2012年09月09日

電力需給に見る九電の印象操作−(土曜日の需給95%を前面に)

 電力会社が散々脅してきた今夏の計画停電は行われませんでした。
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 重要な部分を抜き出します

一方、土日を含めて一時間あたりの使用最大電力が最も高まったのは7月26日午後2〜3時。使用電力は1521万キロワットで使用率は93%だった。さらに火力発電所の新小倉5号がトラブルで停止した8月17日の使用率が92%、同18日が95%と高まった。しかし、この3日間以外はすべて「安定した需給」だった。
 九電は当初、使用祭壇電力1634万キロワットにたいして供給能力1574万キロワットと見込んでいたが、実績は使用電力1521万キロワットに対し、供給力は最大で1732万キロワットを確保した。要因として九電は@雨量増加による水力発電所の出力増A最高気温が10年夏より低く、雷雨が多発B大飯原発3,4号機による電力余力の増加−などを挙げた。


 この文章に大きなミスリードがあることおわかりですか?答えを書く前に、この電力需給の分析を九電のホームページから見てみます

今夏の電力需要実績
最大電力と気温の相関
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確かに節電効果が出ています。九電にとっては、商品が予想通りに売れていないのですから、踏んだり蹴ったり

時間最大電力と供給力の推移
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注目点は、17日、18日をグラフ上で指定していないこと(恥ずかしくてできない)

そして、問題の需給ギャップ
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参考資料として、最大需要であった7月26日の九電の電力確保状況を示します。
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そして、九電が本気で電力を集めたと思われる日の供給力−8月3日(金)
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この次に紹介する17日、18日と比較してください。これらの日に九電が本気で電力供給を集めていないことはすぐにわかります。

8月17日と8月18日に絞ってみてみましょう。一番大事なのことは、18日が土曜日であること。土日は、業務用電力が大幅に減りますから、本来厳しくなることはありません。実際、計画停電の計画表を見ましても、土日は当然外されています。

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では、なぜ18日(土)が需給上は最も厳しくなったのか。17日とあわせて、九電が公開していた資料を見てみます。

まず、17日(金)の確保済電力
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そして、この日の九電需給曲線(私はこの日やるつもりじゃないかと思っていました)
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そして、この日の各電力の需給状況
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これを見ればよくわかりますが、中部、北陸、中国とかなりの供給余力があります。この日の供給余力92%は、他社からの融通を減らしてきたため(今まで不要だったから)による作られた需要ピークです。

そして、さらに悪質なのは翌18日(土)の需給。この日が火力の故障により、もっとも厳しかったなどと記事にしていますが(記者も、九電の情報をたれ流すだけでなく、自分でカレンダーを見るなりして、もう少し勉強して欲しい。発表を書くだけなら、九電広報部に過ぎませんよ)

この日の需給曲線
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そして、供給力の確保
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一目瞭然です。土日で、需給が緩むことがわかっているので、融通電力を全てお断り。(恐らく、電力確保を他電力に依頼するだけで、なにがしかの料金が発生するのでしょう)さらに火力の故障が相まって、今夏の最大ピーク95%を演出したわけです。

 この日の需給が最も厳しかったと発表する九電も恥知らずですが、その舞台裏を見抜けない新聞記者にもレッドカードを出します。このあたりまで調べておけば、九電の欺瞞性が直ちに明らかになったはずです。この発表の場で、曜日についての言及が全くなかったことは、なぜでしょうか。九電番の記者なんか、たくさんいるはずだと思いますが。

 再稼働を電力が主張しているのは、電力不足が本当の理由ではなく、もはや経営問題にすぎません。高コスト・高リスクの原発を自分たちで建設してきたのですから、自分たちでその後始末は行ってください。

◆関連ブログ
弱者をだしに原発再稼働をもくろむ政府と国賊電力2012年06月25日
2011年09月14日
原発の脅し(1)〜計画停電(90万アクセス)
posted by いんちょう at 20:30| Comment(8) | 原子力
この記事へのコメント
確かに東電の場合、9月1日からの8%値上げのときも「明日から値上がりします」とか「今日から値上げです」という報道はほとんどありませんでしたね。
石原都知事も何の用務かわかりませんが、もんじゅ視察をして原発容認発言もしてますし、本日(9日)読売朝刊1面でJR東海の社長が原発再稼働の意見記事を載せていますね。
ほとぼり覚めたら何とやらでなし崩し的に全国的に再稼働が始まるでしょう。
兎に角、議論が全然足りません。期待するほうが無駄なのかもしれませんが、早く電力自由化をしてもらいたいものです。
一般家庭の1社随契というのはいただけませんね。
Posted by 陳 at 2012年09月09日 21:40
失礼します
Posted by TG at 2012年09月10日 05:48
又々鮮やかな解説で非常に理解しやすいです。
職歴経験者の解説ですから、揺るぎないですね。

