2013年12月28日

被曝後、わずか数ヶ月から白血病の発症が見られた 杉原芳夫医師の手記(3)

 白血病−最も有名な放射能に誘発される疾患といっていいでしょう。私自身も原発事故当初から注目し、極々初期からその症例をいくつかブログに紹介してきました。当時は、そのような短期間で起きるはずがない、風評をまきちらすだけだとものすごいバッシングを受け、さらに対応方法などまったく知らなかったものですから、往生しました。

1.30-40代女性・・埼玉?在住。急性骨髄性白血病 2011.8.1診断 8.9死亡
2.2歳のこども・・原発にわりかし近い。急性リンパ性白血病。2011.8.20頃
3.40代男性原発作業員(7日のみ) 急性骨髄性白血病 2011.8.7発症 8.16?死亡
4.23歳 女性 千葉県北西部  急性リンパ性白血病 2011.8.下 診断
5.福島原発30km圏内で野宿し池や川で釣った魚を食べていた阿部洋人さんが急性リンパ白血病で亡くなる 23歳 2011.11.23?死亡
6.急性リンパ性白血病 大塚範一(63)  11/11/6 めざましメインキャスター

 私が見つけただけで、これだけありましたので、恐らく、他にもっともっとあったことでしょう。ただ、事故後半年以内に白血病が起こるかは大いに疑問で、以前勤めていた病院の専門医にききましたところ、「半年足らずで発症することは考えにくい」と回答してもらいました。そして、内部被曝の一人者である肥田先生も下記のように発言していました。

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−例えば白血病などはどうでしょう。
肥田 白血病はまだでない。3年以降で、白血病はピークが5年、がんが7年だった。これは必ずピークは出る。医師は知っておいた方がいい。被災者のみんなが放射能障害を心配している中で、「心配しなくていいよ」という医者では通用しなくなる。

 肥田先生はこう発言していますが、実際大量に白血病患者が出ています。事実に目を向ければ、被爆直後から(急性放射線障害による)血液系疾患が起きているわけですから、3年以降に発症するという言葉はおかしい。と、ずっと考えていました。「科学的」根拠とされるABCCの研究では、「戦後5年間、昭和20年から25年までにガンや白血病でなくなった被ばく者は、原爆被爆以前から罹患していた可能性があるとの屁理屈で、統計から外されていたのである。」のですから、良くわかりません。

 被曝と白血病の関係は、一昨日から連載している杉原芳夫氏の文章にしっかりと書かれていました。

「この世界の片隅で」 山代巴著 岩波新書(絶版)より p.92
 白血病が被爆者にみられたという学術報告は、一九四六年十月、京都での日本血液学会秋季総会で発表されたのが最初ですが、その直後に原爆関係の研究公表が禁止されました。そこで報告された広島の症例は被爆後二ヵ月、長崎の症例は三ヵ月で、いずれも急性白血病で死亡しています。第三例目にあたる症例は、被爆後一年半で死亡したもので、三原市の開業医である吉岡勝医師によって報告されました。私が氏に初めて会ったのは、助手として研究生活を送っていた病理学教室の廊下ででした。恩師である田部浩教授から、そのすぐあとで私は吉岡勝氏について、「自分の患者が原爆によっておこった白血病に違いないと言って、血液標本をたくさん持込んだのだよ」と教えられました。
 その日から氏は、専攻生として私と同じ研究室に出てくるようになったのです。
 吉岡氏の研究は、やがて『原子爆弾障害に依る白血病の一例』と題して、一九四九年六月、岡山医学会総会に発表されました。その研究発表を聞いた私は、敢然と原爆の罪悪を指摘した吉岡勝氏と、それを指導した田部浩教授の透徹した病理観にうたれました。

