2011年10月29日

結論の押し売りではなく、導きを

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以前も紹介いたしました。この本から
原題 The Lost Art of Healing

p.95から・・

 永遠の傷
言葉による傷は、いつまでも人の心から消えることなく、苦痛や病気を引き起こす。このことを認識している医師は少ない。ジョンズ・ホプキンズ大学医学部に在学中、ホーズリー・ガント博士という孤高の生理学者がいた。彼は、ロシアの偉大な生理学者、イヴァン・ペトロヴィッチ・パヴロフに師事した唯一のアメリカ人である。ガントは犬を使って、ベルを鳴らした直後に犬の後足に軽い電気ショックを与えることにより、脈拍が早くなり血圧が上昇するように条件づけした。何度か繰り返すと、電気ショックを与えなくても、ベルを鳴らしただけで、心拍数が増え血圧が上昇するようになった。ベルに対する心臓血管反応は時間が経っても消えず、何ヶ月経っても、ベルが鳴れば必ず心拍数が増え、血圧が上昇した。
 苦痛を伴わない刺激の条件付けは、時間がたてば反応が失われ、再び刺激を強化しない限り、いつか完全に忘れれさられてしまう。ガントによると、心臓に反応を起こす不快な刺激は、いつまでも記憶に残る可能性があるそうだ。ガントは、心臓が独自に永久に消えない記憶を持ったとして、この現象を「スキゾキネシス」と名付けた。これは私の患者にも多く見られる。
(中略)
 そして5年がたった。その年はじめて、私の心臓学フェローがZ婦人を診察した。フェローによると、かの女は完全に回復していた。そして私が彼女をもう一度診察するために、フェローと一緒に部屋へ行くと、彼女は高校生に英文学を教えるための教師用資料を読んでいた。私たちは、近頃は読書をする若者が減り、教師も難しい仕事だという話をしばらくした。私はこのことが頭に残っていたので、深く考えもせずに、彼女に「大変ですね」と言った。
 彼女は、びくっと座り直した。美しい顔に恐怖が浮かび、クビは真っ赤になって、はじめてあった時のように震え始めた「それはどういうことですか。どういうことなんですか、先生」。彼女は、質問していると言うより絶望を訴えているとったほうが良かった。今までのんきにしていた彼女が、瞬時にして恐怖にすくみ上がってしまっていた。
 そういう場合は、私の経験では、同僚の医師に説滅する方が効果的である。私は、彼女に心配ないと直接言うかわりに、彼女を完全に無視してフェローの方を向き、今起こったことを説明した。
 「私は、アメリカの英語教師は大変だと言ったのだが、この気の毒な女性は、自分の心臓のことを言われたのだと思ったのだ。私は、心臓には問題がないことを納得してもらったつもりでいたが、一端傷ついた心は、くすぶり続ける石炭のように、いつまでも火種をかかえていて、いつ炎が燃え上がるかわからない。」彼女が口を挟んだ「ああ、よかった!ほっとしました。心臓のことかと思いました。」


キサゴータミーの話
 死んだ子は生き返らないことをわかってもらうために、釈迦は、「女よ、この子の病を治すには、芥子の実がいる。町に出て4・5粒もらってくるがよい。しかし、その芥子の実は、まだ一度も死者の出ない家からもらってこなければならない。」と言われました。

もっと、卑近な諺では、
馬を水飲み場まで連れて行くことはできるが、水を飲ませることはできない
You can take a horse to water but you can't make him drink.

 結論を先に行っては、だれも納得しないのです。情報を他人に伝えることによって、その人自身に考えてもらうように導くしかありません。
 twitterでもつぶやきましたが、ここで再度紹介します。
 私の娘を見ていますと、ままごと大好きで、完全にその役になりきります。もちろん、読者の方もこのような方法で他人に相談されたことがおありかと思います。

 以下、私のツイッター(@onodekita)から抜粋

放射能を表面上恐れていない人に話をするには、自分のことを「自分の友達、姉」とすり替えて、おもしろおかしく話をすればいい。そうすれば、身をのりだして話に乗ってくるはずだ。こちらは自分のことだから、いくらでもいえるが、相手は目の前の人のこととは思わない。だから警戒を解く

