乳幼児10万人中2〜3人が甲状腺がんに
東京電力福島第1原発の事故後1年間に摂取した飲食物による内部被ばくで、都内に住む乳幼児の場合、10万人当たり2〜3人の確率で一生のうちに甲状腺がんになるとの推計を、東京大の研究チームが12日発表した。
事故の影響が遠く離れた東京の子どもにまで及ぶことを示す結果。チームの村上道夫特任講師は「外部被ばくより影響は小さいが、がんの確率が高いか低いかは、人によって受け止め方が違うだろう」と話している。
がんの確率はディーゼル車の排ガスの影響より低いが、シックハウス症候群の原因物質のホルムアルデヒドや、ダイオキシン類より高い。
チームは、厚生労働省が公表した食品や水道水の放射性物質濃度や、一日の食品摂取量データなどを基に、飲食物を通じた都内の住民の内部被ばく量と、それによる生涯の発がんリスクを推計。
ヨウ素131は子どもへの影響が大きく、甲状腺がんになる確率は10万人当たり乳児で3人、幼児で2人、成人で0・3人。死に至るのは乳児で0・2人、幼児で0・1人となった。セシウム134と137によってがんになるのは、全年代で10万人当たり0・3人、死に至るのは0・08人。
ヨウ素とセシウムを合わせた1年間の内部被ばく量は、乳児が48マイクロシーベルト、幼児が42マイクロシーベルト。だが実際は水道水でなくペットボトルの水を飲むなどしてもっと低かった可能性が高いという。(共同) [2012年3月12日18時38分]
10万人に2人。今まで起きていなかったガンですから、この研究結果自体にも驚きます。
さらに、
・評価方法
・発表者の専門分野
に大きな問題があります。まず、評価方法についてみてみましょう。
本来、内部被曝はBqで評価します。しかも内部被曝のことなんて全くわかっていない(環境省は、わざと全く無視しており、完全な犯罪行為です。)
内部被曝に関しては、市川定夫先生の講義がわかりやすいので再掲します。
体内被曝についてはだからきっちり把握する今のところ方法がないわけ。で、全身の被ばくするときなんかでこんな複雑な体した人間の体をね、くまなく指の先からね、足の指の先まで計算することはできないから、仕方ないから人間の平均体重を60キロとして、60キロの球として計算するんですから今の評価法は。
もともとだってそんなものなんだよ。
レムという単位は、仮定の置き方でどのようにでも変わる評価値にすぎない。ところが推進派は、このレムを持ち出し、輸入食品に含まれる放射能や、原発が日常的に放出する放射能をことさら自然放射能と比較して見せる。このような比較に、意味があるのだろうか。原発を推進される側はいつもこれの比較。絶対これを離れない。
(抜粋ですが、これですべてです)
まず、全くわかっていないセシウムの内部被曝(わかっていないと言うよりも、むしろ全く無視しているわけですが)を、実効線量係数なるまやかし話法でシーベルトに変換します。
推進派の考える係数ですから、過小評価も過小評価何にも分かりません。

これだと、内部被曝をいくらしてもガンになるはずがありません。何しろ、1万ベクレル以上のヨウ素を食べても大丈夫と言っているのですから。
ヨウ素、セシウムをそれでも、このグループはかけ算をしてSvに換算したのでしょう(本来、どれだけのベクレルを摂取したのかを明らかにするべきだと思いますが、その値は一切出てきません)
発表された論文から、該当箇所を抜き出してみましょう。
飲食物由来の放射性ヨウ素およびセシウムによる東京都民への曝露量と発がんリスクの推定から

表1 2011年3月21日から2012年3月20日までの東京都民への飲食物由来の放射性ヨウ素および放射性セシウムの曝露量(μSv)
大人で見てみましょう。

CS-134/Cs-137ともにそれほど変わりませんので、この評価における内部被曝量を逆算しますと、
Cs-134/137 8.3E-6 Sv ÷ 1.3E-8 Bq/Sv = 638Bq
間違っていませんかね?この値で計算しますと、次のようになります。
乳児(対策なし) 208 Bq
乳児(対策あり) 177 Bq
幼児(対策なし) 266 Bq
幼児(対策あり) 215 Bq
成人(対策なし) 638 Bq
成人(対策あり) 508 Bq
当時の上水道の上水道の基準は、200Bq/kg 一体どのような評価をしたら、こんなにセシウムの摂取量が低くなるのでしょうか?(それとも、私の計算ミス?)
さらにガンになる確率は、おそらく次に示す名目確率係数から求めているのでしょう。

そうすると、

といった望ましい結果が出てくるわけです。そもそも、この研究は、ICRPの計算を単に当てはめただけであり、内部被曝のBqさえ評価できれば(それさえも、かなりの過小評価としか思えませんが)、だれにでも電卓があれば計算できるわけです。
この村上氏の本職はなんでしょうか。
村上 道夫東京大学 総括プロジェクト機構「水の知」(サントリー)総括寄付講座 特任講師 博士(工学)
そして経歴は、
Academic Background and Career
1997年3月 私立麻布高等学校卒業
1997年4月 東京大学教養学部理科一類入学
2001年3月 東京大学工学部都市工学科環境・衛生工学コース卒業
2001年4月 東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻入学
2003年3月 東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻修士課程修了
2006年3月 東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻博士課程修了
2006年4月-2007年11月 科学技術振興機構 研究員(東京農工大学大学院共生科学技術研究院環境有機地球化学研究室(高田研究室))
2007年12月-2008年3月 東京大学大学院工学系研究科附属水環境制御研究センター/都市工学専攻 研究員
2008年4月-2011年6月 東京大学 総括プロジェクト機構「水の知」(サントリー)総括寄付講座 特任助教
2011年7月-現在 東京大学 総括プロジェクト機構「水の知」(サントリー)総括寄付講座 特任講師
都市工学出身のようで、医学に関する勉強をされてきたようには思えません。なぜ、このような肩書きの人が、甲状腺癌が起きる確率をまるで予言者のようにわれわれに指し示すことができるのでしょうか。
また、とある方から、この評価を見て、日本にいて内部被曝を甘受した方が、海外に行って飛行機で被曝するよりもマシなのではないか(ヨーロッパまで行くと20マイクロシーベルト程度の被曝のようです)と聞かれました。
回答
内部被曝の評価方法は全くわかっていません。東京にいるときの内部被曝の計算が出てきましたが、これは専門家でもなんでもない人が、ICRPの都合のよい解釈方法を使って出した結果に過ぎません。内部被曝と外部被曝は全く異なります。飛行機の外部被曝は全く気にする必要はありません。
カリウムの内部被曝をことさら危険だと騒いでみたり、飛行機の外部被曝の方が東京にとどまるよりもはるかに危険だとミスリードする。一体、その知識はなんのためなのですか。
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タグ:P
強く指摘してやらないといけないか。でも、原発の再稼働ありきだと、彼らに何を言っても(時にふれて言ってはいるけど)、無しのつぶてなんんだ。
一方でバンダジェフスキ博士の来日最初の講演である
沖縄講演のニュースが出ていた日でもあります。
そういう意味で、バンダジェフスキ博士のニュースを消す
かのような、なにか意図的なものを感じました。