 私が新しく赴任してきた広島医科大学病理学教室には、白血病研究の大家である渡辺漸教授がおりましたので、白血病の剖検例はみな、教授の手許で研究されていました。その頃には、被爆者に白血病がかなり発生しているらしいことを多くの医師や学者は気づいていました。有識者には、原爆放射線が白血病を誘発することは、実験的研究からも、人体のレントゲン線障害からも、かなり明確なこととしてうけとられていました。この予想は不幸にも適中しました。
 一九五一年十二月、広島医学会主催の原爆影響研究発表会において、広島日赤病院小児科の山脇卓壮医師は、一九四八年から一九五0年までの調査で、被爆者の白血病が異常に多いこと爆心地からの距離の近いものほど発生率の高いととをたしかめ、被爆者の白血病が原爆放射線によったととを鮮かに実証しました。
 山脇氏の発表は、ABCCのファーリー博士との共同研究としてなされていたのですが、それでもその後永くABCCは、被爆者の白血病と非被爆者のそれとの病像に、何の差異も認められないのだから、被爆者の白血病が原爆によったかどうかわからないはずだ、と主張しました。ただしそれは学術報告ではなくて、いろいろな集会や、個人的接触をふくめたあらゆる機会に、放送され宣伝されたもので、私どもを大いに憤慨させたものです。
 
 原爆の白血病とそうでない白血病とのあいだに、絶対的な差異がなければならないということを、いったい誰が、いつどこで証明したというのでしょう。差異があるのかないのか、もしあるとすれば、それはどのようなものかということは、いずれもとれからの研究で明らかにされるべきものです。
 
 被爆者には、体に無理があると、たやすく貧血や白血球減少症をおとしたり、ちょっとした圧迫などで、簡単に皮下出血をおこす出血傾向がしばしばみられます。このような種々の血液障害は、すでに実験的な研究から、放射線障害の一つの特徴となっておりましたので、
・当然、被爆者のそれについて、わが国の多くの学者や医師が研究しています。その結果として、被爆者の遅発性血液障害が多数に認められること、それが原爆放射線に由来しているととなどが、いずれの場合においても論ぜられています。
 ところが、この明白な被爆者の血液障害も、ABCCの研究によると、被爆者群と対照群とでは、有意な差がないとか、あるいはあってもごくわずかで、それも蛔虫の寄生や栄養不良、月経による血液損失などの影響を考慮すると、放射線の影響は追っていないように思われる、とのべています。
 
 ABCCは一九四七年十一月、広島と長崎に開設されましたが、それから一九五四年までの研究を総括した一九五四年上半期研究報告書を、一九五五年にはじめて発表しました。それによりますと、被爆者にあらわれる原爆放射線の遅発性影響としては、白血病、白内障、胎生早期における放射線障害としての小頭症、および歯牙琺瑯質(エナメル質)の減形成の四つのみが認められるとのべています。
これを読んだとき、私は怒りでいくぶん息ぐるしさをおぼえました。これではわずかな一部を承認することで、他の大部分をしゴマかすやりかたではないでしょうか。


 数ヶ月後から白血病が増えてくるのは、もう既に証明されていたことなのです。なぜ、罹患期間が短すぎるから、被爆の影響ではないと言えるはずがありません。

 福島では、小児癌が激増することはもうわかっています。

「小児がん治療」推進 福医大病院、来春にも診療科新設
 福島医大が福島市の同大付属病院に、小児がんの治療に特化した新たな診療科を来春にも開設することが4日、関係者への取材で分かった。小児がん専門の診療科の開設は県内の医療機関では初めてで、診療科名は「小児腫瘍科」が検討されている。同大は専門医の配置など開設に向けた最終調整を進めている。将来的には、同大が小児医療の拠点として整備を進める「こども医療センター」に小児腫瘍科を組み込む方針で、県内の小児医療の高度化、体系化を加速させる。
 福島医大は小児がん治療で高水準の医療技術があり、治療実績は全国的に高く評価されている。小児腫瘍科については小児科から独立する形で開設、現在は小児がん治療を担当する専門医らを配属するとみられる。入院患者の治療のほか、外来診療にも対応する。
(2013年12月5日 福島民友ニュース)


 不十分ではありますが、チェルノブイリは汚染地から住民を避難させました。日本はまるで竹槍で放射能と戦えと言っているかのように、放射線測定用のバッチを渡して被曝を強いています。細野は「福島を日本で最もガン発生の少ない県にする」と言い放ちました。最も少ない県にするために、研究機関が必要なのでしょうか。そもそも、小児がんなど通常は考えなく良い疾患です。そのような疾患を専門にする機関を作りながら、福島は安全だと強弁する。誰が見ても矛盾は明らかだと思います。

