2012年12月23日

保健物理学会−就職に超有利な放射能安全神話作成団体

 私が大学を卒業した1988年はバブル絶頂期で、就職活動を始めたのは4年(3年ではありません)の夏休みが終わってから。しかも、その方法とはOBに電話をして、ごちそうしてもらいながら話しを聞くというパターンでした。学内の就職調整(一会社あたり2名の推薦枠を決める)を行ったのもたしか9月か10月。この就職調整は話し合いで行われましたが、「オレは不人気な教室に進んだのだから、就職先は優遇しろ」という意見がまかり通り、さらにはどうしても話し合いで調整が付かない場合は、じゃんけんで決める。学部生の場合は、大学院進学予定者よりも優先的に会社を選ぶ権利が認められていました。(当時の精密機械工学科の大学院進学率は50%程度−学部学生に対する大学院生の枠が少なかったため)今の東大がどのような状況なのかは知りませんが、少なくともこんなことはないでしょうね(と言っても、どこを就職先にしていれば良かったのか・・・当時の私になんと言ってアドバイスするかをもう、10年近くいつも考えていますが、正解は見当たらず)
 そんな厳しい時代ながら、素晴らしく恵まれた学友会があります。

その名も日本保健物理学会学友会
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 日本保健物理学会学友会は、2005年11月に日本保健物理学会理事会 の承認を経て活動を開始いたしました。近年、原子力及び放射線安全の分野に興味を持つ学生が増えていますが、 異なる研究分野の学生は、相互の情報を共有する場がないのが現状でした。
 学友会は、様々な大学や研究分野の学生同士の連携はもとより、最先端で活躍する研究者とコミュニケーション、就職情報・進学情報の共有、また大学・研究機関・企業への学生の情報提供を目的とした学生主体の組織です。


 男性の中に女性数名ですが、工学部にいた私からすると、構成に偏りはないと言えますね。

あご足つきであちこちの工場見学をして、それが単位として認められる学科(東大精密機械工学科)に所属しておりましたので驚きません。春休みには一週間を使って、関西の企業(豊田織機、トヨタ自動車、住友金属、住友電工etc.)めぐりをやったこともあります。(交通費自腹。宿泊費は、ほぼ負担なし)

 現代においても、この保健物理学会学友会も、2泊3日の六ヶ所村ツアーが組まれています。この費用はどのように捻出されたのでしょうか。
日本原燃釜Zヶ所事業所見学
六ヶ所村見学ツアー感想記 森藤 洋輔(名古屋大学)
2007年11月27日(火)から29日(木)にかけて、学友会企画として日本原燃(株)見学会が行われました。東京大学、名古屋大学、藤田保健衛生大学、首都大学東京から学友会員である学生8名が参加し、日本原燃梶E宮川様・井筒様に同行していただき、同社の行う事業を隅々まで詳しく見学することができました。また、日本の原子力のメッカとなる青森県下北半島で学友会メンバーと共に過ごした3日間は、今後の学友会活動の展開において大変有意義なものとなりました。

 現在においては、大変恵まれているといってよいでしょう。

この保健物理学会(HEALTH PHYSICS)とはどのような団体なのでしょうか。
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保健物理学の領域
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リスクコミニュケーションなど、いろいろとかぐわしい名前が出ていますね。JAEAとは知っていましたが、この保健物理学が本流だったとは、私自身知りませんでした。

