2012年04月02日

献血と被曝問題

 みんなで支え合う献血(勝手広告というジャンルらしいですが、非常に良くできています)


献血ができる人は、日赤で非常に厳しく制限されています。
特定の病気にかかったことのある方
心臓病・悪性腫瘍・けいれん性疾患・血液疾患・ぜんそく・脳卒中など
服薬中、妊娠中・授乳中、発熱等の方
エイズ、肝炎などのウイルス保有者、またはそれと疑われる方
輸血歴・臓器移植歴のある方
6ヵ月以内にピアスの穴をあけた方
6ヵ月以内にいれずみを入れた方
一定期間内に予防接種を受けた方
出血を伴う歯科治療(歯石除去を含む)をした方
海外旅行者及び海外で生活した方
旅行された時期や地域によってもご遠慮いただく場合がありますので、ご確認ください。
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の方、またはそれと疑われる方


 私自身も、献血センターで医師としてアルバイトをしたことがあるのですが、徹夜で来られた方でもご遠慮いただいていました。もちろん、感染症を持っている方(以前の輸血歴があれば、医師にはわかるようになっています)もです。

 今回の原発災害では、特になんの制限もされていません。

『内部被曝』に立ち向かう 肥田舜太郎医師に聞く。 から
肥田氏自身も、広島の爆心地から出た数日後に激しいだるさを感じたと語る。
「当時の私は、広島市郊外の戸坂村の農家で、看護師7人とともに20000人にのぼる被ばく者を診察していました。
すさまじいだるさに襲われたのは、診療を始めてから4〜5日後です。
最初は疲れが出たのかと思いましたが、症状はひどくなる一方で、しまいには立っていられなくなりました。
一度横になってしまうと起き上がれず、39℃近い高熱にうなされ、唇?や鼻だけでなく、目からも出血し始めたんです。
幸いだったのが、8月15日の終戦後に四国や九州の部隊から100人ほどの軍医や衛生兵が助けに来てくれたことでした。毎日輸血を受け体内の血が入れ替わると、見違えるように元気になったんです。」


 これを読んで、肥田舜太郎医師が95歳まで長生きされている理由がようやくわかりました。逆に言いますと、内部被曝を受けた血液が全身の衰弱をもたらすという証左でもあります。
 放射能(放射性物質)を含んだ水、空気、食物を摂取しますと、体中に分布します。
フクシマ20キロ圏内の牛(血液と筋肉のセシウム)被曝調査から
2012040201.jpg
筋肉 1150Bq
血液  38Bq
筋肉には、血液の約30倍のセシウムが含まれる。その他に高いのは、
舌  728Bq
腎臓 635Bq
心臓 518Bq
脾臓 391Bq
肝臓 355Bq
とあります。内部被曝をしている方の血液にはかならずセシウムが含まれています。

 肥田先生が元気になられたのは、放射能汚染されていない血液が大量に入ったことで、各臓器のセシウムが血液に排出され、尿として出て行ったからではないかと想像します。

 では、安全基準をどこに置いたらよいのか。大変難しい問題とは思いますが、血液は直接体内に入ります。ウイルスのように多寡ではなく、輸血によるリスクを避けるべきだと私は考えます。

 先日、ツイッターでこの情報を流しますと、あいつはセシウムを全部の血液に照射していることを知らない、エセ医者(ヤブであることは認めますが)だと中傷され、さらには次のような資料まで示してくれました。
輸血用血液製剤の放射線照射装置
2012040202.jpg
 私も知りませんでしたが、放射線源としてセシウム−137が使用されているのですね。このような情報収集能力は、大したものです。

 これは、内部被曝と、外部被曝をごっちゃにさせる作戦です。輸血前に放射線を当てるのは、外部被曝ですから、照射後に放射能が残ったりすることはありません。献血された血液内にセシウムが入っているのは、内部被曝ですから、輸血された人にはセシウムが移行します。

 たとえて言うならば、便器の中に落としてしまった缶詰を食べるのと、うんちが入った缶詰を食べるくらいの差があります。便器の中に落として、たとえウンチがまわりについてしまったとしても、綺麗に洗ってしまえば、なかの缶詰を食べることに躊躇する人はいないでしょう。逆に、少量でもウンチが入ってしまった缶詰を食べることができますか?
 この2つを比較すること自体が大きな間違いだとおわかりでしょう。

