2011年10月15日

プロメテウスの罠(朝日新聞)

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 最近の世の中の動きを見ていますと、神話の世界を思い出します。ギリシア神話、旧訳・新約聖書、そして仏教。いまよむべき教訓的な話がたくさんあり、そのうちいくつかは既に紹介しています。

プロメテウス・・ご存じでしょうか。
ゼウスはさらに人類から火を取り上げたが、プロメーテウスはヘーパイストスの作業場の炉の中にトウシンソウを入れて点火し、それを地上に持って来て人類に「火」を渡した。火を使えるようになった人類は、そこから生まれる文明をも手に入れることになった。
 人類に火をもたらしたのがプロメテウスなのです。このプロメテウスから、記事の題名を取った素晴らしいドキュメントがありました。

頼む、逃げてくれ 〈プロメテウスの罠〉
■防護服の男(1)
 福島県浪江町の津島地区。東京電力福島第一原発から約30キロ北西の山あいにある。
 原発事故から一夜明けた3月12日、原発10キロ圏内の海沿いの地域から、1万人の人たちが津島地区に逃れてきた。小中学校や公民館、寺だけでは足りず、人々は民家にも泊めてもらった。
 菅野(かんの)みずえ(59)の家にも朝から次々と人がやってきて、夜には25人になった。多くが親戚や知人だったが、見知らぬ人もいた。
 築180年の古民家を壊して新築した家だ。門構えが立派で、敷地は広い。20畳の大部屋もある。避難者を受け入れるにはちょうどよかった。門の中は人々の車でいっぱいになった。
 「原発で何が起きたのか知らないが、ここまで来れば大丈夫だろう」。人々はとりあえずほっとした表情だった。
 みずえは2台の圧力鍋で米を7合ずつ炊き、晩飯は握り飯と豚汁だった。着の身着のままの避難者たちは大部屋に集まり、握り飯にかぶりついた。
 夕食の後、人々は自己紹介しあい、共同生活のルールを決めた。
 一、便器が詰まるのを避けるため、トイレットペーパーは横の段ボール箱に捨てる。
 一、炊事や配膳はみんなで手伝う。
 一、お互い遠慮するのはやめよう……。
 人々は菅野家の2部屋に分かれて寝ることになった。みずえは家にあるだけの布団を出した。
 そのころ、外に出たみずえは、家の前に白いワゴン車が止まっていることに気づいた。中には白の防護服を着た男が2人乗っており、みずえに向かって何か叫んだ。しかしよく聞き取れない。
 「何? どうしたの?」
 みずえが尋ねた。
 「なんでこんな所にいるんだ! 頼む、逃げてくれ」
 みずえはびっくりした。
 「逃げろといっても……、ここは避難所ですから」
 車の2人がおりてきた。2人ともガスマスクを着けていた。
 「放射性物質が拡散しているんだ」。真剣な物言いで、切迫した雰囲気だ。
 家の前の道路は国道114号で、避難所に入りきれない人たちの車がびっしりと停車している。2人の男は、車から外に出た人たちにも「早く車の中に戻れ」と叫んでいた。
 2人の男は、そのまま福島市方面に走り去った。役場の支所に行くでもなく、掲示板に警告を張り出すでもなかった。
 政府は10キロ圏外は安全だと言っていた。なのになぜ、あの2人は防護服を着て、ガスマスクまでしていたのだろう。だいたいあの人たちは誰なのか。
 みずえは疑問に思ったが、とにかく急いで家に戻り、避難者たちにそれを伝えた。(前田基行)
     ◇
 ギリシャ神話によると、人類に火を与えたのはプロメテウスだった。
 火を得たことで人類は文明を発達させた。化石燃料の火は生産力をさらに伸ばし、やがて人類は原子の火を獲得する。それは「夢のエネルギー」とも形容された。しかし、落とし穴があった。
 プロメテウスによって文明を得た人類が、いま原子の火に悩んでいる。福島第一原発の破綻(はたん)を背景に、国、民、電力を考える。
     ◇
 「プロメテウスの罠(わな)」は、数カ月にわたり長期連載します。第1シリーズ「防護服の男」は十数回の予定です。文中はすべて敬称を略します。


