取材記者のオープニングナレーション: 他人の心のうちが読めたらいいなと思いませんか。他人の見ているものが見え、感じていることを感じられたら、素敵だと思いませんか。
私は、そんな凄いことができる小さな女の子達に会って参りました。
タチアナちゃんとクリスタちゃんは、シャム双生児です。ですから、姉妹の絆の強さは明らかです。なにしろ、頭で繋がっていますからね。でも、この姉妹のなにがどう特別なのかというと、それは見えないところにありました。
記者のナレーション: カナダのブリティッシュコロンビア。美しい風景の一隅にある公園で、2人の小さな女の子に会った。
記者が公園で遊ぶ双子に: おいで! 僕は、こっちだぞー! 良く走ったねえ! ハイファイブ!
記者のナレーション: タチアナちゃんとクリスタちゃんは、シャム双生児。人生の「遺伝子宝くじ」で、世にも不思議な運命を引き当てた。ふつうの5歳児のように、双子の姉妹は、元気一杯で好奇心に満ちている。しかし、この子達は特別なのだ。この子達の頭脳は、信じられないほどの謎に満ちている。科学者達は、この双子の姉妹にすっかり心を奪われてしまった。
双子のお母さん: あの子達は、なんというか、ハイブリッドのようですね。
記者: ハイブリッド?
お母さん: ええ、ハイブリッドみたいです。2人で力を合わせれば、誰にもできないことができるのですもの。
記者: 驚きのチームワークですね。
おかあさん: ええ。
記者: 辞書に書いてある「チームワーク」の定義どおりの動きですね。
お母さん: ええ、その通りです。
記者のナレーション: 誰だって、初めてタチアナちゃんとクリスタちゃんを見れば、思わずたじろいでしまうだろう。そしてそれは無理からぬことだ。また、シャム双生児が直面する危険や困難を考えてみれば、どんな親だって中絶するだろう。でも、このお母さんは、生むことになんの迷いもなかったそうだ。
お母さん: どんな見かけであろうと、人間は人間です。ですから、シャム双生児であろうとなかろうと問題ではありません。ひどい病気にかかっていようと、他の人と同じように見えなくても、人間は人間です。そのことが一番大切です。
記者: この世界にこの子達を産み落とすのは公平ではない、というような悲痛な思いを抱かれたことはなかったのですか。
お母さん: ありません。どなたか他の方がこの子達を産んだとしたら、その方は、このような取材を受けなかったでしょうね。
記者: あの子達は、生まれてくるお母さんを選んだというわけですね。
お母さん: その通りです。私を選んでくれたのだと思います。とても幸運なことです。
おばあちゃんの声が双子に: お買い物に行くのかな?
記者のナレーション: 双子の性格は異なっているようだ。
記者が双子に: おいおい、誰だい、威張っているのは? 君かな?
記者のナレーション: 青い服を着たクリスタちゃんは、気が強い。ピンクの服を着たタチアナちゃんは、優しい。異なる性格をしているといっても、精神的には信じられない繋がりを持っている。
記者が双子に: 君はいい子かな? 君もいい子かな? 本当かな?
記者のナレーション: 2人は、それぞれ自分の頭脳を持っているのだが、その2つの頭脳は、1つの頭脳として機能することができるのだ。
お母さん: そこらへんに2人で座っているとき、お互いになんにも言いません。そして、突然、どちらかが立ち上がり、食べ物をもう一人に食べないかと言わんばかりに差し出すのです。2人の間には、なんの言葉もないですが、お互いに何が欲しいかを知っているのです。
記者: 一人をくすぐると?