 日赤は一体どのようなスタンスなのでしょうか。

◆関連ブログ
フクシマ20キロ圏内の牛(血液と筋肉のセシウム)被曝調査2011年12月15日
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posted by いんちょう at 15:57| Comment(17) | 原子力
この記事へのコメント
先生、お久しぶりです。
肥田先生があれほどの被曝を受け、お元気に長寿でいらっしゃることは、現在被曝されている方に何か参考になることがあるのかなと思っていましたが、そういうことだったのですね。
311以降、被曝により血液が放射化すること知った時に、被曝した血液による輸血では当然ダメだろうと思っていました。
主人が昨年、治療のために多量の輸血、血液製剤を必要とした時に、その血液は本当に大丈夫かなと心配していましが、当然、被曝検査はしてあるものだと思っていました311以降、輸血を必要とされる手術、治療は本当にリスクがあることを認識していました。
決して差別ではなく、科学的に調べれば、被曝で使えない血液はあることは分かるはずです。
治る病が、輸血によって、新たなる病を生むこともあります。
日赤も、血液が被曝していないかをエイズ検査同様に是非、検査していただきたいですね。
Posted by あきこ。 at 2012年04月02日 18:52
いつも貴重な情報ありがとうございます。

肥田先生が入市被曝で倒れた方の治療にあたっていたのになぜ同じ場所に居てなぜ肥田先生だけプラブラ病にならなかったのか?いつも疑問に思っていたのですがそこに解があったのですね。

実は肥田先生もブラブラ病になっていたこと、そして急性被曝によるブラブラ病においては輸血が有効かもしれないということ、なにより肥田先生が患者に寄り添ってブラブラ病の治療にあたってこられたのは先生自身が体験していたということだったのですね。

雑誌記事では間違って伝わることもあるので、この話はぜひ肥田先生の口から語っていただきその映像を残して頂きたいものです。
Posted by 苔wの一念 at 2012年04月02日 20:55
連投失礼します。

本題とは逸れますが輸血用血液製剤の放射線照射が気になって調べてみました。

「輸血によるGVHD予防のための血液に対する放射線照射ガイドラインX」
http://www.aichi-amt.or.jp/labo/transfus/_userdata/guide_out_yukestu_gvhd_20100101.pdf
より

疑問:「セシウムを全部の血液に照射している」?
答え:γ線またはX線をほぼすべての輸血用血液に照射している。(セシウム以外もある)

疑問:何のため?
答え:輸血後GVHDの原因になる供血者由来リンパ球を破壊するため。

疑問:輸血後GVHDとは?
答え:輸血用血液中に含まれる供血者のリンパ球が原因で発症し、輸血から1ケ月以内にほとんどの症例が致死的な経過をたどる。
治療法は未だ確立されていない。

疑問:いつごろから実施された?
答え:平成4年に最初のガイドラインができる。
平成9年に輸血用血液への放射線照射における保険診療が全ての輸血に対して認められるようになった。
平成10年から赤十字血液センタ−から照射済み血液が供給されるようになった。
平成12 年(2000年)以降、わが国では放射線照射血液製剤による輸血後GVHDの確定症例の発症は確認されなくなった。

疑問:線源は?
答え:γ線源としては主にセシウム137、X線源としてはX線管球。
(15-50グレイの照射をすれば良いので必ずしもセシウム137である必要はない)

歴史は浅いようです。
輸血にこのような危険があったとは知りませんでした。
中傷者の発言もなかなか勉強になりますね、ありがたい事ですw
Posted by 苔wの一念 at 2012年04月02日 21:45
美容外科の領域で、
http://kyoko-np.net/2004122701.html
のように、血液入れ替えの領域があるようですが、これだと、体内の血液の圧力を高められないから、セシウムを追い出す効果は無くて、
それよりは、現行の体内の血液を温存したままにしておいて、別な放射線物質の附いてない血液を押し込むことによって、寒天式に、体内のセシウムを追い出した、と言う論理ですね。
これ、肥田先生以外に、N(被験者数)が多いと、確定するのですが、原爆とか原発事故とか
、滅多に起きないし、また、起きてもらっても困るのですが、Nなんて、肥田さんの1人か、2〜3人と言ったところなんでしょうね。
実は、今回小野先生が紹介された情報は、
非常に重要な部分を含んでいて、
日本政府やTEPCO、ICRPは
認めたくないところですが、
チェルノブイリの原発事故によって、
100万人死に、
http://www.youtube.com/watch?v=FCQI_s5U6CE
同時に、福島第一の事故により、
今後、チェルノブイリと同数の100万人が
日本で、癌等で死ぬとイギリスのインデペンデント紙は予想しています。
でも、これ、Nの数が大きいか、生理学的に、血を入れることによって、放射線物質を追い出せる合理的な説明が出来るとしたら、新鮮な血を、東北・関東の高線量の土地に住む人達全員に輸血すれば、大幅に犠牲者を減らせるのではないか、と言う点なのです。
輸血をしても、もちろん、B型・C型肝炎になったり、血の提供者によっては、エイズになる可能性も若干はあります。でも、どうなのだろう。原発の事故により、100万の中の一人になる確率と、輸血による危険性を両てんびんかければ。
Posted by ちゃまいえ at 2012年04月03日 01:02
はじめまして。
以前のニュースに「15秒で海水や血液からセシウムを99.9%除去する新技術を慈恵医大が考案」
というのがあったのですが、こういうのを利用して人工透析のような治療法を日本で確立できないでしょうか。
これから日本人はずっと内部被曝と向きあわざるを得ないのでセシウム除去の技術を国を挙げて取り組むべきと思います。