 白血病には、2011年にまとめたシリーズがあります。おもな症状、治療法などをまとめておりますので、ご覧ください。

1.白血病入門(1)熊大の研修医時代
2.白血病入門(2)初期症状と血液データの読み方
3.白血病入門(3)白血病の種類と原因
4.白血病入門(4)治療その1−化学療法−骨髄移植の前準備
5.白血病入門(5)治療その2−化学療法と骨髄移植他
6.白血病入門(6)まとめ−予後因子と典型症例〜医師国試から

◆関連ブログ
気になる症例のまとめ2011年09月11日
作業員が急性白血病で死亡=収束工事「因果関係なし」−東電・福島原発2011年08月30日
ヒロシマ、ナガサキで5年間癌が発症しなかった本当の理由2013年09月25日

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posted by いんちょう at 20:39| Comment(7) | 原子力
この記事へのコメント
小児甲状腺癌については、多少なりとも公的にも情報が出てきますが、白血病や、その他の疾患については人伝に聞くことはあっても、公的に情報が出されてこない事について不信感を持っていました。
またABCCの見解など信頼できる訳がありません。あれだけ自国の兵士たちを核実験で被爆させておいて、更に病気になった兵士たちを被爆とは無関係だと切り捨てた国の機関ですから、日本人の被爆者に対する見解など、言わずもがなだと思います。
それから、今回のフクシマ原発事故では、これだけ人口密度の高いところで事故が起こり放射能を撒き散らし、5年目に白血病のピークが来るという事は、どれだけ多くの人が白血病で倒れることになるのでしょうか。本当に恐ろしく感じます。
2020年に東京でオリンピックなど、出来るわけがありません。その頃は、チェルノブイリの事例から考えれば健康被害が大規模に広がっている事になるでしょう。よっぽど日本人がロシア人より放射能に強いのであればオリンピックは開催できるでしょうが、そんな事はありえません。何処の国の選手が、健康被害の広がっている国へ行こうと思うと言うのでしょうか。

話は変わりますが、ラドンしんちゃん、今度はアメリカまで怒らせてしまったようですが意味が判っているのでしょうか。ケリーとヘーゲルが千鳥ケ淵戦没者墓苑で献花した事の意味が理解できなかったようですね。アメリカが日本に集団的自衛権行使を可能にすることを求めているのは、あくまでも湾岸戦争やイラク戦争のような戦争に日本が参加すること(もしくはベトナム戦争での韓国軍の役割)であり、極東地域で実際に衝突を起こすことではないのです。またアメリカが北朝鮮を経済制裁をしたり、時には食料などの援助をしたりと「生かさず殺さず」といった対応をするのは、日本と韓国に軍隊を駐留する理由付けをしているだけなのですから。
ラドンしんちゃんは「中国を刺激してもアメリカが助けてくれる」とでも思っていたのでしょうか。いまの米中関係を考えたら助けてくれる訳がありません。
再び、ラドンしんちゃんのお腹の病気が始まるのも近いかもしれませんね。


Posted by 肝澤幅一 at 2013年12月28日 21:55
気になったので拾ってみました。

(11月)横浜市西区の「ヨコハマグランドインター*ンチネンタルホテル」で、宴会場を利用した客約180人が、下痢や嘔吐(おうと)などを訴えていたことが22日、市関係者への取材で分かった。

埼玉県は(11月)16日、女子栄養大(同県坂戸市)の学生食堂で食事をした学生87人、教職員59人の計146人がノロウイルスによる食中毒になったと発表した。


栃木県は(12月)28日、同県日光市藤原の「ホテル鬼*川御苑」のレストランでノロウイルスによる食中毒が発生したと発表した。(118名)


秋田市保健所によりますと、市内の仕出し弁当業者が今月(12月)17日に秋田市や潟上市の61の事業所で販売した弁当を食べた240人が、18日から20日にかけて下痢や嘔吐(おうと)など食中毒の症状を訴え、172人が医療機関を受診しました。