お母さん: そうすると、もう一方も笑うのですよ。それで、一人をつねると、もう一人も一緒になって泣くのです。つねられていない子までが痛みを感じているかのようにね。
記者: では、お互いにお互いの考えを知っていると言うのですか。
お母さん: そうです。 あの子達の脳幹は細胞で繋がっていて、その繋がりを通じて、互いが見たり聞いたり考えたりしていることがわかるのだと思います。凄いことです。
記者: 本当に信じられないほど凄いですね。
おかあさん: ええ、とても凄いことです。
記者のナレーション: 本当に凄いことである。あまりにも信じがたいことなので、神経科学の第一人者であるフェインバーグ博士でさえも、初めは懐疑的だったそうだ。それから、ただただ驚くだけになったとのことである。
フェインバーグ博士: 最初は「なんてことだ。こんなの信じられない!」と思いましたよ。
記者: 極めて特別なことですよね。
フェインバーグ博士: とても驚くべきことです。いくつかのことは、あまりにも普通ではないですから、そんなことが本当に起きるのかと信じられないのです。
記者のナレーション: 妊娠定期検診での初めてスキャンで、この双子達が独特であるとわかった。この画像から2つの頭が見える。医学用語では、頭蓋結合体という。このような双子が生まれる確率は、なんと250万分の1である。
記者: 初めてシャム双生児だと言われたとき、さぞかし混乱されたのではないかと思いますが、いかがでしたか。
お母さん: ええ、とても混乱しました。テレビでシャム双生児を見たことがありましたからね。でも、実際、誰にでも起こることだし、シャム双生児が生まれるとわかったらわかったで、「わあ、すごい」という感じでしたね。
記者のナレーション: この子達が生きて生まれたのは、医学上の奇跡である。この子達を取り上げる帝王切開手術は、長時間耐久レースそのものだった。ブリティッシュコロンビアの子供病院の分娩室に、16人のカナダ人医療スタッフが集結し、それぞれの赤ちゃんに2つのチームが編成された。双子が生きて生まれる可能性は、20%だけだった。誰もが固唾を呑んで赤ちゃんの誕生を待ち構えていた。
(赤ちゃんの産声)
お母さん: ああ、よかったあ!生きている。赤ちゃんが泣き声を上げている、と嬉しかったです。あの子達の産声は、もう本当にかけがえのないものでした。ああ、神様ありがとうと思いました。
記者: 初めて赤ちゃんに会ったときは、いかがでしたか。
双子のおばあちゃん: もう嬉しくて涙が溢れてきましたね。可愛い赤ちゃんでしたもの。
記者: 感動的な対面だったのですね。
おばあちゃん: ええ、そうです。
妹が双子に: パンチ!
記者のナレーション: クリスタちゃんとタチアナちゃんを育てるのは容易ではない。それで、大家族の一人一人が役割を分担している。
おばあちゃんが双子に: はい、だっこギュー!
記者のナレーション:マッケイさんは双子のおばあちゃんだが、おばあちゃんというより第2のお母さんのようである。
記者: あの子達は、別に過保護にされているわけではないようですね。
おばあちゃん: ええ、もちろん。ほとんど何の制限もしていません。小さな女の子たちができるだけ普通に過ごせるようにしているだけです。
記者: あの子たちは、自慢のお孫さんでしょう?
おばあちゃん: ええ、もちろん!
記者のナレーション: タチアナちゃんとクリスタちゃんを分離するのは医学的に不可能である。各々の女の子は自分の臓器を有しているが、循環器は一つとして働いているからだ。血液は、まず1人の女の子の体内を流れてから、もう1人へと流れていく。主に、タチアナちゃんが血液を送る役目を果たしている。タチアナちゃんは、2倍の代謝を行っているのだ。タチアナちゃんは余分にエネルギーを使うので、クリスタちゃんより身体が小さいし弱い。
記者: タチアナちゃんのほうが、弱そうに見えますね。
おばあちゃん: ええ。
記者: でも、タチアナちゃんは、エンジンの役目を果たしているのですよね。
おばあちゃん: そうですね。あの子はエンジンです。
記者: タチアナちゃんがクリスタちゃんに、すべての血液を流しているのですね。
おばあちゃん: タチアナがすべての重労働を受け持って、2人で動いているのです。
記者のナレーション: 2人の身体の協同の仕方は、本当に注目に値する。しかし、それにもまして、2人の頭脳が連携しているということが、医学研究者達の想像をかき立てた。この子達がまだ赤ちゃんだったころに行われた実験の結果、2人の頭脳は非常に密接に繋がっていて、1人がもう1人のために目で見てあげることができる、ということがわかった。
おかあさん: 研究者は、1人の目を完全に覆いました。それからもう1人の目に向かって光を点滅させました。その光の信号は、光を見ている子の頭脳に検知されたのはもちろんですが、目を覆われている子の頭脳でも検知されたのです。あの子達は、一方が見ていることを自分でも見ることができるということです。
記者: わあ、目が4対あるんだ。2つの頭にね。
おかあさん: ええ。
記者のナレーション: そして、大きくなるにつれ、絆が信じられないほど強くなっていくのだろう。
おかあさんが双子に: 元気かな?