Posted by ひろくん at 2012年04月03日 01:15
 私も医師をしています。輸血、放射化、すごく考えさせられました。ありがとうございます。
 ガレキの拡散、これに何の意味(悪意しか感じませんが)があるのか、拡散し被爆させるのがアジェンダなのか、北九州市にも受け入れガレキ担当箇所ができているようであり、憂慮しています。セシウムが気化する温度(ガス化)は低く、ガス化すればフィルターは意味をなさないなど、考えさせられます。
 
 既に受け入れを決めた首長なども、犠牲になっている可能性があります。井口博士のブログなども御参照下さい。

http://satehate.exblog.jp/17733993/
http://quasimoto.exblog.jp
Posted by 高杉 at 2012年04月03日 08:42
院長先生、いつも有意義な情報の発信をありがとうございます。
肥田先生が輸血をされて元気を取り戻したことは初耳でした。

これをご覧の院長先生や医者の方々にお願いがあります。教えて下さい。
私は昨年春より順を追って下痢、眩暈、膀胱炎(らしき症状)が始まり、現在も首から肩、両腕の関節や筋肉の痛みが治るどころか日々少しずつ悪化している状態です。右肩はもともと痛めていたものが特に悪化し40肩状態です。右肩を動かす度にポキポキと鳴る様になりました。
寝返りを打つと身体の痛みで目が覚めます。

血液検査では貧血(血清鉄23)、LDL217、が目立つ数値でしたが、その他は筋肉の炎症の数値も出ず、リウマチでもありませんでした。甲状腺の数値も異常なしとのこと。

内科で鉄剤を頂いたり、首の骨がずれていると言う事で外科で首の牽引もしましたが、首〜両腕の関節や筋肉の痛みは治りません。

将来が不安でいたたまれません。
少しでも良い方向に向かいたく、検査や治療に関して何か良いアドバイス頂けると有難いです。
どうか宜しくお願いいたします。










Posted by 3.11前は健康体 at 2012年04月03日 13:46
内部被曝と治療法については、下記をご覧ください
http://onodekita.sblo.jp/article/48419822.html
Posted by いんちょう at 2012年04月03日 14:31
セシウム体内除去剤のラディオガルダーゼは、どうなのでしょうか?
個人輸入で取り扱っているサイトも、いくつか見当たりましたが・・・
Posted by 半病人 at 2012年04月04日 02:57
ラディオガルターゼについて書いてる人探してみましたけど、
仕組みは、消化液にカリウムが含まれることから、そのカリウムを捕まえて排出させるということみたいです。
セシウムを体が間違って取り込むのと同じ理由で、消化液に入ってきたセシウムをカリウムごと捨てるらしいです。カリウムの欠乏による副作用が起きるようです。
消化液に出てきた分しか取れないんだと思います(たぶん取り込んでいるものの極一部)。軽い被曝なら効果がとても薄い、重度の被曝なら飲む価値があるという評価をされてるようです。
西欧だと300mSvの被曝が使用の目安だという話もありました。

原発事故の直前の12月に、日本では認可されて販売されてるとか。
個人で買っても僕なら怖くて飲めないです。体内のカリウムの量わからないし。
重度の被爆だと医者が診断してくれることもなさそうだし、何の為の薬だろ。
JCO事故みたいな時に使うのかな。

作った製薬会社?はなんで作ったんだろ?安全な原発関連で使うことは起きない(苦笑)だろうし、中東向けのつもりだったのかな。
謎の薬ですね。
Posted by さいとう at 2012年04月04日 11:36
さいとう様