 こういった記事を読む場合に、大事なのは今までの報道です。矛盾がないかを必ず押さえなければなりません。それをきちんと検証することで、ガセネタか、本当のネタかが自分でも納得できるのです。私のブログでは、もぬけの殻となっていた双葉厚生病院−その時なにが・・(100万アクセス)2011年09月20日 これを見てみます。

後から思い出しながら記録したので、多少時間が違っているかもしれませんが、3月12日の午前6時に対策会議を開いた後、6時30分くらいだと思います。いきなり、警察官が病院に入ってきたのです。
 「玄関から誰かが入ってきた」となり、何だ、となった。放射線防護服を着ていたので、「何、仰々しいことやっているんだ」、「こんな派手な格好しなくてもいいじゃないか」とも思った。自衛隊の人も来たのですが、普通の制服姿でした。

 電話は通じたり、通じなかったり、という状況でした。最終的に避難を決定したのは、午前7時30分頃です

全員退去を決め、自衛隊のヘリコプターの救援を待つため、双葉高校のグラウンドに移動を始めたのは、午後2時くらいだったと思います。何往復もしているその時に、1号機が水素爆発したのです。午後3時36分です。


 どうでしょうか。時間がぴったりと合います。何気ないところで、つながればその記述が真実だと証明されることになります。いかにもよくできたあり得ないウソの話もたくさん出ていますので、こういった裏を取ることが非常に大事です。

 この記事は 薔薇、または陽だまりの猫 ブログの

〈プロメテウスの罠〉防護服の男(1)〜(12)

で全文を読むことができます。これは、読まなければならない迫真の記事です。


また、英文の記事もあります。EX-SKFから(Bloggerの方が、英訳されました。)
Must Read: Asahi Shinbun "Trap of Prometheus" Series Part 1 - Men in Protective Clothing (1) "Why Are You Here? Flee!"
Must Read: Asahi Shinbun "Trap of Prometheus" Series Part 1 - Men in Protective Clothing (2,3) "We Were the Only Ones Who Didn't Know"
 英語の勉強にも是非どうぞ。

■関連ブログ
もぬけの殻となっていた双葉厚生病院−その時なにが・・(100万アクセス)2011年09月20日
仏教聖典から・・・キサゴータミー2011年06月15日
カッサンドラーの嘆き(格言)2011年03月15日
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posted by いんちょう at 23:56| Comment(10) | 原子力
この記事へのコメント
先生、我が家も朝日新聞を購読しています。
プロメテウスの罠や、この数日の朝日新聞の

「福島第一原発」記事についての反省?みたいな特集記事に違和感を持っています。

ネットでの情報が速くて且つ、後にその情報が実は真実だった・というパターンが繰り返されています。
TVとはその意味で既に信頼を失っていると思います。
新聞も同様。そこで、ここにきて自己弁護的に書いている?
そんな印象があるんですね。プロメテウスは。

昔、某大学でスーフリーとかなんとかの名称で合コンレイプの事件がありましたが
その時、レイプに参加しなかったが通報もしなかった学生の自己弁護がありました。

プロメテウスや10月15日の朝日の記事は、その学生の自己弁護と重なって見えます。
Posted by 長崎市民 at 2011年10月16日 00:18
院長さま おはようございます

東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理に向けて政府が大きく動き出したようです。
https://sites.google.com/site/natrium100mg/
http://www.env.go.jp/jishin/attach/memo20110811_shori.pdf
特に熊本市は来年度に政令指定都市認定ですが、その認定条件に被災地の瓦礫処理を突きつけられる恐れがあります。
Posted by nyan at 2011年10月16日 11:13
小野先生、いつも渾身の記事を有難うございます。

わたしは、若いころ必要に迫られて第二次大戦中の軍部や戦場、満州、沖縄戦についての手記などを多く読みましたが、
「プロメテウスの罠」は、ソ連参戦を知らされなかった満州開拓民の逃避行の記録に似ています。関東軍は自分の家族をいち早く逃がし、残された開拓民は情報が無く犠牲になる。沖縄戦でも国頭(北部)へ逃げた人々は助かった方が多いのに、島尻(南部)へ逃げた人々は多くが犠牲となっています。
まず女性と子供たちなど弱い者が犠牲となる。そして情報操作と隠蔽。

