
◆講演VIII「福島第一原発事故と放射線被ばくについて」(約20分)
放射線医学総合研究所理事
明石 真言
について、ご紹介致します。(動画もアップされています。・・どなたでもご覧になれるようです)
福島住民の汚染と除染
今回、福島で私どもが直面した大きな問題は、住民の方々の除染です(図表16)。

住民の方々、福島県は大体1㎠当たりγ線とβ線で40ベクレルぐらいを事故前の除染基準にしていました。これよりも高ければ除染をする、これよりも低ければ除染をしないということです。これは検出器によって違うのですが、このタイプの検出器を使うと大体1万cpmぐらいのカウントが出てきます。ところが、1万cpmを超える人たちが住民の方に多く出てきてしまったのです。
何が起きたかというと、今回の災害は、先ほどお話ししましたように、複合災害でありました。結局住民の方に汚染があっても、断水によって水がなかったため、除染ができなかった(図表17)。

(できなかったらしなくていいのだったら、基準の意味はなさそうですが・・・)
最も簡易な除染方法は、汚染した洋服を脱いでしまうことです。ところが、気温が低くて雪が降る状況だった上に、皆さん着の身着のままで避難してきた。当然ながら着替えがないので、洋服を脱いで除染することもできないという状況になりました。そこで、除染をする基準値を引き上げざるを得なくなったということが、当時の実情です。
ところが後になって、高い汚染のスクリーニングレベルを設定することが危険ではないかというような議論が出てきました(図表18)。

そこで、IAEA(国際原子力機関)が出しているマニュアルを確認したところ、10cm離れたところで1時間あたり1μSv/hというのが、いわゆる“First Responder(消防など真っ先に救急対応する人)”にも、このレベルまでは基本的に何もしないで患者の治療にあたるというレベルであると記されていました。これに比べると今回の除染基準値の引き上げについても大体10cmのところで1μSv/hになるということが分かっていましたから、私たちはこれを適用するように政府に対して提言をいたしました。
乳幼児まで、この基準でも大丈夫と医師会が太鼓判を押したわけです。乳幼児を緊急対応する人と同じレベルに位置づけていいのでしょうか。基準を緩くすることよりも、どうやったら本当に除染できるかを助言するべきではありませんか?つまり、この基準で言いますとかなりの被曝をしたことが見て取れます。なぜ、医師が現場に合わせる必要があるのでしょうか。自衛隊のシャワー設備でもなんでもやって、除染してあげるように勧告しなくていいのですか?
研究所で受け入れた患者について
それから今回、実は医師の方が多いのでお示しした例ですが、これはわれわれの研究所で受け入れた患者についてです(図表19)。

この方は水素爆発によって負傷した方で、われわれの研究所に搬送されてきました。全身、広範囲に汚染が存在していて、高いところでは31,000cpmぐらい、それからほとんどがヨウ素系の放射性物質に汚染していました。
当然こういう方々でも、けがをしていれば治療をしなければいけないということです。私どもの研究所では、もちろん放射線を測るスタッフもたくさんいますし、放射線管理の専門家がいますので、こういう患者を受け入れることについて何ら問題はないということでスムーズに受け入れました。
それからもう3名受け入れていますが、3月24日にケーブル作業をしていた患者が汚染水のなかに足を突っ込んでしまって、皮膚にβ線熱傷が出てきたというような、これがわれわれのところに搬送される前にニュースで出てしまったのです(図表20)。

われわれはβ線熱傷などほとんど出る障害ではないということを知っていました。実は、「おかしいな」と思って受け入れました。そうすると、確かに足には汚染水による汚染というのはかなり付いていました。
ところが、いろいろな問題が分かりました。ひとつは個人線量計を設定して、一定の線量になると音が鳴るようにしていたのですが、音が鳴っていることを無視して仕事を続けているなど、かなりの混乱のなかでたぶん作業をしていたのでしょう。こんなことも明らかになってきました。

一方、足の汚染レベルを見てみると、1時間当たり10μSv/hを超えるような汚染も出てきています。でも、ある程度の知識があれば、これは正確にどのくらいの汚染であるかということが分かりますし、医療スタッフについて危険か危険でないかというのもすぐ分かるわけです。

私たちはこの3名を受け入れましたが、医師も看護師も、誰もこの患者に近寄ることを躊躇した人はいません。何も問題ないと、すぐ判断をしています。
つまり、やはり正しい知識というのは非常に重要だということです。
ちなみにこの足の線量は、約500mSvです。500mSvというと、私たちは皮膚に発赤(erythema)が出てくるのに大体3,000mSvぐらいと考えています。それに比べると出るわけはないのです。ところが、これが世界中のニュースになってしまったという非常に残念な経験をしています。