「私の友達なんだけど、近くに住んでて、うるさいのよね。なんか、ガイガーカウンターなんか買っちゃってさ・・この前なんか、私の家にまで押しかけてきて、雨樋のところが、0.1xxだなんて言い出すし。困るわよね。こんな人。いい加減迷惑なんだけど。 牛乳飲むななんてうるさいし・・」とか

「私も結構気にしすぎかと思ってたけど、あの人には負けるわ。もう、毎日電話してくるし。道で会うとすぐに話しかけてくるから、目をあわさないようにしてるの。どう、そんなことある?なんか、ごめんね。いままでわーわー言っていて。あなたの気持ちがよくわかったわ。全くもう。。」

「ねぇ、私そのあとでさ、一緒に食事に行ったら、その人ご飯残しちゃってさ。挙げ句の果てには、店員に産地はどこかなんて聞いてるの。一緒にいたら恥ずかしくって・・もう、逃げ出したいって思ったわよ。その時は。スーパーであっても、そんな感じなのよ。」

「なんか、いちいち裏の製造工場を調べて、明治は絶対に買わないなんていっちゃて。そんなこといったら、食べるものなくなるわよねぇ。安かったから、福島県産の野菜買おうとしたら、えらい剣幕で怒られちゃって。いいじゃん、こっちはこっちの考えがあるのにって、内心思ったわよ。」

「私も何が何だかわからなくなって来ちゃった。あなたは、どうしてる?そんな人にあったら・・あっ、そうか私もそうだったわね。ごめんね。なんかぜんぜんわかっていなくて。。」

「ねえねえ、ほら3月にいなくなったoxさん、フランス大使館に知り合いがいたんだって。あと、ほら▽さん、あの人はテレビ局に知り合いがいたんだって。あと、●さん、あの人ご主人が東電に勤めてるんですって。全く腹が立つわよねぇ。一体どこにお金なんかあるんでしょうね。」

「どうして、避難したのかしらね。なんか、別の情報なんかあるのかしら。なんか気味が悪いわ。どう思う?気にしすぎよね。」(と自分がよく知っている避難した人の家族を紹介していく。)

「ねぇ、あなた。何か噂聞いていない?安心してここに住んでていいのよね。私子どもも小さいし、転校はいやだって言ってるし。困っちゃうわ。この間は、久しぶりの友達が電話してきて、いきなり避難はいつするのかって?本当に余計なお世話よもう。・・」


結論は一切入っていません。あとはこの話から、どのように考えるかです。正しい方向に導くには、情報は必要ですが、結論を言ってはなりません。いわば、禅問答みたいなもの。相手に正解を考えてもらうようにしましょう。
 どうでしょうか。この話し方なら、放射能楽観派のお母さんたちとも話せませんか?

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posted by いんちょう at 17:18| Comment(8) | 原子力
この記事へのコメント
こんばんは。興味深いやりとりの例示、大変参考になります。
昔学んだlearned helplessness(日本語では学習性無力感等と訳されますが英語のままの方が実感あります)を思い出しました。
たしか(正確にはもう思い出せませんが)
1.逃げるという努力をやめる。
2.逃げるという感覚さえなくなる。
3.混乱した行動
実験動物のえさ場に電流を流しておいて、彼らが回避行動をとっても無力だというモデルづくりに応用されていたと思います。

今回のことに即していえば「どこに逃げようがムダである」「逃げるのは道に外れた行動である」等々の無力感を感じさせる様に世論を操作していると思われます。しかし復興・再建という事を考えれば自分達にパワーが必要だ、放射能からは逃げられるのだ、原発はなくてもやっていけるのだ、決めるのは霞ヶ関ではなくて自分達なのだ、という無力感からの脱出、アメリカ人なら「Yes We Can」とか「Occupy WallStreet」等と表現する力がきっと日本人にも出てくると私は信じています。その事をこの記事は気付かされてくれました。多謝。
Posted by コニー猫 at 2011年10月29日 18:00
というより、分かろうとしない大衆共にそこまでして伝える必要は無いでしょう。「縁なき衆生は度し難し」
Posted by phantom at 2011年10月29日 20:39
天は自ら助くる者を助く(2011年06月12日)という記事中に、気になった点があります。

>■意 味: 天は、他人に頼らずに自力で努力し、道を切り開こうとする者を助けてくれるという事。

>他人任せにしては、なにも進みません。情報を取捨選択して、行動しましょう。


↑この個所です。
特に医療に携わる者であれば自明のことだと思われますが、世の中には様々な理由で頑張れない人もいますよね。それこそ、いくらでも思い当たるかと思われます。