 そして、この学会の本領と言えば、このサイトを見ればすぐにわかるでしょう。

専門家が答える 暮らしの放射線Q&A
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子どもの甲状腺異常等について、サイトの見解を教えてください。
オーストラリアの小児科医、ヘレン・カルディコット博士は日本での講演や会見で下記の見解を示しています。
『福島県で実施された甲状腺検査で、40%の子どもに何らかの異常が見つかっている問題に関して、小児科医であるヘレン博士は“極めて稀な数値”と指摘』『福島原発から約200種の放射性物質が排出されたが、これらの物質については確認さえ、なされていない。Csはあくまで指標の一つ。』『一度体内に入った放射性物質を除去する方法はなく、蓄積する。また、放射性物質は濃縮する。何世代も続き、どんどん酷くなる。』また、東京23区土壌が平均でCs合算800Bq/kg(放射能防護プロジェクトより)であることや世田谷区のハウスダストから1500Bq/kgのCsが検出したことを受けて、『妊婦、子どもやその母親、特に小さな子供がいる方、妊娠可能な女性は、今からでも首都圏から離れて下さい。』と指摘しています。
これらのヘレン氏の発言について、当サイトの御見解をお伺いしたいです。


回答掲載日:2012年12月8日 

『福島県で実施された甲状腺検査で、40%の子どもに何らかの異常が見つかっている問題に関して、小児科医であるヘレン博士は“極めて稀な数値”と指摘』
40%は他の県と比較して異常な値とは言えません。比較するものがなければ、その数値を極めて希な数値と判断することは出来ません。詳しい解説が神戸の調査にありました。
http://rokko-news.sblo.jp/article/60226247.html

『福島原発から約200種の放射性物質が排出されたが、これらの物質については確認さえ、なされていない。Csはあくまで指標の一つ。』
放出核種の量と半減期を考えることにより、セシウムが重要な核種である事が言えます。
http://nsed.jaea.go.jp/ers/environment/envs/FukushimaWS/taikihoushutsu2.pdf

『一度体内に入った放射性物質を除去する方法はなく、蓄積する。また、放射性物質は濃縮する。何世代も続き、どんどん酷くなる。』
人体は代謝という機能がありますので、新たな取り込みがなければどんどん濃度は薄くなります。その時間は生物学的半減期と呼ばれます。例えば、1960年代の大気圏核実験により内部被曝した日本人成人群のセシウム137体内推移が調べられていますのでご参照ください。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/09/09010411/05.gif

「東京23区土壌が平均でCs合算800Bq/kg(放射能防護プロジェクトより)であることや世田谷区のハウスダストから1500Bq/kgのCsが検出したことを受けて、『妊婦、子どもやその母親、特に小さな子供がいる方、妊娠可能な女性は、今からでも首都圏から離れて下さい。』
このような発言に従う必要はありません。首都圏における被ばく線量は自然に元々存在する放射性物質による被ばく線量と変わりません。
http://monitoring.tokyo-eiken.go.jp/
比較的セシウム濃度が高い数字を引合いに出していますが、それらは福島第一原発及びその周辺を中心に存在するので、それ以外の場所に住む人々に与える被ばく量はわずかです。ましてや、1sあたりのハウスダストの値を示しておりますが、1sもハウスダストを取り込むことが現実的にあり得るでしょうか

ある話題について、大きな数字を出されると、どうしても注意をひかれてしまいます。また、数値を示すことでその話題に信憑性があるように感じてしまう場合もあるでしょう。上記の例では、子どもの甲状腺検査での「40%」や、ハウスダストの「1500Bq/kg」といった部分がそうです。しかしながらそれらの数値についても、前述の説明にあるように、他の例と比較すると決して特異な数値でなかったり、限定的な条件下で表れるものであったりします。
根拠となる数値を示すことは、とても大切なことです。しかしながら、そこで示されている数値が、いったい何を意味するかを正確に理解することは、それ以上に大切です。
数字だけを見て、安易に「危険だ」と考えるのではなく、その数字の意味するところを正しく理解したうえで、判断していただければと回答者は考えます。


 医療のことを全く知らない物理学会が、なぜ40%もの異常を正常だと主張するのか。この学会のQ&Aを読みますと、私自身は呆れ果てます。一体どこに誤魔化しがあるのかを理解するには最適な教材だとは思いますが、正しい知識がないと丸め込まれてしまうかも知れません。いちいち、ここで論評するのはばからしいので、皆様でご覧ください。例えば、このようなごまかしには、誤魔化せられませんように。

