2013年10月26日

都築正男−第五福竜丸被爆者を見た医師の国会答弁

都築正男という戦前、戦後の放射線専門家がいます。
米軍占領下の原爆調査―原爆加害国になった日本 笹本 征男 (著) 新幹社
p.24
「都築正男は東京帝国大学医学部教授であると同時に、海軍軍医中将の肩書きも持っており、戦前、アメリカ留学した際、アメリカレントゲン学会でX線のウサギに対する全身照射実験の結果を発表して、アメリカにおいても注目されていた」

2013102601.jpgこの写真は1946年東京における会議の時のもので、前列左よりDr. Nakahara、Dr. Henshaw、Dr. Sasaki、Dr. Brues、後列左よりDr. Neel、村地博士、都築博士、Dr. HigashiそしてDr. Ulrichである。

ウサギに致死量のX線を浴びさせて、どのような変化が起こるのかを調べた実験です。都築正男、ウサギで検索をかけたところ、第019回国会 厚生委員会 第18号 昭和二十九年三月二十二日(月曜日)の議事録がヒットしました。これは、第五福竜丸のヒバクシャについての国会質問であり、一読しましたところ、今でも当てはまる内容ばかりでしたので、ご紹介することにします。旧単位を新単位に直したり、あるいは注を入れさせてもらっています。フクシマ事故後にこのような真摯な国会質問があったとはとても思えません。戦後66年を経て、国会議員の質の低下と科学者の質の低下は否めないことが良くお分かりでしょう。
○小島委員長 休憩前に引続き会議を再開いたします。
 この際都築博士に一言ごあいさつ申し上げます。博士には御多用中にもか変わらず、当委員会の希望を受入れられ御出席くださいましたことを厚くお礼申し上げます。
 それではこれよりビキニ環礁付近における爆発実験による日本漁船の被害事件についてお話を承りたいと思います。
○都築参考人 それでは御要求によりまして、先般三月一日でありましたか、南方で原子力の実験の結果発生したと思われます灰をこうむりました第五福竜丸の船員の被害状況について一言御説明を申し上げます。
 その状況を漁師の方に伺つたところによりますと、朝早く三時過ぎだそうでありますが、魚をとるべく網を入れておつたところが、はるか遠方に光が見えた。それから数分たちましてから鈍い爆音を聞いたそうでありますが、それから一、二時間たちましてから、ちようどさみだれが降るようにその辺が曇つて参りまして、そうして何か灰のようなものが落つこつて来た、こういう話でございます。その当時まぐろをとつておつたわけでありますが、大部分の人は別に大して気もつかなかつたが、一部の人はひよつとしたら何か原子爆弾に関係があるのではないだろうかということ百であつた。かつ船の油も残り少くなつたという状況で、とつた魚だけを積み込んで母港の焼津港に帰つて来たちようど十四日に帰り着きましたから、その百トンばかりの船に、二十三人の人間が二週間ばかり乗つて来たわけであります。
 それで帰つて参つてからの問題でありますが、その人たちが灰をかぶつて二日、三日たちますと、顔とか手とか、その当時外に出ておつたところが赤くはれまして、ひりひりむずがゆいような感じがして、続いて一部には水ぶくれみたいなものができました。これはたいへんなことだと言いながら、中には船に乗つていた人で気持が悪くなつてものを吐いたという人もあります。帰つて参りますころには、赤いところがやけどというか、海水浴に行つてやけたのの少し程度の強いような程度になつておりました。それで焼津に帰つてそこの共立病院の外科のお医者さんに見てもらつたところが、どうもこれは何か原子爆弾のようなものに関係があるから、東京に行つて都築医院に行つて見てもらつたらよかろう、こういうことを言われまして、そのうち顔と手が一番ひどくやられておる二人の方が東京に出て参りました。そうして私どもの大学にたずねて見えまして、それから事が始まつたことになつております。それが月曜日のことでありましたから十五日の夕方で、今からちようど一週間前であります。私は通知を受けまして翌日の火曜日の十六日にその患者を見ました。どうもこれはやはり放射能による障害でなければならぬ、同時に船の上に降つた灰を集めまして、一グラムばかり紙に包んでその漁師の方が持つておいでになりましたが、それを見ると非常に放射能が強いので、これは原子爆弾のようなものが爆発したときに、すなわち原子核の破壊という現象が起りました際に発生する原子核分裂生成物であるに違いない。それであればこれは容易ならぬことだというわけで調査を始めたわけであります。その調査は大体において二つの部門にわかれます。一つは医学部が主として担当いたしまして、医学的にその放射能を調べる。それから病人の模様をいろいろ調べること、今日まだ継続しておりますが、大体今朝までに大ざつぱながらその見当がついて参りました。第二の方面は理学部、主として化学の木村教授が主任になりまして、その船に落ちました灰を分析して、その中から成分を見つけ出すことであります。両方にわかれたものでありますから灰は〇・五グラムずつくらいになりました。その〇・五グラムずつの灰を分析いたしまして、今朝の十時まで大体その真相をつかむことができました。従つてもうどこからも知らしてもらわなくても、少くとも日本の第五福竜丸の上に落ちて来た灰の成分、並びにそれによつて起る障害の模様の筋道だけはわれわれの手によつて、日本医学の手によつて一週間の間に判明することができたということを、まず最初に申し上げておきたいと思います。
 これまでたびたび私新聞にも発表いたしましたが、これが月の世界からでも降つて来たものであれば、聞いてみる相手もないのでありますが、もし地球上にだれか知つている人があるならば、人道上知らしてもらうと都合がいいということを主張しておりましたが、今日以後はその主張をする必要がもうなくなつたということを、皆様のお耳に入れておきたいと思います。
 順が逆になりますが、まず第一にその灰の成分、これは東大の理学部の木村教授のもとでやられました。御承知のように木村教授はこういう放射性物質の分析化学におきましては世界的の権威であります。かつ、今からもう八年前になりますが、広島、長崎でそういう方面の研究をされました。ところが学会前の非常に忙しいときでありましたので、教室員が日夜奮闘いたしまして、今日までに大体その主成分を見つけ出すことができました。それからまず申し上げておきます。
 第五福竜丸に落ちました灰、これについて誤解が起るといけないと思いますので、一言あらかじめお断り申しておきますが、われわれがこれから申します成分は、第五福竜丸の上に落ちて来た灰に限り申しておるのでありまして、ほかのところに落ちた灰が、どんな成分であるかということはわれわれにはわからない。第五福竜丸に落ちました灰の主成分は、普通の化学の分析では炭酸カルシウムであります。大部分が炭酸カルシウムの化合物であります。これは想像いたしますると実験をした島がもし珊瑚礁であるとすれば、その珊瑚礁のかけらではないか、これは想像であります。この炭酸カルシウムに、さつき申しました原子核の分裂生成物が付着しておるというのであります。今までその付着しております原子核の分烈生成物で確かだとわかりましたもの、これは非常に重大問題でありますので一々申し上げますと、まず第一は放射性のジルコニウムであります。こういう放射性の原子核分烈生成物は、その放射能が時間とともに漸次減つて参ります。それはきまつております。この放射性のジルコニウムが放射能が半分になります、すなわち半減期と申しますが、半減期が六十五日であります。六十五日たちますとその放射能が半分になる、さらに六十五日たてば四分の一になるというようにだんだん減つて参りますが、永久にゼロにはならないのであります。第二には放射性の二オブ、これは半減期が三十五日のものと九十時間のものと二種類発見されております。それから放射性のテルルというものがあります。このテルルの半減期が七十七時間であります。それから放射性の沃素というものがあります。この沃素が二種類ありまして、半減期が二・四時間のものと、八日のものと二種類出ております。これで六つになります。なおそのほかにストロンチウムというものが出ております。ストロンチウムには二種類出ておりまして、これはわれわれの方から言うと非常に重要なもので、ストロンチウムの八十九番というものが一つと、ストロンチウムの九十番というものが一つと二種類出ております。(筆者注−この時代でさえも、ストロンチウムの検出に一週間しかかかっていないことに注意)ストロンチウムの八十九番と申しますのは、半減期が五十三日であります。それからストロンチウムの九十番と申しますのは半減期が二十五年であります。この二十五年にあとから非常に意味が出て参ります。その次にバリウムというのがあります。バリウムの半減期が十二・八日であります。それからもう一つランタンというものがあります。それは半減期が四十時間であります。それだけのものでありますから大体十になりますが、十の放射性物質が灰から見つけ出されておるのであります。それからこういう原子核分裂生成物として、多分そういうものもあるかもしれないという意味で調べてみましたけれども、発見されなかつたものが三つございます。これは亜鉛と銀であります。それは検出されないということになります。それからコバルト、例のコバルト爆弾とか騒いでおります、放射性のコバルトは検出されていないのであります。これはないという話であります。今日まで化学的にわかりましたものはそれであります。従つてこの成績から学問的に判断いたしますと、原子核の分裂が起つたのであろうということは、もう十分に確かに言うことができると思います。それぞれ重要でありますが、このうちで一番医学の立場から人間の被害という立場から申しまして、一番重要な問題はストロンチウムとバリウムであります。ことにストロンチウムの九十番というものは、人体の中へ入りました場合の新陳代謝が、カルシウムとまつたく同様に行われるものでありますので、好んで骨に沈着いたします。それから一旦人体の中に沈着いたしますとなかなか排出されにくいという点が、非常に特異のものであります。そのストロンチウム九十番の放射能の半減期が二十五年であるということが非常に重大な問題になります。たとい微量といえどもこういうものが人体の中に入りまして、骨の中に沈着した場合、その放射能が半分になるのに二十五年かかる。さらに二十五年たつて、五十年でやつと四分の一に減るという点、何とかしてこれを早く無害な状態にして、からだの外に取り出さなければならないというのが、われわれ被害者の治療に当つておる者に課せられた重大な問題だということになるわけであります。
 ところで今申しましたような成分を持つた灰でありますが、その灰をこうむつたら一体どうなるかということであります。これはよう話がわかつておれば、そういうものが降つて来たら急いで逃げるか、あるいは不幸にして逃げるひまがなくて、着物についたり何かしたら、着物を脱ぎ捨てる、すぐ何べんもふろに入つて一生懸命洗えばいい。何様百トンという小さな船にまぐろやさめ、そのほかにたくさんの魚を積んで、ほとんど人間の住むところのないような小さな木造船、それに二十三人という人が乗つて、かつそういうものに対する知識がほとんどない。これは無理もない。それが二週間の間、航海して港に帰つて来たというのでありますから、その間非常な害を受けて帰つて参りました。その船を専門家が調べまして驚いたことは、その船の放射能たるやたいへんなものであります。その調べも大体の材料をここへ持つて参りましたけれども、たとえば甲板の上のボートの置いてあるところなんかは、放射能の単位で申しましてミリレントゲン・パー・アワー、一時間にレントゲンの千分の一、その単位ではかりまして百十(1,100μSv/hr)、それから船員室が八十(800μSv/hr)というのであります。これがどの程度恐しいものであるかと申しますと、今国際間に放射線の学問の方で、放射能の障害というものが非常に問題になつているのでありますが、その障害を受けた際に、このくらいの程度であればよろしいという許容量というものがあります。インターナシヨナル・パーミツシブル・ドウヅというものがありまして、国際的に許される量がある。それは一週間に三百レントゲン(これだと3Sv/wとなりますから、おそらく300ミリレントゲン=3,000μSvの誤り)ということになつております。従つてもしかりにそこに住んでおるとすれば、それを一週間の時間で割ることになりますから、一時間が一・八ミリレントゲン(18μSv/hr)ということになります。そういう程度までは住んでもさしつかえないということになる。ところが今申し上げましたように、船員室にしてすでに八十(800μSv/hr)であります。一・八(18μSv/hr)というのがどうやらよろしいというのに対して八十(800μSv/hr)でありますから、もう非常な強さであります。ところがこれは二週間たつて帰つて来ての話で、この灰を医学部の放射能科で調べましたところが、大体現在一日に一〇%程度減つておる。ですから初めのうちはもつと早く減つたろうから、それを逆にもとして考えましても、もう初めの時期の放射能は相当に強いものであつたろうということが想像できるわけです。これは計算すれば出て来るわけですが、従つてそういう強い放射能のある狭い船の中に二十三人もの多くの船員が住まわれて、別に風呂もあるわけでもなく顔も洗われないという状態でありますから、着物に一ぱいそれが着いておる。それが狭い船員室の中にごちやごちやに住んでおる。