ありがとうございます。
やはりそんな物ですか・・・
あまりに体調が悪く、大学病院で検査しても原因が分からず、挙句に
「整形外科にでも行ったら」
と言われてしまいました
心臓の裏側の激しい筋肉痛や、胃腸の不調、尿から蛋白も出ています
両手両足の爪も変形し、横に溝が・・・
何か手立てはないものかと思ってしまいました
薬はそもそも、毒ですものね

来月、西へ移住を決心しました

都内なら大丈夫かと、震災後に献血してしまいました。
しかも400mlも!
あれがどうなったのか、考えると恐ろしいです
Posted by 半病人 at 2012年04月04日 23:03
こちらの輸血の記事、とても興味深く読ませて頂きました。

私は素人なので分からないのですが、
人工透析(血液透析)装置を使い、血液を浄化して被爆症状を軽減する事は出来ないのでしょうか??

輸血が効果をあげても、輸血用血液が足りなくなると思うので、(既に東北地方では足りないそうです)
もし血液浄化が出来るのなら、効果的な治療方法になり得るのでは??と考えたもので。。。

それこそゼオライトや逆浸透膜などで浄化できないのでしょうか。。。

人工透析の装置の浄化する成分と被爆によるダメージを受ける血液成分は違うのでしょうか??

先生装置を発明してください!!(^^;



Posted by blood at 2012年04月14日 21:37
はじめまして
いつも貴重な情報を有難うございます。
全体がどちらかに傾くなか、中庸を貫くと
右や左に見られることに辟易しています。
適切な情報のありがたさを身にしみて感じております。
(細かいことですが、揚げ足を取られないよう
「地」を「血」に修正をお願いします)
【文脈でわかりますが、極端な端っこの人にとやかく言われるのは我慢なりません】
肥田先生が、輸血を受けられて本当によかったと思いました。
そして、血は本当に重要なのですね。
今後人間の毒素や放射性物質の排出能力についても知りたいと思いました。

Posted by じじ at 2012年05月29日 00:16
第五福竜丸の時は乗組員の方々の全血もしくは一定量の血液入れ替えを行って被曝血液に対処しましたし、チェルノブイリ事故当時も事故時点で旧ソ連に居て緊急帰国された方々は、血液中のヨウ素やセシウム濃度の検査を国の指示で受けていらっしゃいました。今回「国内で」深刻な原発事故が起きたにも関わらず、いままで輸血に対して厳しく管理してきた国が一向に血液に対して対応を見せないことに懸念を持っていました。
臓器提供や骨髄バンクなども今後問題をはらんでいくかもしれない状況にあって、
先生が記事にしてくださった事に感謝いたします。
Posted by あおぞら at 2012年05月29日 00:29
広島で被爆した父が、やはり入院中朦朧とした意識の中で輸血をしてもらうと身体がぽーっと温かくなり、意識が戻っていたと生前かたっていました。
残念ながら2000年に癌で亡くなりましたが、発症以前はぶらぶら病とは程遠いエネルギッシュな人でした。
20人ほどの看護婦さんからの輸血をしていただいたと手記に書き残してます。

今回の事故で被曝した方全てに、輸血による治療は非現実的でしょうが、何らかの血液浄化治療が開発されて皆がそれを受けられるようになればと望みます。
Posted by 別府 玲子 at 2012年05月30日 09:00
私も懸念して。福島市といわき市の日赤に電話した事があります。「原発で働く人とかはともかく、一般市民の献血は普通通りですよ」との答え。「原発で働く人…」が引っかかっていました。
Posted by 意識屋 at 2012年06月03日 19:37
肥田先生が元気になったのは、輸血のおかげではなく、出血によって、被爆した血液が体外へ出て行ったために、内部被爆が進まずに済んだからではないだけではないでしょうか。生理食塩水でも良かったと思います。
私の伯父は長崎で被爆して、こめかみの動脈が切れて、出血しながら負傷者の手当てに駆け回っていたが、出血が止まらず意識を失ってしまった。しかし、当時は輸血などできる状況ではなく、自然に出血が止まるのを待つしかなかったそうです。幸いに命を取り止めましたが、放射線科の医者であったために、原爆以前に白血病になっており、被爆直前頃は、余命わずかで、かなり弱っていたのが、その年の暮れ頃は、以前より元気になっていたそうです。大量出血によって、刺絡療法のような効果が、おこったのではないかと、想像しています。
Posted by 永井 at 2014年07月27日 18:14
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