訴えているのである。
 エネ研によると、今回の試算は、電力10社と電力卸2社の有価証券報告書をもとに、06〜10年度の5年間の発電コストの平均を計算。原発事故の賠償額を10兆円と仮定しても、結果は「原子力が1キロワット時あたり8.5円、火力10.2円」となり、原発のコストが火力より安くなったという。
 だが、今さらこんな試算を誰が信じるものか。原発はカネがかかるというのは、世界の常識だ。日本だけが「原発=安い」と信じ込まされてきたが、日刊ゲンダイ本紙も報じたように、立命館大教授の大島堅一氏(環境経済)が有価証券報告書をもとにコストを計算したところ、「原子力10.68円」「火力9.90円」「水力7.26円」という結果だった。
 連中のインチキはとっくにバレているのだ。
「エネ研の試算は、自治体への補助金や、全国の使用済み核燃料、放射性廃棄物の処理費用といった巨額の税金負担分を全く加味していない。これらをすべて含めると、発電コストはケタ違いに膨れ上がります。賠償額も10兆円どころか、数十兆円ともいわれている。何より、この財団は、元経産審議官の豊田正和理事長を筆頭に、24人の理事のうち9人が経産省など霞が関からの天下りです。電力会社OBもゾロゾロいる。どんな試算をしても説得力ゼロなのです」(環境ジャーナリスト)
 天下り財団のデタラメ試算を無批判にタレ流している大新聞も罪深い。


 この大元の資料はこちら

 あきれてまともに見る気もしませんが、それでは議論になりません。まず大事なのは、原発、火力の本当のコストです。東京電力は事業会社ですから、各発電所ごとの個別発電コスト表をもちろん持っています。しかし、経営機密と言うことで一切外部に出しません。そして、東電のいうこと(原子力が安く、火力が高い)を信用しろと言っているわけです。たとえは悪いのですが、泥棒が俺の言うことを信用しろと言っているようなモノですから、信用する人はいません。

原発のコストこちらのブログでもさんざん書いてきました。−詳しくは関連ブログをお読みください−どこをどう考えても、原子力の方が安くなる計算はできません。電力会社が設置許可申請書で出している発電コストをここに掲げてみます
原発の発電コスト から
2011092101.jpg

これは、設置許可に載っている理想的な価格です。これにはバックエンド費用は含まれていません。それなのにこの発電単価。ちなみに東電の売電単価を見てみましょう。

まず、家庭用従量電灯(100V)
2011092102.jpg

業務用低圧電力(200V3相)
2011092103.jpg

随分と単価が違うことお気づきでしょうか。このため、業務用低圧電力を変圧器によって100V電圧として利用することは、法律で禁止されています。おかしな話です。

 さて、柏崎の発電コストと比較してみてください。家庭用なら大丈夫ですが、業務用の売電単価の方が設置許可にある原子力発電コストを下回っています。しかし、電力会社は赤字ではないわけですから、結局火力発電所の単価が安いから、この価格で売っても会社が成り立つわけです。

 東京電力には、記事のような曖昧な話ではなく、各発電所の発電単価を公開することを強く望みます。もし、電気料金を値上げしたいのならば、表に出してください。

 値上げが必要な本当の理由

8月の販売電力量 ▲16.8%減、6ヶ月連続で前年を下回る
東京電力の8月の販売電力量は、節電に加え、昨年の高気温の反動により、電灯や産業用の大口電力などすべての用途が前年割れとなったことから、前年同月比 ▲16.8%減の231.1億kWhと6ヶ月連続で前年実績を下回りました。

電灯は、前年同月比 ▲17.2%減と5ヶ月連続で前年割れとなりました。
産業用の主力である大口電力は、機械(6ヶ月連続)、化学(2ヶ月連続)、非鉄金属(6ヶ月連続)など主要業種のほとんどが前年割れとなったことから、前年同月比 ▲12.4%減と6ヶ月連続で前年割れとなりました。
以 上

2011092104.jpg

 単純です。火力の燃料費が増えたわけでも、原発が稼働しなかったからでもありません。電力という商品が前年同月比 -10%以上売れなかったから、大幅な赤字となったわけです。それを、原子力発電が稼働しなかったからという理由にすり替えるとは・・・