記者のナレーション: 実際にやってみましょうということで、おかあさんはクリスタちゃんの目を隠し、タチアナちゃんにブタのぬいぐるみを見せた。クリスタちゃんは、実際に見てはいないのだが、タチアナちゃんの前にあるブタのぬいぐるみちゃんが見えたのだ。
おかあさんがクリスタちゃんに: クリスタ、ママはいま何を持っているかな?
クリスタちゃん: ええっと、ブタでしょ?
おかあさん: そうよ。ママは、ブタを持っているの。はい、どうぞ。
クリスタちゃん: わあい。
記者: 凄いですねえ。
記者のナレーション: この子達がどのように繋がっているのかを簡単に説明してみよう。女の子達は、完全に分離した頭脳を持ち、個別の性格を有しているが、この子達の脳幹は「視床の橋」によって結合している。「視床の橋」とは、高速光ファイバーのようなものである。この子達の場合、その高速光ファイバーのような「視床の橋」は、双方向に働くようだ。感覚、気分、思いつきなどがこの「視床の橋」を渡って、互いの頭脳に伝わっていくのだ。
フェインバーグ博士: あらゆる情報を他方に伝える頑丈な「視床の橋」によって2つの頭脳が結合していますが、個々の頭脳はそれぞれフル稼働しているのですよ。
記者: では、他方の脳から延びているコードのプラグを、自分の脳のコンセントに差し込んでいるということですか。
フェインバーグ博士: 2つのまったく別のテレビがあると思ってください。よろしいですか。そして、その2つのテレビは、1本のケーブルで繋がっています。こちらのテレビでは2チャンネルを見ることができ、あちらのテレビでは4チャンネルを見ることができるとします。あなたは、こちらのテレビで2チャンネルを見ています。でも、たまには、こちらのテレビでも4チャンネルをつけて見ることができるのです。つまり、1人が見ているテレビのチャンネルを、別の1人も自分のテレビで見ることができるのです。このようにご説明すれば、おわかりになりますかね。
記者が双子に: わあ、美味しそうだねえ。とっても美味しそうなチーズサンドだね。
記者のナレーション: この姉妹は、いつチャンネルを合わせるのだろう。どのようにチャンネルを合わせるのだろう。なぜお互いのチャンネルを合わせるのだろう。次から次へと疑問が湧いてきたのだが、博士は心良く答えてくれた。
フェインバーグ博士: 2台のテレビの間のケーブルを作動させるには、殆どの時間は他方からかなり独立して機能している一方が、他方が見ているチャンネルに合わせる必要があります。そうすると、他方が見たり経験していることがわかるのです。ケーブルを作動させない時、おそらく1人がちょっと疲れていたり他の事に気を取られていたりする場合だと思いますが、そういう時でも情報は自動的に漏れてきます。そうすると、食欲がないときでも、他方が食べているものの味がわかってしまうのです。
おばあちゃんがクリスタちゃんに: タチアナが見える?
クリスタちゃん: うん。それで?
おばあちゃんがクリスタちゃんに: タチアナはきれいかな?
クリスタちゃん: うん。
記者のナレーション: 双子達は、今年、小学校に入る。今までより広い世界に出ることになる。
おばあちゃん: タチアナは、クリスタの特別な人かな?
