赤字にならない個人出版までの流れを大きくまとめてみます。
1.書籍の内容
本の中身がなければどうしようもありません。原稿を書くには一朝一夕ではとても終わりませんので、こつこつとブログなどで発表していくことが一番近道です。1年もたてばそれなりの資料と原文が集まり、読者も少しはいるはずです。自費出版、個人出版する際には、宣伝費などかけれませんから、日々の積み重ね以外にはないでしょう。
2.出版社の設立
自分で出版社を起こすのは大変だと思うかもしれませんが、ネットが発達した現在となってはたいした手間はかかりません。既設の出版社を使うと、いわゆる「自費出版」のくくりとなり、書店流通も可能となりますが、法外な印刷料を取られます。流通している本の裏表紙には、ISBNコードとJANコードが必ず印刷されています。出版社を設立するとは、このISBNコードを個人で取得することであって、税務署などに法人の設立などを届け出る必要はありません。
日本図書コードセンターで申請さえすれば、ISBNの取得は可能です。
必要費用
ISBN出版者記号の申請費用は、出版者記号の桁数によって申請時の料金が異なります。現在発行している『7桁出版者記号』を申請する場合は17,850円(国際本部運営資金2,100円を含む)、『6桁出版者記号』の場合は30,450円(国際本部運営資金4,200円を含む)が必要になります。
書籍JANコードの申請費用は、申請者の直近決算期1年間の全書籍の売上高によってランク別に設定されています。書籍JANコードの登録申請でご参照ください。書籍JANコードの登録有効期限は3年間です。
7桁出版社記号 17,850円は、10冊までの出版が可能
6桁出版者記号 30,450円は、100冊までの出版が可能
たとえば、私が取得したISBNコードは
978-4-9906770-A-X
です。この2番目のカラムが7桁を表し、3番目にあたるAの部分で 0〜9 までの採番が可能になりますので、計10冊の書籍を発行出来るわけです。
たとえば、新潮社のコードを見ますと
978-4-10-AAAAAA-X で、可変部分が6桁 すなわち100万種の本を発行出来るわけですね。
そして、書店やAMAZONで販売したい場合には、JANCODEの取得も必要となります。この費用は、こちらに紹介されています。
最初に依頼する場合(そして、個人の場合には1億円を超えることはありませんでしょうから、10,500円/3年)の費用がかかります。
しめて、17,850+10,500= 28,350円 の費用が出版社を設立し、コードを取得するための費用となります。
新規登録の場合には、このページ下部にある申し込みボタンで、ISBNコードおよびJANコードの申し込みが可能です。出版社の所在を確かめるために、確認電話がかかってきます。その後、書類が送られてきますので、バーコード用の番号を自分で採番します。

一度登録いたしますと、こちらの画面から入稿することによって、書籍データベースに登録されます。

この手続きをすることによって、Amazonで販売が可能となります。参考サイト
3.入出金口座の作成
自費出版をするとなりますと、金銭の授受にたいする口座がどうしても必要となります。出版社名の銀行口座を作成することは、かなり困難となりますので、私としては郵便振替口座の作成をおすすめします。こちらのページなどをご参考に。一週間程度で書類が送られてきます。また、無料でインターネットバンキングである郵貯ダイレクトも利用出来ますので、あわせて申し込むといいでしょう。
4.引用などの許諾、イラスト作成
自分史ならばいざ知らず、何かの本を書こうとすると参考文献はどうしても欠かせません。商業出版であるならば、編集者がすべて許諾をとってくれますが、自費出版の場合にはそれを全部自分で行う必要があります。一応、著作権上の例外規定として、次のように決められています。
正当な引用の場合 (32条)
(1)公表されている著作物であること
(2)公正な慣行に合致すること
(3)報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内であること
(4) 他人の著作物を引用する必然性があること。
(5) かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
(6) 自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
(7) 出所の明示がなされていること。(第48条)