国民の目は節穴ではありません。もう、優良企業 東電 のイメージはなくなっているのですよ。本当のことをお話ください。

■関連ブログ
原子力は高いから推進−総括原価方式の罠2011.7.20
福島の思い出(14)・・原子力って安いんですか?2011.7.14
原発代替火力建設に10兆円という脅し2011.6.24
火力燃料費2兆円−核燃料・再処理のコストを示せ。2011.6.11
原発のコストを文系的に考える2011.6.4
原発のコスト計算に重要なヒント(新聞記事から)2011.6.1
posted by いんちょう at 21:23| Comment(4) | 原子力
この記事へのコメント
どうやら柏崎刈羽原発は、東電(当然その背後にいる政府をはじめとする推進派)にとって、最後の砦というべき存在になりつつあるみたいですね。まぁ福島がああなってしまった以上、自分達に残された数少ない原発、それも首都機能を支えるという大義名分が成り立つ存在なのですから、必死にもなるでしょう。
こちらの泉田知事は、福島の事故の検証が完全に行なわれない内はストレステストが終了しても再稼動は認めない!と息巻いております。知事自身は、今回の事故は津波が原因ではなく、すでに地震が起きた時点で、原発内部が破壊されていたのではないか?と疑念を抱いているようです。
こうなると、今後は泉田知事がどこまで粘れるかが、再稼動を巡る鍵となるでしょう。
ただ国と東電は電気料金の値上げを理由に圧力をかけてくるでしょう。あと、原発が建っている柏崎市と刈羽村は、財政状態を理由に、知事にあれこれ言ってくるでしょうね。
柏崎市は市の借金が凄い状態みたいですし。そういや中越沖地震で原発がしばらく停まっていた時、市の商工会の偉いさんがローカルニュースのインタビューに対し、一刻でも早く原発を動かしてもらわないと困る、とニコニコ顔で答えておりましたねぇ。
刈羽村は、首相の原発の再稼動は来夏をめどに、という発言に対して村長自身が、そんな悠長なスパンでいいのか、安全確認ができればいつでもいい、と言っておりますしね。
Posted by 新潟県民 at 2011年09月22日 09:02
いつもありがとうございます。毎日拝読させていただいています。

さて先生はこの教授の記事(facebook)に関してどう思われますでしょうか?
漠然と解ってはおりましたが、今後の日本を考えると背筋が凍る思いです…
知らない人が多い事が懸念されます。「国の基準値以内だから」と安心して購入する“善い人”から、具合が悪くなるのでしょうか。たまりません。

TVで報道されない真実をなんとか大事な人たちに広げたいものです。
また、東日本に安全な食料を供給するためにも、汚染ガレキや汚泥肥料を九州に受け入れてはならないと強く思っています。

>日本は国難に際して国民の生命を第一に考えたことなど
>歴史の中で一度も無かったことは周知の通りです。

この言葉が頭の中をループし、悪夢を見ているようです。映画の世界みたい。。でも現実なのですよね。恐ろしいです。




■松田 浩平教授(東北文教大学)

【食料生産者の皆さんへ】
国の暫定基準値の500Bq/Kgは『全面核戦争』に陥った場合に、餓死を避けるためにやむを得ず口にする食物の汚染上限です。

もしも放射性セシウム137が500Bq/Kgも含まれた食品を3年食べたら致死量に達します。
全てが基準値ぎりぎりではないとしても
重複内部被曝を考えれば政府の暫定基準値では、
10年後に半数以上の国民が致死量以上に内部被曝する可能性が95%を超えます。
つまり暫定基準500Bq/Kg未満で安全宣言すると言うことは、その食品を食べた人が10年後に半数は死亡してもかまわないと言っているのと同じだと言うことを忘れないでください。

汚染物質の半減期や拡散を考えても現在の数値を見る限り、熔融した核燃料が地下かどこかで部分臨界反応を続けているとしか考えられないのです。
少なくとも原発から320km以内の食品移動を禁止し、安全な地域に汚染物資を持ち込まないようにするしか現状では方法が無さそうです。

被災地復興も大切ですが、汚染物質を全国にまき散らして生き残った地域までダメにするようにしか思えません。

半径320kmとは、単純にEUが輸入を無条件で禁止している地域です。
ホットスポットが99%の確率で出現しないとされる範囲だそうです。

WHOでは500Bq/Kgを「全面核戦争前提の【緊急基準】最長3ヶ月程度」としています。

言い換えれば500Bq/Kgは、全面核戦争で放射性物質により地球上が汚染された場合に
人間が死滅しない基準と考えるとわかりやすいでしょう。
この基準を適用すれば10年後に日本人が6000万人生き残っていれば御の字ということを意味しています。

Q:これとの関連はありますか?http://kingo999.web.fc2.com/kizyun.html

A:関係有ると思います。
おそらく政府は条件を無視してこの世で最も甘い基準を暫定基準としたのでしょう。
それだけ重大な事態であることを認識しているのだと思っています。
しかし日本は国難に際して国民の生命を第一に考えたことなど、歴史の中で一度も無かったことは周知の通りです。

http://www.facebook.com/KoheiMazda/posts/177718452303728
Posted by チワワまま at 2011年09月22日 16:16
表では値上げに難色を示すニュースを流しておきながら
裏ではしれっと原子力事故賠償の負担を電気料金に上乗せ可能なように電気事業会計規則改正をしようとしていますね。

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620111033&Mode=0

政府は電力会社という金のなる木をどこまでも守り通す気なのですね。

こんな事がまかり通るうちは
東京電力の強気の姿勢は変わらないですね。
Posted by mari at 2011年09月22日 18:01
先のコメントに東北文教大学教授のfacebookでの発言の転載がありました。
全面核戦争時の食品基準値(500Bq/kg)は3ヶ月までと知り、青くなりましたが戦後の長崎市と比較するのも大事ではないかと思います。
もっとも、この辺りのデータを持っているはずの方(元長崎大学 山下俊一 氏)は福島医大に移られてしまいましたが。
10年後に人口半減は極端だというのが正直な気持ちですし、違って欲しいという願いもあります。
東北文教大学教授の発言内容が真実に近い事柄ならば、東日本どころか日本が終わりに等しいですから。
Posted by 長崎市民 at 2011年09月24日 15:18
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