12月23〜27日
石川・金沢市の病院で、職員や入院患者5人がノロウイルスに感染し、入院していた男性1人が死亡した。

感染性胃腸炎が流行の兆し 県内患者、6週続け増加 小児科30カ所を定点に同研究所がまとめた感染性胃腸炎の患者数は16〜22日の合計が457人で、11月末の218人から大幅に増加した。患者報告数は11月4〜10日が平均2.5人で、同25日〜12月1日は7.3人に増加。16〜22日は15.2人に上り、警報基準(20人)に迫っている。
(by山形新聞)

32人がノロ感染か 愛知のすし店とレストラン (12月25日)

「*っぱ寿司」で5人がノロ感染
(12月8日)

横浜市は(12月)27日、食中毒の発生を受け、同市都筑区の飲食店「五*ェ門」を営業禁止処分にしたと発表した。(57名)

藤沢市保健所に(12月)28日までに入った連絡によると、藤沢市稲荷の飲食店「*寿司」で食事をした女性6人が、下痢や嘔吐(おうと)などの食中毒症状を訴えた。

Posted by 風 at 2013年12月29日 00:42
By 放医研 ですが、どうなんでしょ?
ほんとかな?
これが福島原発事故関連のためにではなく、火星探査のためってところにがっかりしました。
原発作業員に少しでも被爆をさせないためにとか、そういう考えはおきないのでしょうか?

ぬれタオルで放射線4割減=宇宙で実験、火星探査に応用も−放医研
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2013122700818
Posted by Kayo, :) at 2013年12月29日 09:35
2011 5月の検診で白血球異常でした。
Posted by 300km農家 at 2013年12月29日 12:57
山梨県に住む従弟が昨年11月に急性白血病で亡くなりました。46歳でした。亡くなる一年前に会った時は健康そのものでした。
静岡県に住む73歳の従兄が、1ヶ月ほど前に心筋梗塞で亡くなりました。病気などした事の無い方でした。
Posted by w at 2013年12月29日 18:49
昔のことなんですが
チェルノブイリ事故の後、今日の雨は放射能がおそらく含まれているだろう、という日に、来るものなら来てみろ。と思った高校1年生の私は、わざと雨に濡れて帰りました。
 確かゴールデンウィーク前くらいだったので、それほど寒くはありませんでした。
 それから3年半後
私はリンパ節結核になりました。(左首筋が腫れました)4週間入院してその部分を切り、今は完治しております。
 放射能の雨にうたれたことで病気になったのか関連は証明できませんが、セシウムで内部被曝した場合の症状に、結核もあったので急に思い出しました。
 
Posted by 北九州市の松ちゃん at 2013年12月29日 23:10
Kayo, :) さん 記事を拝見しました。

たとえば福島の保育園の園庭周りに水を入れたペットボトルが並んでいたように記憶しています。新しい知見なのでしょうか。なんとなく推進側の学者さんたちが後追いしてるように思えてしまいます。わたしの職場の西日の入る窓は大きな一面ガラスで事故以降はよほど水を詰めたペットボトルを積み上げていこうかと考えていました。毎日被災地域からの大型トラックが停車するためです。外部被曝にまでこだわりだせばもう日常が破たんするので実行はしませんでしたが。

風さん、食中毒事例がたくさん。ぼんやりのわたしにとっては食中毒は梅雨の時期から9月くらいまでのイメージでした。まあ、事故以前でも最近は貝毒とか殺人ウィルスとかで時期外れのものも喧伝されてきていましたが、それってもはや事故前から怪しいものを人間が海に流していたことの証左としか思えません。

54年生きてきてたくさん外食してきましたが、自身がそのような食中毒事件に巻き込まれたことも社食や学食で起きた記憶もありませんでした。過去に被害にあわれている方にとっては事故後のこういった事例はそうおかしなものではないのでしょうか。もうわかりません。。でも教えていただいてありがとうございました。
Posted by マツダマツコ at 2013年12月31日 13:55
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