とつたまぐろも食べたというのだから、手も汚れますし、灰もごみとして大分吸い込まれて、からだの中に入つているだろうという想像もつくわけです。これはたいへんなことだというので、東大に入院された方をいろいろ調査をいたしました。あまり詳しいことはあとで模様によつたらお話申し上げますが、初め驚いたことは、例のガイガーというごく簡単にはかるものを持つて行きますと、ガアツという音がするくらい鳴るのであります。からだの表面、頭の毛が一番強くて、それから顔、首、わきの下、それから手、陰部、足というふうな、着物を着ているところでは割合に洗いにくいところ、あかのたまりやすいところに一ぱいついておる。それで、中にも入つておるだろうというわけで、もし中に放射能が入りますと、ことに骨に入るということでありますと、骨の中にあります骨髄といいます血液をつくりますところが障害を起しまして、貧血その他が起りますので、いろいろ赤血球と白血球とかを調べてみました。初め参りましたときは、先週の月曜日から火曜日にかけて、そうひどい赤血球の減ということは認められなかつたのでありますが、これはたいへんなことだというのでさつそく治療を開始いたしました。治療方法としては、もう御承知のことと思いますが、こういうふうにできました放射能は、今の学問の治療では、酸をアルカリで中和するように、打消して毒を消すという方法は全然ないのです。ただ機械的にこれを洗い去る、あるいはからだの中に入つたのであれば、小便とか大便とか汗、呼吸の排気、そういうようなもので外へ出すよりほかに方法はない。もう一つは、ただだんだん放射能が自然に減つて行く時間を待つているよりしようがない。ところが先ほど申しましたように、短いのは二・四時間というのがありますが、そいうものであれば一日、二日たてばなくなつたように微量になりますが、六十日とか、七十日、あるいはストロンチウムの九〇のごとき二十五年で半分になるようなものは、大体五十年待つておつて四分の一になるのでありますから、時間を待つて、自然に減つて行くのを待つというようなことは、治療方法としては採用できないことになる。結局洗い去るか押し出すかするより方法はないということになる。それで頭の毛やからだの毛は全部かりとり、そりとり、そして石鹸のようなもので洗いまして、からだの外についているものを極力落すということをまず始めたのであります。たとえば一例を申しますと、一人の人の頭の毛に九・〇ミリレントゲン・パー・アワー(90uSv/hr)という放射能のありましたのを散髪いたしました直後は、二・〇ミリレントゲン・パー・アワー(20uSv/hr)になりました、九が二に減つたわけです。大部分は髪の毛についておるわけで、髪の毛をとりましたら二・〇に単位が下りましたので、その後三、四日一生懸命にいろんなもので洗いました後にはかりますと二・〇、あまり減つてない。つまりもう皮膚の毛穴とか汗の腺とかいうところにしみ込んでいるものは、なかなか取りにくいということがわかりました。けれども総体として、からだの外についております放射能性の物質は、そういうふうに機械的に洗うということになる。また洗うにも石鹸の種類とかいろいろな薬によつて落ち方が違いますので、それを研究いたしまして、いろいろ洗つております。非常に手数がかかるのでありますが、一生懸命にやつております。それによつて大体少いところが四分の一、多いところが十分の一ぐらいに減つております。たくさんあつたところは十分の一ぐらになり、少ししがなかつたごろも四分の一ぐらいに減つております。しかしこれを全部ゼロに取り去るということはむづかしいんじやないか。皮を全部むいてしまえばとにかく、少々のあかすりぐらいでは取れないという状態にこびりついております。今から言えば非常に残念なことでありますが、そのビキニの付近で灰をかぶつた瞬間に、そこに東京大学がありまして、そしてわれわれが一生懸命に洗つていればこんな問題にはならなかつたのでありますが、不幸にして二週間の間東京大学がそれを知らなかつたということは非常に残念なことであります。今後こういうことになつたら、すぐに東京大学へおいでになれば、洗つて差上げるということも言えるのであります。それは一例でありますが、今度はからだの中に入つたものをどうするかという問題でありまして、これは一方において医学部で動物実験を現在行つております。その第五福竜丸へ落ちました灰をねずみに食わして、それから注射してみる。そうするとその放射能性の毒物がねずみのからだのどういうところに分布してどういうぐあいになるのだろうという検査であります。これは治療上非常に必要なことであります。その見当がつきますと、そのデータの上に人間の治療を進める。それを今日までわかつたことを申しますと、ねずみに食べさせますと、食べものの大部分は胃から、腸から便になつて素通りするようであります。それはまず一安心といえますが、その一部分が吸収されます。胃あるいは腸から吸収される。そして肝臓に入る、そして腎臓に行つて一部分は尿に出ます。それから一部分は腸にまた参りまして大腸から便の中に出ます。ところが驚くべきことには、一部分吸収されたうちの大部分が骨の中に入る。骨に入つたものが今後一週間、二週間とどういう状態で骨の中に残つておるかということは、まだ一週間たつたばかりですから、時間が足りなくてまだわれわれには言い得ない。今後ずつとそれを続けて行きたい。そのためには灰が足りない。もう少しその灰がどこかにあつたらくれないかという希望も起る。で、第五福竜丸をごらんになつた方もあるかもしれぬが、もう灰はない。船にしみ込んでいる。船を削つてそれをねずみに食べさせるかということになるのですが、どこかに灰を持つている人がありましたら御提供を願いたい。ところで、注射いたしますと大部分は骨に入つてしまう、それから肝臓腎臓に入る。それから出るのは腸に出て来ます。腸の中に出て来るということは、治療の上において非常に明るい見通しの一つでありまして、腸の中に少量ずつでも出て来れば、それを便としてからだの外へ排出することが可能であるという見通しがついて参りまして、今後極力そういう方面の治療を進めたい。
 一方白血球の問題でありますが、入院された当時は六千あるいは七千くらいで、ほとんど普通の人の数でありましたのが、だんだんに減つて参りまして、きのう、きようあたりは四千台を前後しており、半分くらいに減つております
  〔委員長退席、青柳委員長代理着席〕
焼津の人のうちで一人、きのう二千九百幾らという数字が出たそうでありますが、二千以下になりますと、生命の危険ということを考えなければならないことになります。
 それから骨に入りますから、骨髄を障害するわけであります。人間で骨髄の検査がやられておりますが、それは骨に針をさして、骨髄の一部を吸い出しまして一いろいろな細胞の検査をするのですが、骨髄を正確に検査しましたのが、今日まで六例でありますが、六例とも骨髄の細胞が減つております。骨髄の細胞と申しますのは、一立方ミリメートルの中に骨髄細胞というものは大体二十万程度あるのが普通でありますけれども、その数が約半分に現在減つておる。骨髄細胞が減つておるということは、非常に重大な問題であります。ことに骨髄の中に巨大細胞というものがありまして、それは血小板というのをつくるんです。血液の中の血液の凝固とかいうものをつかさどつている血小板というものをつくるとされております巨大細胞というものが非常に少くなつておる。一方血液の検査で、血小板というものは、普通一立方ミリメートルの中に二十万くらいあるのでありますが、それが十万くらいに減つておる人がある。これが五万くらいにまで減つて来ると、出血症状が起つて来るのですが、まだ出血症状が起るまでに血小板は減る時期が来ていない。今ちようど被害後三週間であります。今後もう一週間後の四週間か五週間くらいのときが、非常に重大な時期じやないかと私は考えております。こういうふうに血液に相当の変化が起つて来ておりますので、この際治療上万全の手を打たなければならぬ、こういうことであります。
 もう一つ誤解を防ぐために申しますが、広島、長崎の場合は、原子爆弾が爆発した瞬間に出ました非常に強い熱と爆風と放射能と、三つの作用によつて数万、数十万という人が障害を受けた。ところがその原子爆弾が爆発してできた粉は、幸いなことには広島、長崎の町には落ちて来なかつた。非常に高いところへ吹き抜けてしまつて、ほんの一部しか落ちてこなかつた。そのために特別な障害を受けたという人はなかつたけれども、今度の場合は非常に遠方でありますから、何が爆発したのだか知りませんが、爆発した瞬間に出た強い熱と爆風というものは、第五福商丸はちつとも影響を受けていないわけです。ただどういうわけでありますか、爆弾のかけらといいますか、灰が落ちて来たということで、こういう状態になつたのであります。従つてわれわれの仲間で相談いたしまして、今度の漁師たちの損害の病名は、決して原子爆弾症と言つてはいけない、急性の放射能症と言うべきであろうというふうに、ひとまず決定いたしました。
 大体のところそういうことでございますが、なおそれにつきまして、ほかにも少しデータを持つておりますので、お尋ねになる点がございましたならば、後ほど御説明を申し上げたいと思います。
○青柳委員長代理 次に委員から都築さんに発言を求められておりますので、これを許します。岡良一君。
○岡委員 先生もお急ぎでありますので、要点だけお尋ねをいたしたいと思います。私どもアメリカの新聞で伝えられるところによりますと、最近アメリカでは、トリチウムとかリチウムが核分裂の実験段階に来ておるということを聞いておりますが、木村教室の御研究の結果としては、トリチウムやリチウムのようなものはなかつたかどうか。
○都築参考人 私、化学の専門家でないのですが、木村教授に伺つたところでは、リチウムはまだ検出されていない、今検索中であるそうであります。それから重水素とか三重水素、そういうものは、うまく爆発してしまうと、そこでなくなつてしまうものですから、福竜丸の上の灰からは検出し得ないのじやないかと思います。
 もう一つは、いずれ水素爆弾にしても、原子爆弾を火つけに使うのでしようから、ウラニウムかプルトニウムかということを検索中であります。まだ確かにプルトニウムをつかまえる点にもウラニウムをつかまえる点にも行つていない。ただ確かになつたことは、コバルトがないということであります。
○岡委員 次に、たしかこれも先生の御著書で私ども学んでいると思いますが、広島や長崎の体験によりますと、あの放射線が人体を照射した場合に、中性子によつて体内の燐あるいはクローム、ナトリウム等がみずから活性を帯びて放射能を出すことになり、これがあるいは呼吸器その他の組織細胞の病弱なるものに対する附帯的な影響を慢性的に起して来る、こういうことが第二次の放射能症として、しかも非常に誘導的な作用をしておるということを聞いておるのでありますが、現在の患者については、そういう点は先生の見られたところではどうでしようか。
○都築参考人 お答えいたしますが、それはいわゆる誘導放射能というやつですね。誘導放射能があるかないかということが非常に問題で、先ほど申しましたように、私たち初め灰の主成分が炭酸カルシウムであるということを聞きましたときに、これはたいへんなことだと実は思つた。というのは、その炭酸カルシウムが、かりにさつき想像論として申し上げましたように、島の爆発のかけらであるものとすれば、今お尋ねにありましたように、爆発のときに中性子はどうせ出ていますから、中性子が島に当つて、島のカルシウムを活性にして、誘導放射能を帯びさせて、それが灰として飛んで来た場合にはたいへんであるなと考えました。中性子は第五福竜丸の上には、そういう活性を帯びる程度には及んでいないと思いますから、それはいいとして、島は爆発点から近くて、百五十フイートでございますから、島へは中性子がうんと当つておると思う。そのカルシウムが飛んで来て、カルシウムが誘導放射能を帯びて活性になりますと、その半減期が百八十日くらい、約半年かかります。さつきのストロンチウムの二十五年に次いで恐ろしいものである。だから灰の炭酸カルシウムは活性を帯びていない。放射能を持つていないのです。それは今回の場合は、いわゆる誘導放射能、中性子による活性化、すなわちでき上つた名前としては誘導放射能による障害というものはまずないもの、大体こういう方針のもとに今やつております。
○岡委員 昨日も静岡大学の鹽川博士の御意見、御研究の結果を聞きますと、福竜丸の甲板上にあるたとえば錨だとか、また錨のための鎖だとか、そういうものをレントゲンではかつてみて、いわばアイソトープ化しておらないというところから見ても、中性子による実害というものは、あの乗組員に関する限りはないのではないかというお話でありましたが、それといたしましても、しかしたとえばビキニの環礁において、現に原子爆発、核分烈の実験が行われるなれば、中性子はやはり海面に何らかの作用を及ぼすものではないかと想像できるわけでありますが、その点についてたとえば海水の中に放射能を帯びた灰なるものが浮遊した場合、これがどういう影響を与えるものでしようか。
○都築参考人 これも専門外のお尋ねで、私も責任を持つては申し上げかねますが、実はこのごろ毎日大学で食堂会――食堂へ各学部の者が集まりまして、私の来るのを待つておりまして、きようも実はそれをやつてここへ参つたのでありますが、いろんな専門家が参りましてそれを聞いてみますと、今の放射性を帯びましたものが、灰かごみか知りませんが、海の中へ落ちる。そうするとたとえば黒潮のようなものでありますと、ある一定の幅と深さをもつてまわつておりますから、黒潮で洗われるところは全部放射性の灰で洗われるという可能性は十分あるだろうと思います。その分量は海のことでありますから非常に微量にはなりましようが、無影響というように断定するわけには行かないのだろうと思います。
