2013年05月21日

林一郎の先天奇形図譜を読む(3)−剖検例(10,834)全体の分析

先天奇形図譜で解剖された剖検例

胎芽,胎児および新生児10,834剖検例の概観
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(注)浸軟児(しんなんじ)胎児が子宮内で死亡し排出されない場合、体組織内に羊水及び血液が浸潤し全身が軟化してくること。
剖検期間と場所−昭和21年から昭和57年に至る36年間にわたって連続的に,長崎大学医学部病理学第一教室(当時主任:林一郎教授,現長崎大学名誉教授)および広島大学原爆放射能医学研究所遺伝部門(主任:岡本直正教授)において行われたヒ卜胎芽, 胎児および新生児の総剖検例である。

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E.年代別にみた分娩様式の推移
ここで昭和21年(1946年)から55年(1980年)まで5年間ごとに,これまで述べた剖検例について,その分娩様式の推移をみると(Fig.11),人工による娩出が最も多く,その頻度は昭和21-25年にピークとなって.その後やや減少するが,昭和41年から再び上昇している。全体的には,自然に娩出した流産が培加する傾向を示しているのは注目に値する。自然および人工的に娩出した死産および自然分娩の新生児死亡には減少の傾向がみとめられた。人工的に介助された新生児死亡例の頻度は例数は少ないが一定している。

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F. 年代別にみた正常,病的状態および奇形頻度の推移
剖検例7,277体について, 5年間隔で正常,奇形および病的所見を呈するものの頻度をみると,正常例は昭和26-30年および昭和41-45年にわたって低下しているが,これとほぼ並行して奇形の上昇がみられる。
 したがって,奇形は昭和31年から昭和45年までに最も多く,昭和46年以後は減少している。また,病的所見を呈したものは昭和26年から昭和30年の聞に最も多いが(これは主に感染による。104頁参照)、それ以後ではほぼ一定している(Fig.12)。

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G. 年代別にみた各器官系奇形の推移
器官系別に多くみられた奇形としては,心・大血官系,中枢神経系.内分泌臓器系および消化器系奇形などが挙げられる。これらの奇形のうちで中枢神経系奇形が近年増加の傾向にあって,そのほかは全般的に漸減している。四肢・骨格および顔面の奇形(唇裂,口蓋裂, 顎および耳介など)がやや増加している。呼吸探系奇形(肺低形成や分葉興常はど)はほぼ一定してみられている(Fig.13)。全体的にみて各器官系の奇形の頻度は近づいているが.この所見は奇形が各臓器に普遍的に現れていること.あるいは多発合併奇形が増加していることを示唆している。


10,000体以上もの剖検をしたのですから、この本に書かれていることは、それなりの重みがあります。わたしが気になったのは、奇形児が被曝後10年たっても増え続けていたこと。残留放射能の問題があるとはいえ、原爆で最も被曝を受けたのはピカの一瞬だけです。それでも、これほどだらだらと奇形が起きるのですから、恐ろしいことで、それはチェルノブイリでも証明されています。

 そして、奇形が心、大血管系に多いと言うことは、次の報道を思い出させます。

風疹で胎児障害、半年10人…大流行時の1年分
読売新聞 5月21日(火)14時36分配信

 妊婦が風疹に感染したことで胎児に障害が出る「先天性風疹症候群(CRS)」の報告数が昨年10月からの約半年で10人に上ったことが、国立感染症研究所のまとめで分かった。

 大流行のあった2004年の1年間と同数だった。さらに増えることがないよう、同研究所はワクチン接種を呼びかけている。

 妊婦が風疹にかかると、胎児も感染して白内障や難聴など目や耳、心臓に障害が残ることがあり、CRSと呼ばれる。同研究所によると、風疹患者は12年前半から増え始めたが、同年10月半ばに兵庫県の女児でCRSが報告された。その後、13年4月半ばまでほぼ毎月、大阪府や愛知県、東京都などで報告され、過去10年で最多の04年1年分に並んだ。同研究所の多屋馨子室長(小児感染症学)は「女性は妊娠前にワクチンを接種してほしい。(持病を持ち)接種できない女性もいるので、周囲の男性も接種を検討してほしい」と語る。


 放射能で心血管系に奇形が起きるのは、「チェルノブイリハート」としてよく知られていますが、日本では何が何でもトーチ症候群として、定義するようです。医師になったときには、症状を見ると必ず鑑別疾患をいくつかあげろと教育されたものですが、なぜ心血管系の奇形は「風疹」と決めつけることができるのでしょうか。これは、10例のチェルノブイリハートが生まれた と私には考えられます。 そして、この裏には様々な奇形胎児が報告もされないまま闇に葬られているとしか思えません。
 日本政府は、このような奇形児が生まれることは十二分にわかっていますから、主婦がやっているにしてはすばらしすぎるトーチ症候群の会なども用意してくれています。 なぜ、今までにない数で心奇形の子どもが生まれているのに、なぜ今までと同じ「風疹」で済ませようとするのでしょう。それが、本当に正しい医学者としての態度なのですか?