記者のナレーション: そして、科学者達は、この子達の素晴らしい心の働きに関する潜在能力を探求していくことにしている。この子達が互いの気分や感情を共有するだけではなく、深い思考や知識を共有していく姿を観察していくのだ。
フェーンバーグ博士: あの子達が刺激を共有することがわかっています。あの子達が大きくなってもう少し物が解るようになったときに、一方の考えを他方が言い当てられるようになるか、というのが我々が持っている疑問です。例えば、1人がトラのことを考えていたとして、もう1人が「トラ?」と言うことができるかということです。このようなことができたとしたら、驚くべき観察結果と言えるでしょうし、科学的に新たな境地を開くことになるでしょう。そんなことができるとわかったらの話ではありますが、例えば、我々の「意識」に関する多くの概念を変えることになるでしょうね。
記者のナレーション: この子達が科学的な魅力に溢れていると言っても、クリスタちゃんとタチアナちゃんの将来を心配せずにはいられない。地元の公園でも、好奇の視線や嘲笑がつきささる。
お母さん: そういうのは無視することにしています。
公園の男の子: この子達は、変に繋がっているね。
お母さん: この子達は、繋がっているの。
記者: この子達はなんと言うか知っているかい。 シャム双生児って言うんだよ。
公園の男の子: とっても変。
おばあちゃん: 世間からとても冷たい仕打ちを受けることがあります。そして、特になにごともなく過ぎていくこともあります。そして、それが世の中のありようなのです。
記者: あの子達をお育てになって来て、性格もよく解ってらっしゃいますね。今後、あの子達はどのように世の中を生きていくでしょう。どのようにお考えになっていますか。
おばあちゃん: まあ、クリスタはおしゃべりだから、変な目で見る人には「あっちに行け」と言うようになるでしょう。タチアナは、好奇な目を向ける人にも寛容に接して自分の感情を押し殺すでしょう。
記者が双子に: よーい、ドン! ああ、君たちは僕より速いなあ!
記者のナレーション: この子達は、ありとあらゆる困難に直面するだろうし、成功体験も積み重ねていくだろう。この元気でいたずらっぽい5歳児達を眺めていると、人間にとって一番大切なことは、外見ではなく内面なのだということを改めて思い知らされる。
記者: そのうち、あの子たちもティーンエイジャーになってしまいますね。2人の年頃の娘さんにね。
おかあさん: そうですね。まあ、どうしましょう!
記者: お子さん達にどのような夢や希望を託してらっしゃいますか。
おかあさん: 自分らしくありなさい、ということだけです。人生でやりたいことをやりなさいとね。あの子達は、とても特別な女の子です。
心臓の役割分担のことは、私にはちょっとよくわかりませんでした。タチアナにしか心臓がないのか、私には不明です。???
脳の結合状況は、下記の通り
Conjoined twins Tatiana and Krista Hogan by The Vancouver Sun
私には、脳梁が結合しているように見えます。
Tatiana and Krista go to schoolの邦訳(抜粋訳)
(前略)
この夏の初め、病院で双子に関する多くの検査が行われた。マクリーン紙はその検査に同行した。検査結果は、9月に双子の家族に知らされたが、改めて双子が独特であることを確認する結果であった。つまり、家族がつねづね考えていたように、それぞれの双子は、他方の目を使って物を見ることができるということが確認されたのだ。
6月の晴れた日、病院の神経生理学診断部門のスタッフは、双子を古くからの友達のように暖かく迎えた。そして、双子の頭や身体に電気コードを優しく巻き付けて、双子の頭脳の視覚的刺激、聴覚的刺激および触覚的刺激に対する電気的反応を測定した。いくつかの検査のとき、双子は弱い鎮静剤を与えられた。身体が小さいタチアナは鎮静剤のせいで朦朧としたが、クリスタは逆に生き生きとしてしまった。クリスタは、「起きなさいよ、寝坊助さん」と楽しそうに言った。タチアナは、「お姉ちゃん、私、すごく疲れているの」と弱々しく言った。
最近、双子の家族は、バンクーバーのハキン医師に再度面会した。小児神経医であるハキン医師は、最近の検査結果を検討した。「ハキン医師は、ただただ圧倒されていました」と、双子のお母さんは言う。検査結果によれば、双子の視覚は若干異なる。「タチアナは、クリスタの両眼を通じて物を見ることができる」とお母さん。「クリスタは、タチアナの一つの目だけから物を見ることができる。」頭蓋骨の癒合の仕方から双子の見る方向が異なっているため、双子は広い周辺視覚を有しており、驚くほど大量の視覚的情報を処理している。それは、同時に2つのテレビ番組を見るようなものだろう。「あの子たちは、[テレビを]消すことができるに違いない」と双子のおじいちゃんは言う。「そうでなきゃ、あまりにも混乱してしまうじゃないか」と。