 このような団体を見たときに、大事なことはなんでしょう?それは、構成員の名前をしっかりと記憶すること。
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会長 標準化委員長 小佐古 敏荘 東京大学
副会長 国際対応副委員長、他学会連携、JARR幹事 服部 隆利 電力中央研究所
理事  総務担当  猪俣 一朗 東京電力(株)
理事  総務副担当  宮川 俊晴 日本原燃(株)
理事 編集委員長  山口 恭弘 日本原子力研究開発機構
理事  編集副委員長、大学等教員協議会 細野 眞 近畿大学
理事 企画委員長 百瀬 琢麿 日本原子力研究開発機構
理事   企画副委員長、学友会  伴 信彦  東京医療保健大学
理事   国際対応委員長、AOCRP幹事   酒井 一夫   放射線医学総合研究所
理事   会計担当   菅井 研自   東京電力(株)
理事   会計副担当   林 克己   (株)日立製作所
理事   広報担当   谷口 和史   日本原子力発電(株)
監事  村山 一穂 (株)東芝
監事  二ツ川 章二 日本アイソトープ協会
参与  H24大会長  石榑 信人 名古屋大学
参与  福島対応  杉浦 紳之 近畿大学
参与 社団法人化対応 近江 正 日本原子力発電(株)
参与  若手研・学友会参与  藤原 慶子 京都大学
参与  若手研・学友会参与  河野 恭彦 日本原子力研究開発機構

どうです?近畿大学や、会計の東京電力など改めて、説明するほどのこともありませんね。そして、会長は、20mSv被曝問題で涙の辞任をした小佐古 敏荘氏です。

 保健物理学会の発祥について 原子力開発の光と影 カール・Z・モーガンから

p.20から(1943年の出来事)
 私がコンプトンの事務所に入っていったとき、スターンズは私に挨拶した。「カール、あなたはウォラン博士の下で保健物理学部門で働いているんだね。彼は、あなたが知っているように、宇宙線物理学者の一人なんだよ」。それから、彼はウォランに私を紹介した。
 ショックを受けて、私は次のようなことをいいながらドアの方へ進み始めていた。「何か重大な間違いがあるに違いありません。私は『保健物理学』についてこれまで耳にしたことさえありません」。
 彼らは、笑い、ほとんど同時に繰り返して、「頑張れよ、カール。私たちが二,三ヶ月前に保健物理学という言葉を発するまでは、私たち自身だってそれらについて一度も耳にしたことがなかったんだよ」。彼らは、物理学者によって最もうまく処理されると思われる、重大な健康問題に気づいているのだ、と説明した。そういうことから、大学でのこの新規部門は「保健物理学」と呼ばれた。


 この本は、日本語が下手というレベルではなく、日本語になっていません。購入することは全く勧められませんが、それでも内容と資料は揃っているといっていいでしょう。

 このように、何も知らない物理学者達が、核による健康被害が起きることを見越して、壮大な組織を作り上げたのです。核兵器に費やされたカネは、一説によると米国だけで五兆ドル。途方もないカネが費やされ、そのごくごく一部がこの放射能による健康被害を隠蔽するために、「保健物理学」なるいかにも怪しい部門を、生体のことを全く知らない物理学者連中で作り上げたわけです。そして、この団体のやっていることは、上述したとおり。

 気がついてみると、莫大なカネを使って、途方もない組織が我々を支配しているのです・・


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タグ:保健物理学
posted by いんちょう at 21:14| Comment(6) | 原子力
この記事へのコメント
保険物理学というのはWHOに対するIAEAみたいなものですね。
放射能関係の健康被害は一般の医者は立ち入らせず放射能の専門家が判断する…しかし、それは学問に基づいたものではなく政治的な判断…いや、経済的な判断と言った方がいい…要は儲けたいけど保障の金はビタ一文、払わねえってことですね。
福島昭治先生の放射能と膀胱癌の研究も”妖しい”放射能の専門家によって反論されています…
http://www.jst.go.jp/kisoken/crest/report/heisei11/pdf/a-2-12.pdf
しかし、あれですね、普通の医者は「身体に悪いかどうかわからない物」は食べさせないように指導するのに放射能関係の医者は食べろと指示して、それで具合が悪くなったら、精神的な問題にすり替えて責任とろうとしないんですよね…