なぜ日本で他力本願を是とする浄土宗系の教えが派生したかということを、今一度考えていただきたいなと思います。

私の考えとしては、決してそれは甘えでも、大衆迎合でもないと思っています。
Posted by Zanzibar at 2011年10月30日 08:12
本日30日、長崎市の原爆資料館にてチェルノブイリ・ハートの上映があります。
監督のマリアン・デレオ女史を迎え、本日三時半から意見交換があるので、山下俊一氏の発言をどう思うか

バンダジェフスキー博士の論文はどう評価しているか聞いてみたいです。

昨日夕方、テレビの質問「原発事故と原爆は同じ問題と考えてますか?」
に答えが「簡単な質問ではない。自分には答えがない。」
だったので、微妙ですが。
Posted by 長崎市民 at 2011年10月30日 12:00
先生、いつも貴重な情報を有難うございます。

放射能楽観派のママ達へ、先生のお話しを参考にアプローチしてみたいと思います。
私と同じ意見のママ友達とは、食材調達のスーパー情報の交換や「今年のアンキモはもう諦めた!」「○○スーパーにオージービーフがあるね嬉しいね。」「豚肉は何処で買っている?」等と言い合えるのですが、楽観派とは半ばタブーの話題・・と感じています・・。おまけに私の住む世田谷区では、原発事故とは関係無し!と言う放射線量の地域が大きく報道されたので、それが逆に「高い放射能線量の原因は、原発事故と無関係」「取り除けば大丈夫」と彼女等は思っている様に見えます・・。
子供を介したママ友達との関係と言う点を考えると、あまりで過ぎた事も出来ません・・。
我が子に関しては将来後悔したくない一心で、今は自分なりに工夫している積りですが、楽観派ママ達(良好な関係を保っている)に3.11以降の矛盾に気付いてもらうのは、なかなかハードルが高いです。
(愚痴っぽくなってすみません・・)

今後共宜しくお願いします。応援しています。



Posted by 東京在息子の母 at 2011年10月31日 10:00
すみません。先ほど、困っている人たちに「こういう手もありますよ」というつもりで書いた物を送信しましたが、一部の人に読まれるとまずかったです。手の内をさらすことに。

書いたものが必ず載るわけではないようですが、大変申し訳ありませんが、前の文はなかったことにしてください。

まぬけな工作員だ。
Posted by siboctok at 2011年10月31日 11:42
微妙。 御用学者は結論を言う。『100mSv以下は安心です』『プルトニウムは呑んでも平気』 彼等は直ぐに信じてもらえる。 何故か? 権威+自身に満ち満ちた結論! 『こんな事も判らない馬鹿がいるんだよ、信じられる?全く考えられないよね?』 馬鹿だと思われたくない馬鹿は信じる。裸の王様だ。詐欺と同じで、結論なんてどちらへも導ける。 問題は、魚心在れば水心。相手が受け入れ易い事を言えばいいのだ。ソクラテスの問答みたいなもの。最初はYesと言わせろだ。 楽観論者は面倒な事はしたくないのだ。 だから、病気になってからの方が面倒だと言う事を、被曝に関係なく話すのはいいかも知れない。『知り合いが癌になって、癌センターに見舞いに行ったら、隣に小児癌の子供が居て、親はもう、大変!物凄い費用ががかかるのねぇ…。かわいそうで見てられなったわよ…』想像力の無いアホには、何が起こるのか、どうなるのかを聞かせて疑似体験させてやる事だ。ナニシロ、自分が同じ目にあうまで気付かない手合いなんだから。
Posted by でじたるコミック at 2011年11月02日 00:16
よくこちらを拝見させていただいております。埼玉在住ですが家族を含めて危機感を持っている人はあまりいません。東京の知人もそうです。放射能の危険性を口にすると先生が例題を挙げたような会話になり変な目で見られます。危険性を熟知している人は既に避難済みで残っているのは楽観的な人、危険を承知しながらも行動に移せない人といったところでしょうか。先日渋谷、新宿に用事があり行きましたがマスクをしている人はほとんどおらず若者が3.11以前と変らず大量に路上に深夜までいました。無知なのかきちんと報道しないマスゴミ、政府のせいか、それとも私が気にしすぎなのか分からなくなりました。
Posted by ショウ at 2011年11月04日 19:14
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