一応、このように明示されていますが、会社によって異なります。大手新聞社の場合は、1記事に対して5000円程度。地方新聞社は0円〜1000円。です。私は、「はだしのゲン」の一シーンがどうしても使いたくて、出版社経由で中沢啓治先生のご自宅に直接電話をしてOKをいただきました。また、ドイツの海洋汚染シミュレーションは、ドイツ在住の日本人の方に著作権者と話をつけていただいたりと、かなり手間がかかります。特にイラスト、図表関係は部分引用ができません。すべて描き直すか、著作権者に許諾をもらう作業が必要となります。(一番面倒で、秘書がほしいと思うところです)
5.印刷
今はDTPが発達していますし、印刷会社はあらゆるところにあります。自分でISBNコード、JANコードをとり流通させると言うことであれば、出版社に頼む必要は全くありません。地元の印刷会社に相談して、見積もりをとり、原稿を仕上げていく方法が一番安上がりです。印刷部数500〜2000部までは、印刷コストがほとんど変わりません(版元を作る費用−固定費−が大部分を占める)。中小出版の最低印刷部数は、3000部と聞きました。しかしながら、2000部ともなればかなりの物量です。6畳一間がつぶれると考えれば、当たらずとも遠からず。しかもかなりの重量で運ぶのも一苦労。先日2000部を納入してもらったときには、大人4人がかりで階段を使って2階に上げるのに約20分程度かかりました。この倉庫の場所も十分に考えておく必要があります。
6.Amaznoの流通を使った販売
ISBNコードを取得すれば、Amazon e託サービスで書籍を売ることができます。これはなかなか優れたサービスで、年会費9000円で、アマゾンの決済サービス、在庫を使うことができます。しかし、仕切り値が60%で、しかも郵送料はこちら持ちの条件ですから、最初に書籍の定価をつけるときによく考えておかないと、得れば売るほど赤字が増えるということになりかねません。
そして、一度販売を始めると、週に3回の納入依頼が来ます。そのたびに梱包して、発送するのはかなりの手間がかかりますし、郵送料も馬鹿になりません。そもそも、郵送用の段ボールを用意することだって、一般の人にとっては、かなり面倒な話です。(私は取引のある薬問屋から、必要な段ボールを分けてもらっています)
クロネコヤマトなどを使用しますと20冊程度を郵送するのにも1000円以上のコストが平気でかかります。
この頻回の納入以来は、かなり金額がかかりますので、次のようなサービスも用意されています。
30回で10,500円ですから、かなり割安。10回以上利用出来れば、元は取れます。Amazonの納入は、1週間以内と決められていますので、私自身は月、水、金 の注文を1度に金曜日に発送することにしています。
Amazon e託のイメージ

毎日どれだけ売れたか、そしてどれくらいの在庫量があるかまで、すべて一目瞭然。需給予測に基づいて2週間分の在庫を持つように調整している感じです。
7.直販ルートの場合
私のホームページからも注文出来るようになっています。このフォームは、
メールフォームプロ という無料のソフトを利用させていただいています。
決済手段としては
・ゆうちょ銀行
・振替口座
・楽天銀行
・Paypal
を準備しています。Paypalは、以前海外との方から注文があった際に、いろいろと研究して、使えるようにいたしました。なお、年間10万円以上の現金を抜き出す場合には、厳格な本人確認が必要となります。ご注意ください。
なお、Paypal利用に当たっては、少額の決済手数料以外には年会費、入会費などが必要とされません。その点も個人出版利用者にとってはありがたい話だと思います。
メールフォームプロからデータをとることができても、そのデータを間違いなく商品に反映するには、かなりの手間が必要です。幸い私はAccessを利用していた経験がありますので、自力でソフトを作り上げましたが、大量に送付する場合にはそこが一番ネックになるかも知れません。
ゼロから自作の処理ソフト(非売品)

というわけで、最後は宣伝
おかげさまで売れ行きはまずまずで、2000部の初版が売り切れ、2000部の増刷を行いました。本の中で中国新聞の引用をしており、そのお礼として送った書籍で、書評を書いていただきました。
タグ:出版
私は出版社に15年ほど勤務していましたが、ずっと編集者をしていたので、いまだに個人が本を出すのは大変なことだと思っていました。
古巣の編集者たちに、院長先生の本を出したらどうかとだいぶ前から勧めていたのですが、個々の編集者は興味を持つものの、上の許可を取るのはどうしても無理だったようです。
テレビ、ラジオ、新聞、書籍と、既存のメディアが使い物にならない今、国民の中から独立したメディアがどんどん出てくるといいと思います。私も微力ながら何かやってみようと思います。
今回の記事、いろんな意味で勉強になったし、励みになりました。
ありがとうございました!