ここは一つ九電さんや新聞社各位の反論コメントを
お願いしたいところです。

そうですか!グーの音も出ませんか?
Posted by ハマの住人 at 2012年09月10日 06:28
記事とは関係ないですが。9日夜7時のNHKニュース「石巻市の瓦礫処理費用は他の自治体と比べてかなり高額。例えば東松島市に比べて約10倍。これは東松島市が建築業界に依頼して処理業者の見積もりをきちんとチェックしていたのに対し、石巻市は業者の言い値、ノーチェックで支払いをしたから。処理業者の見積もりの偽装も発覚している。」
「当初混乱していたから」と石巻市役所は説明していましたが他の自治体はきちんと行っていたことです。それに他の海岸沿いの小さな町が支援が届かず放っておかれたのに対して、石巻市は支援も早くからされ、芸能人のド派手な投入もされていた。一年半もたって、こんな話題が出てくるなんて。(それも誰かから指摘があって仕方がなく、なのでしょうか)
全部、国民の税金からですよ?無駄遣いはやめてください。大切に使ってください。
Posted by 元宮城県民、避難中 at 2012年09月10日 07:19
電力会社がみせる横暴さと自信は、「原子力ムラが憲法より上の権限を持っている」ことにあるようです。
http://mak55.exblog.jp/16783586/
原子力を手放した瞬間に全ての法令根拠を失い、刑事罰を受けることになるので、他人を傷つけてまでがんばるわけです。
原子力ムラ全体が原子力協定の一点で強力に支えられています。
Posted by キタガワ at 2012年09月10日 08:45
タイトルと異なる書き込みになりますが、ちょっと失礼していいですか。
ついに北九州に向けて、ガレキを積んだ船が出港してしまいました。

説明会の段階で、小野先生をはじめとした市民の突き上げの多かった熊本との違いでしょうか。
北九州市は「反対」の声を上げるタイミングが遅すぎた、もしくはスマートにやりすぎた感があります。他県ですが、抗議し続けていたので、非常に残念。
こういうものは恥も外聞も気にせず、がんがん怒りを向けないとダメなのだと学びました。

ガレキ焼却、さらにはその焼却灰の行方も気になります。
9月4日から10月4日まで、北九州市港湾空港局がパブコメを募集していました。かねてから言われていた響灘(ひびきなだ)の埋め立てです。
ここで「市民の監視が緩い」と思わせたら、この先何を埋め出すかわかりません。(フクイチのあの使い捨て防護服も燃やすと言ってますよね。灰は絶対に九州に持ってくるな。原発事故復興大臣の指向にヒヤヒヤします)

北九州市の皆さん、海水から飲料水を得ている福岡市の皆さん、お向かいの山口県の皆さん、もういっちょ踏ん張りませんか?


■北九州港港湾計画 響灘東地区の沖に海面処分場について

この響灘東沖処分場計画について、環境保全の見地から、市民のみなさまの意見を募集します
http://www.kitaqport.or.jp/jap/outline/environmental.html

意見の提出方法:

住所、氏名を記入の上、次のいずれかの方法で提出してください。(様式自由)
○意見提出様式(参考) [PDF:41KB]
○意見提出様式(参考) [MS Word:27KB]

1.電子メール
電子メール・アドレス(kouwan-keikaku@city.kitakyushu.lg.jp)
2.郵送
〒801-8555 北九州市門司区西海岸1-2-7
北九州市港湾空港局計画課「響灘東沖処分場」担当あて
3.ファクシミリ
FAX:093-321-5915
北九州市港湾空港局計画課「響灘東沖処分場」担当あて
4.指定場所への持参
港湾空港局計画課(港湾空港局門司庁舎2階)
Posted by hanna at 2012年09月10日 23:24
石巻市役所には、復興マネーがたんまり入り、そこに群がる有象無象やら、もうわけが分からんことになっているのではないでしょうか。 地震と津波の被災者ということで皆があまり文句を言えないのをいいことに調子にのりすぎ。
公害の原因になる可能性を指摘されているものを、指摘されているにも関わらず大量に他の自治体に押しつけた。よって今後の健康被害の立証責任は、国と石巻市にあります。・・・でも、知らんふりするだろうね。

Posted by 腹立つ! at 2012年09月11日 06:20
院長先生お疲れ様です。
ANNニュースから以下引用

野田内閣が掲げた「2030年代に原発稼働ゼロを目指す」新エネルギー戦略。しかし、原発を抱える自治体が猛反発、経済界からも厳しく反対され、さらにはアメリカに批判されるなど19日の閣議では、この戦略そのものの正式決定が見送られました。これで「原発ゼロ」は骨抜きになる恐れが出ています。

 藤村官房長官:「国民の理解を得つつ、柔軟性を持って、不断の検証と見直しを行いながらということも書いてあるが、エネルギー環境政策を遂行することをきちんと閣議決定した」
 しかし、政府はエネルギー環境戦略を拘束力の強い閣議決定とはせず、参考文書にとどめました。藤村長官は、今後策定されるエネルギー基本計画に「2030年代原発ゼロ」が盛り込まれるかどうかについては、経済産業省の調査会などが決めることだと述べるにとどまりました。

引用終了。
こんな内容ゼロに近い決定ですら、後ろ向きに先延ばしというお粗末政府。
官房長官の発言も政治家の発言ではないし、アメリカに批判されたというその内容も報道しない。どうしても核保有前提で話が進んでいますね。
民自公ともに早期に選挙で下野させるべしでしょう。
Posted by 陳 at 2012年09月19日 13:35
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