ところで自然界に存在する放射性物質のカリウムはすぐに体外に放出する訳ですが、体外に放出できない生物は死滅したとも考えられる訳で…つーことはこのまま原子力を無理に続けて、自然界に大量の放射性物質がバラまかれたら、セシウムを体外に排出できない生物は死に絶えて、排出できる生物種が生き残る世界が来るとも考えられるのですが…そう考えると人類種が全滅ということも…余り、想像したくないですね…
Posted by Cipher at 2012年12月23日 22:47
 保健物理学会、先生の記事がなければ、簡単にスルーしてしまうことでした。保健と物理、学校の科目二つをくっつけてある感じからか、とくに関心を引かない凡庸なネーミング。なんだか自分の感受性の鈍さに気づかされてばつが悪い感じです。
 気を取り直してというか、メンバーを拝見すると、俄然テンションが上がります。ここら辺のみなさん、ご本人はこんなに知名度が上がってるってお分かりなのかしら。名誉じゃないしねー。いいかげんなことばっかり言ってると、みんな忘れないからねー。1kgも排気ダストを取り込むかってご回答で、1kgもホウレンソウ食べれるわけないじゃないってスライド思い出した。(産業医科大学だっけ、そう考えると皆さんかなりの大所帯だね)じつにバカにしてる。忘れないから。
Posted by マツダマツコ at 2012年12月23日 23:51
小佐古敏荘は、広瀬隆さんが放射性廃棄物処分場の問題の公開討論会でやりあった相手で、これまで最も悪質だったそうです。資料を出すと「ひっこめろ!」と怒鳴って発言もさせなかった、と。
(「原発の闇を暴く」明石昇二郎さんとの共著、集英社新書より)

そんな傲慢な男性が涙を流したあの会見を、どう考えるか、ですね。外部被曝だけで20ミリシーベルトというのがそれだけ危険だということか。

Posted by 母 at 2012年12月24日 08:02
下地先生の不当逮捕、まだ勾留が続いているみたいですね(涙)
抗議する憲法学者のリストに、東大や京大のセンセーの名前がないのですが。私の見落としでしょうか??

憲法学者にも色々な考え方がありそうですね。日本国憲法の成り立ちに対する考えや、学閥。右翼や左翼も大声で絡んでくるし、恥ずかしながらなんとなく面倒そうで考えるのを避けていた分野ですが、ちゃんと学ばなきゃいけませんね。。これからは特に。
Posted by みい at 2012年12月24日 08:31
小野先生、皆様お疲れ様です。
上記記事のQ&Aにある福島と神戸の甲状腺検査のまやかしについて、福岡県で内部被曝のことを調べておられる医師にお会いした際に教えていただきました。要は福島では検査のやり方が雑で、3ミリ以下ののう胞をきちんと見つけきれていないはず。逆に神戸では丁寧に検査をした結果、だとのことでした。福島では、わざと小さなのう胞を検査担当者が見落とすように雑なやり方にしたのでしょうかね。小さなのう胞を見つけたとしても、敢えてカウントしなかったとか集結データのねつ造とかもあるかもしれない。
タネを明かせば、はなっから隠ぺいを前提にした不誠実な検査しかしていない、ということです。
魂を悪魔に売り渡した医療関係者が実に多いことが、この検査からでもよく分かります。
Posted by T.S at 2012年12月26日 12:55
答えがわかりました、

劇的な退陣劇を演じさせておいて

頭を挿げ替えるということですね、

心は・・どちらにもおいしい。
Posted by ももどん at 2012年12月27日 01:05
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