久しぶりに新聞を見直しました。ひしひしと臨場感あふれる文章でした。
以前、歴史の現場に立ち会った人の役割を先生は語っておられました。肥田先生、橋爪さん、そして東電の原発に勤務後医師となり、今回の原発災害に遭遇された小野先生もまた歴史の証言者としてこのブログを書いてくださっているのだと思いました。

今後とも書き続けてくださるようお願い申し上げます。

Posted by プリン at 2011年10月16日 17:13
私の知る限り、プロメテウスを原子力と結びつけた文章を日本で初めて発表された方は、反原発を貫いた市民科学者、故高木仁三郎さんだと思います。
高木さんのどの本に書かれていたかは覚えていないのですが、そのプロメテウスのくだりには強烈な衝撃を受けたことははっきりと覚えています。
ただし、私の記憶が正しければ、それは高木さんが独自に見いだした表現ではなく、すでにどなたか海外の学者さんか作家が使われた表現で、そのことに言及した上で高木さんのプロメテウス講義(科学史観)が書かれていたように思います。
Posted by yamada at 2011年10月17日 14:18
すいません、先刻、高木さんのことを書き込んだ者です。
その際、名前もメルアドも記入し忘れたような気がして再度ご連絡しました。(匿名のいたずらではありません、ということをお伝えしたく)
Posted by yamada at 2011年10月17日 17:50
追伸:
この二人の防護服の男性のエピソードを読んで、すぐに二つの物語を思い起こしましたが、先のコメントではポイントがずれるので書きませんでした。

@「創世記」のソドムとゴモラに出てくる二人の天使。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BD%E3%83%89%E3%83%A0%E3%81%A8%E3%82%B4%E3%83%A2%E3%83%A9
(もちろん被災地がソドムとゴモラのようであると言っているのではありません。エピソードとして)

A「ギリシア神話」のフィレモンとバウキスに出てくるゼウスとヘルメス。http://www.h6.dion.ne.jp/~em-em/page194.html



Posted by プリン at 2011年10月17日 23:59
ご紹介の プロメテウスなど 朝日関連記事を
薔薇、または陽だまりの猫 からは
削除することとなりました
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/06cf9d87b09e0d7a1bb05714720c29e3
Posted by 薔薇、または陽だまりの猫 at 2011年10月29日 07:37
長崎市民さんの意見に同感です。
「プロメテウスの罠」は、半年前の危機を取材して、読者に受けそうな読み物にして、あとで本にして売ろう、という魂胆が透けて見えます。
真のジャーナリストがするべきことは、今そこにある危機を取材し、社会に知らせることではないでしょうか。
この感じだと、今問題になっていることも、半年後に取材して面白い読み物になるのでしょう。
また、プロメテウスは、人類に火を与えた罰として、岩山に縛られ、毎日、鷲だか鷹だかに肝臓を食われます。食われても、肝臓は再生して、毎日食われる、という拷問です。
プロメテウスが人類に罠を仕掛けたとでもいうのでしょうか。
あのタイトル自体、違和感があります。
Posted by 純 at 2011年10月30日 02:29
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/06cf9d87b09e0d7a1bb05714720c29e3
の通り
記事を削除しましたが
必要であれば メールで配信します 

薔薇、または陽だまりの猫の
上記の記事のコメントで
メールアドレスをお知らせください
コメントは 現在 承認制にしていますので
公開されません ご安心ください
Posted by 薔薇、または陽だまりの猫 at 2011年11月03日 09:51
はじめまして。
私は熊本から元気な野菜、米をネットで販売しております。
東日本大震災以降、関東を中心にたくさんのお客様がやってきました。
地震の被害にあわれた方からも注文をうけております。

そんな中、福島から横浜へ引っ越しをされたお客様より「朝日新聞で連載されてる、プロメテウスの罠、という記事」を紹介して頂きました。
最初から読んでみたかったのですが残念なことに削除されていました。諸事情は理解できましたがどうしても読んでみたいのです。
よろしかったらメールで送って頂けないでしょうか。

少しでも確かな情報を知りたい。
そうしてお客様の気持ちを理解したいと思っております。
よろしくお願いします。

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〒861-3204 熊本県上益城郡御船町木倉6607
店長 田上 忍(タノウエ シノブ)
携帯 090-3074-0794
FAX 050-7526-0162(ネット店)
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愛農園ネット店長 <shino-b@ainouen.com>
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Posted by 田上忍 at 2011年11月11日 07:57
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