もし、この患者たちが重傷を負っていたら、心筋梗塞があったら、出血をしていたら、受け入れないということは許されないだろうと私どもは認識をしております。

こんなふうに、やはり正しい知識を持つ、放射線を正しく怖がるというのは、医師にとって不可欠な要件ではないかと思っています。
コメントをする気も起きませんが、緊急時でようやく許される500mSvも被曝させておいて、全然怖くないとは一体どのような神経なのでしょうか。やたら、怖くない、正しく怖がれ、冷静にと話しておりますが、では熱傷などはなかったのか。なぜ、足底の写真などを見せていただけないのでしょう。3Svを超えるとようやく皮膚の熱傷が起きるとは、私は知りませんでしたし、今回の被曝量計算は汚染による被曝のみのはずです。もともとの水たまりにあった放射能から、どれだけのβ線障害を受けたかなどの計算はされているのでしょうか。
このようなニュースも流れています。
東日本大震災の発生から1週間後。親しい某ニュース番組のテレビカメラマンから「お蔵入り映像」を見せてもらった。
震災直後、関東某所の避難所に、福島第一原発の作業員が妻と娘をつれて訪れた。彼は協力企業の人間からサーベイメーター(携帯用の放射線測定器)を奪うと、愛娘を調べ始める。すぐに針が振り切れ、ピーピーという大きな音。なだめる協力企業の人間から、「俺は毎日つかってっからわかんだ! やべえだろ、これ!」と怒鳴って取り乱す作業員。震災からまだ1週間ほどだったので、モニターを見て思わず息を呑んだ。
この映像はテレビ局幹部から「あまりにショッキングで、視聴者の恐怖心をいたずらに煽る恐れがある」としてボツになった。「報道の作法」に反するというわけだ
100,000cpmにしてしまえば、引っかからないから安全。なぜ、このようなことを医師が先頭にたって言うのでしょうか。上記のサーベイメーターのお子さんは今はどうされているのでしょうか。
この症例報告で奇妙な点は、何日間入院されて、どのような経緯だったのかが、一切なく、この線量なら怖がる人間はいないというなにやら情緒的な話にすり替えられていることです。10uSv/hrの汚染がある物体に近寄っても怖くないというのは、蛮勇というのではないのでしょうか。
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タグ:医師会
先生のコメント チェルデータを読んでいるので強く共感します
・・・放医研の方が ホールディングカウンターは直後でないと意味が無いと、なぜ提言しないのか? 宝の持ち腐れ 豚に真珠です。 国費で買っているもの 使わないで 放医研のおもちゃじゃないのですか?
原発も高価な検査機器も 全て 科学者の暇つぶし 遊び道具でしかない。
医師の方が 自分たちの損害賠償請求の事が表にしてまであって・・・ その方は、住民の被曝について何もコメントが無い..残念でした。
勤務医の私のところに送られてきた雑誌には(DtoD、総合メディカル社刊)
菊地臣一氏、福島県立医大理事長兼学長
のインタビューが掲載されており
『事故後、県立医大における医療従事者の恐怖や焦りがあり、不安が深く殺気立っていた。
そのため震災発生後2〜3日で長崎大学と広島大学に連絡をとって、リスクコミュニケーションの専門家の招聘を要請した。
専門家がすぐに来訪して医大関係者、県庁関係者に講義を行って、混乱を収めてくれた。』(要約)
とあります。かなり素早い対応だったようです。専門家の名前は書いてありません。
医師への洗脳は、事故直後から着々と行っているようです。
福島県立医大の若い医療従事者が、気の毒です。大学では、おかしいと思ってもモノ言えなかったことでしょう。
医師と言っても今回活躍している専門家は、だいたいにおいて臨床医ではない。まず臨床医が、洗脳から目覚めることが必要です。
北九州市の小中学校、終業式で、北九州市の震災がれき受け入れが必要などの訓話を各校長がおこない、小学校4年生以上の小中学生は、以下の項目のプリントがくたばれました。
1.がれきをなくすには、みんなの協力が必要です
2.がれきを焼却しても、健康や環境への影響はありません
3.風評被害(ふうひょうひがい)を防ぎましょう。
詳しくは、以下に→http://togetter.com/li/342192
子どもたちを対象にしてこのような情報発信を行う。北九州市は戦時中のようです。 北九州市立大本営、のように感じます。
公衆衛生学で食べている皆さん、出番だよ!
きちんと検証しとくれよ。
当時、住民の除せんを「差別だ」としてやめさせた勢力もいた。「差別、差別」の大合唱を行い、結果、適切な被曝軽減を行わせなかった勢力。
それが誰だったのかも、検証しとくれよ。
一般開業医には先生のように危険性を言う方も多いのに、医師会全体としての行動がアホなのは、役員・上層部の選出方法に問題があるのでは?
放医研も、アホすぎて恐るべし。
医者のくせに、症例報告の経過や写真を乗せないとか。ありえない。