 それから私どもも魚が放射能を受けたら一体どうなるかということをまだあまり研究したのがない。少し手遅れでありますが、これから研究しなければならない。ことに日本としては重大問題であります。想像論としてはいろいろあります。たとえば、その想像論の一部を申し上げますと、近くにいる魚は爆発のために死にます。これは広島でも、たとえばあそこの淺野さんの泉亭の魚が白くなつて浮いておつた。それをほかに食うものがないから、しかたがない、食べた。あとになつてやれやれということでみんな心配したという話があります。それは死んだ魚はさしつかえない、日本まで流れ着くことはないだろう。ところでたえずそういうことが行われるということになりますと、われわれの一番心配することは、魚の繁殖力ということに何か影響しやしないかという問題であります。これはするしないかわかりません。学問的にはわからないけれども、かりに影響するとすれば、これは日本民族として非常に重大な問題であつて、日本の民族の主として蛋白源としての食糧は、魚に依存している国でありますから、その魚が減つたということになりますれば、筋を引いて制限される以上に、筋なんか撤廃されても、魚がいなくなつたということになれば、一体日本はどうすべきかということが、水産方面では今後の大問題になるのではないか。これはまつたく想像論であります。できればそういう方面の研究を、今後別途の専門家によつて行わなければならぬものであるというふうに考えております。
○岡委員 私も実はその点で、何と申しましても蛋白といえば魚類に依存しておるわれわれのことですから一そういういわば放射能を強く帯びた灰なるものが、水に溶けないという話でありますから、日本近海に回遊して来る浅海魚がこれをやはり持つて来る。いわば飲んで体内に持つておるというような心配も考えられるし、あるいは中性子によつて活性を帯び、従つて放射能を帯びておる海水の諸種の元素が放射能を帯びているもの、そういうものが日本の近海に流れて来るということも考えられる。こういうことが常識上十分可能なことではないかと思うのであります。その点先生のお考えはどうでしようか。
○都築参考人 それはもう私どもも同様な考えでございます。
○岡委員 先生の取扱つておられる患者についてでございますが、かりに中性子による第二次の誘導性放射線症というような病状は考えられない、杞憂にすぎないといたしましても、先ほどの説明のストロンチウムなどが骨に付着し、沈着いたしまして、そして骨髄細胞組織と破壊する、こういう病状が今出ておるわけであります。これがその被害を防止し得て、そのために今全力を上げておられるようでありますが、広島や長崎などの御経験から見て、一体これならば大丈夫であるという予後の明るい判定をなし得るには、なおどの程度の患者の観察を怠らずやらなければならないのか、その点承りたいと思います。
  〔青柳委員長代理退席、委員長着席〕
○都築参考人 お答えいたします。これは非常にむづかしい問題でございますが、むづかしいといつておつたんでは事が進歩しないのでありますから、現在のわれわれの考えではひとまず大体の見当をつけるのに必要な日数が二箇月、二箇月たつたら大体の見当がつくだろう。それからこれで大丈夫というのは数年を要するだろうと思います。それが五年でありますか、十年でありますか、二十五年であります、私は存じませんが、少くともストロンチウムの半減期の二十五年くらいまでは、観察を必要とするのではないかというふうに考えます。
○岡委員 その場合やはり単なる従来の医学をもつてしては、診断についても治療についても、きわめて困難な状態もありまするし、また同時てその治療を進めて行くためにも、いろいろと検査をしなければならないところの領域が、従来の医学的方法以外に、いろいろとやはり原子物理学方面のエキスパートの諸君の知恵も借り、また直接その研究室にも依存をするというような形で、この予後の判定あるいは診療を進めて行く上においてはそういうことが必要になろうと思いますが、これについては、先生の御意見といたしましては、やはり二十三名の漁夫はどこかでそういう施設を持つて、総合的にその身体の状況の変化に即応し、またそれに先行して手当を行い得る、こういうような取扱いをいたさねばなるまいと考えられますが、その点について先生のお考えはいかがでしようか。
○都築参考人 お答えいたします。今のお考えは非常にごもつともで、私が数日来考えておりましたこととまつたく同様なお考えかと思います。と申しますのは、広島、長崎の場合でも、私がかりに慢性原子爆弾症と名付けたらよかろうということを先般提唱いたしました状態がありまして、それを長く日本医学の手で、医学と申しましても、今おつしやつたように広い意味の医学であります。そういう意味で絶えず看視して必要な保護を与えなければならぬということを考えておるのでありますが、かつて広島及び長崎の事件がありましたときに、文部省の研究機関としてできました被害対策特別委員会というものは、その制度の上から三年で打切ることになりました。その後どうしてもこれは続けなければいけないというわけで、いろいろ奔走いたしましたが、永久的の施設がなかなかつくつてもらえませんので、とりあえず文部省の持つております総合研究費の一部をさいていだだきまして、二十七年度から新しく原子爆弾の後遺症の研究を主にする研究班ができております。一方厚生省所管の予防衛生研究所の中にも、同じような意味の協議会ができまして、私両方とも委員をしております。厚生省の予防衛生研究所の方のは、正確に申しますと、原子爆弾症調査研究協議会というのであります。それは二十八年度には予算を百万円いただいております。百万円で何をするのかといつて私は笑つたのでありますが、とにかく百万円いただきました。二十九年度はそれが幾らになるかは私存じません。一方文部省の総合研究費の中からわけていただきましたわれわれが奔走しておりますものの正確な名前は、原子爆弾災害調査研究班と申しますが、この原子爆弾災害調査研究班は、私の先生の鹽田廣重先生を委員長として、中泉教授と私が女房役になりまして、全国の大学から約三十名ばかりの委員に出ていただいてやつておりますが、それが二十八年度にもらいました金が百四十万、二十九年度にもらいました金が約百八十万くらいでございますが、それで細々やつておつたのであります。かねて私と中泉教授がこの問題を重要視いたしまして――ことに最近各方面で、原子力の平和的応用という問題が非常に論議されております。原子力が平和的に応用されて石炭よりも単価が安くつくから云々、すぐにも飛びつきたいようなことを、皆さん非常におつしやいます。従つてその研究をしろということをおつしやいますが、その声を聞くたびに、私たちははだえに寒けがするような恐ろしさを感じておる。原子力を発生させるためには、どうしても同時に放射能が発生いたします。従つてそれを平和的に応用するためには、安全装置、防禦装置というものを考えなければならぬ。これが非常にむづかしいことであります。たとえば米国におきましてもこの問題は非常に関心を持たれまして、できるだけ安全装置をして放射能の障害を防いで、原子力をできるなら平和的に使おう、こういうわけでありますが、ここに持つて参りました本は、このごろ私いつでもカバンの中に入れて見ておるわけでありますが、アメリカの原子力の研究所のある機関で、日にちは書いてないのですが、かつてあるアクシデントが起つた。そのために十名の人が非常に強い放射能にさらされた。そのアクシデントはどういうことであるかということは書いてございませんが、あとの記事から想像いたしますと、安全装置に手抜かりがあつた。これは人間がつくる安全装置でありますから、どこにどんな手抜かりがあるかもしれないということは考えておかなければならぬ。アメリカの中でも十人の人がやられる。これはもうビキニの漁師の場合と違いまして、二週間もほうつておかないで、その放射能の強さもわかつておりますし、性質もわかつておりますし、安全装置の不完全さもわかつておりますから、障害の程度はちやんとわかる。即刻アメリカの医学の精鋭を尽して治療したにもかかわらず、十人のうち二人の犠牲者を出しております。その写真がいろいろ出ておりますが、やけど――やけどと言つても火でない、放射能のやけどでありますが、この軽いのが今度の漁師に起つております。平和的応用ということを考えた際、そういうことが起りますので、その点だけから考えてみましても、放射能によつて生物がいかに障害を受けるかという研究をする。できれば国家的の、非常に大規模な各方面の学問の総力を集め――学問というよりもいろいろな社会的の関係の方も集まつていただいて、これは非常に熱心に即刻始めなければならぬ非常に重大問題だと思う。最近の福竜丸の事件のようなものが今後引続いて起る、あるいは先ほど御心配なされましたように、海の水がよごされてその水そのものから来る日本の害、それが今度は一旦魚に及んで魚がいろいろ障害を受けるということの害、いろいろのことを考えてみますと、日本としては原子力をつくるということも、いろいろな意味において必要でございましようが、どこでだれがつくるか知りませんから、それから人命を守る、原子力の障害、言いかえれば放射能の障害から人命を守るということが、人類という大きな立場に立つてみて、非常に必要な問題ではないか、私は毎日それをつくづく考えておるのでありまして、今の御質問とまつたく私は同意見でありまして、これはできるならば何らかの方法で、至急に日本国が全力をあげて研究しなければならない問題である。アメリカもやつております。イギリスもやつておる。ソ連もやつておる。やつていないのは日本だけであります。われわれは細々やつてはおりますけれども、そのやつておる程度たるや非常に少いものでありますので、これを非常に強力にしてぜひやられなけばならぬ。地球上で今後そういう原子力の発生というものが、戦力として用いられるのはもちろんのこと、その戦力の準備実験にさえこういう問題が起る。ことにそれが日常平和的に応用されるということになれば、必ずその際に放射能が出るのでありますから、その放射能による障害を、急性障害はもちろんのこと、ことに、慢性障害を調べてそれを予防し、不幸にして起つた場合にはいかにして治療するかということを、本腰になつて研究しなければならぬ必要が、この際われわれの身近にしみじみと迫つておるのではないかということを、日夜非常に考えておりますので、今の御質問には私は双手をあげて賛成するというふうにまで申し上げたいと思います。
○岡委員 そうしますと、現在の福竜丸乗組員の被爆者については、関係学界の代表をもつて構成されたいわば総合的な診療集団のようなものができまして、これがこれらの被爆者がもはや大丈夫であるという見通しのつくまでは、あらゆる努力を傾けてその診療検索に当る、そしてまたこの総合的な診療集団、学界の代表をもつて構成された権威あるこの集団は、自己の診療ないし検索の結果については、やはり常に世界の学界にもこれを報告する。これらの必要のための一つの手段として、現在の被爆者はこれを診療の場所に一括集中させる、これらに伴う財政的な負担等については、この際政府は思い切つて政府の責任においてこれをやる、こういうような構想でこの問題の解決をするということが、当面の一つの大きなポイントではないか、このように思うのでありますが、先生のお気持はやはりそのように理解してよろのゆうございますか。
○都築参考人 もうまつたくその通りであると思いますが、先ほどそのことについてあまり詳しく申し上げませんでしたが、五年、十年という長い間、そういう人を一箇所に集めてとじ込めておくということは、またその人方のいろいろのお気持を考えまして非常に何でありますが、一箇月、二箇月様子を見ました上で、大して心配ないという方は帰つていただいて、よければまたもう一ぺんまぐろ船に乗つてお魚をとりに行かれることも、一向さしつかえないと思います。ときどき絶えず健康診断をしてやる。ところがその健康診断が、私が最近広島でも申しましたのですが、広島の場合の例の先ほど申しました慢性の原子爆弾症というのでも、今の普通のならしの日本の医学の知識では――と申しますよりは、世界の医学のならしの知識であつてはと、私は申したいのですが、不十分なんです。そこでこの方面について、特にこの治療は先ほどお話しましたように、狭い意味の医学だけではどうにもなりませんから、総合的の研究機関を常置さしていただいて、そういう人が一箇月目に漁から帰つて来れば、帰つて来るごとに検査をして、今度は行つてもよろしいとか、今度はやめなさいとかいうふうなことを、始終注意してあげる相談所ができるというような意味で、先ほどおつしやいましたような精神が実現されるということに実際はなるのだろうと思いますが、簡単に言えば今後長い間絶えず観察をする必要があるという根本のお考えに対しては、私もまつたく賛成をいたします。
○岡委員 先生は広島、長崎以来、世界での原子爆弾症の権威と、われわれは尊敬をしておるのでありますが、先生の目から見られて、原子兵器はつくらぬとしても、少くともわが国における原子核分裂に基く身体障害等に関する治療を中心とする科学的な態勢は、世界に十分に誇り得るものである、日本のこの方面における発展は十分に世界のレベルを越えておる。少くともこれに劣るものではない、こうお考えになつておられましようか。