■先天奇形図譜シリーズ
林一郎の先天奇形図譜を読む(1)−目次2013年05月20日
林一郎の先天奇形図譜を読む(2)−放射線と奇形との関連2013年05月20日
林一郎の先天奇形図譜を読む(3)−剖検例(10,834)全体の分析2013年5月21日
林一郎の先天奇形図譜を読む(4)−無心体と二重体2013年05月22日

◆関連ブログ
増え始めた奇形とトーチ症候群の立派なパンフレット2013年02月05日
posted by いんちょう at 21:26| Comment(5) | 原子力
この記事へのコメント
いつも情報ありがとうございます。

石垣市内でもキメラ植物が見つかり、新聞に載りました。
八重山毎日新聞2013年5月21日(火)3面「半分ずつ色が違う!?摩訶不思議な百日草咲く」という記事で、半分が黄色、半分がオレンジの花の写真が載っています。(染色体に異常が起こって変異した色素異常が原因として考えられ、黄色は珍しいようだと書いてあります。)

昨年の8月に、子供が「これも放射能のせいかな?」とギンネムの異常なものを見つけて持って帰ってきたことがあり、写真に撮りました。
普通ならそこで完結する花の部分の丸いところから、さらに別の花の部分がいくつかにょきにょきと出てきていて、明らかに変でした。

(写真が必要でしたら新聞記事と一緒にメール送信します)

福一からの放射能由来かどうかはわかりませんが、拡散され続けている放射能と、当地も全く無関係な訳はなく、不安材料ばかりの日本の未来と子供の将来を考え、中長期的に北半球からの海外移住も視野に入れ始めています。

(放射能を当てたウリミバエの不妊虫を定期的にヘリで撒く施設も石垣にあるそうですし、農薬や除草剤散布、大陸からの大気汚染、ミサイルや尖閣問題など、国境の諸島ゆえの不安定さもあり、政治は全く信頼できない状況ですし・・・。事実を知れば知るほど子供の未来を悲観してしまいます。)

辛い時代ですが、精一杯出来る事はして次の世代への道を閉ざさないようにしたいと思っています。

お体大切になさってください。
Posted by 八重山在住者 at 2013年05月21日 23:00
いつも学習させていただいています。
先天奇形については、事故以来、見落とすことなく観察を続けることが必要と考えています。
ただ、昨年来、関東地区に風疹の大きな流行があることは事実です。これは、今35歳から40歳くらいの人々が小児だった頃にMMRワクチンがいきわたらなかったことにも起因しています。
(東京都感染症情報センター)
問題は、こうした数値を利用して、「不明の原因の」奇形が意図的にCDSに混入されていく危険かと思います。
Posted by 岩田 俊 at 2013年05月22日 11:50
福島県で除染廃棄物を燃料とするバイオマス発電所の建設を計画
Posted by キチガイの国 at 2013年05月22日 19:43
医者は心血管系の奇形は「風疹」と決めつけている様子ですが、今度は天下のNHKさまで、「甲状腺の病気は国民病」と言い始めましたよ。
ttp://www.nhk.or.jp/asaichi/2013/05/23/01.html

福島や東京の子供に甲状腺のう胞や癌の症状が見られ始めるようになってきたので、あらかじめ手を回しておこうというわけでしょうかね。
そのうち、白血病も「よくある病気」と言い始めるのではないでしょうか。

TVやマスコミの情報を鵜呑みにしている情報オンチだと、国に殺されます。
特に関東、東北の若い人は、こんな国は見捨てて、どんどん海外へ出て行ったほうがいいと思います。
Posted by YOKO at 2013年05月23日 17:12
 83歳母からの報告(わたしはいっさい水を向けていませんよ、注)。アサイチで甲状腺疾患が国民病と言っていたのには耳を疑ったそうです。根深いNHKファンですが、さすがに。。。自分が生きてきた中で身近にいたのは(指を折りながら)たった4人と。専業主婦でしたから交際範囲は限られていましたけれど。ひとりひとりの話をしてくれました。
 NHKやりすぎたようですね。

 関連してですが、先々週、台湾に行ってきました。行く前は、台湾でも感染者が出たということで職場では、冗談でなく帰国者に対して会社レベルでかなり警戒されていましたし、周りからもこちらは冗談半分ですが、気を付けてねとさんざん言われました。台北に到着して入国審査場に向かう日本人客はわたしも含めマスク率高く、仲間とくちぐちに(笑)にわとり、トリと言葉を発しながら歩いている人を何組か見かけました。

 しかし結局、あちらでは特に懸念していたような厳戒態勢などまったくなくバイクなどの排気ガス対策(本当にバイクの通行量が半端なく多いです)でこれまで見かけていた程度のマスク着用率。帰りつくまで一度もその話題は出ませんでした。なんか、パンデミックだと大騒ぎしていましたが、なんだったのかなあ。ていうか、操作ですね。中国の大気汚染を派手に流していたころ、娘が上海に行きましたが、空気悪いなと思ったのは5日間のうち1日だけだったそうでした。この偏向報道ってホント、みえみえですね。もう、ばれてるのわかってやってますよね。
Posted by マツダマツコ at 2013年05月26日 15:43
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