ハキン医師は、マクリーン紙のインタビューにおいて、双子が感覚情報の過負荷を如何に処理するのかという疑問は、いまだに解明されていない多くの謎の一つであるとしたうえで、「他人が見ていることを自分も見ることができるというのは一つの特殊能力ですが、気が散ることになるかもしれないません」と語った。「双子の将来の視覚処理について懸念してはいますが、双子はなんとかするだろうと思います。若い頭脳は非常に適応力に富んでいます。これまでも、結合しているために多くの困難に直面しましたが、非常にうまく乗り越えてきましたものね」とハキン医師は言った。
これまでの双子の子育てを通じて、家族は、双子の一方が他方が食べているものの味がわかるみたいだ、と述べて来た。将来の検査では、そのことをも確認しようとしている。(ご両親によれば、例えば、タチアナは、クリスタが食べ物にケチャップをかけようとすると、大反対する。)そして、究極の謎は、双子の家族が言うように、「双子はお互いの考えを実際に読むことができるのか」ということである。「本当にすごいことですよね」とハキン医師は笑いながら言う。「今しばらくは、答えはわからないと思います」とハキン医師。答えがわかるのは、双子が大きくなり、複雑な概念を言葉で表せるようになってからだろう。「双子が生まれてから、約5年が経ちました。でも、子供の発達という観点からは、まだ初期の段階です。ですから、これから時間をかけて興味深い事実が明らかにされていくでしょう」とハキン医師は語った。
双子の頭脳が感覚情報を中継する視床の間にある橋を共有しているとはいえ、別個の強い個性の形成は妨げられない。実際、双子がそれぞれの個性を有していることは、既に明白である。神経学者は、「双子の頭脳のほとんどは分離している。双子は、これからも個別の性格を形成していくだろう」との見解を示した。
(後略)
Ottawa Citizen October 27, 2012
Conjoined twin's family dreams of a better life (with a video)の邦訳(抜粋訳)−サーバーが不調のようです。
生活が激変した。双子が突然倒れ、深刻な状態でバンクーバーの病院に担ぎ込まれた。双子の血糖値が急激に上昇していた。1型糖尿病との診断だった。双子は新たな問題を抱えることになり、家族の生活はより苦しくなった。
双子は、発作にもしばしば見舞われる。初めての発作は、生後18ヶ月のときだった。そのとき、タチアナの腕や脚はけいれんを起こし、喉はカチカチと鳴った。
「あんなに怖い思いをしたことはありません」とお母さん。「いったい何が起きているのかわかりませんでした。」今では、発作に対処するのは日常的なことだ。双子は、毎日、薬を飲んでいる。双子が必ずしも同時に発作に見舞われるわけではない。また、発作が長く続くこともあり、長い時では6時間にもわたる。最近の発作は1月に起きたが、最悪だった。クリスタの発作でタチアナが頻脈になった。タチアナの鼓動が早まった。「タチアナはパニックを起こしてしまいました。クリスタがどうかなっちゃうんじゃないかと心配したのです」とお母さんは言う。
双子の相互依存は本物である。つまり、1人が死ねば、2人とも死んでしまうのだ。
タチアナは、高血圧を患っている。なぜなら、タチアナの心臓が2人分の仕事を請け負っているからだ。タチアナの腎臓は、2人の血液の老廃物を濾過している。タチアナは非常に多くの代謝を行っている。
「双子がどのくらい生きられるのかわかりません。発作や糖尿病等、あの子達が抱える問題は深刻ですし、
タチアナの心臓は2人分の働きをしています。これらの問題のなにか一つでも、死につながりかねません。本当にどうなることか、私たちにはわかりません」とお母さん。
(中略)
Medical marvels
医学的な謎に満ちた双子
バンクーバーの小児神経医であるハキン医師の診察室は、にぎやかだ。幼い患者達のために、色々な紙、楽しい中味がいっぱいつまったファイル、小さなおもちゃやポケモンカードが置いてある。壁紙には、色鮮やかな絵が描かれている。
ハキン医師は、双子が21ヶ月のときから診察してきた。
同医師は、コンピュータ画面上にある2人の女の子を表す2色の図を指し示した。
「女の子達が頭脳で繋がっているのは驚きです。双子は、それぞれに中脳と視床を有しています。双子の一方の中脳と視床は、「白質の橋」によって、もう一方の中脳と視床に結合されているのです。」
白質とは頭脳における結合繊維であるが、神経細胞が発生した活動電位はその結合線維(神経線維)を伝わっていく。視床は頭脳の中継核で、感覚や運動の情報は視床を通じて頭脳の他の中枢機能に伝達される。