○都築参考人 それはちよつと私の口から申し上げにくいことでありますが、正直なところ私はそう思わない。というのは、正直なところどこの国でもゼロなんです。日本もゼロで、私はアメリカもゼロと言いたい。何だかんだ言いますけれども、結局結論はゼロです。ですから、どこもゼロなんだから、もし日本が〇・〇〇〇一だけでもプラスであれば、世界一になる。実は日本は零が幾つついた一か知りませんが、何がしか持つております。という点では数学的に比較すれば、いくらか多いかもしれませんか、私どもの力が世界一だというようなそんな慢心は決して持つておりません。世界で一番下だと思つて努力しなければならぬと思います。乏しい研究所で、日本ではそういう方面でフル・タイムで働かしている人間は一人もいない。私自身にしても、一開業医でありまして、この一週間来自分の病院はほつたらかしで、副院長にまかせつきりでかけずりまわつている。東大の教授にしても、学生に教えるのが本職であつて、そのかたわら自分の学問的興味でもつてやつている。でありますから、日本にはそうたくさんの人はいりませんけれども、五十人でも百人でも三百人でもいいんですが、できれば安心してその研究に没頭し得るような学者をつくるという制度が必要であつて、そういうものができて何年かたてば、さつきの〇・〇〇〇一が〇・〇一ぐらいになるかもしれぬ、こういうふうにも思つておりますが、現在のところ日本ではこれだけの設備でこれだけやつておりますと言つて、世界に誇り得るものは何ものもないのであります。この間も日米合同のシンポジウムがありましたとき、最後に鹽田先生があいさつされたのを、私は翻訳いたしました。先生はアメリカの広島に来ている者はフルタイムで働いているが、日本は本務のほかにちよいちよいとやる調査の金を見たつて、一人にわけますと、一番多くて十万円ぐらい、少いのは年に四万円ぐらいしかありません。年間百八十万円ですから……。それでたびたび東京に出て来いというけれども、一度出て来たら研究費の半分ぐらいはなくなつてしまう。そういうことでやつているにかかわらず、合同のシンポジウムでとにかく対等にやつたんだから、日本は偉いのじやないかということを言外に含めてあいさつされました。それを私が翻訳させられたときに、日本の人はノンプロだと言つたのです。アメリカはプロフエツシヨナルだ。日本はアマチユアじやないがノンプロである。プロとノンプロが相撲をとつて、どうにかどつこいというところまで行つたことは、日本のひそんだ学力にあるプラスがあるんだろう。ゼロではなく、そこにプラスがあるんだろうということは、ひそかに考えておりますが、これは私の口からあまり大きくは申し上げられません。
○岡委員 アメリカが今度また核分裂の実験をやるという。大体同じ場所でやるのじやないかと思いますが、立入り禁止区域を六倍ほどに広めました。先生は今度福童丸の漁夫については航海日誌、またからだの模様その他のことを、東大としていろいろ御研究になつたわけですが、六倍ぐらいに禁止区域を広めてみて、はたしてそれによつて今後の同様な核分裂に基く犠牲を避け得るものであろうというお見通しですか。今度やつたのは塔の上でやつたそうですが、この次はいよいよ飛行機で運んで上空でやるということをアメリカも言つているようであります。そういうこともあわせて、六倍ぐらいに立入り禁止区域を広めて被爆を防げるかどうか。伺うのが無理であるかもしれませんが、先生のお見通しはどうでしようか。
○都築参考人 お問いになる方から無理な問いてあろうということでありますから、私も非常に気が楽であります。今度アメリカが何か四百五十マイル、地図で見るとウエーキ島にくつついているところまで行つているようでありますから、アメリカへおいでになるときにウエーキ島に近づくときには、ひとつ御用心なさるように。石けんと水くらいは御用意になる方がよいでしよう。もし必要ならば洗う有効な薬が出て参りましたから、差上げてもいい。これはまあじようだんですが、今度飛行機でやるというと、理論的に爆発の及ぶ範囲は計算できましようけれども、自然に風で流れて来る。あの辺は下は東京から西、上は西から東へ向つて風が吹くのが昔からのきまりでありますが、風が吹いて来るというのに対して、風はおれは知らぬぞ、こう言われたら日本ではどうするかという問題であります。それはウエーキ島まで広げようが、小笠原まで広げようが、東京まで広げようが、北海道まで広げようが、風によつてはどこまでも来るんじやないかと私は思います。それは来るかもしれぬと思つて覚悟している方がいいんじやないか。もしアメリカがどうしてもやるとすれば……。私はそう思います。従つて全部灰をかぶるかもしぬ。現に京都大学の放射能はふえます。これは公にしてはいけないことかもしれませんが、アメリカのネバダで原子核の分裂が行われまして、四日後にニユーヨークの自然放射能が四%ふえた。従つてシベリアのある地点で原子核の分裂が起れば、日本の自然放射能が一〇%程度ふえるはずだということで、今調べているある国の人があります。その成績はまだ聞きませんが、かつてジヤワの有名な火山が――名前は忘れましたが、千八百八十何年島が半分飛んでしまつたような爆発をしたとき、火山の灰が地球の成層圏を飛びまわりまして、何日かの間夕焼けが非常にきれいであつたという歴史的な記載があります。従つてこのごろ私どもよく夜になるとながめてみるのですが、あまり天気がよいので夕焼けも見ないですが、模様によつては今後夕焼けによつてしろうと的に判断できるかと思います。従つて学問を離れて私一個人としての感じから言えば、今後そういうものがあれば、アメリカがそれをいくら四百五十マイルにしようが九百マイルにしようが、風の向きによつてはどこへどんなものが飛んで来るかもわからない。従つて物理学者に頼んでおいて、ある程度の放射能が来たということになればどうするかということも、場合によつては医学的に検討してみなければならぬということは、ときどき考えもいたしますが、何さま今は二十三人の人で二十四時間ぶつ通しでかけずりまわつておりますので、将来の灰をかぶることについての方策まで考えるいとまがありません。最近ジユネーヴへ参りますから、ジユネーヴへ行けば新聞記者はあまり来ないと思いますので、ゆつくり灰をかぶることを考えたいとも考えております。これは重大な問題であつて、遠いからよかろう、立入り禁止区域を拡大すればよかろうということは、私も御同様に言えないじやないかと思つております。
○小島委員長 柳田君。
○柳田委員 都築先生にお尋ねしたいのは、放射物質の内容が明かにならなくても、アメリカの方から治療法を十分に心得たお医者さんが来るんだから、それによつて適当な治療ができることになると思う、こういう意見も今一部にあるのですが、先生の新聞発表等を読みましても、最初にはいかなる核分裂をしたか、その正体を知るのが先決問題であると言われている。ただいま承りますと、それは月の世界ではなし、地球の上のどこか知つてる人間から教えていただかなくても十分やれるというお話でありますから、われわれもやや安堵したのでありますが、それはとにかく、最初に私の申しましたようにそれに対して十分に治療ができるであろう、こういう見解に対してはどうお考えでありますか。
○都築参考人 それは新聞にもちよつと出ておつたのでありますが、私をして言わしめたら、地球の上にどこにこの病体を十分に治療し得る熟練な医者がいるか。いるなら来てもらつたら非常にけつこうです。きよう一時四十分という電報をよこしましたけれども、さつき新聞社の話では今晩十時ごろになるそうでありますが、アメリカからミスター・アイゼンバツドという人が来る。これはアメリカの原子力委員会のヘルス・セイフテイ・アンド・デイヴイジヨン――健康管理並びに保護部門といいますか、それが参りまして、その原子力委員会の生物医学部門の長をしておりますバージヤという人が――私は個人的にも知つておりますので、きのう電報をよこしまして、今度は非常にお気の毒であつた、けれどもお前が一生懸命やつてくれておるので、こちらは非常に感謝している。ついては何らかのお役に立つと思つて、今アイセンバツドという人を至急飛行機でやるから、何なりとも用事があるなら言つてくれ、こういう話でありますので、アイゼンバツドはそういう方面の第一人者でありますから、来たら何か名案があるか聞いてみたいと思つております。
 率直に申しまして、世界中にそういう人は一人もいないだろう、われわれもできるならそういう人間の端くれの一人になりたいと思つて、今勉強しておるところであります
○柳田委員 私は実はこの前の厚生委員会において、この問題を質問したのであります。そこで広島、長崎の災禍に次いで三たび、宿命と申しますか、日本人がこういう災禍をこうむつた、従つてこの恐るべき原子力兵器に対するところの災禍の本体、あるいはこれによつて起るところの人体がこうむる被害に対するところの病理、あるいはそれの治療法というようなものは、日本人として、私はむしろ世界中のいかなる国の人々に対しても率直にこちらから公表し、さらにまた世界中のいかなる人々の協力も得、そこには崇高なる人類愛並びに人道上の問題から、政治的な要素などあるべきではない、かように私は考えておるわけでありますが、これに対しまして都築先生はどういうふうにお考えになりますか。
○都築参考人 私もその御意見にはまつたく賛成であります。さつき申しましたのは、つまり灰の成分は知らしてやらなくても、治療に堪能な医者を送つて、十分な治療をしてやればよかろう、言いかえれば受身の立場に立つてみれば、灰の成分は知らしていただけなくても、治療に堪能なお医者さんが来てくださつて十分に治療をしていただけば満足ではないかという考え方に対して、私は反対でもございませんが、異議を申し立てたい、こういうわけであります。
 むろん今も申されましたように、これは世界人類のためだから、世界中の科学者が集まつて協力してやろうということは、それは当然なことで、私どもは非常に賛成であります。でありますからそれ以来――それ以来と申しますのは広島、長崎以来のことでありますが、私は放射能の問題を――実はアメリカととつくんだのは大正十五年なのです。大正十五年にデトロイトのレントゲン学会で、私はうさぎにレントゲン線を三時間続けてかけると、うさぎがこういうふうになつて死ぬぞという実験の結果を持つて行つて報告した。そうするとそのときに、そんなことを実験するのは医者でないと言つて、非常に非難をされた。そんな動物に初めからしまいまでレントゲン線をかけるということは、われわれもふだんやらぬことだから、やらぬことをやつてどうする。第二には死ぬまでレントゲン線をかけるなどということは、そんな無鉄砲なことがあるか。学問的には非常におもしろいけれども、お前の言うことは、実際には適用できないことだという非難があつた。それからアメリカととつくんでおるのです。それで二十年たつて、昭和二十年にアメリカの調査団が来ましたから、私はその研究報告を持つて来て、これが二十年前にやつたわれわれの動物実験であつて、今度お前たちは、広島、長崎でヒユーマン・エキスペリメントをやつたじやないか。そういうことから私は今日までこの問題について、悪い言葉ですが、どろ田に足をふみ込んだようなかつこうになつてしまつて、アメリカから何べんか、しかられたりなんかしましてやつたのですけれども、とにかく人類の将来のために、これは結局私が死ぬまでやらなければいけないじやないかというふうに考えますので、けんかしてしかられながらも私はこの問題をやつていることは、全人類のためであるというのでありますから、この問題はアメリカからでも、イギリスからでも、ロシヤからでも来ていただいて研究していただきたい。けれども日本医学の立場ということから申しますと、古い言葉でありますが、やはりわれわれは祖国というものを、どうしても忘れることができないものでありますから、今度の二十三人の船員たちの治療は、できるならどこまでも日本医学が指導権を持ちたいという希望は十分あります。手伝つてもらうことは非常にけつこうですけれども、全部向うにまかしてしまうということは、日本に医学がなければともかく、相当のプラスがあるとすれば、どうしても日本が主になつてやりたい。そこでこれは大きな問題でありますから、どこからでもお手伝いに来ていただけるならば喜んで手伝つていただいて、全人類のためにりつぱな調査をしとげてもし不幸にして次の事件が起つたような場合には、万全の策を講じたいというのが私の衷心の考えであります。
○柳田委員 ただいままことに御謙遜な御発言がありましたが、その問題についてできるならばという一つの前置詞がありましたけれども、私はできるできぬは問わず、これは筋道としてあくまでも日本医学が主体となつて、しかもそれに対して今先生のお話のように、全世界の、全地球上のどこの学者が来られてもいい、またその結集をどこの国にも公表すべき日本人としての崇高な義務があり、また権利もあるということを、きのう私はここで表明したわけでございます。そこでおそれますのは、今MSAによりますと――先生と政治論をするつもりは絶対ございませんから、そのおつもりで。MSAを受けましてちやちな兵器弾薬等を受けましても、やれ秘密保護法とかなんとかいう法律をつくろうとしておるやさきでありますから、原子爆弾ですか、水素爆弾ですか、何かの爆弾によつて起つたところのかけらであるとか、あるいはそれによつてできたところの原子核分裂の物質の性質であるとか、そういうものまでも秘密保護法によつて、あるいは秘密保護法の条文にはそれも拡大解釈すればひつかかるようになつておりますが、そういうふうな圧迫が今後来ぬとは保証できない。むしろ来るのではなかろうかという危惧を持つておりますので、これは先生から特に私は御答弁を得ようとは思いませんが、ある程度の政治的な圧迫が日本の学者に来るだろうということが予想される。しかしながら、そういう場合に、原子禍にさらされた日本人としての崇高なる立場から、あくまでも学問の自由のために、また人類の幸福のためには、日本の学者としての自覚のもとに毅然たる態度をとおり願いたいと思うのであります。
