2011年09月29日

東電の株価と債権の信用度

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 脱原発ももう下火になったという報道を識者たちが言っているのを耳にします。本当でしょうか?また、東電の会見を見ますと、何を言っても馬耳東風。なんだかむなしく感じるのは、私だけではないでしょう。

 資本主義の最後の砦とは何でしょう。資本市場、すなわち株式、債券市場。ここに注目しなければなりません。経済界の重鎮がなんと発言しても気にする必要はないのです。地位があり、権威がある人がなんと言っても、負け犬の遠吠え。市場は一切気にしません。(為替に対して何か言及しても、相手にされないことからよくおわかりと思います。)このような人たちの言葉がニュースになるのは、日本だけでしょう。いちいち相手にしないことです。

東電の株式チャート
2011092901.jpg

地震後の2011/6/9に最安値 148円をつけています。ここで大事なのは、大量な出来高を伴っていること。調子に乗って売りすぎたために、反動があり7/21には643円まで上昇しました。その後は全く反発することなく、9月中旬からは、出来高の増加を伴わないままだらだらと下がっています。かなり悪性の下げ方のように思えます。・・人気が離散する下げ方

 本日の株価は、次の通りでした。
2011092902.jpg

 いわゆるおもちゃにされている株式となっていますが、あまり反発が見られません。この株価を見ますと233円とありますので、まだ高い印象をお持ちの方もいるでしょう。電力株は、500円額面であることを忘れてはいけません。50円額面(普通の株式)に直すと、23円。明らかに倒産株価です。
東証一部でこの価格帯に当てはまるのは、

8918 ランド 不動産 13円
6793 山水電気 電気機器 3円
5917 サクラダ 非鉄金属及び金属製品 18円
9704 東海観光 サービス業 20円

位になりますか・・(目の子で数えたので、間違いあり得ます)今は、額面は関係ないという意見もあるかもしれませんが、それでも額面を大幅に下回っていることだけは、きちんと押さえておく必要があります。

 なお、以前ブログにも書きましたが、東電の株には決して近寄らないように。

東電支援、金融機関の債権放棄必要 枝野経産相、再び“持論”
産経新聞 9月13日(火)11時50分配信
 枝野幸男経済産業相は13日の会見で、東京電力の経営再建のあり方について、「税金を使って東電を支援する目的には債権者や株主の保護は入っていない」と述べ、減資や金融機関による債権放棄があり得るとの見解を示した。
 ただ、現段階で減資や債権放棄などの措置が必要かどうかについては、「今の立場で具体的に申し上げることができる問題でない」と述べるにとどめた。また減資による市場への影響については、「一定の配慮ができる」と話した。
 枝野経産相は、前任の官房長官時代から、金融機関の債権放棄が必要との見解を示してきた。
 東電の経営再建をめぐっては、8月に原子力損害賠償支援機構法が成立。政府は東電による賠償金支払いが滞ることを避けるため、東電に資本注入などの支援を行うことができるようになった。株主や金融機関の負担のあり方については、賠償額の全体像が判明した段階で、を改めて検討するとしている。


 この発言もボディブローのように効いているのかもしれません。

 また、債権について・・

CDSという債権の保険のような商品があります。

CDS参考値2011092903.jpg

東電の過去1年間の推移
2011092904.jpg

 何が何だか分からない人もいるでしょうが、一応目安(私も聞きかじった知識です)
埼玉大学経済学部相澤教授によると「保証料率4%(400bp)が危険、保証料率2%(200bp)が要注意。」という

−これは6月14日の値−
東京電力 1,069bp
中部電力 184bp
関西電力 192bp
中国電力 165bp
東北電力 180bp 

−本日の値−
東京電力 811bp(-258)
中部電力 267bp(+83)
関西電力 299bp(+100)
中国電力 189bp(+24)
東北電力 230bp(+50)

参考(CDSの高い会社)
アコム  499
プロミス 620

東電は下がってはいますが、他電力は軒並み上昇しています。これは原発リスクでしょう。原発の比率が高い関西電力が高くなっていることからもわかります。原発を再稼働できれば、この不安は消え去ると思っている経済界の重鎮もいるようですが、本当でしょうか。もし、再稼働すると事故のリスクをかかえることになってしまいますから、そのような会社にほんとうにリスクを持って、銀行がカネを貸すのでしょうか。中国電力をのぞく電力会社が200bpを超えているという事実は、かなり深刻な話です。このような状態で、電力債が売れるはずもありません。
 東電の信用力は、アコム、プロミスの債権よりも低いというのが市場の評価です

 豊富にあるカネの力で経済界を押さえ込んでいる電力ですが、世の中には「金の切れ目が縁の切れ目」と言う言葉があることをお忘れなく。

 また、われわれも経済界、マスコミの話に一喜一憂するのではなく、資本市場の動き(数字で表されるので客観的)を見守る必要があると思います。少なくとも株価から判断する限り、市場は政府が発表した「冷温停止が近づいている」という発表を全く信用していないことがわかります

■関連ブログ
原発を守るために、電力社債・電力株を買おう2011.6.14
お天道様が見ている−東電株について2011.7.18
こんな記事にだまされないように(なぜ東電の株価はゼロ円に近づかないのか?) 2011.6.1
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posted by いんちょう at 22:54| Comment(3) | 原子力
この記事へのコメント
院長先生は、医学の知識だけでなく株への造詣もお深いんですね。大変勉強になりました。

東電と東電の株主責任が問われていないことに納得がいっていませんでした。JALのように処理すべきだと考えていました。

しかし債券市場は東電を冷ややかに見ているのですね。
Posted by 可南子 at 2011年09月30日 01:27
株といえば、日本たばこ産業(JT)の株を売却して復興財源に充てる民主党の案に自民党が反対してます。現在煙草農家の生産する煙草の葉は全量、JTが買い上げる義務があるのですが完全民営化されれば安価で良質な外国産に切り替えられるので農家の反発を招き票田を失うからです。

UCLAの研究者が煙草による内部被曝の危険を米国の煙草産業が知りながら40年間隠してきたと告発してます。http://news.livedoor.com/article/detail/5900048/
アルファ線による内部被曝で25年間の死亡率は10%以上です。汚染地区の人は直ちに禁煙すべきです。毒物を生産する煙草農家を保護すべきではありません。政府は直ちにJTの株を全額売却し復興財源にあてるべきです。

Posted by 本多敏治 at 2011年09月30日 08:15
「金の切れ目が縁の切れ目」まったくおっしゃるとおりだと思います。ただ、味噌もクソも一緒にしては台無しです。問題なのは「原子力事業」なのであって、それ以外の発電及び送電事業にお金が回らないようでは本末転倒です。すべての電力会社は「原子力事業」を切り離して原賠法にいう「原子力事業者」であることをやめて普通の電力会社になって競争的環境の中で出直して欲しいと思います。電力のプロとして、再生可能エネルギー分野で先頭に立つというくらいの意地を見せて欲しいと思います。そうすればきっと投資家も高く評価するでしょう。
Posted by metro at 2011年09月30日 10:46
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