この繋がりにより、双子は感覚的にも結合していて、互いの目を通じて物が見えるのです。『信じられない』し、『特殊な能力』ですよね。』とハキン医師
この能力は、非常に早い時期に認められた。双子の1人がDVDで映画を見ていたときのことのことだった。お母さんは、反対方向を向いていたもう1人の双子が、映画に反応しているのを見たのだ。
ハキン医師は、顔を輝かせながら、コンピュータ画面上で女の子達を表す赤と緑の図を指し示し、最近のMRI検査でわかったことを説明してくれた。クリスタが手の内側で受けた刺激は、タチアナの頭脳の半球の外側に伝わった。タチアナが足の内側で受けた刺激は、クリスタの半球の外側に伝わった。
双子の独特な能力の発見が頭脳の機能に関する科学界の理解をどのように助長するかは、ハキン医師には難しくて予測できない。しかし、同医師は次のように語った。「成長過程の頭脳が適応力に富んでいることがわかっています。頭脳は、通常の成長が行われていない部分を補償することができるのです。」
双子はまだとても幼いので、自分たちがどのように見ているか、または、どのように動いているかを説明することができない。そして、MRI検査を受けるときには、全身麻酔がかけられる。双子達が、感覚情報だけではなく運動情報をも共有しているのかどうかは、まだほとんどわかっていない。
ハキン医師は、次のように語った。「独立した異なる性格を持つ個人だが密接に繋がった2人の人間として、女の子達がどのように成長していくのかを楽しみにしています。人間はみな、成長過程でいろいろな困難にぶつかりますが、あの子達はその困難にどう適応し乗り越えていくのかを見て行きたいと思っています。」
ハキン医師は、双子が診察室にやってくるのを楽しみにしている。最近の診察は、双子が6歳になる少し前のことだった。そのとき、双子が共有している刺激についての新しい情報がもたらされた。「あの子たちの担当医になれて光栄です。あの子達が5歳になってもまだ生きていられること、そしてまだ元気でいられることは、本当に奇跡です。」
(後略)
Abby and Brittany
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タグ:P
興味深いエントリです。
少々心配が。
脳は人の一生でも半分も使えないくらい余裕があると聞いてますので、使えば使うほど能力が発達するし、よいと思いますが、
心臓のほうは人一人が一生を生きるのにちょうどの分くらいしかないと聞いたことがあります。
もし、そうだとしたら、二人分の体をひとつの心臓で賄っていたら、、、、
埋め込み式の人工心臓が出来たとは聞いたことがありますが、高価でしょうし、、
翻訳では医学上のことで悩みました。いくら考えてもわからないことはわかりませんから、院長にはその旨をお伝えしてあります。ですから、私としては、出来の悪い解答用紙を黒板に貼られてしまったような気分でした。
ショックから立ち直り、開き直りましたら、今度は読んで下さる方がいるのだろうかと気になりました。それで様子を観ておりましたら、読んで頂いているのがわかり嬉しかったです。でも、同程度のヒット数がある他のブログ記事に比べてコメントがつかないのですね。(コメントくださったunimaro様、ありがとうございました。)
翻訳の質そして訳者としての力量の無さは棚に上げて、コメントがつかない理由はなんなのだろう、と私は思いを巡らせております。もしかしたら、この話題はタブーなのかもしれません。
お時間を取って下手な翻訳を読んでくださるだけで恩の字です。「コメントを下さい」とは申し上げません。でも、できましたら、ちょっとだけ考えてみて頂けないでしょうか。
この記事をお読みになって、何かを感じられたことと存じます。ふと何かが心をよぎったのではないかと思います。では、「なぜ」何かを感じ、「なぜ」何かが心をよぎったのでしょう?
その「なぜ?」をお考えになって頂けましたら、訳者としては大変嬉しく存じますし、恥をさらした甲斐があったというものです。
あまりにも衝撃でどうコメントしたらよいものか、皆も同じと思います。まずこういう状況で
こんなに普通に成長できるのが驚きで、それを
受け入れ普通に育ててらっしゃるのが驚きでした。英語を多少かじってても、ここまで詳細は理解できません。訳していただき感謝いたします。医学的にたくさんの不思議があるようですが、単なる実験の対象に終わらず人としての
幸せをつかんでほしいとつくづく思います。
自分だったらわかってて出産を選ぶだろうか。
インタビューを受けるだろうか。
人前に連れて行くだろうか。
この子達の母親は心のレベルの高い選ばれた方たちなんだろうなと思います。