 今国民として一番関心になつておりますのは、放射能にさらされた人はもとより、さらにこの放射能を持つたところのまぐろなりさめを食べた人が、実は内心戦々きようきようとしておる。ことに新聞の伝えるところによりましても、原子力によるところの症状というものは忘れたころに出て来る、こういう点で非常に戦々きようきようとしておるように思うのであります。ことにまぐろ等は相当広範囲に、二十数県にばらまかれており、大阪においてもガイガー・カウンターにタツチされておる。金沢においてもストロンチウム九〇ですか、すでに証明されておるというようなことでありますので、これも先ほどの先生のお話のように二月ぐらいで大体の見当がつくものであるかどうか、一応お尋ねをしておきます。
 放射能にさらされた人は、皮膚から、あるいは呼吸器あるいは消化器、この三つからその害を受けると思うのですが、その魚を食べた人は、おそらく消化器から入つて来るわけでありますから、そういう点の平易な医学的の解明を、この機会に国会を通じて国民にお知らせ願う意味において、御発表を願いたいと思います。
○都築参考人 その点につきましては、数日来魚河岸の連中から非常に責め立てられておりまして、一昨々日でありましたか、金曜日、東大の医学部の放射線科の主任教授であります中泉教授と私といろいろ相談いたしまして、声明というほどでもありませんが意見を発表いたしました。その結論は、魚を食べたということについては心配がないということであります。と申しますのは、福竜丸に積んで参りましたさめ、ことにさめのひれ――支那料理に使いますあのふかのひれというのは大部分さめだそうでありますが、そのさめのひれは相当なものだつたらしい。あのさめのひれを毎日々々支那料理屋に行つて、たら腹お上りになりましたら、それは例外として、まぐろの刺身のことでありますから、二きれか三きれ、多くても十きれくらいまでのことだろうと思いますので、そんな心配はない。この間新聞記者に、まぐろを一日に一尾ずつ十日間食べたらいらつしやいと言つたんですが、まぐろの刺身をお上りになつたり、おすしの上に載つかつている薄い一きれや二きれをお上りになつても、それはたとい福竜丸に積んで来たまぐろであつても、今日から見ればさしつかえなかつた。ただ厚生省の食品課の方の人が全部廃棄処分にしたから、今もしそれがさしつかえないということになつたら、廃棄処分にしたのは行き過ぎであるということで、体河岸から責められて弁償しなければならぬという問題になるから、そこはあまり言つてくれるなということであります。(笑声)今度私は専門外のことを大分勉強いたしました。実はまぐろとさめの区別などよく知らなかつたのですが少し覚えたのですけれども、そんなことでそこは少しにおわせまして、福竜丸に積んで来た魚のうちのこれはあぶないと思つたものは全部処分した。少しのそう大して悪くないものは二十何軒かに流れたけれども、それも一ぺんや二へん食べてもちつとも心配ない。このあとからは福竜丸は来ないのだ、こう言つたのです。それが終つて新聞記者が帰つたところに、今度は厚生省から電話がかかつて来まして、また築地に入つた。ガイーガーを持つて行つたらブーブー言うというわけで、またたいへんだということで中泉君が行つた。そうしましたら船のデツキと船員の帽子がガーガー言うのであつて、中の魚はうんともすうとも言わない。大丈夫。ところがその船はさつきの問題にも関係しますが、三月の一日にはビキニから二千海里離れていたわけで、帰る途中にビキニから二百マイル離れた地点を三月六日に通つておる。にもかかわらず帰つて来たときに、その帽子が鳴るのですからたいへんなことだということになるんですね。けれどもその分量はミリ・レントゲンで申しますと、間違いがあるかもしれませんが〇・一以下ですから、健康障害には全然ならないで、その連中は帽子をかぶつて何日おつても、別にどうにもならぬはずです。けれどもその帽子は毒があるから捨てたらよかろうということにしたわけですが、そのような意味で魚の問題は心配ない。従つて魚を食べた人の健康については、二月という日数を待つ必要はないのです。今日ただいま、全然心配はいらない、こう私は申してもよい。そこにさつきの魚河岸と厚生省の食品課の将来の弁償問題がちよつとひつかかりますので、初めの強くよごれたものは適当に処分したからという前句をつけていただいて、その他の魚はよいといつて現在判を押しておる状況です。そのときまた新聞記者に言つたのですが、そういつて魚はどんな腐つた魚を食べてもよいのだという印象を受けられたら困る。かつ東京の魚河岸というのは、御関係の方がおありになるかもしれませんが、あれは実に不衛生きわまるところで、これも注意してもらわなければならぬのですけれども、赤痢とかチフスとかいう伝染病は、今日の議論の外にあるんだ。存外世間というのは食べてよいというと、腐つた魚でも、赤痢菌やチフス菌がついておつても、東大の放射線科が証明したからよかろうというので食べられるとまた困りますので、その点注意した方がよいんですが、これはどこかに御発表になるんでしたら、怪しい魚は全分処分したから、ただいま売り出したものはもう心配はない。それはごく神経質な物理学者がはかれば幾らか出るかもしれませんが、このくらいの程度では人間はちつともさしつかえない。それを心配しておつたら、東京の町の中のほこりは吸えないということになります。そんなに人間は弱いものではないのですから心配はないということを、しかるべき機関からはつきり言つていただいて私はさしつかえないと思います。
○柳田委員 それで今度は二十三人の人々になつて行くわけでありますが、今申しましたように、皮膚から、消化器から、さらに呼吸によつて肺臓に入る、この三つの経路の中で、今後予想される原子病に対して、どこが最も警戒を要するとお考えになりますか。またその三つについて、大体皮膚から入つたものはこの程度で大体の予後が判定できる、消化器から入つたものはこれだけの年数で予後が判定できる、呼吸器から入つたものはこれだけの年数で予後が判定ができるという大体の見込みはどうですか。
○都築参考人 現在までのわれわれの医学から判断いたしますと、それは皮膚から入ろうと肺臓から入ろうと胃腸から入ろうと、どこから入りましてもまつたく同様だと思います。それを別にわけて考えるということはできない。従つてその必要がない。入つてしまえば結局血液の中に入りますから同じことであります。ただ入る度合いといいますか、同じ分量を持つて行つた場合に、皮膚にすり込んだ場合と肺臓に吸い込んだ場合と飲ませた場合とは違うかもしれませんが、それはなかなか今の検査ではきめかねるのであります。もう少し灰をたくさんもらつて大仕掛な動物実験をやつてみたらわかりますが、何しろ〇・五グラムしかないのですから、うつかり使つてしまつてなくなつてしまつてはたいへんだというので、厳重に鉛の箱に入れてしまつて、少しずつ主任者が出してやつては研究いたしております。ほんとうのねずみのくそくらいの分量しかないのですから、その一かけらずつやつておるのでわからないが、大仕掛にやつたらわかると思います。現在のところはわからない。のみならずそれがわかつても学問的な興味でありまして、実際に入つてしまつたら、どこから入りましても同じだろうと思います。先ほど申しました二月くらいというのは、広島の経験からいつて、大体二月くらいたちました場合に急性の症状が終つたので、それから二月ということを言い出したのでありますが、これは間違つておりましたら、またそのときになつて訂正いたしますが、大体そういうようなことは、どこから入つて来ても同じと考えてよいのではないか。今のとこらは皮膚にくつついておるのがあるので、それを何とかして早く出すというので、それには汗をかかせのも一つの方法ですけれど、むやみに汗をかかせると新陳代謝が高まるから、腸の中なんかにうろうろしておるもの、あるいは皮膚の深ところにうろうろしておるのが、早く吸収されるというおそれもありますので、これは痛しかゆしですが、皮膚についておるものを何とかして吸収されないようにしたいというような方法も考えております。腸に入りましたものは、大体三週間たつておりますから、普通の人間だつたら大部分便として出てしまつておる。その間に吸収されたものということになると、どこから入りましても、大体同じであると、ひとまず申し上げておきます。
○柳田委員 最近の報道によりますと、白血球が減つて来たり何かして来たと報じておる新聞もありまして、私はその予後についてはかなり危惧の念を持つておるのでありますが、今回の被害は、先生のお見通しでは、当の患者の予後等は重大な問題だと思いますけれども、社会問題としてこれを見たときに、これは一応人によつて違いましようが一おのおの患者を比べて、その後の経過で、大体被害はある人によつては相当重くもなるし、ある人によつては思つたよりも軽い、どういうような結論になりますか。おしなべて一様に思つたよりも軽いというようなことになりますか。おしなべて一様にそう軽く見てはいけないというふうなことになりますか、その点をひとつ……。
○都築参考人 これは医学的な立場からの答弁と、一般論としての答弁とで非常に違つて来るわけであります。まず最初に医学的の答弁、従つてこの内容はすぐつつ抜けに新聞なんかに出ることは私としては困ります。そういう前提のもとにお話させていただきます。
 先般来この生命の問題について、あらゆる方面から聞かれるのです。私の答えはいつでも今日は生きております。明日も多分大丈夫くらいなことは言いますが、その後はわからぬ。何でもそうですが、ことに放射線の感受性というものは、毛髪でございますね、毛につきましては個人差というものが非常に少いのです。年齢差はあります、しらがは抜けにくいもので黒い毛は抜ける。黒いのは若いからだ。しらがはかろうじてくつついているだけであまり働いていない。中は働いているにしても外はあまりしらがは働いていない。従つて広島の場合もごましおは毛が抜けて白い頭になりましたね。あとで直つたらまたごましおになつた。今度はえて来たのは黒だ。でありますから毛の抜けるということは大体において個人差があまりない。大体レントゲンの単位で四百レントゲン(4Sv)というものを受けますと毛が抜けますけれども、内臓の障害は非常に個人差があるのです。その点で今度の二十三人の犠牲者も大体同じような障害を受けただろう。初めは外で灰をかぶつた人はひどかろう、機関室の中で灰をかぶらなかつた人は大したことはないだろうと思つておつたけれども、いろいろ話を聞いてみたり、帰つて来た船を調べてみると、先ほど申しましたような結果であります。みな二週間がちやがちやにやつて来たのでありますから、全部同じ障害を受けておると思わねばなりませんにもかかわらず、こういう場合は障害は非常にまちまちであろうと思います。すなわち生命に関する予後もまちまちであろうと思います。大体医者というものは――この中に臨床のお医者さんもおいでだろうと思いますが、病気になりましたときに何とかりくつをつけていろいろ検査をしてみますが、大体見た瞬間にこれはあぶないぞという気がする病人がよくあります。そういう感じから言いますと、どうも今度の二十三人のうちの約一〇%くらいは、少くとも犠牲者を出すのではないか。いけないのじやないかと思うのが現実の数でいえば二人か三人ということです。従つてそれを一生懸命に治療して、その犠牲者がゼロであつたということで、日本医学が凱歌をあげたい、こういうことで、実はそういう伏線を張つているわけではないのですけれども、どうも今日までの経緯からいつて、約二週間で白血球が三千以下に下つた人がすでに一人出たということは、ここ一、二週間のうちにさらにそれが悪化して、もし歯齦とか腸とかあるいは皮膚あたりに出血症状が起つて来たということになりますと、血小板が五万以下に下つたという証拠でありますので重大問題になります。ある何人かの犠牲者が出るかもしれないということで、一生懸命にならなければいけないものだというふうに実は考えております。けれども一般論としては一たびたび新聞に発表しておりますように、まあ命にはさしつかえなかろう、大部分は回復されるとあろうということを申しておりますが、その点は心の中と口とが少し食い違つておることを御了承願います。
○小島委員長 委員の方及び傍聴の方に申し上げます。ただいまの言葉の中に医者としては外に漏れては困るという言葉もございましたから、先ほどのお話につきましては秘密を保つていただきたいと思います。