1000部在庫となっています。すべてオリジナルな本ですので、e宅販売もしています。おっしゃる通りかと思います。ただ取次店契約もされたら全国の本屋でも取り扱ってくれます。取次店同志でも連絡がありますので、1社と契約していれば東販や日販でも取り扱えます。私の場合は医学書の鍬谷書店と契約しています。
今回3年ぶりのインディーズ出版をしますが、JANやISBNを忘れて困っていましたが先生のブログのおかげで思い出しました。今後とも先生のご活躍を期待しています。
こんなサービスもあるようです。でも間に会社が入る分割高なのかな。。
誰でもISBNを発行して書籍を販売できる「MyISBN」ベータ版
http://japan.cnet.com/news/service/35028961/
制作中との事、世も末ですね
私も本、買いました♪ ^^
ハードカバーじゃなくて良かったです。今回いろんな本を買いましたが、この本は持って帰ります!ので、うちの母用に、もう1冊買います。
いま、はだしのゲンを図書館から借りて読んでいます。これもいい本ですね。
小学生のころ先生に勧められて読もうとしたけれど、絵が恐ろしくて読み進めることができませんでした。今は覚悟して読んでいますが、いろいろなことがわかって勉強になりますね。そして、確かに学校では習わないことがかかれてあり、日本人として知っておくべきことが書いてあると思いました。
自作するならいまのとこibooksが一番クオリティが高く、macがあれば専用のファイル形式で自作できますよ。epubだと表現力に劣るが使いまわしできます(i.e.いろいろな店で売れる)。中身はhtmlらしいです。電子書籍のメリットは画面サイズにとらわれないんで、スマホなどの小さい画面の端末でも文章そのものがリサイズされるリフロー形式という技術がすごいのですが、図のレイアウトとか表示とか、まだまだですね。某生物学・医学関連の一般向け電子書籍を読みましたが図の相互参照がしづらいのがつらい。あとiPhoneで黒背景で読んでる身としては透過処理とかでも見づらい。まだまだ文章だけの本向けで、数式、図、グラフなどが多用される本は難しい。でも今のうちに、epub作成技術も習得しておくと役立つとおもいます。とりあえずepub作成さえできればあとは口座とアメリカの納税者番号(Amazonは任意だがないと所得税でアメリカにも二重徴税される、Appleは有料販売するなら必須)があればいけます。ぜひとも電子版も作成してください。
原稿は大体、まとめてあり、あとは、精査する段階にきております。手順としまして、完全な原稿を作った後にISBN、JANを申請した方がよいでしょうか。それとも先に申請しておいてから原稿を整理した方がよいでしょうか。アドバイスをいただけないでしょうか。出版社の立ち上げとなると、ホームページの作成が必要ですね。
ISBN, JANともに、有効期限がありますので、申請後1年たって出版では、さすがにもったいないです。
やれるかどうかわかりませんが、チャレンジしてみたいと思います。
ご連絡頂きたく思います。
お手数お掛けしますが、よろしくお願いします。