放医研の明石はこんな資料で説明していたのですか。
ならばなぜこのベータ線熱傷の作業員の足の写真を公開しなかったのでしょうか?
ドイツのドキュメンタリー「希望的観測」のほかなにもない原子力。
この中で作業員の足が映されていました、8分10秒からです。
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=M_ylHMALS8I#!
私もブログにキャプチャーを保存しました。
流れからいって記者はカメラマンと一緒に写したのは間違いないでしょう、他の写真を使ったとは思えないし、500ミリもベータ線でやられたら。明石は3000ミリから症状が出ると言ってますがそうすればそれ以上の被曝があったかもしれない。
read: 「線量計に鉛板、東電下請けが指示、原発作業で被爆偽装」 !!
はじめてリスクコミュニケーションという言葉の解説を役人から聞いたときに とても胡散臭い言葉だと思いました。結局、人体に及ぼす危険性と経済や社会に与える影響という、本来天秤にかけてはいけないものを評価する姿勢なのですから。そうやって、大きなもののために小さな個人は踏みにじられてきた。腹立ちます。
4/30の記事http://onodekita.sblo.jp/article/55594961.htmlでご紹介いただいた動画を先ほど、通して拝見しました。なんと、第5福竜丸の事故後にはあのような放射能危険をわかりやすく国民に知らせる映像が製作されていた。(どのような媒体を通して知らせていたのかはよくわかりませんが)こんど、83になる母に見せてみようと思います。知っていたかな?覚えているかな?
コバルトの上に乗せられた鳥かごの中で死んでしまう小鳥。ナレーションが「これが放射能の恐ろしさ」だと締めくくっていました。これはよくわからない人にも目に見えない危険をわかってもらえる映像でした。
相次ぐ核実験により世界中に大変な量の放射性物質がばらまかれ、大気、土壌、食品などに検出されていることを知らせていました。(1マイクロマイクロキュリーという単位で紹介されていましたが、=370ベクレルという理解でよいのですかね。間違っていたらどなたかご教示を。)
推進側の「核実験のころは今よりずっとひどかった」という言説はこの辺のことを言っているということが理解できました。昔だって被ばくしたものを食べて、みんな被ばくしてるんだという。
ほんとだね、じゃあいいかって、そんなこと思いません!これを見て もうこれ以上放射性物質を地上にばらまくなんて絶対してはいけないと思いました。今すぐ廃炉!です。映像のご紹介ありがとうございました。
昨夜、関電本店前に行ってきました。たくさんの人が思い思いに抗議をしていました。わたしは帰宅する関電の社員と思しき人に、組合(電力総連)や社内での勇気ある発言をお願いしますと心からお願いの声をかけてきました。わたし自身組織の中で声を上げることはとても勇気が要るので。
ほとんどスルーでしたが、なかには 勇気という言葉に目をこちらに向ける人もいました。中からも変わってほしいけどわたしがロマンチストなんでしょうね。(苦笑)
>なかには 勇気という言葉に目をこちらに向ける人もいました。
この人は多分、関電とは関係ない会社の人である可能性が高いです…
関電本店前の抗議に行ってきた知り合いが関電本店から出てくる何人かの人が
反原発のパンフを喜んで受け取っていたと言っていましたが…つまりはそういうことー関電の社員ではないのです。
内部から変えようとすると左遷とか、昇進をストップされたりしますので、なかなか無理でしょう。
反原発でそういう目に会った人が北海道電力でいました。
東電OL殺人事件でネパール人に殺されたといわれていたOLもマスコミでははっきりとは報道してませんでしたが
反原発でしたよね…
ところで、先生に語っていただければと思っていることがあります。
これは人体の放射化です。
ブログで書いている人がいたので、一応参考まで。
http://blog.goo.ne.jp/adoi/e/64ed7503a5c123edfa22c5ad49a86447
ただ、多くの人間が被ばくする事態を迎えた今、そこにかかわる人たちはそこを突破して未来への希望を与えてやってほしいと願うのです。小さな声でも葛藤を表明してほしいです。
東電女性の痛ましい死。その後のおぞましいスキャンダラスな報道。どうか真実に光が当たりますように。
先日川崎市で行われた地脇美和さんの講演をIWJで拝見しました。福島県内の状況をうかがって、まるで、電力会社の直轄地ではないかと感じました。自治体の対応は電力会社の言い分とまったく同じ。歪んだ勝俣のような八木のような経営者/施政者の前に抑え込まれた人たち。いずれわたしたちもその権力下に置かれるなんてまっぴらだし、福島を中から変えたい、そのために何かしたいと思いました。
小野先生、日々のご活動、ほんとうにありがとうございます。多くの示唆をいただいております。