○柳田委員 実は私どもは直接当つていないし、第三者として、傍観者としての立場から多少医学に関係した者として、実はかような危惧を私は持つておつたので、その点を先生に込み入つてお尋ねしたのであります。たまたま二十二日の読売新聞を見ますと、INSの発表でビキニの水素爆弾実験を視察した後、東京を訪問してアメリカへ帰つて来たパストールという米上院議員が、「放射能による日本人漁夫の被害は当初報ぜられたよりもはるかに軽いものであると言い、次のような声明書を発表した。日本に滞在中原爆被害調査委員会の活動状況を調査したが、その際アメリカ側官憲から、第五福竜丸乗船の二十三名の日本人漁夫に関する不幸な事件について、あらゆる資料の提供を受けた。その結果残念なことだが、最初の報告は事件を誇張したものである。今度の火傷を実際よりもはるかに重いように伝えたことがわかつた。東京を去る前に両院合同原子力委員会の二人の委員とともに、原爆被害調査委員長のモートン博士と協議を行つた。」こういうように発表しております。これについては、最初に日本に滞在中の広島のABCCがそれの状況を調査したというのですが、これは悲しい事実ですが、われわれ日本人は原子力に関するところの物理的研究においても、医学的研究においても決して世界には劣つていない。むしろ世界のピークにあるのじやないかと思う。日本側の発表を示してやつておるのではありませんからこれは水かけ論になりますが、アメリカはみずから犯した過失をこういうような議員が帰つても、やはり過小評価せんとしておるきらいがこの記事にもありありと現われておるのです。これはおそらくわれわれが想像しておつたよりもはるかに深刻な被害が、時がたつに従つて出て来るのではないかという危惧の念を持つておるわけであります。これに対しては別に先生に御答弁を求めようとは思いません。
 最後に一つお伺いします。これには何か特効薬があるようにいわれてあります。エチレン・ヂアミン・テトラアセチツク・アシツドですか、それからイソロイシン、そういうような薬が特効薬としてどの程度の効力のあるものですか。またそれはわが国においては現在生産されつつありますものですか、今なくても将来は簡単に化学的に合成されるとか何とかして、そういうものができますか。この点をお尋ねいたします。これで私の質問は終ります。
○都築参考人 今の御質問の薬の問題でありますが、EDTAと称します。それは日本でもつくつております。これはずいぶん古くから医学的に使つておるのでありまして、使つておりますところは主として血液の凝固を防ぐ、輸血をいたしまして、特に血液銀行なんかで血液を保存しておきますときに、血液の凝固を防ぐために使つております。その薬の性質としてカルシウム、ストロンチウムとかそのほかの金属で、鉛なんかもそうですが、そういう金属と化合して水に溶けやすい物質ができるということで、それを飲ませたり注射したりしますと、骨についておりますカルシウム世びにストロンチウムなんかを溶けやすい状態にして血液の中に洗い出し、それが小便や便に出て行くということで、毒を洗うということに使えると思います。それは日本にあります。アメリカから持つて来てもらえばどつちがいいか、また比べてみるという研究もできますが、日本でももう製品として出ております。イソロイシンも現在使つております。またビキニの被害者には、さつきのEDTAは、からだの外の放射を洗うのに使つておりまして、からだの中に使うというのは今日午後あたりから使います。それからイソロイシンの方は、白血球をふやす薬でありますので、現在がんの治療に使いますいろいろな薬がありますが、ナイトロミンなどという名前で知られておりますが、こういうものを使つて副作用として白血球が減りましたときに困りますので、白血球をふやそうというときにイソロイシンを使い、それからまた第二段の薬として使えるだろうということで、現在用意して待機しておるわけであります。これは白血球が三千とか二千台になつてから使う方がいいんじやないか、という私個人の考えであります。それは内科の方の血液の専門家の判断にまかしております。問題は、ただそういう白血球をふやすという薬ならばいつでもいいんですが、そう減つていないのに、むやみに白血球をふやすということはどうかと思う。というのは放射線病の際に、私も広島のとき私の報告の結論に書いたのですが、アメリカがやつて参りまして、日本人は不十分な治療をしたからたくさん死んだのだと申します。たとえば原子爆弾症で出血なんかを起したときに、輸血を毎日やつて、ぺニシリンを浴びるほどさしたら、そう死ななかつただろうということを申します。そのときわれわれも輸血の手段も持つておりましたし、ペニシリンも日本製のものを持つておりましたけれども、何さまあの状態で、それを十分に使うわけには行かなかつた。一例だけ長崎で、水がんと申しまして、白血球が減つたために、ほつぺたが腐る病気でありますが、失の子のほつぺたが腐りまして、アメリカの病院船が入つて来てペニシリンをくれて注射したら翌日きれいになつた。それでアメリカはそらなおつたと言つて、病院船がアメリカに帰つて雑誌に、原子爆弾によつてほつぺたの腐る病気はペニシリンでなおるぞという報告をしたが、アメリカに病院船が着く前にその子供は死んでいたんです。ほつぺたはなおつたかもしれないが、病人は死んでいた。そのとき私も非常に議論したのですが、たとえば広島で十万の人がなくなつたとしますと、そのうち七万五千人は八月六日に即死です。あとの一万五千、合せて九万人は二週間で死んでいる。あの混乱状態で医療らしいものを始めたのは三週間日からなんです。従つて三週間目からの障害者を全部助けたとしても、死亡率の改善は一〇%以内にとどまるということを申し上げた。のみならず放射線の障害というものは、肺炎にペニシリンがきくように、びたつときく薬は今のところないのでありますから、結局は自然にからだの力で、一定期間まで持ちこたえて回復するということになりますから、その持つておる生活の力を少しでも障害しないように、できればそれを助長してということでありますから、むやみに減つていない白血球をふやすというふうにするのは、疲れた馬にむち打つような治療で、私としてはしてはならないと思う。動物実験は非常にやりますが、動物実験の成績をうのみにして、この二十三人の治療をするということは、私は非常な間違いを起すもとになると考えておりますので、そういういろいろな方法がありますが、現在東大ではそれを非常に慎重にやつておる。ただ輸血をいたしますとか、ぶどう糖をさしますとかいうことは、きちんとやればほとんど害はないのであります。そういうことは、ずつとやつておりますが、そういう特別の新しい薬は、必ず副作用がある。ことに学問的に想像されることは、今のカルシウムやストロンチウムというのをからだの外に出すとか、EDTAというものがもし有効にきいて、カルシウムやストーンチウムがからだの外へどんどん出てしまうということであれば、その薬は放射能を持つておるカルシウムやストロンチウムを出すほかに、というよりは、それよりもさらに強く作用して、放射能を持つていないカルシウム、すなわち人間の生活にむしろ必要なものも、からだの外に出してしまう。そうすると今度はカルシウム減少症というものになりまして、急性なものになりますと、即座に心臓がとまつて死んでしまう、けいれんを起すというふうな症状が起りますから、たいへんなことで、今日の午後から使いますEDTAも、カルシウムが減つたらどうするかという予防法を一方に講じながら使つておる。一々血液のカルシウムをはかつて、バランスを保ちながらやつて行こうというのでありますから、一人の患者に五人くらいの医者がかかつてやつているんです。とうてい小ささ病院で設備の不完全なところでは、どんな大家が何人お集りになつても、できない相談です。そういうことでこれは非常にむづかしい問題であります。これはアメリカが来てもやはり同じことだろうと私は思います。そういう意味でいろいろ新しい方法が、また新薬と称するものが今東大にはむやみに集まつて来る。さつきもここへ来る前に二つほど、どうだこうだと持つて参りましたが、今衆議院に呼ばれておるから明日だといつて断わつて来ましたが、ありとあらゆるものを持つて来る。私は病院の事務の人に、持つて来られた方にはよくお礼を申して受取つておけと言つておきましたが、しかしこれを使うか使わないかということは、よほど慎重に考えなければならぬ。相手が人間なんですから、船のように焼いて棄ててしまうというわけには行かない。人間は丈夫に直そうというのでありますから、その点がむづかしい。すべて原則的に有力なる治療剤というものは、同時に有力なる害作用があるということを忘れてはならない。正宗の銘刀のごときものであるということを忘れずに、バランスをとりながら治療をするという点に非常な困難があると思うのであります。
○小島委員長 滝井義高君。
○滝井委員 今の都築先生の御説明で非常に裨益されるところが多かつたわけなんですが、現在現地に非常にたくさんの調査団と申しますか、そういうものが行つております。ちよつと新聞で名前を拾つてみましたが、静岡大学、東大、ABCC、国立予研、厚生省、水産大学、阪大、京大、科研、保安庁、外務省、名古屋大学、民間の医者、ラジウム団体、実にたくさんな人が焼津の港に向つて押しかけて、調査研究に当つておるようでありますが、何かこういう各大学の調査された結果について、先生の東大あたりと密接な連絡でもとられておりましようか、それとも現在何もとられていないのでしようか。
○都築参考人 簡単に結論的に申しますと、てんでんばらばらにやつておるわけであります。それで私は第五福竜丸の船そのものの検査は、てんでんばらばらにやつてもいいだろうと思うんです。いざとなれば、船は削つてなくなつてしまつてもさしつかえないのですから。けれども問題は二十三人で、この二十三人をてんでんばらばらにやると、たいへんなことになるので、どこか中心がなければいかぬだろうと思う。私個人の感じから言えば、東大が中心になりたいのです。しかしそれは東大でなくても、京大でもどこでもいいが、どこかおれが引受けるというところが中心になればいい。それで厚生省では、厚生省の予防衛生研究所の中にさつき申しましたこの問題に対する協議会があつて、それにわれわれも委員にされておるわけで、そこでやろうかというのでありますが、その予防衛生研究所は、そういう方面の学者なり、研究施設を何も持つていないと言つていいくらいですから、結局ほかへ頼まなければならない。人に頼んで、ただ世話するだけというのではぐあいが悪いので、一通り設備のあるところへまかせてやる。けれどもこれは先ほど申しましたように人類の大問題でありますから、一緒にやるということは、アメリカであろうと、イギリスであろうと、ソ連であろうと、日本においてはもちろんのこと、どこの大学の方がおいでになりましても、一向さしつかえない。けれどもどこかでまとめてやつて、そうして一緒に研究して、いろいろいい知恵を貸していただくということが必要であります。けれども焼津という場所柄から考えますと、あそこの共立病院長の拓植博士はその点で非常に困つておられる。ああいうととろでありますから、たとえば京都大学とか厚生省から来れば、いやだというわけには行かないのでしようね。東大であれば、いけないと言えばそれだけのことです。何といつても東大はしにせでありますから、まあまあそう言わずにちよつと待つてください、と言つて私たちが玄関へ出て行けば、それを無理に押し通してやろうということはなさらないでしようが、焼津ではむづかしいと思いますので、私の気持としては、できれば東大の方へ集めて、適当な制度をつくつて、どこの方でも、ほんとうに学問的に熱心で、相当の資格があり腕前のある方が、人類愛のために御協力くださるというのであれば喜んで一緒にやつていただくという制度にしなければいかぬのじやないか。こう思うのですが、その点がどうもまだしつくり行つていないので、てんでんばらばらだということは私も非常に遺憾なことだと思う。実は私も、明後日ちよつとひまを見つけまして焼津まで行つて、静岡県知事ともよく御相談して来ようかと思つておるのですが、どこかにまとめてやらないと、同じ血液の検査をするのでも、朝から晩まで入れかわり立ちかわりやつて来て、針をさされたり何かをすれば、時間的というだけでなく、一度針をさせばそれだけ生体に障害を与えるのですから、一度で済むことならば一度で済ましたい。同じことを繰返して二度やるとか、ただ学問上動物を使うような意味で今度の犠牲者を使うということは、私は絶対に反対なんであります。
○滝井委員 われわれも実に同感だと思うのです。やはりこういう問題は国際性を持つておるとともに、将来の日本が第三次世界大戦にでも巻き込まれるということになれば、当然今から対策を立てておかなければならぬ重大問題だと思いますで、急速に総合的な研究をするような機関をつくるか、あるいはどこかに研究の中心を置くということが必要だと思います。なぜそういうことを言うか、もつと具体的なことは、すでに新聞で、現地の患者二十一名は、施設のよい東大へ行けば必ずなおるわけでもあるまい、日本側でもわれわれをモルモツトにする気か、こういう談話さえも出ておる状態なんです。従つてこれはこういう患者さんにとつては、悲痛な叫びですが、こういうことを二十一名の患者さんの納得の上で、現在東大におられる二人の患者さんとともに、やはり総合的に、早くなおるような対策を講じていただくことが、私は患者のためにとつてもいいし、今後の日本の原子医学のためにも非常に大事なことじやないかと思う。
 その次に、今後総合的な調査をやる上においてわれわれが考えなければならないのは、その二十三名の患者さんとともに、これは船だと思います。それから今東大にある一グラムばかりの灰だと思いますが、これらの三つのものが、今後の原子医学の確立にとつては、なくてはならない貴重なものになつて来ると思います。その灰は大体先生のところにありますからいいでしようが、もと具体的に、こういうものを大体どういうぐあいにすべきかという、今後の研究の見通しの上に立たれた先生のお考えを述べていただきたいと思います。
○都築参考人 灰は今大事にしまつてありますが、だんだん研究でなくなると思いますから、少しはとつておきたいと思う。次に船であります。これはこの間の広島のABCCモートンさんが来ましたときに私が言つたのです。船を見に行くのはいいが、持つて行つちやいけない、ちよつと木を削つて行くくらいならあげるが、船をアメリカへ持つて行つてはいかぬ、日本のプロパテイだ、絶対にアメリカにはやらぬのだと言いましたら、そんなことをアメリカは考えないから安心してくれとモートンさんは言う。私はアメリカ人と長年つき合つておりますが、アメリカ人は個人的には非常にいいゼントルマンでありますが、ユナイテツド・ステートになると、どうもときどき非ゼントルマンになるのでありますから、これはひとつ日本政府の手で厳重に保存すべく努力していただきたい。あるいはビキニへ返せとかいう話もありましたが、学問上その船の放射能が今後二十年、三十年の間に、どういうように減つて行くかということを知りたい。あれはあのまま焼津の港に浮かしておきますと、五年たつたら沈みます。浅瀬にのつけて厳重なコンクリートでかこいをして、それを研究所の一部にして、あの放射能というものを今後数十年にわたつて減り方を研究すべきだと思います。世界のメツカにする。それで放射能を研究したい学者は、資格をちやんと調査の上で、日本政府の許可を得て研究させることはよろしい。けれども船を持つて行くということは絶対にいけないと私は思う。
 それから二十三人の方は、先ほどお話に出ましたが、何も一箇所に伝染病のごとく、あるいは刑務所のごとく、隔離して家族に会わせないとか、仕事をさせないとか、そんな残酷なことは絶対にいけないと思います。医学の上で安静の必要がある場合には、安静にしてもらう必要はございましようが、もう現在これで大体よろしい、普通の仕事をしてもよろしいということになれば、すきな職業につかせて、すきなところにおいでになるようにとりはかろうべきでないかと思う。けれども、やはり今後長い間十分に医学的の看視をして、必要な保護を与え、注意を与えるといつたような設備をつくらなければいかぬ、こういうふうに思います。どうも隔離をして、一ところに集めてしまつて、始終つかまえているというふうな考え方は、私はいけないと思う。場合によつては、一人ずつどなたか責任者にお渡ししてずつと長く見ていただいて、それはただ見るというだけでなく、その人の日常の生活についていろいろ相談役になつて保護を与えていただくといつたふうに、長く看視できるような制度をつくつたらいいじやないかということが私の気持なんです。それで私は、初めはそれがごく簡単にできるのだと思つておつたのですが、きのう焼津の共立病院長が東京においでになつて、東大の美甘院長と交渉された話で、私はまた聞きですが、現地では、われわれが簡単に考えているように行かないという話であります。それはいろいろ御事情もおありのことでありましよう。東京へ来れば家族にも会えない。会いに行くにしても、とにかく往復千円近い金がかかる別に悪い罪人でないのを、なぜそんなところに隔離するかというような考えがある。また行けば、どうせ血をとつたり小便をとつたりして、モルモツトがわりにされるだろう。それは治療のために必要なことはやりますが、そんなモルモツトがわりにするということは、一方においてねずみを使つても実験をしているのでありますから、そのかわりを人間にするというつもりはちつともないのでありますが、そういうことが現地の状況では、相当かわるだろうと思います。私は、今申されましたような患者さんを今後どういうふうに取扱つたら、一番その人たちに幸福であり、かつその副産物として日本の医学の研究を促進することができるか、ひいては世界人類のためになるかという方策を立てる資料の一部を得たいというために、明後日現地へ参りたいと思つているところであります。
○滝井委員 患者の問題は、これは現在国家において、船員保険でまかなうというようなことで、はつきりとした国の態度さえもきまつていない状態ですから、おそらくそういう問題が、私は患者の財政上から一つの隘路となつて起つているのじやないかと思います。これは今後なおわれわれは当委員会等で追究して参りたいと思いますが、やはり問題は、灰はありますし、患者は、今後財政上の問題が解決すればある程度行くと思いますから、問題は船だと思います。すでにモートン博士は、船は米極東海軍が横須賀に曳航するというようなことまで言つているようなうわさもあるくらいです。しかも現在この原子力というのは、先ほども柳田委員から触れられたように、超国家秘密であります。日本は現在MSAの協定で、防衛秘密保護法までつくつて、アメリカから借りた兵器も、今後これは防衛の秘密ということで、知らせられないという状態になりつつあるわけです。そうしますと、先生方の御努力で十種ばかりの放射能の物質がわかつて来た、しかもストロンチウムというのは、半減期が二十五年もかかるのだというような、具体的な原子兵器の威力というものがだんだんわかつて来、しかもそれらのものから、最大の原子兵器の秘密が解明されて行くということにもなれば、これはやはりアメリカにとつて、現在超国家的な秘密として保たれている原子兵器にとつては、日本の研究が一つの大きな脅威になることは明らかなんです。そういう点で、学問には国境はないかもしれないけれども、やはり学者には国境があるわけです。われわれは独立国になつたのですから、先生方もこの際特に毅然たる態度で、研究の成果というものは、アメリカの制肘を受けずに、堂々と日本の医学界に発表していただきたいと思います。先日厚生大臣にも、堂堂と発表するようにここで申し上げましたところ、厚生大臣の答弁は、曖昧模糊たる状態でありましたが、最後には、できるだけそういう方向に努力いたしますという言質をとつております。学問には国境はないが、学者には国籍もあるし愛国心もあることなんですから、どうか八千万の日本国民のために、勇気をもつて研究の成果を発表し、船はこうすべきだという先生方の所信を、堂々と述べていただきたい、こう私はお願いいたしたいと思います。
○小島委員長 長谷川保君。
○長谷川(保)委員 非常に御多忙のところを、長時間私どものためにお教えいただき、稗益するところきわめて大きかつたことは感謝にたえないのであります。今までいろいろ伺つておりますが、実は私どももこの事件が始まりますと同時に、当委員会におきましてこの問題を非常に重大視して、今日まであるいは治療の問題、あるいは研究費の出所の問題、あるいは家族の救済の問題、あるいは病者の救済の問題、廃棄物の問題等、あらゆる面からいろいろ討議をいたして参つておるのでございます。今までいろいろお教えいただきましたけれども、なおこの際私どもが何をなすべきか――私ども個人は非常に微力ではございますが、国会は一応国権の最高機関になつておりまして、われわれ二十五人の委員が結束いたしますと、相当なことができると思いますから、先生方の今取組んでおられます御事業をバツク・アツプするというような意味で、今何をなすべきか、あるいはそれ以外のことにおいても、私どもが何をなすべきであるか、こういう点についてお気づきの点を、なお教えいただきたいと思います。たとえば研究費のごときも、先ほど伺いますと、実にさんたんたる少額でございまして、何とも申訳ないことでございます。私どもはこういう点にうかつでおりましたことを、国会議員として大いに責任を感ずる次第でございます。しかし二十九年度の予算等には、たとえば原子炉のための予算三億円というような金が見積られておりますが、今これの使い道がちよつとなくて困つておることも事実あるわけでございます。衆議院に出ました予算と参議院に出ました予算と、内容が違つてしまつておるというばかげたことになつている事情でありますが、この人道的な研究は、日本の将来に平和的な原子炉の利用が行われる前提といたしまして一われわれは先ほどお話のように大きな問題として取上げなければならないのであります。従つてもし先生の方で、これとこれをしてほしい、国会の方でこれをきめてほしいということがあれば、われわれは大いに討議してあとう限りの御協力を申し上げたい、また申し上げなければならないと存ずる次第であります。さしあたつて私どもは何をなすべきかを、お気づきの点をお教えいただきたいのであります。
○都築参考人 何をなすべきかということになるとむずかしいのですが、どうしていただきたいかという希望はたくさんあります。何をなすべきかは、そちらでゆつくり御検討願いたいと思います。
 私たちの希望としては、先ほどから大体いろいろなことを申し存ましたが、今度の事件直接のことで申しますと、何とかして二十三人の方を丈夫にして上げたい、私たちの感じでは、一番重要な問題は、その人々の生活保護の問題だろうと思います。少くとも今後二箇月の間、安心して医者の治療に協力していただく。医者の治療という場合には、医者と病人とその家族の三者が協力しなければできないということは、長谷川先生が何年か前から体験してよく知つておられる。私もしばらく長谷川さんの事業をお手伝いしたことがあります。だから三者が協力できるという点において、医者は一生懸命になり、病人も自分のことだから一生懸命になつておる。問題は家族です。あんなにピンピンしておる者を、何しに東京へ連れて来るのかということがあるので、従つて家族の生活費の問題、それを後顧の憂いのないように、十分に裏づけしていただくことができたらというのが、私たちの今の第一の希望であります。
 第二の希望は医療上の問題は先ほどから何べんも申しましたように、わからない問題でありますから、どうしても研究と同時に治療を進めて行かなければならないので、健康保険のような医療制度で、研究のことは一切やらないで、ただ治療だけしろという制度の治療法では、ほんとうの治療は絶対にだめだということであります。従つて治療費は一でいいから、研究費は十出してくれ、治療費が一億なら研究費は十億……(「保険局長、よく聞いておれよ。」と呼ぶ者あり)実隊そうなんです。実隊この間厚生省に電話をかけて、十億ぐらい金をとりなさいと言つたら、そんな億なんという金はとれませんと言うから、そんな課長とは話はしないといつて、電話を切つてしまつた。翌日出て来いと言うから、厚生大臣の出る会議なら出る、厚生大臣の出ない会議なら出ないと言つたら、厚生大臣もおいでになるからどうぞ御出席くださいということで、私は行つて厚生大臣とお話をした。とにかく今度の場合は、世界初めての病気で、アメリカのどんな偉い人が来てもわからない。従つてわれわれはそれと取組んでおるのでありますから、治療費も十分出していただきたいが、さらにそれに十倍する研究費を出していただきたい。それがわれわれの叫びであります。
 私たちは決してぜいたくをしたいとは思わない。きようも車がないからこの委員会にお願いして、特別に車で迎えに来てもらつた。なければ電車で来なければならないが、それでは一時に間に合わない。とにかくそういうことで、研究に非常に費用がいる。そういうことが県当局にも、あるいは焼津の市の当局にもあるいは御家族なんかにもわからない。もしも実際の治療費が一であつて、研究費が十であるというようなことが公にされますと、われわれはモルモツトがわりになるのだということをすぐ言い出す。それはそういうものでないということを十分にお考えになつて、その点をひとつやつていただきたいというのが、私どもの第二のお願いであります。
 これを並べ立てれば幾らでも、あしたの朝までも続きますが、その二つの点が最も重要な問題であろう、こういうふうに考える次第であります。
○長谷川(保)委員 実はこの点は同僚諸君も非常に心配をいたしまして、先般来厚生省にその点を追究しておるのであります。そうして一応さしあたつて第一の問題は、船員保険を適用する、そうすれば治療費の問題と家族の生活も四箇月は全部生活費が与えられる、なお続いて、少し減りますけれども、当分の間生活に対して相当の保障ができる、こういうような答弁を厚生省当局からいただいております。われわれはそんなことでは足りない、また社会保険の立場から申して研究的なものには使えないのじやないか、であるからすみやかに予備費を出せ、こういうときのための予備費じやないか、予備費をすみやかに出して治療と研究、または家族の保護その他のことに万遺憾なきを期するように、厚生当局に注意を換起いたしておるのであります。一昨日も厚生大臣から、予備費を出しますというような答弁がここであつたにのでございます。これらにつきましては、われわれといたしましてはあとう限りの御協力を申し上げまして、先生方のこの崇高な御事業に協力させていただきたいと思うのでございます。
 なおここで今すぐお伺いすることは無理なことでございますので、たいへん恐縮でありますが、後ほど当委員会にあてて、書類等によりまして、これこれのことをなせということを、御関係者の方で御協議いただきまして、お教えいただきますれば、われわれはそれに対しまして――厚生省は大蔵省に対してどうも弱いものですから、厚生省を大いに激励いたしまして、協力いたしまして、国から金をとるようにいたしたいと存ずるわけであります。さしあたつてどれくらい考えたらよろしいか、先生にお腹づもりでもありますれば、予備費から支出を要求するときの参考に伺いたいのであります。これはただいまでなくても、後ほど書面でけつこうであります。
○小島委員長 それでは、これをもつて都築博士に対する質疑は終了いたしました。
 博士にはお忙しい中をまことにありがとうございました。
    ―――――――――――――
出展

どうでしょうか。都築博士の言葉は、今だに通用するではありませんか。東大の都築教授の弟子が中川恵一。もう、完全にあちらの方へ言ってますね。

◆関連ブログ
東大で分析されていたヒロシマ、ナガサキの死の灰2013年10月25日
群馬CTBT 亜鉛−65検出の意味2013年10月21日

にほんブログ村 環境ブログ 原発・放射能へ ブログランキング参加中
posted by いんちょう at 19:53| Comment(3) | 原子力
この記事へのコメント
 長いので岡委員との答弁までで残りは明日読みます。その最後の遣り取りで、都築氏は放射能が風にのりどこまで運ばれるのか、19世紀末のジャワ島の火山爆発の際の灰が成層圏を飛び回って何日か夕焼けがきれいだという例をあげて答弁されていました。(3月15か16日の白くまばゆい西日を思い出してしまいました。あのとき 放射能のチリに乱反射しているのだとバカなりに思いました)
 
 先ほどまでIWJで5月のヤブロコフ氏への岩上さんのインタビューを拝見していたのですが、チェルノブイリから1200km離れたモスクワでも食品の検査とか街路での放射能線量測定などが行われていると。(原発事故だけでなく核実験のせいでもあるとのことでしたが)わたしの住むここいらイチエフから500km圏。風下じゃないからって、出続けてたらまわってまわって風は吹きたいように吹いて落ちてくるんだなあ。なので答弁のここのところにいちばん引き寄せられてしまいました。

 いまだにこんなことがわからない日本人多すぎ。ほかにも放射能が移ることとか、平和利用の危険性とか、狭い船上で2週間なにも知らず汚染にまみれて過ごさざるをえなかった船員さんの行く末を思いやる人間としての優しさを持った医療者・研究者の、あたりまえの発言になんでこんなに感動するんでしょうか。(それは・・・)

 かれの発言からわたしたちの立ち位置は何一つ進んでなんていないわけですね。あせってもしょうがないけれど変えないともう崖っぷちですね。

小野先生、ご紹介ありがとうございました。
Posted by マツダマツコ at 2013年10月27日 00:03
> 御承知のように木村教授はこういう放射性物質の分析化学におきましては世界的の権威であります。

この木村教授という方は如何なる人だったのか? そもそも名前が不明なんですね。木村さんなんて掃いて捨てる程居ますし。

あっちゃこっちゃ検索してようやく此の人じゃないかなという方に行き当たりました。間違っていたら御免なさいです。


木村健二郎

1896−1988 昭和時代の化学者

明治29年5月12日生まれ。昭和8年東京帝大教授。31年退官後,日本原子力研究所理事,東京女子大学長。戦前から原子核反応による新核種の生成を研究。広島,長崎の原爆投下を降下物の分析から確認し,またビキニ核実験が水爆であることをあきらかにした。20年学士院賞。昭和63年10月12日死去。92歳。青森県出身。東京帝大卒。

東京女子大の学長までやっていました。驚きましたね。
Posted by ハマの住人 at 2013年10月27日 13:55
第019回国会 厚生委員会 第18号
小野先生ご引用部分のあとも読んでみました。たった5時間の質疑応答でしたが、硬い文章は読み慣れずなかなか手に取りがたく時間がかかりました。知りませんでしたが第5福竜丸が横須賀に曳航されそこからアメリカに持ち去られようとしていたんですね。福島の事故前年だったかにずっと見てみたかった第五福竜丸に新木場でお目にかかれたのでしたが(そしてもう2度と会えなくなりました)委員の一人はアメリカへは渡さぬと強く外務官僚に迫っていました。そういうことがなければ日本で目にすることはできなかったわけで大変引き込まれてしまいました。同様に、被ばく調査とその情報独占についてのABCCへの議員の不信感も表明されていました。大変貴重な歴史的資料。こういうものをたくさん読み込んで研究されておられる方にはいろんなものが今見えているはずですね。

 汚染魚の摂食については都築教授のお考えでは刺身の数切れなど食べても問題ないとのことでした。いまの常識から考えればちょっとちょっとですが、これについては当時の知見をどうこう言っても仕方ありません。

 当時も実際に魚の不買があり、漁民や販売業者は窮状に陥っていました。アメリカへのツナ缶の輸出も打撃を受けたそうです。「消費者側からすれば食べさえしなければ命に別状ないのだから食べないでおこうという全国的な風潮に対して、いや食べたらどうだとは言えない」との官僚答弁。

そういえばこれまでから海が汚されるたびに同じことが繰り返されてきたのだなあ。いい加減食べるものがなくなると気づいてほしい。

そして行政の対応は当時と桁違いに劣化してしまいました。まず水俣では国の食品衛生委員会がチッソの流す水銀がほぼ水俣病の原因とわかりながら不知火海での漁獲禁止を見送り汚染魚の流通を意図的に見逃して被害を広げましたが、今や基準値を引き上げたあげく検査もそこそこに(…やってない)積極的に広報・流通ですよ。もちろん福竜丸の汚染者は日本ではない。アメリカだったから追及できたのかもしれませんから今の対応を責めるのは適当でないという意見もありましょうが。

官僚の答弁において気づいたことが一つあります。わたしの大キライな「しっかりと」みたいな超中身のない返しが一言もなかったことです。あいまいな言い方で逃げ回るにしても一つ一つの発言を丁寧に返しておられた様子がありました。能力の問題なんですかね。まだよくわからないです。たいへん貴重な資料をありがとうございました。
Posted by マツダマツコ at 2013年11月04日 22:28
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。